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2回目を迎える『KYOTO EXPERIMENT 2011』について
プログラム・ディレクターの橋本裕介氏にインタビュー
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―― なるほど。では、10月9日(日)・10日に公演を行うきたまりさんについて教えてください。

橋本「彼女は17歳ぐらいからコンテンポラリーダンスの世界に入って、いろんな人のワークショップを受けて舞台に立ち始めたんです。その後に大学に入って、理論の方からも勉強しています。今回、出演するのは3人の女性で、野渕杏子さんと花本ゆかさん。彼女たちはきたさんが学生の頃からずっと一緒に活動しているオリジナルメンバーですね」

―― このお三方の特徴は何ですか?

橋本「きたさんはめっちゃちっちゃいんです。150センチないぐらい。で、野渕さんは170センチと大きいんです。で、花本さんが太っちょなんです。この3人が並んでるだけで面白いんですよ。

―― なるほど。それで、『ちっさいのん、おっきいのん、ふっといのん』というタイトルなんですね。舞台の内容はどういったものになるんでしょうか?

橋本「彼女たちが2010年12月31日からそれぞれ、ブログを書いてるんですね。今回はそのテキストを基に演じて行きます。元々はブログだから自分自身のことに他ならないんだけれども、過去の自分ともう1回、向き合ったら、今の自分とはちょっと違うよねという感じで、本当の自分なのか、嘘の自分なのかということを考えながら、――まあ、ダンスなので説明はあんまりないと思いますけど、一人の人間がいろんな人間に見えてくるようなダンスを作っていこうと。その新作を披露します」

―― 橋本さんから見てのこの3人の魅力を教えてください。

橋本「きたさんは、身長はちっちゃいですけど踊り出すと何か異常に大きく見えます。それは、彼女がトレーニングをしっかりしているからだと思います。そして野渕さんは動物っぽいですね。見たことのない動物のように見えます(笑)。彼女には踊った時に特徴的なフォルムがあって、それが普段、僕たちが知っているダンスのフォルムとは違っていて、ちょっと異形なんです。そして花本さんは、かわいさを一手に担っていますね。コロコロしています」

―― ありがとうございます。では、開催日順にご紹介していただけますか。9月23日(金・祝)~25日(日)にザカリー・オバザンの『Your brother.Remember?』が行われます。

橋本「『Your brother.Remember?』はかなり面白いアメリカの演劇です。兄弟の昔と今の映像を使いながら、ザカリーがお兄さんとの思い出を語ったりするパフォーマンスです。ザカリーは成人してから大学で演劇を学び、演劇活動をしているんですが、作品を作っていく中で映像を使った作品を作ろう思ったんですね。で、ビフォー・アフターみたいなコンセプトにしたんですが、昔の映像をどうしようかと考えているときに、お兄さんと撮った映画のパロディ映像を思い出したんです。それで、現在のお兄さんを呼び出して、また同じパロディ映像を作ろうと。それを見比べる中で、20年前と今とでは何が変わってしまったのか、その間に人生はいろいろと枝別れをしているわけだけれども、ほかの可能性でもあり得たのかというようなことを問いかける作品になっています。それを結構、笑わせながら進めていきます」

―― ザカリーさんとはどういう出会いだったんですか?

橋本「僕が出会ったのは、ブリュッセルのフェスティバルです。それがちょうどこの作品が初演でした。あまりにも面白かったので、観た後に『来年、京都に来てくれないかな』って、ほぼ一目惚れでお願いしました。ただ、単に面白かったというだけではないんです。今、映像をどういうふうに使うかということは、ライブも舞台芸術も大変重要なことじゃないかなと思っていて。今の僕たちの生活の中で映像はあまりにも満ち溢れていて、テレビで嘘かもしれない情報を見せられても、それを本当と思って生きている僕たちがいます。なので、映像のことはもうちょっと真面目に考えるべきじゃないかなと思っていて。そこで、こういうビフォー・アフターというコンセプトで映像をきちんと使っている作品は重要だと思ったということが、招聘した理由の一つですね」

―― なるほど。続いて9月30日(金)~10月2日(日)には『演劇計画2009』が行われます。
 
橋本「この白井剛さんの『演劇計画2009』は、タイトル通り2009年に『演劇計画』で作った作品なんです。これが評価を受けて東京でも今年、上演することになって。再演の機会を得られたので、もう一度やろうということになりました。内容を説明するのがまた、むちゃくちゃ難しいので、これは見てくださいとしか言いようがありませんね」

―― 9月28日(水)からは2会場で地点が『かもめ』を上演します。
 
橋本「今回のポイントは、同じ作品を2つの会場で、別々の演出で作るということですね」

―― 別々の演出というのは?

橋本「空間に合わせて変えるんです。1つは京都芸術センターの20人しか入らないお茶室で上演します。動員も少人数なので、12回上演します。もう1か所がアートコンプレックスです。ここは普通の劇場なので200人近く入ります。ここで5回公演します」

―― 今回が初演ですか?

橋本「地点は『かもめ』を過去に別の演出で2回、上演しているんです。1回目は野外で、2回目はびわ湖ホールのオペラも上演できる大ホールでやっているんです。それも普通に大ホールを使うんじゃなくて、お客さんを舞台に座らせて、あの大きな客席を借景にして上演したんです。どちらもある種、イベント的な感じで作っていたので、今回はもうちょっと内容をきっちり抑えてた形でやろうと。特にお茶室の方はリーディングに近い感じになると思います。どういうふうに台詞を言って、中身を伝えていくかということをいろいろと工夫しながらやり、そして一般的な小劇場で、俳優が立って動いて作るという感じになりますね」

―― 10月1日(土)、2日(日)には平田オリザ+石黒浩研究室の「アンドロイド演劇『さようなら』」が行われます。こちらは前売券が完売していますが、内容を教えてください。
 
橋本「アンドロイドと人間の役者さんが出られるんですが、薄暗いシーンから始まるので、最初はどっちがアンドロイドかわからないですね(笑)」

―― 舞台は、どんな感じになるんでしょう?

橋本「僕の場合ですが、見ているとアンドロイドなのに感情移入するんですよね。それは俳優に感情移入することと一緒なんだなって。舞台の俳優も、結局は本当にそう思っているかどうかわからないじゃないですか。たとえ泣いていても。だから、アンドロイドに感情移入しても不思議はないなと思いました。けど、じゃあ人間の心って何なんだろうとも思いましたね。実は、これは平田オリザさんの演劇理論をある種、裏付けるようなプロジェクトでもあるんです」

―― というのは?

橋本「平田オリザさんは元々、このアンドロイド演劇とは関係なく、演出方法としてむちゃくちゃ厳密にされていたんです。『ここで手を10センチ上げる』『瞬きをここで何回する』と。『俳優の気持ちはどっちでもいいんだ、とにかくそのとおりにやれば観客は感情移入して感動するんだ』と言って。それで、ほかの演出家たちから『それは俳優をアンドロイドのように使っているだけじゃないか!』」と批難されていたんです」

―― なるほど。そういう流れがすでにあったんですね。

橋本「今回、2回上演するんですが、各回ともアンドロイドを作った石黒さんか、平田オリザさんのトークも行われます。上演時間は20分と短いんです。それは、単純に人間の俳優に演出をつけるのとを同じだけのプログラミングをアンドロイドに施すには、20分ぐらいが限度だからなんです。まだ人間が演じるほうが細かいニュアンスができるということですが、いずれは長編もお考えのようですね。そのとき青年団の俳優は、アンドロイドになるかもしれないですね(笑)」




(2011年9月22日更新)


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公演情報

〈KYOTO EXPERIMENT 2011〉

KUNIO
●9月23日(金・祝)~25日(日) 12:00
「エンジェルス・イン・アメリカ 第1部 『至福千年紀が近づく』」
●9月23日(金・祝)~25日(日) 17:00
「エンジェルス・イン・アメリカ 第2部 『ペレストロイカ』」
※9/24(土)公演終了後、ポストパフォーマンストークあり。
京都芸術センター 講堂
一般-3000円(整理番号付)
ユース・学生-2500円(25歳以下・学生、整理番号付)
高校生以下-1000円(整理番号付)
[原案・原作]トニー・クシュナー
[翻訳]吉田美枝
[演出][美術]杉原邦生
[出演]田中遊/澤村喜一郎/坂原わかこ/田中佑弥/松田卓三/池浦さだ夢/四宮章吾/森田真和
※16歳未満は入場不可。チケットぴあ前売り販売終了。

ザカリー・オバザン「Your brother.Remember?」
●9月23日(金・祝)~25日(日)
金土19:30
日15:00
ART COMPLEX 1928
一般-3000円
ユース・学生-2500円(25歳以下・学生)
高校生以下-1000円
[出演][構成][演出]ザカリー・オバザン
※9/25(日)公演終了後、ポストパフォーマンストークあり。チケットぴあ前売り販売終了。

白井剛/京都芸術センター「演劇計画2009」
発売中 Pコード:413-904
「静物画-still life」
●9月30日(金)~10月2日(日)
金19:30
土15:00
日17:30
京都芸術センター 講堂
一般-3000円
ユース・学生-2500円(25歳以下・学生)
高校生以下-1000円
[出演][構成][演出][振付]白井剛
[出演]青木尚哉/鈴木美奈子/高木貴久恵/竹内英明
※9/30(金)公演終了後、ポストパフォーマンストークあり。

地点「かもめ」
発売中 Pコード:413-909
●9月28日(水)~10月4日(火)・6日(木)~10日(月・祝)
月~木土日19:30
金17:00
※10/9(日)17:00。
京都芸術センター 和室「明倫」
一般/ユース・学生-2000円
高校生以下-1000円
※9/29(木)公演終了後、ポストパフォーマンストークあり。

●10月13日(木)~16日(日)
木金19:30
土15:00/19:30
日15:00
ART COMPLEX 1928
一般-3000円
ユース・学生-2500円(25歳以下・学生)
高校生以下-1000円
[原案・原作]チェーホフ
[翻訳]神西清
[演出]三浦基
[出演]安部聡子/石田大/窪田史恵/河野早紀/小林洋平
※各会場とも未就学児童は入場不可。

平田オリザ+石黒浩研究室
「アンドロイド演劇『さようなら』」
●10月1日(土)18:00・2日(日)15:00
京都芸術センター フリースペース
全席自由-1000円
[劇作・脚本][演出]平田オリザ
[出演]ブライアリー・ロング/井上三奈子(アンドロイドの動き・声)
※公演終了後、ポストパフォーマンストークあり(10/1(土)〔出〕石黒浩、10/2(日)〔出〕平田オリザ)。前売り券完売。

デモリションInc.+ヌークレオ・ド・ディルソル
「マタドウロ(屠場)」
発売中 Pコード:413-906
●10月7日(金)19:00・8日(土)17:30
元・立誠小学校 講堂
一般-3000円
ユース・学生-2500円(25歳以下・学生)
高校生以下-1000円
[振付]マルセロ・エヴェリン
※16歳未満は入場不可。

KIKIKIKIKIKI「ちっさいのん、おっきいのん、ふっといのん」
発売中 Pコード:413-907
●10月9日(日)19:30・10日(月・祝)18:00
京都芸術センター 講堂
一般-2500円
ユース・学生-2000円(25歳以下・学生)
高校生以下-1000円
[出演][劇作・脚本][演出][振付]きたまり
[出演]野渕杏子/花本ゆか
※10/9(日)公演終了後、ポストパフォーマンストークあり。

笠井叡「血は特別のジュースだ。」
発売中 Pコード:413-908
●10月10日(月・祝) 14:00
京都芸術劇場 春秋座
一般-3500円(指定)
ユース・学生-3000円(25歳以下・学生、指定)
高校生以下-1000円(指定)
[出演][構成][演出][振付]笠井叡
[出演]笠井禮示/寺崎礁/定方まこと/鯨井謙太郎/大森政秀
※公演終了後、ポストパフォーマンストークあり(〔ゲスト〕萩尾望都)。未就学児童は入場不可。

ヤニス・マンダフニス/ファブリス・マズリア「P.A.D.」
発売中 Pコード:413-911
●10月14日(金)~16日(日)
金20:15
土18:00/20:15
16:00/18:00
京都芸術センター フリースペース
一般-3000円
ユース・学生-2500円(25歳以下・学生)
高校生以下-1000円
[出演][構成][演出]ヤニス・マンダフニス
[出演][構成][演出]ファブリス・マズリア
※10/16(日)18:00公演終了後、ポストパフォーマンストークあり。

石橋義正/京都創生座 番外編「伝統芸能バリアブル」
発売中 Pコード:413-912
●10月16日(日)13:00/17:00
京都芸術劇場 春秋座
一般-3000円(指定)
ユース・学生-2500円(25歳以下・学生、指定)
高校生以下-1000円(指定)
[構成][演出]石橋義正
[演奏]杵屋勝欣次(長唄三味線)/杵屋勝浩菜(長唄三味線)/杵屋浩扇(長唄三味線)/上七軒さと幸(長唄三味線)/一風亭初月(浪曲・曲師)/田原由紀(和太鼓)/大谷加奈子(和太鼓)/依田美津穂(和太鼓)/小林杏里(和太鼓)/井上朋美(和太鼓)
[出演]青木涼子/尾上京/花柳双子/春野恵子/高原伸子/高橋千佳/皆川まゆむ
※10/16(日)17:00公演終了後、ポストパフォーマンストークあり。未就学児童は入場不可。

全公演ともチケットぴあでのセット券取り扱いなし。
[問]KYOTO EXPERIMENT事務局[TEL]075-213-5839

チケット情報はこちら!
http://p.tl/rqe9

KYOTO EXPERIMENT 2011 公式サイト
http://kyoto-ex.jp/