ホーム > インタビュー&レポート > 2回目を迎える『KYOTO EXPERIMENT 2011』について プログラム・ディレクターの橋本裕介氏にインタビュー
―― こんにちは。@ぴあ関西です。今日はよろしくお願いいたします。まず、『KYOTO EXPERIMENT』の成り立ちについてお聞かせ願いますか。
橋本裕介(以下、橋本)「このフェスティバルの前身事業が、京都芸術センターの演劇事業なんですが、『演劇計画』というプロジェクトだったんです。それを2004年から2009年まで、6年間やってきたんです」
―― 橋本さんは2004年の立ちあげのときから携わっていらっしゃるそうですね。この『演劇計画』ではどんなことをされていたんですか?
橋本「『演劇計画』では、年に一度、演出家の方に作品を作ってもらうこと、それをお客さんに観てもらうこと、若手演出家を発掘するためのコンクール、京都や関西で活動している人たちが意見交換できるためのフォーラムみたいな場所を作って、そこで出たアイデアなんかを報告書という形でまとめていくということをしてきたんです。割合地味な、探求の場みたいな感じでした」
―― その『演劇計画』から、どのようにして『KYOTO EXPERIMENT』へと移行していったんですか?
橋本「『演劇計画』という名前のとおり、いつかもうちょっと大きな形で実を結んだらいいなとやっている途中から考え始めていたんです。実際、『演劇計画』の中で作った作品が東京の劇場でやってほしいという話が来たり、海外のフェスティバルに招聘されたりということが段々出てきたんです。それでまあ、味を占めたというか(笑)、京都でもそれなりに広いシェアで認めてもらえる作品ができてきたかなと思ったんですが、ただ、年に1回、京都にわざわざ観にくるというのは、関西外の人からすると大変なことだなと。それを何とかしたいと思って、どうやったら作品を観るために京都に足を運んでもらえるかと考えて、そして『京都に来たら、一度に面白いものが何本も見られる状態を作ろう』と。2、3本まとめて面白いものが観られる状況であれば、『そうだ、京都に行こう』となるかなと(笑)。それで、それに一番ふさわしい形がフェスティバルだと。というのがまず、経緯ですね」
―― 去年から始められましたが、手応えはいかがでしたか?
橋本「『KYOTO EXPERIMENT』というフェスティバルの名前の効果もあってかどうかわからないんですが、美術系のアーティストや関係者の方から注目されたという手応えを感じました。もちろん横文字にしているので外国の舞台関係の人たちからも興味を持たれて、アーティストから売り込みもいっぱいありました。そういう意味では、1回目からちゃんと打ち上げられたな、いろんな方に名前だけは何となく知ってもらえることはできたかなと思いました。僕としても、美術に興味のある方に注目してもらったことが嬉しくて。というのは、やっぱり京都という街は割合小さいので、集客力だけで成り立たせるということが、街の規模としてなかなか難しいものがあるんです」
―― そうなんですね。
橋本「例えば東京の大手のプロダクションが製作した舞台を関西で上演したとき、やっぱり大阪に行かないとしょうがないという感じなんです。それは相応の劇場の存在もありますが、なかなか『京都』というだけではお客さんを集めるのが厳しいんですね。京都で何かやろうと思ったら、大阪からもお客さんを集めないと、チケット収入だけで何とかしていくということは結構厳しくて。じゃあ、京都の街で舞台のポテンシャルを上げていく道は何かというと、もうちょっと芸術性であったりとか、あるいは日本という規模を飛び越えたところで注目されていくことをしていかないといけないと思うんです。集客というだけでは隣の大阪にちょっと太刀打ちできないなと」
―― なるほど。では、少し話を戻しますが元々『演劇計画』という名前でされてきましたが、そのときは演劇がメインだったんですか?
橋本「いや、全然、そんなことはなくて、舞台全般というか、ダンスと演劇の両方をやっていました」
―― 『演劇計画』の活動を含めて、そういった動きは今年で8年目になりますが、この間、舞台の潮流みたいなものは生まれましたか?
橋本「名称は『演劇計画』と名乗りながら、『演劇の人もダンスの人も、こだわりなく同じフィールドでやりましょう。舞台の演出においては根っこは一緒じゃないですか』ということを提案してきたので、そういう意味ではアーティスト同士の交流も生まれました」
―― 具体的に教えていただけますか。
橋本「元々演劇に興味があったと思うんですけど、現代美術作家のやなぎみわさんが、地点の三浦さんとか、京都造形大学の演劇を教えていらっしゃる先生方と演劇プロジェクトを始めたということはありますね。やなぎさんが京都にお住まいで、それぞれの方と交流があった上なんですが」
―― そうなんですね。
橋本「今回も一緒に作品を作る高嶺格さんも舞台と美術の両方を股にかけてやっている方で。それが潮流といえるのかわかりませんが、むしろ京都は元々そういう土地だったのかなという気もするんです。というのも、Dumb Typeという、京都市立芸術大学出身のパフォーマンス集団で、20年近く前から活動していたアーティストグループがいたんですけど、そこも美術系、舞台系、映像系の人が混ざり合って作品を作っていました。今はもうほとんどソロ活動していますが、京都では20年ぐらい前からそういうことをやっていたんですね。そういう動きがあって、2000年ぐらいにはコンテンポラリーダンスがかなり注目され出したんです。1999年にアートコンプレックスがオープンして、そのこけら落としがコンドルズでした。そして京都芸術センターができたのが2000年で、ここは稽古場を兼ねている場所なので、普段から演劇やダンス、美術の人がここに集まって練習していますね」
―― その流れがずっと続いているんですね。
橋本「はい。実は脈々と続いているのかなという気はしていました。で、去年の『KYOTO EXPERIMENT』は、『演劇計画』を含めたここ10年ぐらいの蓄積をちゃんと出そうという思いを込めたプログラムだったんです。ある意味、集大成みたいなところがありましたね」
―― 『演劇計画』という活動の。
橋本。「はい。なので、ひとまず『KYOTO EXPERIMENT』で成功を収めて、ちゃんと注目していただけるようになったと感じられたので、今年からは新たに次の10年を見越したことをしなくちゃいけないと思って。今までのように、ずっと活躍してきた人の成果にあやかっているだけではペンペン草さえ生えなくなると。なので、今後10年のことを考えて、畑を耕すようなことを今年からやりたいと思いまして、今年のプログラムを組み立てました」
―― 『演劇計画』で6年間、培ってきたものと、これまで先輩から受け継いだものを新しい世代が作っていくんですね。では、出演者やプログラムについて教えていただけますか。
橋本「今年から、京都の若いアーティストを育てていくことが重要なことの一つになっているんですが、その若いアーティストが杉原邦生さんとKIKIKIKIKIKIのきたまりさん。二人とも京都造形大学の舞台芸術学科を卒業されていて、在学中から外に出て活動されていた、とても才能ある人たちです。杉原さんは演劇で、きたまりさんはダンスです。フェスティバルとアーティストが共同で作品を作って、杉原さんときたまりさんの2作品をお見せします。フェスティバルにはある種、見本市の要素もあって、出来上がった作品を並べて、どうですかとプレゼンするベーシックなスタイルがあるんですが、そうやってお買い物だけをしていてはいけなくて。自分たちでも作品をプロデュースしていかなければならないということもあって、アーティストと一緒に作品を作ります」
―― 杉原さんときたさんのお二人と組まれる理由は何ですか?
橋本「どちらもきちんと、芸術の大学で演劇やダンスをしっかり勉強しているということがあります。芸術の世界ではきちんと勉強することが何か変だということがある一方で、『いやいや、ちゃんと遊び心を持って。新しいことをやるためには、ベースをしっかりした上でその先を行くべきじゃないか』と考えている人たちもいるんですね。若い人の中では特に前者が多いんですが、二人は珍しく後者の考え方で。ポップな見かけとは裏腹に、お勉強をちゃんとしています(笑)。あと、杉原さんの場合は、単に作品を作るだけじゃなくて、自分でプロジェクトなどを立ち上るプロデューサーとしての才能を持っておられます」
―― たとえばどんな形でですか?
橋本「平田オリザさんがやっておられるこまばアゴラ劇場が主催している舞台芸術フェスティバルの「サミット」ディレクターに「冬のサミット2008」より2年間、就任しています。あと、木ノ下歌舞伎で演出したりしています。20代で歌舞伎の演出ができるのはなかなか、全国広しといえどもいないです。2010年5月に上演した『勧進帳』は相当面白かったですね。弁慶がすっごいでかいアメリカ人で、富樫は女の子でした。これは京都のアトリエ劇研という小さい劇場でしかやらなかったので、僕も機会があったら再演を提案したいなと思ってるんですけどね」
―― その杉原さんは今回、上演時間7時間の作品をされますね。
橋本「はい。休憩は入りますけど、ずっとやりますね。この『エンジェルス・イン・アメリカ』という戯曲は結構、真面目な作品で、1993年にピュリツァー賞やトニー賞を受賞しています。舞台は1980年代のニューヨークで、エイズ患者でもある同性愛者を中心に、その周囲の人を描いています。たとえば、裁判所勤務と堅い仕事をしているんだけど、実は男性が好きだったり、ちゃんとした身なりをしているけれども家に帰るとおネエ系になったりと、おネエ系の男ばっかり出てくるお芝居ですね」
(2011年9月22日更新)
KUNIO
●9月23日(金・祝)~25日(日) 12:00
「エンジェルス・イン・アメリカ 第1部 『至福千年紀が近づく』」
●9月23日(金・祝)~25日(日) 17:00
「エンジェルス・イン・アメリカ 第2部 『ペレストロイカ』」
※9/24(土)公演終了後、ポストパフォーマンストークあり。
京都芸術センター 講堂
一般-3000円(整理番号付)
ユース・学生-2500円(25歳以下・学生、整理番号付)
高校生以下-1000円(整理番号付)
[原案・原作]トニー・クシュナー
[翻訳]吉田美枝
[演出][美術]杉原邦生
[出演]田中遊/澤村喜一郎/坂原わかこ/田中佑弥/松田卓三/池浦さだ夢/四宮章吾/森田真和
※16歳未満は入場不可。チケットぴあ前売り販売終了。
ザカリー・オバザン「Your brother.Remember?」
●9月23日(金・祝)~25日(日)
金土19:30
日15:00
ART COMPLEX 1928
一般-3000円
ユース・学生-2500円(25歳以下・学生)
高校生以下-1000円
[出演][構成][演出]ザカリー・オバザン
※9/25(日)公演終了後、ポストパフォーマンストークあり。チケットぴあ前売り販売終了。
白井剛/京都芸術センター「演劇計画2009」
発売中 Pコード:413-904
「静物画-still life」
●9月30日(金)~10月2日(日)
金19:30
土15:00
日17:30
京都芸術センター 講堂
一般-3000円
ユース・学生-2500円(25歳以下・学生)
高校生以下-1000円
[出演][構成][演出][振付]白井剛
[出演]青木尚哉/鈴木美奈子/高木貴久恵/竹内英明
※9/30(金)公演終了後、ポストパフォーマンストークあり。
地点「かもめ」
発売中 Pコード:413-909
●9月28日(水)~10月4日(火)・6日(木)~10日(月・祝)
月~木土日19:30
金17:00
※10/9(日)17:00。
京都芸術センター 和室「明倫」
一般/ユース・学生-2000円
高校生以下-1000円
※9/29(木)公演終了後、ポストパフォーマンストークあり。
●10月13日(木)~16日(日)
木金19:30
土15:00/19:30
日15:00
ART COMPLEX 1928
一般-3000円
ユース・学生-2500円(25歳以下・学生)
高校生以下-1000円
[原案・原作]チェーホフ
[翻訳]神西清
[演出]三浦基
[出演]安部聡子/石田大/窪田史恵/河野早紀/小林洋平
※各会場とも未就学児童は入場不可。
平田オリザ+石黒浩研究室
「アンドロイド演劇『さようなら』」
●10月1日(土)18:00・2日(日)15:00
京都芸術センター フリースペース
全席自由-1000円
[劇作・脚本][演出]平田オリザ
[出演]ブライアリー・ロング/井上三奈子(アンドロイドの動き・声)
※公演終了後、ポストパフォーマンストークあり(10/1(土)〔出〕石黒浩、10/2(日)〔出〕平田オリザ)。前売り券完売。
デモリションInc.+ヌークレオ・ド・ディルソル
「マタドウロ(屠場)」
発売中 Pコード:413-906
●10月7日(金)19:00・8日(土)17:30
元・立誠小学校 講堂
一般-3000円
ユース・学生-2500円(25歳以下・学生)
高校生以下-1000円
[振付]マルセロ・エヴェリン
※16歳未満は入場不可。
KIKIKIKIKIKI「ちっさいのん、おっきいのん、ふっといのん」
発売中 Pコード:413-907
●10月9日(日)19:30・10日(月・祝)18:00
京都芸術センター 講堂
一般-2500円
ユース・学生-2000円(25歳以下・学生)
高校生以下-1000円
[出演][劇作・脚本][演出][振付]きたまり
[出演]野渕杏子/花本ゆか
※10/9(日)公演終了後、ポストパフォーマンストークあり。
笠井叡「血は特別のジュースだ。」
発売中 Pコード:413-908
●10月10日(月・祝) 14:00
京都芸術劇場 春秋座
一般-3500円(指定)
ユース・学生-3000円(25歳以下・学生、指定)
高校生以下-1000円(指定)
[出演][構成][演出][振付]笠井叡
[出演]笠井禮示/寺崎礁/定方まこと/鯨井謙太郎/大森政秀
※公演終了後、ポストパフォーマンストークあり(〔ゲスト〕萩尾望都)。未就学児童は入場不可。
ヤニス・マンダフニス/ファブリス・マズリア「P.A.D.」
発売中 Pコード:413-911
●10月14日(金)~16日(日)
金20:15
土18:00/20:15
16:00/18:00
京都芸術センター フリースペース
一般-3000円
ユース・学生-2500円(25歳以下・学生)
高校生以下-1000円
[出演][構成][演出]ヤニス・マンダフニス
[出演][構成][演出]ファブリス・マズリア
※10/16(日)18:00公演終了後、ポストパフォーマンストークあり。
石橋義正/京都創生座 番外編「伝統芸能バリアブル」
発売中 Pコード:413-912
●10月16日(日)13:00/17:00
京都芸術劇場 春秋座
一般-3000円(指定)
ユース・学生-2500円(25歳以下・学生、指定)
高校生以下-1000円(指定)
[構成][演出]石橋義正
[演奏]杵屋勝欣次(長唄三味線)/杵屋勝浩菜(長唄三味線)/杵屋浩扇(長唄三味線)/上七軒さと幸(長唄三味線)/一風亭初月(浪曲・曲師)/田原由紀(和太鼓)/大谷加奈子(和太鼓)/依田美津穂(和太鼓)/小林杏里(和太鼓)/井上朋美(和太鼓)
[出演]青木涼子/尾上京/花柳双子/春野恵子/高原伸子/高橋千佳/皆川まゆむ
※10/16(日)17:00公演終了後、ポストパフォーマンストークあり。未就学児童は入場不可。
全公演ともチケットぴあでのセット券取り扱いなし。
[問]KYOTO EXPERIMENT事務局[TEL]075-213-5839
チケット情報はこちら!
http://p.tl/rqe9
KYOTO EXPERIMENT 2011 公式サイト
http://kyoto-ex.jp/