ホーム > インタビュー&レポート > 「ホンマに幸せな宴会でした。これであと10年はやれますわ(笑)」 オセロケッツ森山公一が、浅田信一、坂本サトル、浅森坂らと 地元大阪・味園 ユニバースで迎えた最幸の夜を振り返る! 『森山公一 51st Anniversary LIVE「森山51」』ライブレポート
オセロケッツや森山公一のアートワークを手掛けてきたデザイナーの阿萬智博が、開場時からご機嫌なDJプレイでフロアを温め、続々と全国から集まってきた観客が再会を喜ぶ様子もちらほら。大阪・西本町の人気店、アグニの絶品カレーをはじめとするフードブースもにぎわうお祭りムードのなか、オープニングアクトとして登場したのは、なんちゃらアイドルの2人だ。「森山さんにささげます!」とオセロケッツの楽曲をエレクトロダンスチューン風味にカバーした『もしかして君だけが苦しいって思ってないかい?』を皮切りに、『屁で空中ウクライナ!』~『今日の君は・・・!』と全力で駆け抜け、彼女たちにとっても憧れの地であった味園 ユニバースを大いに盛り上げた。
●the Sokai #1 開演と同時に大歓声が上がった宴のトップバッターは、森山が率いるthe Sokai。千葉晃司(g・chiiii、ex. GELUGUGU)、金川凡洋(b・城領明子トリオ、chiiii、ex. SLY TRIBES)、須川基(ds・ex. LOOP THE LOOP、Jackson vibe)、中山智義(key・アカプルコ・ゴールド)に、盟友・毛利泰士もパーカッションで参加したスペシャル編成で、1曲目の『また会ったね、ロンリネス』から、愛してやまないプレーヤーと音を奏でるのが本当に楽しいと言わんばかりの森山が、渋みのある歌声を心地良く響かせていく。
「こんなにようさんお越しくださってありがとうございます! うれしい、何か形になってるふうやもんね。この椅子のレイアウトでどんだけ悩んだか。とにかく入ってるふうに見せようって(笑)。せやのにすごい事件が起きて。70脚と聞いていたパイプ椅子が30ぐらいしかなくて、慌てて楽屋のソファを出したり(笑)。ところで僕、今日が誕生日で51歳になりました! 大好きな会場だったんですけどステージに立つのは初めてで、皆さんのおかげでやることができました。大先輩のゲストもいろいろとお呼びしてますし、芸能生活30年近くになりますけど、今日はその中から選りすぐった曲をやりたいと思います」
初っぱなからMCも絶好調の森山が歌い出したのは、オセロケッツの珠玉のミドルバラード『pain』。ファンからも人気の高い名曲が、幾つもの時代を越えて味園 ユニバースに広がっていく。たった2曲で森山の比類なきソングライティング力を知らしめる楽曲の力に、心が満たされていく。
「オセロケッツ時代から見に来てくださってる方はいらっしゃるんですか? (客席を見渡して)7人ですね(笑)。7人以外新しいファンということは、人気出てきてんちゃう?」と、口を開けば絶え間なく場を沸かせる森山は、元来はピンポイントの予定がまさかの出ずっぱりとなった毛利を紹介。オセロケッツのデビュー20周年の際に作られた毛利プロデュース曲『Habitable』でも、気心知れた面々により豊潤なアンサンブルを構築してみせる。
「ここで最初のゲスト、浦沢直樹! ってホンマごめん!! 昨日の夜にインフォメーションを出しましたけど、浦沢さんがものすごい体調不良になってしまいまして...今日は欠席です!」と、ライブ前日に急きょ出演キャンセルとなってしまった、日本を代表する漫画家でありミュージシャンとしても活動する浦沢直樹の思いを汲み、浦沢のセットリストに含まれていた『漫画描きのバラード』を森山が代わりに歌い継ぐというドラマチックな一幕も。最大のピンチも当日リハできっちり見せ場に変えた、歴戦のミュージシャンたちによるさすがのパフォーマンスだった。
●浅田信一 続いて、「あれ、浦沢直樹さん来ないの? 僕は浦沢さんに会いに来たんですけど(笑)。今日は誕生日おめでとうございます!」と浅田信一が現れ、「ありがとうございます先輩!」と出迎える森山。そして浅田が、「オセロケッツの唯一のヒット曲に(笑)『ミリオンボーイ』という曲があるんですけど、すごくいい曲で。SMILEにも唯一のヒット曲に(笑)『明日の行方』という曲があって、今日はそれをメドレーしようかな」と切り出し、そのまま舞台に残った森山と、この日限りの極上リレーがいきなり実現! 愛機のグレッチを手に歌う浅田のしなやかなボーカルに時に森山がハーモニーを添え、「すごい贅沢!」と森山が喜ぶのも納得の景色が生まれる。
ここで一夜を通してハウスバンドを務めるthe Sokaiが再び合流し、「この曲のメッセージを森山に向けて歌いたいなというのもありつつ、俺らぐらいになるとやっぱり、好きなことを続けて良かったなと思うじゃないですか。そういう曲なんで楽しんでもらえたら」と浅田が投げ掛け、最新アルバム『ENDS AND BEGINS』('24)のリード曲『オン・ザ・ロード』へ。躍動感のあるバンドサウンドを背に気持ち良く歌い上げ、さらに同アルバムからブルージーでアーシーな『雨男ジャーニー』を。サビの振り付けもバッチリ決まったまるでワンマンライブばりの絶景を、味園 ユニバースに描いてみせた浅田信一だった。
●坂本サトル 「僕は『天使達の歌』という曲でソロデビューしたんですけど、音源が完成したのは'98年の12月10日で、翌11日にレーベルのスタッフに聴かせてデビューが決まって。その日の夜に神保町かどこかで、森山の誕生日会をなぜか2人きりでしたんだけど(笑)、お酒を飲んでるときに"これでソロデビューするんだよ"と初めて聴かせたのが森山だったんですよ」と、自身の代表曲の思わぬエピソードトークからスタートした坂本サトルのライブ。
「今日に向けて痩せたでしょ?」と坂本が言えば、「恥ずかしいこと言わんといてくださいよ。僕ってそういうボクサー体質なところがあるんです(笑)」と森山が返す変わらぬ関係性を感じさせながら、まずは「その森山に初めて聴いてもらった曲を歌います」と『天使達の歌』を弾き語る。膨大な数のストリートライブをこなしたあの頃の風景がよみがえる、アコースティックギターと声のみで見る者を引きつける圧倒的な求心力は、今でも衰えることはない。それどころか、何百何千と歌い込んできた説得力に息をのみ、くぎ付けになってしまう。
「'12年の再結成以降は森山にプロデュースしてもらってます!」と、ここからは近年のJIGGER'S SONの楽曲を立て続けに演奏するゾーンへ。気だるいビートにエモーショナルなギターやオルガンが映える『バンジー』を終えた後は、坂本も「the Sokai、最高だね」と何とも気持ち良さそうな表情。福島県相馬市で実施したアルバム『SOUND of SURPRISE』('17)の合宿レコーディングの思い出を語り合いながら、『銀河県道999』でも跳ねるロックンロールとともに力強いシンガロングを生み出した。
●浅森坂 森山が「2人の先輩に来ていただいて、約8年ぶりのライブです!」と呼び掛け、浅田信一+森山公一+坂本サトルのユニット=浅森坂が、満を持しての大復活。だが、誰も彼もが話し出し、収拾がつかないのは当時と同じ(笑)。兄弟のようなそのやり取りに「懐かしーこれ(笑)」とつぶやく森山だったが、いざ自己紹介代わりの『浅森坂という坂がある』が始まれば、持ち味の異なる三声の黄金配合に魅せられる。Aメロ→Bメロ→サビとバトンを渡すように、それぞれがメロディを書いていく浅森坂は、自分の担当したパートを歌うのが定石。コーラスワークのみならず次々とメインボーカルが移り変わるのも見どころで、『Gravitation』でもそんな3人の個性が美しく溶け合っていく。
「こんなんでしたね~」と楽しげな三男の森山と長男の坂本がやり合い、次男の浅田がちゃちゃを入れるような光景はほほ笑ましい限りで、郷愁と哀愁漂う『北風の坂道』でも熟成する三者三様のシンガーソングライターとしてのうま味をこれでもかと味わわせてくれる。時折、1名につきドリンクチケット10枚付きの最前列指定席=ぼったくりソファーBOX席の方々にハイボールをおねだりしながら(笑)、『狭霧の私』ではBメロ続きの坂本が念願のサビを歌い、これまた男のロンサム風情で魅了。森山が「ありがとうございました先輩! この後は飲みまくってください」と中締めの乾杯をし、2人を送り出した。
●the Sokai #2 めくるめくゲスト陣の出演を経て、改めてトリを務めるthe Sokaiは「森山公一のデビュー曲を聴いてください!」と、オセロケッツの『ヘアチェッカー』で幕開け。味園 ユニバースに地鳴りを起こすような分厚いサウンドは迫力抜群で、オセロケッツのそれとはまた違う衝動と魅力に溢れている。
「23歳の頃、この曲でデビューしました。まだ髪の毛は残ってます(笑)。次もオセロケッツの曲ですけど、まさか7人しかファンが来てないとは思わず、結構昔の曲を練習しちゃったよ」と笑いながら、浅田から誕生日プレゼントにもらったばかりというカポを付け、「まさか信ちゃんが歌ってくれるとは思わなかったけど僕の唯一のヒット曲、もちろんラインナップしてます!」と、浅田信一が再度コーラスでジョインした『ミリオンボーイ』をゴージャスにお届け。須川の鬼気迫るドラミングには森山も思わず、「ドラムの人、最後の曲ぐらい叩いてなかった? 次の曲大丈夫?」と気に掛けるほどで、オーディエンスをとことん熱狂させていた。
「コロナ禍に48曲デモを作ったとき、すごく好きな曲ができまして。今日明らかに手作りのチラシが折り込まれてなかった? 何と僕、地元の東成区に隠れ家リハーサルスタジオを作りました! スタジオの名前がDAEN st.というんですけど、その曲をやってみましょう」
『DEMOs 48 for オセロケッツ ~アイマイで多忙な毎日~』('21)収録の『楕円』は、森山公一のロマンチシズムがにじみ出る素晴らしい一曲。その後は、「僕は東成区の今里小学校出身なんですけど、その地域で作られた『代書屋』という有名な落語があって。味園でやりたかったカントリーブルースです」と、森山がゼロ年代に情熱を注いだオルタナカントリーバンド・The Ma'amの『代書屋2010 (PC頼み)』('10)をアップデートした、『代書屋2024 (ChatGPT)頼み』へ。メンバーのソロ回しでも魅せ、森山はいつの間にかぼったくり席をも経由するなど縦横無尽! 「お酒を2杯ぐらいこぼしましたけど、後で拭きに行きますんで」と謝りつつ(笑)、いよいよ本編も最後の曲に。「ニール・ヤングを好きな感じで作ったから、一番やかましく歌います!」と告げ、オセロケッツの『モノクローム』をメランコリーもろともジリジリと押し寄せる音像で聴かせ、有言実行のラストシーンを作り上げた。
●アンコール まだまだ興奮冷めやらぬアンコールでは、「浦沢さんが来てたら終わるの夜中の0時になってたんちゃうか(笑)。51歳の誕生日に向けて51秒の曲を作ったんで、それはやっても押さないということで」と『51(仮)』を披露し、「ここでスーパーゲストを呼びたいと思います!」と、バースデーケーキを持ったオセロケッツの中井英行(b)を召喚。'22年のオセロケッツのデビュー25周年ライブ後はベースを森山家に預けっぱなしとのことで(笑)、楽器に触るのはそれ以来という中井。森山、中井、毛利の3人で奏でたアコースティックバージョンの『アンサーソン』は、共に音を鳴らせば即座にオセロケッツになる音楽の魔法を存分に感じさせた。
約3時間にわたる盛大な宴を締めくくるのは、なんちゃらアイドルも交えて本家オセロケッツの『もしかして君だけが苦しいって思ってないかい?』! あれよあれよという間にファンも演者も垣根なく入り乱れ、味園 ユニバースのネオンもきらめく最高のエンディングに。森山からのシメのあいさつは、「どうもありがとうございました! ホンマに幸せな宴会でした。これであと10年はやれますわ(笑)。還暦のときもぜひ来てください!」と何ともらしい一言。森山公一のキャリアをたどる楽曲と人脈を束ねた幸福な一夜は、彼の才能を心ゆくまで再確認したライブにもなった。というわけで、'33年12月11日、今からスケジュールを空けておいてください!?
Text by 奥"ボウイ"昌史
Photo by ハヤシマコ
(2025年8月13日更新)
『森山公一 51st Anniversary LIVE
「森山51」』
12月11日(水)大阪・味園 ユニバース
【the Sokai】
01. また会ったね、ロンリネス
02. pain
03. Habitable
04. 漫画描きのバラード
【浅田信一】
05. ミリオンボーイ~明日の行方
06. オン・ザ・ロード
07. 雨男ジャーニー
【坂本サトル】
08. 天使達の歌
09. バンジー
10. 銀河県道999
【浅森坂】
11. 浅森坂という坂がある
12. Gravitation
13. 北風の坂道
14. 狭霧の私
【the Sokai】
15. ヘアチェッカー
16. ミリオンボーイ
17. 楕円
18. 代書屋2024 (ChatGPT)頼み
19. モノクローム
~ENCORE~
20. 51(仮)
21. アンサーソン
22. もしかして君だけが苦しいって
思ってないかい?
Album
『リトミック demo』
発売中
SOUNDNAUTS
DAEN-001
<収録曲>
01. kosobase
02. AMEN-BOW
03. ピコる!
04. ひっぱってBEYOND
05. ニホンアシ
06. プーという名の少年
07. ウン・ピョコ・ロコ
08. だしたらしまう
09. ぶぅのカー
10. シャカ社歌
11. チルチル満ちる
もりやま・こういち…オセロケッツのボーカリストとして'97年にメジャーデビュー。大阪を拠点にしたthe Sokaiや、京都が誇る老舗カントリーバンド・永冨研二とテネシーファイブでの歌唱/演奏、楽曲提供、プロデュース、音楽評論、専門学校講師など、活動は多岐にわたる。
森山公一 公式X
https://x.com/moriyamakohichi
森山公一 公式Instagram
https://www.instagram.com/kohichimoriyama/
森山公一 公式Facebook
https://www.facebook.com/moriyamakohichi.official/
【the Sokai】
『DAEN st.presents「Veteranus #1」』
チケット発売中
▼8月20日(水)18:30
南堀江knave
前売4000円 学生1000円
[出演]the Sokai/chiiii/THE MOLICE
[オープニングアクト]Buttercup Yellow
南堀江knave■06(6535)0691
【浦沢直樹】
【大阪/兵庫公演】
『浦沢直樹 Love Songs TOUR 2025
〜Rhythm & Drawing〜』
チケット発売中
※販売期間中はインターネットのみでの販売。チケット引換えは大阪公演が9/16(火)10:00以降、兵庫公演は9/22(月)10:00以降より可能となります。
▼9月23日(火・祝)17:30
YES THEATER
▼9月29日(月)18:00
チキンジョージ
指定席8800円 VIP席22000円
[メンバー]オバタコウジ(g)/eji(key)/林由恭(n)/林久悦(ds)
夢番地■06(6341)3525
(平日昼12:00~17:00 https://www.yumebanchi.jp/)
※未就学児入場不可。6歳以上チケット必要。転売禁止/転売チケット入場不可/オークションへの出品禁止。演出およびステージの一部が見えにくいお席となる場合がございます。【VIP席について】前方席保証。サイン入り色紙(小)付き[各公演30人限定]あらかじめ名前(カタカナのみ10文字まで)を入れる。VIP特典GOODS付き(詳細は後日発表)。
【坂本サトル】
【京都公演】
『リクオ・プレゼンツ 〜TAKUTAKU
HOBO CONNECTION 3days〜 第3夜』
チケット発売中 Pコード305-560
▼10月12日(日)18:00
磔磔
自由席5800円
[共演]リクオ/木村充揮
磔磔■075(351)1321/
GREENS■06(6882)1224
(平日昼12:00~18:00)
https://www.greens-corp.co.jp/
※未就学児童は入場不可。小学生以上は有料。お持ちのチケットの整理番号及び、お客様の入場時間によりましては、立見になります。あらかじめ、ご了承ください。