ホーム > インタビュー&レポート > それぞれが見せたHOLIDAY! RECORDSへの愛の形 10周年記念イベント『HOLIDAY! vol.6』ライブレポート
今までの愛を伝えた、浪漫革命
トップバッターに登場したのは浪漫革命。冒頭から『君という天使』、『ラブストーリー』などを披露し、会場のテンションを上げていく。
MCで「俺らのバンドも8周年で、HOLIDAY!とともにある」と藤澤信次郎(vo&g)が観客に伝えたように、浪漫革命は『come together』『AFTER SKOOL』などの、HOLIDAY! RECORDSが関わったイベントに幾度も出演。まさに顔なじみ的な存在でもある彼らだが、今年から地元京都から上京。新天地で作った勝負の1曲として披露されたのは、9月にリリースされたEP『溢れ出す』から『世界に君一人だけ』。心地の良いフロウと人懐っこい歌声が会場の隅々まで行き渡る。
さらに代表曲『あんなつぁ』が演奏されると、会場からは無数の手が上がり彼らの歌声に応じる。「最後に一緒に歌おう」と言い、披露されたラストナンバー『楽しい夜ふかし』では会場からシンガロングが巻き起こった。また終盤には藤澤が「HOLIDAY!おめでとう、おめでとう!これからもよろしくね」とコール&レスポンスをして会場を盛り上げた。HOLIDAY! RECORDSへの感謝と愛を感じるライブであった。
Sundae May Clubが歌う、キラキラなポップネス
続いて登場したのは長崎発のウルトラスーパーポップバンド・Sundae May Club。冒頭『春』からスピード感のあふれるサウンドが颯爽と駆け抜ける。その後、今年9月に配信リリースされたストレートなロックナンバー『しとろんの週末』や、グルーヴィなビートとリズミカルなボーカルがクセになる『サイダー』を演奏。疾走感のあるキラキラなポップネスをつぎつぎと披露していく。
10月3日に東京で行われた『HOLIDAY! vol.5.5』にも出演し、Sundae May ClubにとってHOLIDAY! RECORDSのイベントはまさにホームだと言っても過言ではない。浦小雪(vo&g)は「20周年も一緒に祝いたい」とMCで愛を伝え、その後「HOLIDAY! RECORDSと音楽を愛する皆さんのために」と言い、10月にリリースされた最新ナンバー『チャーミー』を披露。さらに『Sundae May Clubのテーマ』『夜を延ばして』をたたみかけて、ステージを後にした。
観客を圧倒した、Khaki
ライブにはさまざまな形がある。コール&レスポンスなど観客とコミュニケーションをしながら会場のテンションを上げるものや、自分のスタイルを貫き会場を掌握するもの。3番手に出演したKhakiは完全に後者のスタイルだ。冒頭『Thirteen』を歌い出したかと思うと、1フレーズだけ歌ったところで『B-side』を演奏。フロアに柔らかな空気を流し込むと、『Kajiura』ではメロウで色気のあるサウンドを披露し、『Undercurrent#2』ではヒリヒリとした緊張感とジャジーでスリリングなアンサンブルを展開していく。
息をもつかせぬ緊張感のあるパフォーマンスと、会場を凌駕する圧倒的なサウンドスケープ。Khakiはまるでひとつの作品を作り上げるかのようにライブを行い、観る者を圧倒していく。一切MCを挟まずに自分たちの音をたたきつけ、最後に中塩博斗(vo&g)が「Khakiです、ありがとう」その一言だけを伝え、ラストナンバー『文明児』を披露。曲が進むごとにアンサンブルのスピードが加速していき、ボルテージを増していくサウンドに、会場からは幾度となく歓声が上がった。演奏後もしばらくざわめきが止まらず、会場からは「Khaki、ヤバっ!」という声も。間違いなく、味園ユニバースの観客を熱狂させたライブであった。
TENDOUJIが歌う、同期へ捧げる賛歌
今年活動10周年のTENDOUJIが味園ユニバースに見参。冒頭から『Kids in the dark』『Get Up!! 』『Skippy』といった代表曲を惜しげもなく披露していく。彼らのサウンドは軽快であり、底抜けに明るい。観客も楽しそうに踊ったり、口ずさんだりと各々の好きな形で楽しんでいる。
以前、TENDOUJIは思い入れが深いバンドだとインタビューで語っていたHOLIDAY! RECORDS。そういうこともあってかMCでモリタナオヒコ(vo&g)が「(HOLIDAY! RECORDSは)年上ですが、同期だと思っている」とコメント。バンドとCDショップ、形態は違えど同じ10年を突き進んだもの同士だということもあってか、いつになく味園のステージ上で楽しんでいるかのようであった。
最後には今年5月にリリースされたアルバム『TENDOUJI』より、軽快で疾走感のあるナンバー『TOKYO ASH』を披露。拳を挙げながらシンガロングをする観客たちの声は、この10年を祝う賛歌のようでもあった。
変幻自在なステージングで観客を魅了した、サニーデイ・サービス
10周年イベントもいよいよ大詰め、ステージにはサニーデイ・サービスが登場。「若いバンドに僕たちがやっていることとサニーデイとはこんな風に地続きだという風に思ってほしかった」とHOLIDAY! RECORDSの植野秀章がインタビューで語っていたが、現行のインディーシーンにおいて、その音楽性や活動スタイルなどは多くの若いバンドたちの指針になっている。
サウンドチェックから本番さながらに『魔法』を演奏し、準備万端といった様子。本編がスタートしてからは清々しさあふれる『胸いっぱい』や、アグレッシブで激情的なサウンドがたまらない『さよなら街の恋人』などを披露。MCで曽我部恵一(vo&g)が「HOLIDAY! RECORDS、いつも応援してくれてありがとう」と語り、歌われたのはサニーデイ屈指の名曲『白い恋人』。温かみのあるサウンドと、しっとりとした歌声が会場全体に響き渡った。ある時はおびただしい熱量を放ち、またある時は優しくそっと包み込む。その変幻自在なステージングに観客からは大きな拍手と歓声が沸き起こった。
曽我部が「僕、コーヒーが好きで。喫茶店のも好きだけど、コンビニのコーヒーもいいよね」といい『コンビニのコーヒー』を演奏。以降も、疾走感あふれる『春の風』、明るくファニーな『風船賛歌』とたたみかけて、最後は『セツナ』を披露。終盤でエモーショナルにセッションを繰り広げる姿は、会場を熱狂させた。
演奏後、鳴りやまない拍手に応え、登場したサニーデイ・サービス。『そっちはどうだい うまくやってるかい』と呼びかけて披露したのは、代表曲『青春狂走曲』。サビで会場全体がシンガロングをする姿は、この10周年イベントの終幕を彩る最高の光景であった。
セットリストにおびただしい愛を詰め込んだ、ナードマグネット
この日、サニーデイ・サービス、TENDOUJI、Khaki、Sundae May Club、浪漫革命とさまざまなバンドがライブをし、そのどれもが素晴らしい演奏を披露した。しかし「この日、HOLIDAY! RECORDSに対しての愛を一番感じたアクトは?」という質問をされたら、私は間違いなく「ナードマグネット」だと答える。
ステージにメンバー全員が集合し、最初に披露されたのは『ばくだんベビー』。力強いビートとリフが会場を支配したかと思えば、続く『pluto』では会場から『レッツゴー!』とコールが湧き起こる。続く3曲目には『恋は呪い』が演奏されたのだが、このあたりで「あれ、これって?」とひとつの疑念が生まれた。そして須田亮太(vo&g)が「ライブハウスにいる、ひとりぼっちのための音楽」と言い『プロムクイーン』をやり始めた時に、疑念は確信へと変わる。
この日、ナードマグネットは3rdミニアルバム 『この恋は呪い』(2014)をそのまま再現したセットリストで臨んでいたのだ。ライブのMCで須田亮太が「対談記事を読んでください。それを観れば今日のセットリストの意味が分かります」と観客に伝えた。その対談の中で彼はこんなことを語っていた。
「知り合ってしばらくして、秀章さんのバンドが休止して。その後、ソロで弾き語りをやっていた時に、僕らと対バンをしていたんです。その時に「ディストロを始めようと思う」という話を聞いて。ちょうど『この恋は呪い』というミニアルバムをリリースしたタイミングだったので、「始めたら、ぜひ置かせてほしい」と言ったことを覚えています」
HOLIDAY! RECORDSとナードマグネットそれぞれから見た私たちの10年より
加えて、その対談の中でナードマグネットと出会ったことで、さまざまなインディーズバンドがポジティブに目に入ってくるようになったとHOLIDAY! RECORDS・植野秀章は語っていた。そういう意味では『この恋は呪い』はHOLIDAY! RECORDSとナードマグネットのつながりを象徴する一枚であり、現在のCDショップとしての形を決定づけた作品でもあるのだ。
おびただしい程の愛をライブで表現したナードマグネット。しかし過去作の枠に捕らわれず、終盤では『Mixtape』『YOUR NEW FAVORITE BAND』を披露。観客のボルテージを上げてステージを後にした。
純粋に「音楽が好き」だから続けられた10年間
ステージ上でさまざまなアーティストが熱演を繰り広げた『HOLIDAY! vol.6』。しかし個人的に一番感動的だったのは、演奏後にお客さんたちと話しながらCDを売っていた植野秀章の姿であった。本当ならばステージの上に立って堂々と挨拶をしてもいいのに、いつもと変わらずフロアの片隅で観客に対してCDを販売し続けるその姿はひたむきそのものである。逆に言えば、このひたむきさがあったからこそ、10年続けられたのかもしれない。
そしてその根源には「音楽が好き」という純粋な思いが垣間見える。配信が中心となった現在の音楽業界において、CDショップという形態は苦境に立たされている。TENDOUJIのモリタナオヒコがMCで植野に対して「CDが売れなくて絶望している」と言っていたが、それは本当のことだと思う。
ただそれだけ苦境でもやり続けるのは、音楽が好きでCDショップを続けていきたいという固い信念のような物があるのだと感じる。そしてその結実した結果が、今日という一日だったのではないだろうか。10年目が終わりを告げて、また新たなる1年が始まろうとしている。HOLIDAY! RECORDSが今後どのような景色を作り上げていくのか、楽しみだ。
Text by マーガレット安井
Photo by 美海(みみ)/石倉風輝
(2024年11月24日更新)
2024.11.2 Sat at 味園ユニバース
[出演]サニーデイ・サービス/TENDOUJI/浪漫革命/ナードマグネット/Sundae May Club/Khaki
「サニーデイ・サービスワンマンライブ<12月の無限大>」
▼12月12日(木) 19:00
KYOTO MUSE
スタンディング-4500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可。小学生は保護者同伴にて入場無料。
[問]SMASH WEST■06-6535-5569
<夕暮れのロック>
12月7日(土)一般発売 Pコード:284-781
▼2025年2月9日(日) 17:00
味園 ユニバース
スタンディング-4500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可。小学生は保護者同伴にて入場無料。
※販売期間中はインターネットのみでの販売。1IDで1回のみ4枚まで購入可。
[問]SMASH WEST■06-6535-5569
35.7 presents 「ラブレター宅配日 2024-2025」
チケット発売中 Pコード:277-643
▼11月22日(金) 19:00
KYOTO MUSE
スタンディング-3800円(ドリンク代別途要)
[ゲスト]浪漫革命
※未就学児童は入場不可。開場・開演時間は変更になる場合がございます。公演中止・延期の場合を除き、お客様のご事情による払い戻しはできませんのでご了承ください。
※販売期間中はインターネット販売のみ。1人4枚まで。チケットの発券は11/15(金)10:00以降となります。
「NEW ISLAND FESTIVAL」
チケット発売中 Pコード:276-709
▼12月21日(土) 16:00
味園 ユニバース
前売-5500円 学割-5000円(高校生以下対象)
[ゲスト]有
※ドリンク代別途必要。未就学児童入場不可。小学生以上チケット必要。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888
「スリー!ツー!ワン!マン」
チケット発売中 Pコード:281-035
▼11月24日(日) 18:15
Yogibo META VALLEY
オールスタンディング-4300円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※小学生以上は有料。未就学児童は保護者同伴に限り入場無料。モッシュ・ダイブ等の危険行為は一切禁止。
[問]GREENS■06-6882-1224
「DECEMBER’S CHILDREN」
チケット発売中 Pコード:279-669
▼12月13日(金) 18:00
味園 ユニバース
一般-4000円(整理番号付、ドリンク代別途要)
ペア-3000円(1名3000円、2枚単位(合計6000円)で販売、整理番号付、ドリンク代別途要)
[出演]171/東京初期衝動/DNA GAINZ/Sundae May Club/Lala
※未就学児童は入場不可。小学生以上は有料。
※販売期間中は1人4枚まで。
[問]GREENS■06-6882-1224