ホーム > インタビュー&レポート > 「楽しいという言葉で言い表せないぐらい、うれしい、愛しい」 豊かな音楽と深い愛に満ちた、最高の祝祭! OAUの春の野外ワンマン『New Spring Harvest 2023』 4/9大阪・大阪城音楽堂ライブレポート
文句なしの晴天の下、少し日が落ち始めた大阪城音楽堂にふらりと現れたOAUの6人を温かい拍手が迎え入れる。ひとたび音を鳴らせば、それを合図にオーディエンスは一斉に立ち上がる。
「人生を生きている限り大いに楽しみたいと思っている人が、今は我慢して、長生きをしていつか...って何を言ってるんだよ。今日を楽しめないヤツが、長生きしても楽しめるわけないだろう。俺たちの今日一日という人生を、一緒に歌ってください」(TOSHI-LOW・vo&acog)
『こころの花』の歌い出しの一節を"大阪の城の横で"に変え、早速集った人々を沸かせながら、RONZI(ds)とKAKUEI、そしてMAKOTO(cb)の繰り出すどっしりとしたリズムに乗せ、朗々と歌声を響かせるTOSHI-LOW。「大阪、素敵な顔が見える。久しぶり。最初からいい感じだね、ありがたい」とはMARTIN。『Thank you』では自ずと発生したクラップが共に楽曲を形成。TOSHI-LOWの冒頭のMCが早くも具現化した、何とも幸福な光景が目の前に生まれる。たった2曲で、『New Spring Harvest』の真髄を見せられたこの多幸感。"本当に来てよかった!"と早々に確信した人も多かったことだろう。
「いいねぇ。気持ちがいいなぁ。天気もいいし。本当にみんな来てくれてありがとうね」とMARTINが言えば、「MARTINとKAKUさんもありがとうね。俺たち(=BRAHMAN)だけだと、いつも天気が悪いから(笑)」と返すTOSHI-LOWの掛け合いも楽しい。
「いろいろと変わってきましたね。中東か何かに好きな言葉があって、"良き人々は逆境の中でも楽しそうにしてる。悪き人々は栄えるときでもつまらなさそうにしてる"。本当にその通りだなと思って。だから、コロナの中で自分がどんな顔をしていればいいか、分かっていたつもりです。また必ず楽しい世の中になると願って、逆境の中で喜びを見つける。それが俺たちの生き方なんじゃないかなと思って、みんなで作った曲です」(TOSHI-LOW)
OAUがパンデミック初頭に描いた『世界は変わる』が、今改めてじんわりと胸に染みわたる。ハンドマイクでステージを動き回り、全身で音楽を届けるTOSHI-LOW。「みんな一緒に手拍子してほしい」とMARTINが導いた『Family Tree』は、ニューアルバム『Tradition』からの躍動感溢れる新曲。TOSHI-LOWはブズーキをプレイし、歌に寄り添う客席からの手拍子に「上手!」とうれしそうなMARTIN。そのまま、TOSHI-LOWとMARTINの二声が春の野音に溶け合う極上の『all the way』、生命力に満ちた『Pilgrimage ~聖地巡礼~』と、ただ耳を傾けるだけで力が湧き上がってくるゾーンに。
「久しぶりにフルアルバムを出します! いいものを作っちゃってね」(MARTIN)、「いつもだったら"MARTIN、自分たちでそんなことを言っちゃダメだよ"とか言うけど、今回はね」(TOSHI-LOW)と、新作『Tradition』への自信や充実感ものぞかせ、「今回の『OAU春のパン祭り』=『New Spring Harvest 2023』は(笑)、大阪しかないじゃん。皆さん大阪から?」とTOSHI-LOWが場内にアンケートを取ると、全国津々浦々から観客が訪れたことが判明。そのことに驚きつつも喜び、TOSHI-LOWはこう続ける。
「この曲を書いた頃は、いろんなものが終わりに向かっていくと思っていたんだけど、終わりを意識する=始まりを知ることだったのかなって。今はそんなふうに聴こえると思います。今日の風景は...そう、夢みたいだよ」
『夢の跡』の歌詞の一つ一つが、はかなくも優しく大阪城音楽堂に降り注ぐ。その後も、MARTINの美しいバイオリンの調べと歌声がいざなった『Memories』、「次も思い出がたくさんある曲」(MARTIN)とつなげた『Where have you gone』と、哀愁漂う2曲が壮大なビートもろとも迫りくる。
ここで、「花見はした? いいなぁ...何年もやってないね。花見もそうだけど美しい風景を見ると、自然ってすごいなと思うよね。家の窓から桜が見えるんだけど、風が吹くたびに子どもたちの肩に花びらが乗って...日常の一コマにも美しい風景がたくさんあるんだなと思って」(TOSHI-LOW)と、3月に配信リリースされた『セラヴィ -c'est la vie-』を披露。MC同様に、愛のあるまなざしが宿ったメロディ×野外というシチュエーションがたまらない。
「ちょっとサクサク進み過ぎてるのかな...予定ではこの辺でもっと日が暮れてるはずだったのにな(笑)。子どもの頃は夕日が嫌いで。悲しくならない? 小学校から家がすごく遠かったし、田舎だったから一緒に帰る人もいなくて、寂しいのさ。毎日同じ道だと飽きるから、回り道をして勝手に竹やぶに入っていったり、知ってる人の家に寄り道したり...子どものときにそういうことをすると怒られるじゃん? 最近知ったのが、大人になっても怒られる(笑)。でも、寄り道をしても、脇道にそれて回り道をしても、大丈夫。ちゃんと無事に帰ってきたら、誰かが"おかえり"って言ってくれる。それがみんなの幸せになる。そんな歌です」(TOSHI-LOW)
TOSHI-LOWの心配をよそに、夕暮れ前でもしっかり刺さる『帰り道』。会場には家族連れも多数おり、それぞれの思い出の情景と重なり合っていくかのよう。誰もが心地良い余韻に浸る中、無邪気に呼び掛ける子どもの声に「うれしいね。子どもの声は自然の一部だと思ってるから」とほほ笑むTOSHI-LOWが、こうも問う。
「不正や矛盾だらけの中で、複雑に生きてしまって、大事な何かを忘れてる。もうちょっと俺たちはシンプルに生きるべきなんじゃないかと思ってる。幾ら金もうけをしたって、やっと金が手に入った頃には老人になって使い道がないとか、やっとおいしいものが食べられるようになった頃には胃もたれがするとか(笑)。高い評価を得たって、少し経ったらみんな忘れちゃう。だから、自分の心の中に、他の誰にも邪魔されない大事なものを作ること。もしかしたらそれが人生を楽しむ意味なのかもしれない。大いに人生を楽しんでほしい。そのためには何が大事か、歌の中で問いかけたい。一緒に考えよう」
クライマックスは、MARTINとKOHKI(acog)の奏でるギターの豊潤な音色が始まりを告げた『A Better Life』を皮切りに、ライブには欠かせない鉄板の『Follow The Dream』、思わず体が動き出すインストナンバー『Peach Melba』で加速し、『Again』~『Making Time』と一気に畳み掛ける怒濤の流れで、飛んだり跳ねたり拍手喝采の大盛り上がりに! 「いい感じじゃん! むちゃいい声をしてる、もうちょっと聞きたい。じゃあLet's Go!」とMARTINがあおり、トドメは昨年の『New Acoustic Camp 2022』のテーマソング『Time's a River』。舞台上に設置された巨大なネオンサインも点滅し、臨場感たっぷりに最後まで駆け抜ける!
子どもから大人まで、老若男女問わずの熱い「OAU!」コールに応えて再び登場したメンバーは本当に気持ちよさそうな表情で、「さっきまで来年は北陸で『New Spring Harvest』をしようと思ってたけど、やっぱり大阪でやろう(笑)」(TOSHI-LOW)と笑い合う。
「日曜日が楽しいと、月曜日が来るのがイヤだね。でも、楽しい日があるから頑張れるわけで。俺たちに楽しい日曜日をありがとうございます。春にこうやって集まって定点観測するのはいいね。せっかくだからみんなでいい年の取り方をしましょう。けど、現代に生きてるバンドとして、言わなきゃいけないことがやっぱりあるんじゃないかって。自分たちのまいた種で環境問題が起こってるし、次へのバトンが渡せないんじゃないかと思う。ニュースを見てたらひどいことばっかりだ。挙句の果てには戦争が始まった。ただ、それを曲に落とし込むことはできる。戦争が終わった後に、果たして何が残るのか。小さい子にも分かるように歌います」(TOSHI-LOW)
最新アルバム『Tradition』収録の『月だけが』が、すっかり夜のとばりが降りた大阪城音楽堂に力強く、頼もしく広がっていく。『Midnight Sun』では、そこに集まったみんなが歌い踊る素晴らしい景色を前に、「今まで3年間、いろいろと変わった中で、ここに来て、みんなの声が聞こえて、笑顔が見えて..."あぁ何も変わってないんだ"って、幸せなんだ。それがOAUなんですよ。最後にもう一回、声を聞かせてよ。一緒に歌おうよ」と感極まるMARTIN。そんな『Change』に、心が動かされないわけがないだろう。大阪城音楽堂を包み込む声という声が、『New Spring Harvest』のエンディングを彩っていく。
「ありがとう。楽しいという言葉で言い表せないぐらい、うれしい、愛しい。ただ、会えればいいのよ。友達が死ぬとそう思うんだよな。"あのときこう言っていれば"...そんなことを言っても、何一つ変わらない。罪悪感を持ったって、それは自分の無力さから逃げているだけで。愛する人の死にどうやって向き合っていくのか。乗り越えることなんてできない。たくさん仲間と話して、悲しみにふたをしないで、深く深く何回でも悲しむ。そのうちに少しずつ、死を迎え入れることができるんだと思う。偉そうなことを言ってるけど、俺もまだその途中。だから歌ってるんだと思う。折り合いを付けるために、今を生き切るために」(TOSHI-LOW)
ラストは、2月に先行配信された『This Song -Planxty Irwin-』。人生から、時代から目をそらさず、歌い続ける。「またどこかで会えたら幸せです」(TOSHI-LOW)。ただ会えれば、ただそれだけで。来年の『New Spring Harvest』での再会を願い、OAUが忘れられない一日に幕を下ろした。
Text by 奥"ボウイ"昌史
Photo by 上坂和也
(2023年4月20日更新)
『New Spring Harvest 2023』
4月9日(土) at 大阪城音楽堂
01. こころの花
02. Thank you
03. 世界は変わる
04. Family Tree
05. all the way
06. Pilgrimage ~聖地巡礼~
07. 夢の跡
08. Memories
09. Where have you gone
10. セラヴィ -c'est la vie-
11. 帰り道
12. A Better Life
13. Follow The Dream
14. Peach Melba
15. Again
16. Making Time
17. Time's a River
ENCORE
18. 月だけが
19. Midnight Sun
20. Change
21. This Song -Planxty Irwin-
Album
『Tradition』
【初回生産限定盤DVD付】
発売中 4000円(税別)
トイズファクトリー
TFCC-81013~4
<収録曲>
01. Old Road
02. セラヴィ -c'est la vie-
03. 夢の続きを
04. Time's a River
05. 世界は変わる
06. Homeward Bound
07. Blackthorn's Jig
08. 月だけが
09. Whispers
10. Family Tree
11. Linden
12. This Song -Planxty Irwin-
13. Without You
14. 懐かしい未来
<DVD収録内容>
・『New Acoustic New Year 2023』
Billboard LIVE TOKYO(2023/1/21)
01. Apple Pie Rag
02. Thank you
03. Hold Your Head Up High
04. Follow The Dream
05. 夢の跡
06. 世界は変わる
07. Peach Melba
08. Again
09. Time's a River
10. Making Time
11. This Song -Planxty Irwin-
12. Change
13. 帰り道
・『New Acoustic Camp 2022』
(2022/9/17)
01. Old Road
02. こころの花
03. Peach Melba
04. Making Time
05. Midnight Sun
【初回仕様限定通常盤
発売中 3000円(税別)
トイズファクトリー
TFCC-81015
【完全限定盤LP2枚組】
発売中 5000円(税別)
トイズファクトリー
TFJC-38116~7
※33 1月3rpm
OAU オフィシャルサイト
https://oau-tc.com/
『Tour 2023 Tradition』
【北海道公演】
▼6月3日(土)札幌サンプラザ
コンサートホール
一般発売5月13日(土)
※販売期間中は、インターネット
(PC・スマートフォン)のみで販売。
チケットは、5/31(水)10:00以降に
引換えが可能となります。
Pコード239-479
▼6月7日(水)19:00
サンケイホールブリーゼ
全席指定6500円
GREENS■06(6882)1224
(https://www.greens-corp.co.jp/)
※小学生以上は有料。
未就学児童で席が必要な場合は有料。
ご来場いただく皆様へお願い
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