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「平凡な俺たちがどうやって特別なものを作るのか」
『四畳半タイムマシンブルース』を彩る文学的パワーポップにして
結成25周年を経たアジカンの真髄『出町柳パラレルユニバース』!
ASIAN KUNG-FU GENERATION後藤正文(vo&g)インタビュー

 静寂の中で漂う歪んだギターから、それに寄り添う声のトーンから、ASIAN KUNG-FU GENERATIONでしかない文学的パワーポップを奏で疾走するタイトル曲『出町柳パラレルユニバース』は、大阪・梅田ブルク7他で公開中/ディズニープラスで独占配信中の、森見登美彦原作のアニメ『四畳半タイムマシンブルース』の主題歌に。かつて『四畳半神話大系』(’10)では『迷子犬と雨のビート』を、『夜は短し歩けよ乙女』(’17)では『荒野を歩け』と、物語との抜群の親和性で見る者を魅了してきた座組が三たび集結した同曲に加え、敬愛するWeezerの楽曲をTempalayのAAAMYYY(cho&syn)とカバーした『I Just Threw Out The Love Of My Dreams』('96)、喜多建介(g&vo)と後藤正文(vo&g)の共作『追浜フィーリンダウン』、そして、『出町柳パラレルユニバース』と対を成す構成ながらアレンジと言葉の妙で別世界を見せる『柳小路パラレルユニバース』の計4曲を収録したアジカンのニューシングルは、結成25周年を経た今もなお、4人で音楽を鳴らす喜びが伝わるみずみずしい一枚となっている。現在は『ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2022「プラネットフォークス」』中のGotchこと後藤正文が、新作にまつわる青春の思い出やツアーの途中経過、タイアップとの向き合い方から音楽における記名性に至るまで、リラックスした面持ちで語ったインタビュー。何者でもなかったあの頃始まった、“平凡な俺たち”の逆転劇はまだ、続いていく――。



若い頃に知り合ったヤツらといまだに友達で
いまだに音楽で通じ合ってるなんてそうそうない


――昨年、結成25周年を迎えましたが、前回のアニバーサリーからは時代の重心が大きく変わった5年間でしたね。

「CDとかレコードじゃそこまで稼げない時代になっても、まだ5年前なら"まぁでもライブがあるから"と現場に可能性を見出していたけど、それもコロナでくじかれて、もう一回立て直さなきゃという今ですよね。とは言え、基本的にメンタルはインディーみたいな感じでずっとやってきてるんで、バンドが売れたときに一番ストレスを感じたりしたんですけど(笑)。自分のやりたいことと活動のペースが、この年齢になってうまく回ってきた感じはしますね」

――以前はソロとアジカンを明確に線引きしていたのが、今はシームレスに共有できる部分が増えてきた印象です。

「『プラネットフォークス』('22)もそうでしたけど、ソロ人脈をバンドにも引っ張り込んじゃったりして。ここをあんまり激しくセパレートしても、みんなが幸せじゃない気がしてきたんですよね。アジカンが一番大きい仕事=惑星とするならば、衛星のようにいろんな場所でそれぞれが別の動きをする、みたいな。アジカンは結構気張ってやってますけど、バンド自体をコミュニティみたいな捉え方にしたので、それ以外は何をやってもいいのかなって」

――クリエイティブ的にはとても健やかな状態ですね。

「ただ、アジカン以外は一切お金になってないですけどね(笑)。半分人助けみたいな感じもあるし、みんなが音楽的達成をする瞬間に立ち会えるのは幸せなことだから、それ自体が自分のアジカンでの活動をヘルシーにしてくれるところもあるし、ありがたいなと思っていろんなバンドの仕事を引き受けてますね」

――そんな中、夏には大阪でBase Ball Bearとの対バンもあって。当日のSNSも沸いてましたけど、同じようにキャリアを重ねてきたバンドと、ああいう日を迎えられたのはいいですよね。

「ギターロックで25年とか生き残るのは大変ですから!(笑) Base Ball Bearの方が全然若いけど、ほぼ同時代に世に出たバンドがこうやってサヴァイブしてるのは、ちょっとメモリアルというか、記念碑的なライブだなと思いながら演奏してました。Base Ball Bearのこいちゃん(=小出祐介・vo&g)もうれしそうに演奏していてよかったなと」

――この歳になって純粋に楽しく演奏できる一本一本のライブが、とても幸福ですね。

「いやもう、コロナを経てバンドをやれてるだけでラッキーだし、売れる売れないは運の領域も絶対にあるから、今でも喜び合って演奏できるのが一番いいよねという気持ちにはなりますよね」

――しかも2組とも、再結成ビジネスみたいなこともなく現役で。

「再結成ビジネスしてみたいですけどね(笑)」

(一同爆笑)

「まぁでも、やることがなくなればさすがにしょうがないけど、こんなに長く仲間とやれてるのが、そもそも奇跡みたいなものだから。それを手放すにはよっぽどの仲たがいでもない限り(笑)、やめる意味の方がないと思ってます」

――仕事だって趣味だって、25年も続くことってなかなかないですもんね。

「若い頃に知り合ったヤツらといまだに友達で、いまだに音楽で通じ合ってるなんてそうそうないから、これをどうやって大事にできるのか。やめようと思ったら2秒で終わるけど、続けることってめちゃめちゃタフだから」


同じ曲で世界が2つあったら面白いんじゃないかと


――3月にリリースされた最新アルバムのリリースツアー『ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2022「プラネットフォークス」』の前半戦(5~7月)を振り返ってどうでしたか?

「めちゃくちゃ楽しかったですね。サポートのAchico(Ropes)とGeorge(Mop of Head)もフィットしてくれてるし...何十年も一緒だとさすがに4人の会話は減ってくるけど、2人がハブになってトークも弾んでいろんな音楽の話もするし、それによって演奏も良くなってくる。いいことばっかりだなと」

――ツアーの前半戦で印象的な公演はありました?

「群馬の高崎芸術劇場 大劇場は、こういうご時世なんでちょっと緊張しながら行きましたけど、お客さんがすごく温かくて。BOØWYを生んだ音楽の街というのもあるのかもしれないですけど、メンバーと"さすが大きなビートの木の下という感じがするな"、みたいに冗談を言いながら(笑)。ツアーが進んで俺たちの演奏が良くなっていたのもあるし、お客さんもウィズ・コロナな考え方の中で少しずつこわばりが解けてきてるというか。まだライブに参加するか迷う人はたくさんいらっしゃると思いますけど、徐々に雰囲気は良くなってきてるかなと」

――17年ぶりの東京・日比谷野外大音楽堂公演では、『四畳半タイムマシンブルース』の主題歌として書き下ろされた、『出町柳パラレルユニバース』(M-1)が初披露されて。




「ツアー前に曲は出来上がっていたんですけど、『出町柳パラレルユニバース』をやると(=情報解禁前に)映画の話をせざるを得なくなるから、序盤戦はずっと『柳小路パラレルユニバース』(M-4)をやっていて」

――この対となる構成の2曲の関係性は、どっちが先とかはあるんですか?

「『柳小路パラレルユニバース』を先に作ってました。森見登美彦さん×上田誠(ヨーロッパ企画)さん×中村佑介×俺たちという組み合わせはもう3回目で、前回(=『夜は短し歩けよ乙女』主題歌『荒野を歩け』)の流れからもパワーポップでいった方がコンセプト的にも絶対にいいはずだと。そうやってできた曲の中で『柳小路パラレルユニバース』が一番よかったんで、これを映画にハメたい。ただ、この曲はめちゃくちゃ鎌倉の話だぞと(笑)。でも、映画の内容自体が"世界がパラレルに進行するとどうなっちゃうのか?"みたいな話だから、そこに引っ掛けて同じ曲で世界が2つあったら面白いんじゃないかと。映画のそばに、京都の青春の曲である『出町柳パラレルユニバース』と、実はこういう曲=『柳小路パラレルユニバース』もある。"これでダメなら諦めるか"ぐらいのプレゼンの文章を書いて音源と共にお渡しして、何とか通りました(笑)」

――歌詞の最初の4行からもう青春で、いかんともし難い日々の中にある一筋の光のような描写は秀逸だなと思いました。その上で、一文字とかワンフレーズ変わるだけで、ガラッと景色が変わるのも見事です。

「ありがとうございます。あとは若干、アウトロとかエフェクトが違ったり、俺たちの思う京都を付け加えたのが『出町柳パラレルユニバース』ですね」

――映画のエンドロール的にも、『柳小路パラレルユニバース』よりもうちょっと尺=余韻があった方がいいと。

「『柳小路パラレルユニバース』みたいに2分半で終わったら、その後のエンドロールが無音になるぞと(笑)。そこで、京都はサイケデリック感があるバンドも多いから、そういうセッションをアウトロに足すのは『プラネットフォークス』のモードともつながるしいいかもね、という話をしました」

――関西の人間からしたら反応せざるを得ないですけど、"出町柳"がタイトルに入る曲なんて前代未聞です(笑)。

「やっぱり森見さんの世界と言えば、京都大学=出町柳だよねと。最初は生まれ的にも学力的にも用がない土地ではあったんですけど(笑)、京都大学の藤原辰史さんと一緒に本を作る機会をもらって研究室に何回も遊びに行ったり、Turntable Filmsを手伝ってる岩城(一彦)さんの岩城弦楽器工房があるからギターをはるばる持って行ったりして、妙に縁ができたというか。それで満を持しての映画だったんで、こうやってつながることがあるから面白いもんだなと。京都大学の辺りをプラプラしていてよかったです(笑)」


さも普通代表みたいな見た目で世に出てきたけど
ちゃんとヘンだったのが証明されたなと(笑)


――アジカンとしてはこの25年でタイアップもいろいろとやってきてますけど、今改めてどういう距離感で試みているのかは気になるところですね。

「ひとまず『出町柳パラレルユニバース』に関しては、"アジカンさん、『リライト』('04)みたいな曲を書いてください"という依頼じゃなかったので(笑)、いろんな提案ができるというか。いわゆる『リライト』みたいな曲を求められたときは求められたときで、それをどうやって"焼き直さないか"というのが」

――どうやって焼き直すかじゃなく、どうやって焼き直さないか。

「そうなんですよ。焼き直さないで『リライト』を求めていた人たちを納得させる。それが一番シビれる仕事というか、職人芸を求められますよね」

――それはある種の必殺技があるが故の悩みですね。

「代表曲があるのは幸せなことなんですけど、とは言え、俺たちも成長したり老いたり進んではいるので、その辺りの難しさはあります。ただ、嫌なら断ればいいだけで、やりがいを感じるから受けるわけで。そういうトライアルがあるからバンドが長生きできるのかもしれないなと思いながら」

――長年活動してきて、"自分たちのいいところはここだな"と思うところはあります?

「割と強めに自分たちの"記名性"があることですね。やってる身としては"また俺たちっぽい曲だな"と思っちゃうんだけど、ハッキリ言ってそれがないとやっていけないし、それを獲得できてよかったなと。例えばイントロの段階で、"アジカンのギターの音だ"と感じてもらえると思うんですよね。いろんな配信プラットフォームで新曲のプレイリストを聴いても、確かにカッコいいし今どきの音だけど、"この人の別の曲を聴いても、言い当てられないかも..."と思う人が増えてるんですよ。それって世間が求めるシーンにたまたま楽曲がハマったからピックアップされてるだけで、その流行に使われちゃってる感じがミュージシャン側にもあるというか。そういう人たちがずっと突き抜けていられるかと言うとそうじゃなくて、今も昔も周りを見渡すと、やっぱり何かちょっとヘンな人しか結局は残ってないんですよ(笑)。例えば、最初にBRAHMANが出てきたときは変わったバンドだなと思ったけど、誰とも何にも似てない。そういう意味ではアジカンも、さも普通代表みたいな見た目で世に出てきたけど、ちゃんとヘンだったのが証明されたなと(笑)。今こうやって聴いてみると、しっかり癖がありますよね」

――どの仕事でもそうですけど今の時代、記名性というのはキーワードですね。それがないと残れなくなってきてる。代わりが利いちゃうという。

「例えばミスチルとかサザンにしても、めちゃくちゃ国民的なバンドだから自然となじんでるけど、歌い方とかサウンドメイクは本当にユニークだから。ミスチルの桜井(和寿・vo&g)さんの声なんて、一発で分かりますもんね」

――そういう意味でも、今作は完全にアジカンの記名性=パワーポップおじさんの面目躍如じゃないですか?(笑)

「俺、パワーポップだったら一生やれるなと思いますもん。本当に好きだし、本当に得意なんだなって。自分で自分のことを褒めますけど、フザけ方もちょうどいいなと思いました(笑)。『出町柳パラレルユニバース』みたいな曲だったら一生楽しく、面白いものが作れる気がします」

――その精度と説得力がハンパないし、歌詞の"オールライト"も、これぞGotchというフレーズで。

「そこはNUMBER GIRL、ZAZEN BOYSの向井(秀徳・vo&g)さんを見習って、"社会のマドは開きっぱなし"とか"冷凍都市"とか、"同じことを何度も言おう!"と思って(笑)。あれってすごく印象的だし、そういう言語を使い回すことを意識的に避けなくていいかなと思うようになってきました。受け入れ始めましたね、自分を(笑)」


ようやくタイミングが合ったというか、心の底からAAAMYYYが必要だった


――カップリングにWeezerのカバー『I Just Threw Out The Love Of My Dreams』(M-2)を選んだのは?

「今、5thアルバム『サーフ ブンガク カマクラ』('08)の完全盤を作ってるんですけど、当時、あのアルバムでは江ノ島電鉄の15駅中10駅を曲にしたんで、"残り5駅あるよね"みたいな話になって。俺たちの中では『サーフ ブンガク カマクラ』がWeezerの1stのブルー・アルバム=『Weezer』('94)で、残りの5曲が2ndの『Pinkerton』('96)なイメージなんです。そういう流れ的にも、『Pinkerton』期ドンピシャのシングル『The Good Life』('96)に入っていた曲をカバーをすることで、俺たちの『Pinkerton』トリビュートなムードを盛り上げよう、パワーポップの名曲を表敬訪問しよう、みたいな気持ちだったというか」

――原曲ではThat DogのRachel Haden(b&vo)がゲストボーカルとして参加していますが今作では?

「この曲をやることになってすぐ、TempalayのAAAMYYYが浮かんで。ずっと好きで誘いたかったんですけど、もうここまでみんなに見つかっちゃってるから、ちょっと機を逸してたのもあったんですよね。でも、AAAMYYYは英語が流暢だったのを思い出して、moog(=アナログシンセ)も弾けるし、楽曲的にもバッチリ合うんじゃないかって。だからもう彼女しかいないと思って連絡しました」

――満を持して実現したカバーであり共演ですね。むしろこういう誘い方の方が結果、粋かもしれない。カップリングで、しかもカバーという遊び心的にも。

「AAAMYYYの名前を使って若い人たちにアプローチしようという発想じゃないですからね(笑)。ようやくタイミングが合ったというか、心の底からAAAMYYYが必要だった。レコーディングも楽しかったですよ。"ここ、結構いい加減に弾いてるよねWeezer"とか言い合いながら(笑)」

――今のアジカンのムードの良さがどの曲からも感じられますね。

「スタッフも結構遊んでくれていて、"ネタバレになっちゃうし、『柳小路パラレルユニバース』はさすがに入れない方がいいんじゃないの?"みたいに言っても、"いや、これは入れましょう!"ってレーベルの方が盛り上がって」

――でも、このネタバレによってソングライティングの妙をめちゃくちゃ感じましたよ。しかも、『柳小路パラレルユニバース』にもWeezerオマージュが入って。

「『Buddy Holly』('94)の歌詞を引用したり、『Surf Wax America』('94)のフレーズが入っていたり、そういういたずらをいっぱいやっていて(笑)。そのつながりも楽しめたら、プレイリスト文化の先に広がっていきますよね」


俺たちの青春の風景を切り取るのもいいかもなって


――もう一曲のカップリング『追浜フィーリンダウン』の追浜="おっぱま"と読むんですね。これは江ノ電の駅でもなく、かと言って京都でもなく。

「京浜急行の俺たちの大学の最寄りの駅で、横浜ベイスターズの2軍の球場とかもあって。俺たち、京急のヘヴィユーザーだったんですよ。京急を例えるなら、関東の阪神電車だと思ってもらえたら間違いないです(笑)。東京~横浜間の話をすると、東急東横線が関西で言う阪急電鉄的なハイソな感じで、京急は横浜から川崎、蒲田という、ギャンブルとか飲み屋の多いところを経て品川まで行くディープな路線なんですよ。あの工業地帯を突き抜ける、阪神に近いフィーリングがあると俺は思いますけどね(笑)」

――この曲は『出町柳パラレルユニバース』と『柳小路パラレルユニバース』がシングルに入る前提で書いたんですか? それとはまた別のところから?

「喜多くんが歌う曲があった方がいいなと思っていたのと、俺たちは江ノ電が青春みたいな感じで『サーフ ブンガク カマクラ』を作ったけど、江ノ電ってちょっと気張って行くデートのときぐらいしか乗らなくて(笑)、普段使いは京急なんで、まぁスピンアウトみたいな感じというか。詞のテーマ的には今のことも書きつつ、俺たちの青春の風景を切り取るのもいいかもなって。あと、バンドの中では"京急の駅メロにならないかな?"という気持ちをずっと持ってるんで。なのに、実際はくるりが重用されてたりしてますけど(笑)」

――アハハ!(笑) そうなんですね。

「岸田(繁・vo&g)くんが京急が大好きだし、『屏風浦』('00)という曲もありますよね。他にもEXILEのHIROさんが横浜の学校出身だったり、上大岡の駅メロにゆずが使われてたり、小田和正さんもいて...何かね、アジカンだけ漏れ続けて、どの駅にも採用されてないんですよ。だから、"俺たちの曲を駅メロに使ってもいいんだぜ"という気持ちで、ちょっとアピールしていこうかなと冗談でよく言ってますけどね(笑)」

――まさかそんな裏テーマがあったとは(笑)。

「しかも、京急のホームセンターが一店舗だけあって、京急ハウツ(※'19年に営業終了後、移転し生活雑貨館ハウツとして営業中)って言うんですけど、そこで俺、大学時代に自転車修理のバイトまでしてましたから(笑)。なので、京急LOVEもありつつの追浜な感じですね。関西でも全然読めない駅名とかはあると思うんですけど」

――放出(はなてん)とか喜連瓜破(きれうりわり)系のヤツですね(笑)。


毎晩が特別な夜だと思って演奏してますから


――25年間やってきた上で、ここにきてフレッシュさもある作品になりましたね。

「だいたいアレンジとかサウンド・プロダクションを考えて考えて、気合いを入れてアルバムを作った後は、シンプルにただのロックキッズに戻りたくなる期間が来ますよね。"歪んだギターでガ〜ンでよくない?"って(笑)。それも決して懐古趣味でパワーポップをやろうとしてるわけではないし、新しいフィーリングは目指してるけど、手法自体は新しくないからそれなりに縛りとか難しさもある。あとは、誰でも参加しやすい音楽なのがいいところかな。ある種の不良性も専門性もない。でも、ギターを持って仲間と合わせたら最高で、このメロディとギターストロークとビート、もうそれだけでいいよね、みたいな。もっと音楽ってシンプルなものだよね、みたいな気持ちもあるし。でも、本当は誰にでもできることではない気がするんですけどね」

――アジカン以降、"ぽい"バンドもたくさんいましたけど、今では一掃された気がしますね。

「特に日本語詞でこういう感じは、なかなかいないかもしれないですね。でも、音楽は楽しいから、みんな気楽に始めて、スリーコードにいい感じのメロディを乗せて、自分らしい言葉で歌ってみる。そうやって楽しむ人が増えたらうれしいなと思いますけどね。何も持ってなくても、ほんのちょっとギターが弾けたら仲間を見つけるだけでできる、特別じゃないヤツらの反逆。そういう要素がロックバンドにはあるし。だって、音楽をやりたいなと思った時点で、ほとんどのヤツは音大とか芸大に行く可能性が断たれてることが多いし、何も逆転の要素がないところから、とりあえずギターを買う。それが美しい気もしますけどね」

――例えばクラシックの人たちは、そういうヤツらが気付くもっと前に、幼少期から音楽に向かってますもんね。

「そう、早いんですよ。その頃にはちゃんと能力が開花してる。そういう意味でも、本当に平凡な俺たちがどうやって特別なものを作るのかが、ロックバンドのロマンなので」

――アジカンが続いている=そのロマンを実現し続けているということですね。

「音楽を続けていると、本当にスペシャルなヤツがこの世にはいるんだなと思い知らされる。そこにどうにか4人で力を合わせてあらがって...もしかしたらロックスターみたいな人も、実は大して俺たちと変わりがなくて、状況とか環境の組み合わせで輝かしいものに見えてるだけかもしれない。平凡だと人に言われようが、楽しく愉快に生きていくしかないんだから、そういう人たちの近くに音楽があってほしいなと思うし、楽器を持って仲間たちと何かを始めたら、特別なものができる可能性があるんだよとは言いたい」

――『ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2022「プラネットフォークス」』の後半戦(9~11月)もついに始まりましたが、前半以上にいい旅になりそうですね。

「みんなのことを肯定したいですよね。そこにいていいんだよ、それはめちゃくちゃ意味のあることなんだよって。それは俺たちにとってもそうで、あなたがいなかったらコンサートなんてできないんだから。それは参加してくれた一人一人に言えることだし、本当に感謝してる。気持ち的にもタイミング的にも参加できない人たちとも、またどこかで会えると思ってるんで。お互いにこの時代を生きてることを喜び合えたらいいよね。コロナを経て一回一回が、毎晩が特別な夜だと思って演奏してますから」

Text by 奥"ボウイ"昌史



(2022年10月17日更新)


Check

Release

森見登美彦原作のアニメ主題歌に加え
Weezerのカバーなど全4曲収録!

Single
『出町柳パラレルユニバース』
【初回生産限定盤Blu-ray付】
発売中 2420円
キューンミュージック
KSCL-3382~3

【通常盤】
発売中 1650円
KSCL-3384

<収録曲>
01. 出町柳パラレルユニバース
02. I Just Threw Out
  The Love Of My Dreams
03. 追浜フィーリンダウン
04. 柳小路パラレルユニバース

<Blu-ray収録内容>
『ASIAN KUNG-FU GENERATION
 25th Anniversary Tour 2021
 “Quarter-Century”』
at Zepp Tokyo 2021.11.22
01. 十二進法の夕景
02. 新世紀のラブソング
03. 荒野を歩け
04. スタンダード
05. 迷子犬と雨のビート
06. 今を生きて
07. エンパシー

Profile

アジアン・カンフー・ジェネレーション…写真左より、山田貴洋(b&vo)、伊地知潔(ds)、後藤正文(vo&g)、喜多建介(g&vo)による4人組ロックバンド。’96年結成。’03年メジャーデビュー。同年より新宿LOFTにて主催イベント『NANO-MUGEN FES.』を立ち上げ、翌 ’04年からは海外アーティストも加わり、会場も日本武道館、横浜アリーナと規模を拡大。 ’16年には結成20周年イヤーを迎え、自身最大のヒットとなった2ndアルバム『ソルファ』(’04)の再レコーディング盤をリリースするなど話題を集めた。’21年に結成25周年を迎え、今年3月には記念すべき10枚目のアルバム『プラネットフォークス』をリリース、5~11月まで全国ツアーを開催中。9月28日にはアニメ『四畳半タイムマシンブルース』主題歌となる通算29枚目のシングル『出町柳パラレルユニバース』をリリース。後藤が描くリアルな焦燥感、絶望さえ推進力に昇華する圧倒的なエモーション、勢いだけにとどまらない“日本語で鳴らすロック”でシーンを牽引し続け、世代を超えた絶大な支持を得ている。

ASIAN KUNG-FU GENERATION
オフィシャルサイト

https://www.asiankung-fu.com

Live

アルバムツアー後半戦がスタート
大阪2DAYS公演が間もなく開催!

 
『ASIAN KUNG-FU GENERATION
 Tour 2022 “プラネットフォークス”』

【埼玉公演】
▼5月28日(土)・29日(日)
三郷市文化会館 大ホール
【東京公演】
▼6月1日(水)東京国際フォーラム ホールA
【広島公演】
▼6月4日(土)広島上野学園ホール
【熊本公演】
▼6月5日(日)市民会館シアーズホーム
夢ホール(熊本市民会館)
【石川公演】
▼6月10日(金)北陸電力会館 本多の森ホール
【静岡公演】
▼6月12日(日)富士市文化会館
ロゼシアター 大ホール
【愛知公演】
▼6月17日(金)愛知県芸術劇場 大ホール
【神奈川公演】
▼6月21日(火)神奈川県民ホール 大ホール
【香川公演】
▼6月26日(日)レクザムホール 大ホール
【兵庫公演】
▼7月1日(金)神戸国際会館こくさいホール
【奈良公演】
▼7月2日(土)なら100年会館 大ホール
【群馬公演】
▼7月9日(土)高崎芸術劇場 大劇場
【千葉公演】
▼7月15日(金)市川市文化会館 大ホール
【福島公演】(※開催見合わせ)
▼7月18日(月・祝)
とうほう・みんなの文化センター 大ホール
【東京公演】
▼7月23日(土)日比谷公園大音楽堂

【宮城公演】
▼9月30日(金)仙台サンプラザホール
【岩手公演】
▼10月2日(日)盛岡市民文化ホール 大ホール
【栃木公演】
▼10月8日(土)宇都宮市文化会館 大ホール
【北海道公演】
▼10月15日(土)カナモトホール

 

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中
※販売期間中はインターネット販売のみ。
※公演当日、開場時間より当日券窓口にて座席指定券と引換えいたします。お渡しするチケットは先着順ではございません。お席が離れる場合がございます。予めご了承ください。
▼10月19日(水)・20日(木)18:30
大阪国際会議場 メインホール
全席指定(当日引換券)7300円
キョードーインフォメーション■0570(200)888
※3歳以上は有料。公演当日、小学生の方は証明書、中学生・高校生の方は学生証提示で1500円返金。児童の耳を大音量から守るため、お子様連れのお客様はイヤーマフ等のご持参をお願いします。本公演は映像収録が入る可能性がございます。

チケット情報はこちら


【福岡公演】
▼10月23日(日)福岡サンパレス
ホテル&ホール
【神奈川公演】
▼10月27日(木)横浜アリーナ
【沖縄公演】
▼11月19日(土)那覇文化芸術劇場
なはーと 大劇場
 

Column1

「ちょっとエモい気持ちには
 なりますね、さすがに」
2415日をかけた8ottoの新たな
夜明け――マエノソノ(vo&ds)×
TORA(b)×プロデューサーGotch
がここだけの『Dawn On』秘話を
語り尽くすインタビュー!('17)

Column2

「一生忘れられないアルバムで
 ツアーになっていくと思う」
Gotchが最高の仲間と旅に出る
時代の空気も、マジカルな瞬間も
音楽の美しさも今に鳴らした
『Good New Times』を語る
インタビュー&動画コメント('16)

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ライター奥“ボウイ”昌史さんの
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「ぴあ関西版WEBでは、8ottoのプロデューサーとしてインタビューした’18年以来4年ぶりと時の流れにビックリしながらも、久々に会ったGotchさんとの会話は相変わらず、楽しいし刺激的だし優しいし可能性を見出せる。音楽と一緒だな。下鴨神社の近くに大学時代の友達が住んでおり、ちょくちょく泊まりに行っては他愛もない話をした出町柳が、まさかアジカンの曲名に入るとは…(笑)。そんな個人的な青春時代の思い出もあって、感慨深さもひとしおだった『出町柳パラレルユニバース』。何者でもなかった20代、他人とも自分とも同じことはまだまだしたくない30代を経て、どんどんシンプルに、気持ち良く生きるしかない40代。だからこその説得力と美しさ、遊び心があるアジカンの新作だった気がします。自分のフィーリングにもバッチリ合ったそんな今作が、アジカンの今が、ライブではどうなってるのかも楽しみ!」