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「僕らはこういう瞬間のためにTHE NOVEMBERSを始めて、
 こういう時間に勇気をもらってる」
生きる喜びと音楽を取り戻す3年ぶりの全国ツアー『歓喜天』
6/9梅田クラブクアトロ公演ライブレポート!

 “13日の金曜日、安定の雨天。約三年越しの全国ツアー。自分達のことながら、THE NOVEMBERSはいま一番いいです。お楽しみに†”。こんなにもらしくて頼もしい開幕宣言を掲げ、約3年ぶりの全国ツアー『THE NOVEMBERS Tour2022 -歓喜天-』をスタートさせたTHE NOVEMBERS。5月13日の神奈川・CLUB CITTA'を皮切りに、愛知、宮城、北海道、大阪、福岡、そして、7月11日(月)東京・Zepp Haneda(TOKYO)の7都市を巡る旅路は、象頭の男女が抱き合った姿の幸福の守護神“歓喜天(かんぎてん)”と称されたタイトルさながら、各地で再会の約束を果たし抱きしめ合うような、愛と音楽にまみれた最高の一夜を更新し続けている。そんなツアーの分岐点となった6月9日、大阪・梅田クラブクアトロ公演をレポート!

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 『Singin' in the Rain(雨に唄えば)』のSEを背にステージへと現れ、ケンゴマツモト(g)の奏でるメロウなギターを傍らに、小林祐介(vo&g)がたっぷりとしたタイム感で空に放っていく歌声がどこまでも伸びていく…。そして、そこに合流する轟音が瞬時にTHE NOVEMBERSの世界を作り出す。無論、彼らの音楽=聴覚だけでもトリップはできるが、こうやって目の前で鳴らされる音の波動で、光のゆらめきで、確かに目の前にいるという存在で、何十倍にも何百倍にも切実にそれを感じる。これがライブで、これがTHE NOVEMBERSであるという体験を、1曲目からまざまざと突き付ける荘厳なオープニングだ。

 

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 「ありがとう」と小林が一言告げた後も、高松浩史(b)のトリッキーでドライヴィンなベースラインがいざない、ライブというリアルと音楽というファンタジーを存分に味わわせる。まばゆい赤に包まれた4人は、バンドの揺るがぬ美学とポップセンスを序盤から提示していく。
 

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 小林がアコースティックギターに持ち替え、夕景のようなオレンジの照明と共にメランコリーとノスタルジーを届け、それを浴びるように受け止めるオーディエンスは、ゆっくりと心臓に沁み込んでいくミドルチューンの数々に体を預ける心地良さに浸る。バンドの長きにわたるキャリアの新旧の楽曲を織り交ぜたセットリストながら、そこに刻まれた時代や心情に1ミリたりとも誤差を感じないのは、彼らが早くからその音楽家としてのアティチュードを確立させ、それを丁寧に研磨してきたからに違いない。
 

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 ここでも小林が「ありがとう」と添え、再び生命力あふれるナンバーで会場の熱が動き出す。あおることなく、音楽でたかぶらせる。高揚感は拳ではなく、沸き立つ拍手からにじみ出る。神秘的かつ孤高のイメージが先行しがちな彼らだが、メロディと歌の強さは全編にわたり発揮され、アートとポップのバランス感覚が絶妙。音と光の総合芸術たるライブ空間で、壮絶なビートをジャストに鳴らす吉木諒祐(ds)のパフォーマンスもすさまじい限りだ。
 

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 後半戦は、ケンゴマツモトの衝動をぶちかますボウイング奏法や、高松と吉木が生み出す強烈なヘヴィネスという、不穏で狂暴な爆音に梅田クラブクアトロが狂乱の宴に! 小林もハンドマイクを手に感情を爆発させ絶叫、身も心もカオスに引きずり込まれていくような圧巻の景色を作り出す。怖くなるほど天井知らずのボルテージは高まる一方で、THE NOVEMBERSの“唯一無二”を何度も思い知るような瞬間の連続。激しさと狂気を増せども美しさと気品を失わないサウンドでフロアを制圧したかと思えば、ピタリと静寂へと風景を変える緩急自在のグルーヴに見る者が肩を揺らす中、いよいよライブはエンディングへ。
 

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「3年ぶりの全国ツアーということで、改めていろんなところにライブをしに行って、人に会いたかったんだなとか、自分たちの人生の一部みたいな曲を誰かが楽しんで聴いてくれて、同じ場所で同じ空気の振動を感じて…ずっと奇跡が起きてたんだなと、しみじみ感じる毎日を過ごしてます。今、自分たちが手渡したい気持ちだったり言葉だったりを今日は演奏していったんですけど、この3年間は何だか不思議な時間を過ごしていて…この3年で僕が書けた新曲は、これからやる1曲だけなんですよ。それまでは日常的に曲を書いてたんですけど、習慣で曲を作るのはちょっとイヤだなと思って、本当に作りたいと思うまで作るのをやめようと思ったら、全然作れなくなっちゃったんです。でも、このツアーが決まってからは、作りたい、作らなきゃみたいな気持ち…このままだと昔のバンドになっちゃうと思って(笑)。単純にね、会いに来てくれて、聴きに来てくれて、すごくうれしいんですよ。僕らはこういう瞬間のためにTHE NOVEMBERSを始めて、こういう時間に勇気をもらってる。なので、最後に出来たての曲を…何なら作りかけで、ライブをやるたびにうれしくてどんどん手を加えちゃうから、永遠に完成しないかもしれないけど、記念だと思って受け取ってください。今日はここに来てくれて、一緒に時間を過ごしてくれて、本当にありがとうございました。またいい未来で会いましょう、それまで元気で。THE NOVEMBERSでした」
 

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 楽曲で、それを届けた流れで、十分に4人の思いが伝わった一夜だった。小林が取り繕うことなく語ってくれたこの言葉がより心の距離を近づけ、THE NOVEMBERSを、音楽の力を信じさせてくれた。彼の言う通りなら、最後に披露した新曲はまだまだ変わりゆくのかもしれない。だが、梅田クラブクアトロで聴いた未完成のそれは、人の心を動かすのに十分な温もりと説得力を持っていた。
 
 『THE NOVEMBERS Tour2022 -歓喜天-』も残すは運命のツアーファイナル、7月11日(月)東京・Zepp Haneda(TOKYO)。アンコールを求める拍手が、過去最大キャパのワンマンライブへと向かう大いなるプレリュードのように、いつまでも鳴り響いていた――。
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史
Photo by 渡邉一生(SLOT PHOTOGRAPHIC)
 




(2022年7月 6日更新)


Check

Set List

揺るがぬ美学を鳴らした圧巻の一夜
再会の約束を果たした大阪公演

 
『THE NOVEMBERS Tour2022 -歓喜天-』

6月9日(木) at 梅田クラブクアトロ

01. ANGELS
02. きれいな海へ
03. 美しい火
04. 最近あなたの暮らしはどう
05. GIFT
06. Hallelujah
07. Close To Me
08. Rainbow
09. 楽園
10. KANEDA
11. New York
12. BAD DREAM
13. 黒い虹
14. いこうよ
15. 新曲

Release

最後のSTUDIO COAST公演を収録
鬼気迫る全17曲をパッケージ!

 
Blu-ray
『Live -At The Beginning-
 at STUDIO COAST』
発売中 5500円
MERZ
MERZ-0231
※初回プレス盤…ハイレゾ音源ダウンロードコード付(ダウンロード期限'22年8月末)。

<収録曲>
01. Rainbow
02. 薔薇と子供
03. 美しい火
04. 消失点
05. 理解者
06. Dead Heaven
07. 楽園
08. みんな急いでいる
09. Close To Me
10. New York
11. Hamletmachine
12. こわれる
13. DOWN TO HEAVEN
14. BAD DREAM
15. Xeno
ENCORE
16. いこうよ
17. 今日も生きたね

Link

THE NOVEMBERS オフィシャルサイト
https://the-novembers.com/

Live

残すはツアーファイナルのみ!
過去最大のワンマンライブが東京で

 
『THE NOVEMBERS Tour2022 -歓喜天-』

【神奈川公演】
▼5月13日(金)CLUB CITTA'
【愛知公演】
▼5月19日(木)名古屋クラブクアトロ
【宮城公演】
▼5月27日(金)仙台Rensa
【北海道公演】
▼6月5日(日)SPiCE
【大阪公演】
▼6月9日(木)梅田クラブクアトロ
【福岡公演】
▼6月12日(日)Fukuoka BEAT STATION

Pick Up!!

【東京公演】

チケット発売中
※チケットは、インターネットでのみ販売。店頭、電話での受付はなし。
▼7月11日(月)19:00
Zepp Haneda(TOKYO)
全席指定5000円
スマッシュ■03(3444)6751
※小学生以下は入場不可。開場・開演時間は予定のため変更の可能性あり。

チケット情報はこちら

 

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