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人生に付きまとう憂鬱をぶっ飛ばせ!
オルタナティヴな脳内革命が掴んだ未来を山中さわお(vo&g)が語る
『NOOK IN THE BRAIN』ツアー開幕インタビュー&動画コメント
「今のthe pillowsなら何でもイケる」 人生に付きまとう憂鬱をぶっ飛ばせ! オルタナティヴな脳内革命が掴んだ未来を山中さわお(vo&g)が語る 『NOOK IN THE BRAIN』ツアー開幕インタビュー&動画コメント
『Please Mr.Lostman』(‘97)『LITTLE BUSTERS』(‘98)『RUNNERS HIGH』(‘99)『HAPPY BIVOUAC』(‘99)…名盤に名盤を重ねていく凄まじき黄金期に刻まれたオルタナティヴロックというアウトプットは、the pillowsが、山中さわお(vo&g)というソングライターが、最も世に認められ勝ち取ってきた手札だと言えるかもしれない。当時のその追い風は、海の向こうにまで派生。『新世紀エヴァンゲリオン』を手掛けたガイナックス製作の『フリクリ』(‘00~’01)の挿入歌とテーマ曲の大半を担当したthe pillowsは、このアニメーションをきっかけに海外でも高く評価されるようになる。――あれから16年。アメリカでは今年の冬以降に放送が決定している『フリクリ』の続編で、the pillowsが再び起用される巡り合わせと呼応するかのように、最新アルバム『NOOK IN THE BRAIN』では久々にそのオルタナティヴな手腕を発揮。そして、“脳みその隅っこ”というタイトルには、’12~’13年の活動休止というドン底を乗り越えた際に手繰り寄せた、自分ではコントロールできない環境下でどう楽しく生きていくのかという、“生きるヒント”が込められている。リリースツアー開幕を前に、山中さわおが『NOOK IN THE BRAIN』の内部構造とここだけの裏話を語るインタビュー。歩んだキャリアは28年、今作で21枚目というアルバムが、まるで当然のように届く幸福。the pillowsは、続いていく。
ロックバンドをやる上でのとてもいい思い出が
『NOOK IN THE BRAIN』に入り込んできた
――前作『STROLL AND ROLL』(‘16)のツアー中にはもう今作の曲を書き溜めていたということですけど、今回はそこで生まれる曲がなぜかオルタナな曲が多かったと。それって何か原因があったと思います?
「後からもしかしてと思い始めたのが、アニメーションの『フリクリ』の続編が16年ぶりに制作されるにあたって、またサウンドトラックのお話をいただいたんですね。だから去年は、“2年後には『フリクリ』に合うオルタナな曲を書いてるんだろうなぁ”とは考えてたんですよ。ツアー中にそのアナウンスをするために、アンコールでMCもしつつ『フリクリ』の代表曲である『Ride on shooting star』(’00)をやるという流れがあって、それもすごく盛り上がって楽しくてね。あと、もう16年も前なので、呑みながら『RUNNERS HIGH』(‘99)『HAPPY BIVOUAC』(‘99)辺りの時代の音を聴いて、“あの時代にはこういうふうに録ってたんだなぁ”みたいに、ちょっと反芻する時間があったんですよ。それが影響したんじゃないかと」
――なるほど、そうだったんですね。
「何かね、その時代がすごく楽しかったんですよ。the pillowsとしてのふさわしい活路が見出せてない時代から、ようやく『ストレンジ カメレオン』(‘96)が出て、自分らしい道を支持してくれる人が集まってきて。当時は毎年人気が上がってる実感がありましたし、曲もバンバン書けたし、これから何かが始まるエネルギーの塊だったんですね。ロックバンドをやる上でのとてもいい思い出というか、それが『NOOK IN THE BRAIN』に入り込んできたのは確かにあったなぁとは思ってます」
「オルタナティヴロックって、コードとメロディというよりはアレンジも考えて、何なら『パーフェクト・アイディア』も『王様になれ』もリフが先にできて、その後に歌メロをハメていくので、ギターの核まで作っちゃわないと成り立たないんですよね。そうなると僕のソロバンド化していってしまうし、メンバーへの指示が増えるからバンド的ではないなと思って。ただ、オルタナじゃなかったら指示が減るかと言うと、意外とそうでもないぞと(笑)。結局、ロックンロールでも何をやってもそうだったので、’12年に活動休止した当時、うまくいかなくなったのはオルタナのせいじゃないと分かってきて。それが休止の辛い思い出とごちゃ混ぜになってたんでしょうね。『STROLL AND ROLL』のツアーはとても楽しかったし、もうオルタナが良い/悪いじゃなくて、今のthe pillowsなら何でもイケる。実際、かつてないスムーズさで完成したと思います」
――『NOOK IN THE BRAIN』は“脳みその隅っこ”という意味ですけど、活動休止に至るまでの辛い時期を乗り越えて、当時は思いもよらなかった今という充実した未来がやってきたことから、このタイトルに行き着いたと。
――今作には時代に通じるメッセージも感じて、『Hang a vulture!』(M-3)は本当に今、歌うべき歌というか。
「本来、『Hang a vulture!』のように少し社会的なというか、政治的なことを揶揄する歌は避けるんですけど、“ハゲタカを主人公にしたある森の出来事”みたいに、童話のような手法を思いついて、これなら自分らしくできるかなと。僕は意味があるんだかないんだかみたいな歌詞がとっても好きだけど、そこにはユーモアが絶対に必要だと思っていて。例えば一発ギャグって、どういう意味かというよりは何か面白いなって思う人と、ただ意味が分からないって思う人とに分かれるじゃないですか。そういうものを随所に散りばめるのが僕らしいかなとは思ってます」
「そうなんですよ。でも、相当巻きで始まってたから、声が出ないなりにレコーディングは進んでたんですね。本来はオケをどんどん作っていって最後に歌だけ残るって地獄なんですけど、ギターとかを先にレコーディングしながら、食事の時間は普通にみんなで蕎麦屋で酒も呑んでたし(笑)、そんなナイーブな感じにはなってないんですよ。病院にも何度も行きましたし、やれることはやったから開き直ったというか、もうしょうがないよねって。そうだ! ここでもまた運がいいことに、僕らはいつもデモレコーディング、プリプロ、本番と3回録るんですけど、デモとかプリプロのときが絶好調で、『王様になれ』『Hang a vulture!』『pulse』(M-7)はデモの一発録りのテイクなんですよ。デモの一発録りが本番に残ったのは初めてだし、その後、調子が戻ってから歌い直してみたんですけど、やっぱりデモの方がいいねって。そのラッキーもあって、スケジュールはそんなに止まらずやれたという」
「関西で言うと、京都は10年ぶりですね。ただ、弾き語りでLOVE LOVE LOVEに呼ばれて行ったり、怒髪天のイベントでTHE PREDATORSで磔磔に出たりもしてるし、プロモーションでも行くじゃないですか。だから、そんなに空いてたとは思ってもいなかったです。だったら前々乗りで行ってLOVE LOVE LOVEに接待してもらおうと思ってたんだけど、そうすると徳島でライブができなくなっちゃうから(笑)。前乗りだとそんな騒げないしね」
Album 『NOOK IN THE BRAIN』 発売中 3000円(税別) DELICIOUS LABEL QECD-10003(BUMP-064)
<収録曲> 01. Envy 02. 王様になれ 03. Hang a vulture! 04. パーフェクト・アイディア 05. Coooming sooon 06. She looks like new-born baby 07. pulse 08. ジェラニエ 09. BE WILD 10. Where do I go?
Profile
ピロウズ…写真左より、佐藤シンイチロウ(ds)、山中さわお(vo&g)、真鍋吉明(g)。’89年9月結成。’91年、シングル『雨にうたえば』でデビュー。’92年、初代メンバーである上田ケンジ(b)が脱退。’04年には結成15周年を記念し11組のアーティストの参加により実現したトリビュートアルバム『シンクロナイズド・ロッカーズ』を発表。’05年には海外での活動を本格的に始動させ、’09年の結成20周年記念日となる9月16日には、初の日本武道館ライブも大成功に収めた。’12年、『TRIAL TOUR』終了後、バンドのメンテナンス&リハビリのため活動休止。翌’13年8月の再始動後は勢力的な活動を展開し、’14年2月には結成25周年を記念したトリビュートアルバム『ROCK AND SYMPATHY』を発表、10月には2年9ヵ月ぶりとなるオリジナルアルバム『ムーンダスト』をリリース。’15年12月にはレア曲中心の選曲となるツアー『LOSTMAN GO TO CITY』を約2年ぶりに開催。’16年4月には、初代メンバーである上田健司のほか、JIRO(GLAY)、宮川トモユキ(髭)、鹿島達也、有江嘉典(VOLA & THE ORIENTAL MACHINE)ら縁あるベーシストを迎えたアルバム『STROLL AND ROLL』を発表、’17年3月8日には、最新作となる21stアルバム『NOOK IN THE BRAIN』をリリースした。