昨年、結成30周年を迎えたTHE COLLECTORSは、奥田民生、甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ)、鈴木圭介(フラワーカンパニーズ)、TOSHI-LOW(BRAHMAN)、藤井フミヤ、増子直純(怒髪天)、山中さわお(the pillows)、吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)ら豪華アーティストが参加したシングル『愛ある世界 -30th Anniversary Session』、バンドの歴史をたどる驚異の24 枚組BOX『MUCH TOO ROMANTIC!』、ファン投票によるベスト『Request Hits』と立て続けにスペシャルなアイテムを世に放ったかと思えば、『FUJI ROCK FESTIVAL』をはじめ全国各地のフェスに出演と、アニバーサリーイヤーをこれでもかと謳歌。そんな中リリースされた通算22枚目のオリジナルアルバム『Roll Up The Collectors』も、成熟するキャリアにおいて何度目かの蜜月を感じさせるような素晴らしい1枚に仕上がっている。そして、この輝けるワインディングロードの1つの到達点と言えるのが、3月1日(水)にいよいよ開催される初の日本武道館公演だ。加藤ひさし(vo)と古市コータロー(g)が、転がり続けたバンドの30年とアニバーサリーイヤーの喧騒、武道館への並々ならぬ想いと意地とプライドを語る、運命の日本武道館ワンマン直前インタビュー! 30年かけて、56歳で武道館に立つ。そんな夢のような現実を目の当たりにしたとき、観る者の胸にはいったいどんな想いが去来するのだろう――?
――昨年の日比谷野音を終えた後の動画でも、“これから武道館までずっと胃が痛い”とか、胃薬の話ばっかりしてましたもんね(笑)。
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加藤(vo) 「自分たちにとって今までは日比谷野音が3000キャパでMAXだったんで、その3倍もあるようなところっていうのはやっぱり、不安がないわけないですよ」
古市 「武道館でやるっていうのは、ずっとどこかであったんですよ。でも、現実的に思えてなかった。ただ、フラカンがやり終わったときに、いわゆる俺らの仲間、怒髪天とかthe pillowsが、一斉にこっちを見たもんね(笑)」
加藤 「まぁ俺たちもバトンが来るのを覚悟してたし、なおかつ自分たちの年齢的な部分とか30周年とかいろんなものを重ねていくと、もうやらなきゃタイミングはないよなって、数年前から何となく感じてたんですよね。40周年だったら、10年待ったら、どんなことが起きてるか分からないしね」
古市 「生きてる保証もないからね(笑)」
――ただ、お世話になった元事務所の代表の方が武道館をけしかけてくれた段階では、うんとは言えなかったと。
加藤 「ちょうどその方が亡くなる半年ぐらい前にお見舞いに行ったら、“武道館やらないの?”みたいに軽く言われて。多分、フラカンとかもよく知ってる方だから言ったんだと思いますけどね。まぁやりたい気持ちはあったんですけど、その場で“やるよ!”とはなかなか言えなくて(苦笑)」
――そう考えたら、the pillowsから怒髪天、フラワーカンパニーズと続いたバトンとか、30周年という区切りとかが、自ずと導いてくれた感じがしますね。
加藤 「めっちゃしますよ。それこそヒットがあって、自分たちも周りもやれる状況ならいいですけど、そうじゃない中で武道館となると、やっぱりいろんなものが重なっていかないと、やるエネルギーにはならないですもんね」
――そう考えたら、まさに“縁”と“タイミング”というか。
古市 「ね」
自分の過去と向き合う時間がなかったら
全くそれが反映されない違う新譜が出来上がってたと思う
――先ほど話に上がった30周年のBOXセットも、半年ぐらい掛けて作ったと。
加藤 「もうほとんどのコアなファンはCDを全部持ってるわけですから、できる限り面白いものを作らないとね。じゃあ初期のテイチク時代のアルバムを全部リミックスしてみようとか、その辺のプランは出てくるんだけど、今度はマスターテープが見付からない。見付かったら今度は中身が足りない。まぁ~大変でしたよ。当時の写真もなくなってるし、その捜索から何からやらないといけないんで、予定の3~4倍も時間が掛かりましたね」
――その中で自分たちの過去と向き合う機会もあったと思いますけど、改めて何か思うことはありました?
加藤 「ロンドンでリミックスをするときに立ち会って、自分たちがもう30年前に刻んだ音を目の当たりにしたんですけど、まぁ“間違ってないな”と思いましたね。昔、コータローくんから聞いたんですけど、矢沢永吉さんがアメリカに勝負しに行ったときに、“日本のミュージシャンは10年遅れてる、エンジニアは20年遅れてるよ”と言っていたと。1stに関しては、自分たちはヘタだし音作りもイマイチだったのかなって、何となくずーっと思ってたんですよ。ところがまぁ全然そんなことはなくて逆に自信になったし、新譜を作るエネルギーになりましたね。自分の過去と向き合う時間がなかったら、全くそれが反映されない違う新譜が出来上がってたと思うんで、それはデカかったです」
古市 「まぁデビューしたばかりで右も左も分かんなかったのもあるんだけど、俺も同じ気持ちですよ。だから新作では自然とギターも頑張ったと思うんで」
――あのBOXセットがなければ、新作の『Roll Up The Collectors』(‘16)にもなってなかったと。でも、刺激をくれたのはある意味、過去の自分という。THE COLLECTORSに影響を受けて、THE COLLECTORSがアルバムを作る。
加藤 「まさにそうです! いやホント、不思議な現象でしたね。普通だったら海外で起きてるムーブメントだったりから刺激を受けてアルバムを作り始めるんですけど、それが自分だったっていうね」
古市 「相当カッコいいよねぇ(笑)。だから、俺らのやりたいことは相変わらず今でも変わってないってことだよね」
――以前のインタビュー で、“やりたいことなんて最初の2枚くらいで出し切ってるから”とか、“やっぱり15歳のときに好きになったものは絶対なんだよ”みたいなことを加藤さんが言っていて。でも、ずっと好きでい続けられるのも、1つの才能のような気がします。だっていろんな音楽を摂取して、人生も変わっていく中で。
古市 「そうだよね。一般的に考えれば、音楽を聴くのを止めちゃう人だっていっぱいいるわけだから。それでもいまだにロックに情熱があるのは、まぁすごいよね」
加藤 「コータローくんはもう何年も前からアナログに帰っちゃって、CDを全然聴かない人になっちゃって。俺はどっちも聴くんですけど、どちらかと言えば手軽だからCDをよく聴く。そんな中で今ピンク・フロイドのアナログ盤が再発されて、電話で“1stの音がヤバい”って話してるうちに盛り上がって俺も買っちゃうっていう(笑)。そういうところが気になってしょうがないというか。普通は買わない人の方が多いと思うんですよ。だって1stはもう持ってるし」
古市 「何枚もね(笑)」
加藤 「CDもあるし、CDの紙ジャケもあるのに(笑)。そこは乗っちゃいましたねぇ。やっぱり今の気分ってちょっと“サイケデリック”だと思うんだよね。そこでピンク・フロイドの発想をアナログで聴けたのは、自分の中で相当吸収してるはずだよ。こういうものが自然と次の作品につながったりするわけじゃないですか」
――50を越えた大人たちがいまだに1枚のレコードでワイワイ言ってるのが、いや~いいですよね。
武道館があってもなくても作り続けるバンドなんだって
そういう見本でいたいのもあった
――そういうフレッシュな気持ちとか自分たちの過去を吸収して、どう今作につながっていったんですか?
古市 「実のところを言うと、30周年なんだから出さなきゃダメだよっていう、ただのその義務感だけ。何のアイデアもなかった。でも、THE COLLECTORSは現役で活動してるバンドだし、武道館があってもなくても作り続けるバンドなんだって、そういう見本でいたいのもあったし。何を作ろうかと考えながらリミックス作業も並行してやる中で、逆にどんどんアイディアが湧いてきたアルバムですね」
加藤 「まぁ全てが偶然っちゃ偶然なんですけど、なるべくシンプルなもので、もう一度1stアルバムを作りたいっていう気持ちだったから。もう1つの理由はやっぱり、去年の春に25年一緒にやったドラムが抜けたのも大きかったですよ。ファンとしてはどんな理由があるにせよ、いい想いをする人はいないわけで。そんな中でドラムを変えて出るアルバムが前作よりショボいと言われるのは、俺の中で絶対に許せないことなんで。分かりやすく、かつ練りに練ったものを作りたかったのは最初からありましたね」
古市 「だからドラミングのパターンにしても、余計なことかもしれんないんだけど、(古沢‘cozi’岳之に)随分アドバイスした。フィルのフレージングにしても何にしてもインパクトを出したかったし、そこはすごく意識しました」
――ただ、ファン心理としては、せめて30周年が終わってから…っていうのも内心あったでしょうね。
古市 「そうそう。でもそうなるとね、武道館が終わったときにバンドが終息すると思ったんだよね。あとはやっぱり、絶対に妥協して武道館をやりたくなかったんだよ。武道館に来れない地方のファンの人もいっぱいいるわけですから、その前のツアーもベストでやんなきゃいけないし」
――なるほど。じゃあ本当に“タイミング”ですね。
加藤 「ですねぇ。これも自分たちで武道館っていうハードルを掲げなければ、話し合いの場も設けられなかったかもしれない。今のこの形は、アルバム作り、武道館、もう全てに対して“ベストを尽くしたい”っていうそれだけで」
――そのせいか、今作はちゃんとロックのマジックと生命力を感じさせながら、より冴え渡っている感じが。
加藤 「デビューアルバムの1曲目の『僕はコレクター』(‘87)が象徴するように、リフはちょっとサイケデリックだけど全体的にはパワーポップで、ネオモッズが持ってるビート感もあって、そういうものをギュッと詰めて踊れるナンバー。それがやっぱりTHE COLLECTORSの名刺なんだよね。バンドって歳を取るとだいたいテクニカルになって、通に受けるようなちょっと渋い方向を好むようになるけど、それとは真逆なことをやってるわけで。でも、THE COLLECTORSは永遠にそういうバンドでいてほしいという願いも、自分の中にはあります。もちろん大人なバンドへの憧れもあるんですけど、なかなか両方は兼ね備えられないのかなって、どこか心に決めたところがありますね」
古市 「結局、いっぱいいっぱいなんですよね(笑)。ただ、ギターはギターで適当にカッティングしてるように見せてるけど、綿密な計算があるわけで。あと、曲先で適当英語で歌ってアレンジするじゃん。それも結構影響してるかなってちょっと思ったな。あそこで日本語がバシッとハマッてたらギターも言葉に引っ張られちゃうと思うんだよね。それがいい面もあるかもしれないんだけど、THE COLLECTORSは多分ない方がいいってちょっと思った。昔のデモなんて聴くと、まさにそうなんだよね」
加藤 「そこで“泣きたいのさ”って歌ったら、ギターも泣いてないといけないからね(笑)。それが妙に和風に聴こえたりするかもしれないし」
――しかもここまで人生経験を積み重ねての“泣きたいのさ”だったら、相当泣ける(笑)。
古市 「そうそう(笑)。ブリティッシュビートに、ネオモッズに憧れてバンドを始めたんだから、やっぱりそこで1回完成させないといけないんだよね」
近年の作品の中でも一番キレがよくてビートが効いてるんで
聴いてて気持ちよくてね。もうすごい好きなアルバムができたよ
――そのサウンドと、“こんな発想ないだろ”っていう加藤さんの詞の組み合わせが最強ですもんね(笑)。
加藤 「『恋はテトリアシトリス』(M-6)なんてまさにそうだと思う。普通に書いたらカッコいい歌を、“おいおいテトリスの歌かよ”っていう。だいたい悩みって振ってくるじゃないですか? で、積もってきて。これ、テトリスやってるっぽいなぁって(笑)。でも何かの拍子でパパパッと解決する。これは歌詞にしても面白いんじゃないかなぁって」
――いまだかつて男と女の関係をテトリスで描いた人いるのかな?って思いましたよ。“一番長いテトリス/あぁ君と僕の隙間にそっと今夜/入れてみたい”ってもう最高ですね(笑)。
古市 「アハハ(笑)。その辺のアプローチがやっぱり、最近のTHE COLLECTORSのスタイルなんだろうね」
――『ノビシロマックス』(M-7)とかもそうですし、ロックに夢見る部分がちゃんとあって、サウンドのキレも改めてすごいなと思わされる、近年の代表作というか。
加藤 「いや、本当に。近年の作品の中でも一番キレがよくてビートが効いてるんで、聴いてて気持ちよくてね。もうすごい好きなアルバムができたよ」
――ある種、今が第2の全盛期じゃないですけど、すごくいいムードがありますよね。
加藤 「それは肌で感じますね。長く活動してるバンドってどうしても代表作が初期にあって、後半になってくると自分の焼き直しみたいなものが多かったり、妙に渋くなっちゃったりすることが多いんだけど、THE COLLECTORSにはそれがないから。そこが一番嬉しいかな。単に武道館に向けて頑張ってるからそう思えるのかもしれないけど、実際にキレのいいアルバムができちゃうし、ライブでも今まで以上に力ずくな部分もあって」
――ここにきて力ずくなんですね(笑)。
加藤 「本当は体力を温存しなきゃいけないのに、“オジサンがそこまでやっちゃう!?”みたいな感じでみんなが感涙してるのを観てるからこそ、ここ数年で俺たちが何かを作り上げないとマズいなって。そんな気にもなってますね」
古市 「最近、“THE COLLECTORSは今のバンド”って言われたんだけど、そこに俺らもずっとこだわってきたから。生意気を言うと、自分たちで呼び寄せた部分もあると思うんだよね。俺らも一生懸命やってるし、いつもよりちょっと頑張ってるのが素直に出てるんだなって。だって普通、30周年に新譜は出さないよね」
――アニバーサリーな編集盤が出るなら、なくても全然成立しますからね。
古市 「俺もそれでいいのかなって最初は思ってたんだけど、出すことによってこうやって全国をキャンペーンで廻れてさ、またちょっと盛り上がってくれたりもするわけで。やることなすこといい方向に向いてるんですよ」
加藤 「新譜を出すのがキツくても、それぐらいの勢いで物事を進めていかないと、こういう風は起こらないからね」
文句を言いながらもステージに立ってるのが一番幸せなの
――30周年ツアーも各地でソールドアウトして、今でもそうやって観に来てくれる人がいるのは嬉しいですね。
古市 「嬉しいねぇ。長くやってるとね、各地の呑み屋に毎日行くわけじゃないんだけど30年通ってるみたいな(笑)」
――潰れてない店もすごいわ(笑)。
加藤 「そうなんですよ。店構えは変わってないんだけど、入った瞬間にやっぱりおばさんが歳を取ってて、『トワイライト・ゾーン』みたいになるんですよね」
古市 「いるはずのオヤジがいなかったりね(笑)」
――同時に、時代も音楽シーンも変わっていく中で、THE COLLECTORSも潰れなかったわけじゃないですか。下手したら30年来の常連客もいるわけで、さらには休止もしてないっていうのは。 よく病気とかもしないですね。
加藤 「病気しても働いてましたね(笑)」
古市 「そうだね。働きながら治せ、みたいなスタイル(笑)。俺の去年の腰痛だって、並のバンドだったらツアー中止レベルだからね(笑)。まぁでも、文句を言いながらもステージに立ってるのが一番幸せなの。アドリブが決まればシビれるし、たまんないんですよ」
――加藤さんは以前 、コータローさんが先に死なない限りバンドは続けると。
加藤 「まぁそれはそうでしょ、本当に」
古市 「でも、俺らはリーダー(=加藤)が死んでもインストバンドとして(笑)」
――アハハハハ!(笑) コータローさんが死んだら止まるけど、加藤さんが死んでも続く(笑)。
古市 「ドアーズがヒントをくれたんでね。生きてるうちに詞の朗読だけ録っといて、インストを何曲かやって(笑)」
加藤 「時々フィッシュマンズみたいにいろんなボーカルを呼んでやればいいから(笑)」
――ボーカルがいないとダメだと思ったら、案外やれちゃう(笑)。
古市 「曲がいっぱいありますから。まぁ1日も長く続けたいよね、THE COLLECTORSを」
加藤 「ホントそうですね。こうなっちゃうと意地でも」
――THE COLLECTORSの先輩で現役のバンドって誰になるんですか?
加藤 「パッと浮かぶのはTHE MODSね。THE MODSは俺たちより5年ぐらい先に出てきてますから。彼らもいろいろ苦労があってもやってるじゃないですか。同期はTHE BLUE HEARTSなんですけど、彼らはメンバーもバンド名も変わって。あとはBUCK-TICKがデビュー日が完全に一緒」
古市 「BUCK-TICKは年に1回ぐらいしかツアーしてないのに食えてる。究極の憧れですよ(笑)」
やっぱり二の足を踏んでちゃダメ
――その30年の積み重ねでいよいよ武道館ということですけど、それこそバトンを渡してくれたthe pillows、怒髪天、フラワーカンパニーズのライブは観てるわけですか?
加藤 「俺は全部観てます。まずthe pillowsは大きなスクリーンも入れて、3組の中では恵まれた環境だったんですよ。まぁ~カッコよくて、“何で俺たちがここで歌えないんだ!?って羨ましいだけ。怒髪天は苦労してきたのも分かるし、1年間東京でライブをしないとかそういうことも熟して熟してドーン!とやって、もう泣きっ放しだし。よくやったなぁっていう感じ。フラカンも怒髪天や俺たちと同じようなフィールドでずっとやってきたのに、俺たちがなかなか武道館でやると言えなかったところで、よくこれだけのライブをやったなと。だから、the pillowsのときは憧れたけど、他の2バンドのときは自分を責めて、“俺たちが次にやるべきだったんじゃないか?”とも思った。やっぱり二の足を踏んでちゃダメだって。後輩に背中を押されるというか、観てそういうふうに感じましたね」
古市 「ただどうしてもね、金勘定とかをしちゃうっていう(笑)。コケたらシャレにならないからね。でも、今言ってたように、二の足を踏んでちゃいけないんだなって思ったね。やると決めたことによって周りがこれだけ動いてくれるんだって分かったしさ」
――この祭りを成功させるために支えなきゃっていう想いが、みんなから湧き出てきますよね。
古市 「そうなんですよね。それは本当にありがたいなって思った」
加藤 「武道館って、ヒットが出た後だったり、大きなプロダクションに所属してるとかじゃないと、なかなかできない場所じゃないですか。本当に個人レベルでやりたいと思っていた場所にたどり着けたのは、絶対に違うと思う」
古市 「だから、フラカンとか怒髪天もそうだけど、俺らの武道館って意味が違うよね。これは絶対に成功させなきゃいけない。俺らが成功すれば多分さ、元気付けられるバンドもいっぱいいるわけじゃん」
加藤 「“俺たちもできるかも”って、いい音楽を作り出す連中がたくさん出てくると思う。“56で初めて武道館ワンマンをやった人がいるんですよ!?”みたいな。とてつもない勇気を与えられる気がする」
古市 「ノーベル賞もんだよね、これ」
――ディランの次がコレクターズだったらすごい(笑)。
加藤 「俺ならすぐ連絡する! 全部のスケジュールを空けてでもすぐもらいに行く!(笑)」
(一同爆笑)
――いやぁ~いざ武道館に立ったらどう思うんでしょうね。
古市 「まぁやってるときは多分、無我夢中。想像がつかないけどね。幸いステージには立ったことがあるから」
加藤 「藤井フミヤくんがやってる番組のイベント『BS☆フジイ SPECIAL LIVE』が’09年の年末にあったんですよ。そのときに4曲ぐらい歌わせてもらって、“武道館ってこんな感じなんだ”っていうのがちょっと掴めたんだよね」
古市 「リハーサルではドラムのキックが返ってくるのに本番では消えるって知ってるだけでも違うよ(笑)」
加藤 「本当にキックがやまびこみたいに聴こえたから、これはどうしたらいいんだろう?ってリハーサルで思ってて。でも、本番はお客さんが入るからその“ドンッ!”がキレイになくなって。これを知らなかったら、3月1日に初めてリハーサルして“おい、どうする!?”って青ざめてたかもしれないし」
古市 「でも、人が入んないと消えないからね(笑)。まぁでも、よくあのドン底からここまで来れたよなぁ~」
加藤 「事務所が変わったり何だりっていうときは、必ずトラブルが発生するじゃないですか。発生するから変わらなきゃいけないんだけどね(笑)。それを思い返すとね、渋谷のクアトロっていうホームグラウンドですらなかなか売り切れない状況まで落ち込んだときは、武道館なんて発想はなかったもんね」
――もうダメだ、辞めようと思ったことはないんですか?
加藤 「それはないなぁ~。やっぱり小さなライブハウスで20~30人を相手に少しずつ客を増やしてっていうところからスタートしてるから、バンドってそういうものなんだって、何となく思ってるからね」
古市 「まぁギリギリでも食えてたからね。そこがラッキーだったな」
加藤 「やる以上はそれでメシを食うのがプロでしょっていうのがあるから。まぁフリーランスで働く人はみんなそうだと思いますよ。大変ですよ」
――そう考えたら、続いてることもそうですけど、サヴァイブしてることもすごい。
古市 「そうだね。冷静に考えると、ギターでメシ食うって恐ろしい話だよな。その辺の若いヤツが言い出したら“おい、止めとけ!”ってなるんじゃないですか?(笑) でも、その辺も今はちょっと楽しいんだよな」
――最後に、30周年を迎えて今まで話してきたことの総括として、ひと言ずつもらえたらなと!
加藤 「この30周年企画の大舞台が武道館だし、客席をいっぱいにするのがやっぱり自分の目標なんで、それを絶対にやり遂げたいなと。損はさせないんで、ぜひ武道館に観に来てほしいですね」
古市 「落ちるところまで落ちたバンドが、50を越えて武道館でやるっていうことが、日本のロック界においてもすごく重要なことだと思うんだよね。そういう日になればいいなと思ってるし、ロックが好きな人は、来れる人は、来ていただきたいなと思ってます」