「僕はもう音楽家じゃなくていい。ROLLYというものを表現したい」
ジャンルも時代も飛び越えた永遠のギター少年にして総合芸術家が
再び日本のロックの名曲に挑む大好評超絶カバーアルバム第2弾
『ROLLY’S ROCK THEATER』インタビュー&動画コメント
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デビュー25周年を迎えた昨年、愛して止まない70年代ジャパニーズロックの偉大なる歴史とガチンコで向き合う究極のトリビュートアルバム『ROLLY’S ROCK CIRCUS~70年代の日本のロックがROLLYに与えた偉大なる影響とその影と光~』を発表。溢れ出る音楽愛×偏執的なまでのディティールと遊び心×情熱ほとばしる超絶プレイの独壇場で、ギタークレイジーの真骨頂を魅せたROLLYが、再び日本のロックの名曲に挑んだカバーアルバム第2弾『ROLLY’S ROCK THEATER~70年代の日本のロックがROLLYに与えた偉大なる影響とその光と影~』をリリースした。ツイスト、原田真二、ウォッカ・コリンズ、乱魔堂、チューリップ、四人囃子、頭脳警察、はっぴいえんど、RCサクセション、外道、サディスティック・ミカ・バンドら先人に多大なるリスペクトを掲げながら、今作でもそのハードロック魂と永遠のギター少年っぷりを心置きなく発揮。自らの音楽の出発点から現在地までを描いた新曲『1978』でも、その腕を存分に振るっている。すかんち時代には『笑っていいとも!』など数々のテレビ番組でお茶の間にも進出、今や演劇界でも活躍し、子供たちへの読み聞かせも不定期で行うなど、貪欲にエンタテインメント道を突き進むROLLY。「演劇的要素も読み聞かせもジャズもシャンソンもクラシックもフォークソングも全て合わさったのが自分」だと言い切る彼が嬉々として語ってくれたインタビューは、その生き様同様ボーダレスに飛び交いながら、ROLLYという総合芸術たる所以を見せてくれたようだった。いや~笑いました。そしてツッコんだ(笑)。
総合的に自分の芸を売ってる=芸人ですよ
その一環として歌やギターがある
――前作はレコード会社の方から“ROLLYさん、カバーアルバムを作りませんか?”と言われて1秒でOKするぐらい、渡りに船の企画だったと。そして今回は、“ROLLYさん…”の時点で“やります”ぐらい前のめりだったと(笑)。
「ありがたいことに前作を出した直後にTwitterとかで、“ごめんなさい! 今まで色モノだと思ってました。だけどアルバムを聴いて、これはなかなか骨のあるヤツだなぁと買わせてもらいました”とか書き込みをいただいて、今までの私のコンサートには全く来なそうなおじさんたちも来てくださるようになりまして、調子に乗った私は…」
――もう『まんが日本昔ばなし』に聞こえてきました(笑)。
「普通は若者が集まるフェスティバルに出りゃあいいんだけど、武者修行のために全国のイオンモールとかで無料のコンサートを行いまして。そういうときって、ステージに出て行ってどんな人がいるかを見てから曲を決めるんです。全く興味がないけどたまたま買い物に来たからそこに座ってる、おじさんおばさんおじいさんおばあさん子供たち。そこで自分のオリジナル曲だけをやったら、ポカーンと観てることも多いじゃないですか。だから僕は、“お父さん! ‘72年は何をされてました?”って聞くわけです。そうしたら“あ~○○してたかな”、“なるほど、’72年と言いますと、日中国交正常化、浅間山荘事件、沖縄返還がございましたな。そのときにヒットしていたのがこのナンバー! ザ・モップスで『たどりついたらいつも雨ふり』(‘72)”って始めるわけですよ」
――もはや歌手兼司会ですね(笑)。
「そうすると、“お! これ知ってる。懐かしいわ~なかなかおもろいやっちゃ”とアルバムを買ってくれる。初めから最後まで知らない曲で真面目な弾き語りだと、なかなか引き込めないですから。そういうことを繰り返したらアルバムも売れるし、全く自分に興味ない人に興味を持たせる修行にもなる。それで確かな手応えを感じましたわ。ただ、最後は必ず“ついでと言っては何ですが、私レパートリーの中から’91年のちょっとしたヒット曲、『恋のマジックポーション』を聴いてください”って盛り上げて、握手して帰るっていうね。もうそのときから第2弾やりましょうよ~って冗談で言ってたんで。前作は主に70年代前半の質感でやりましたので、せっかくやるなら今回は70年代後半風にやってみましょうと。ビートルズで言う赤盤・青盤みたいな感じですね」
――ROLLYさんぐらいキャリアがある方が、そういう修行=新しいチャレンジを果敢にやっていくのはいいですね。
「あぁ~嬉しいね。ミュージシャンって、“俺はミュージシャンだから”って甘えたりする場合があると思うねん。でも僕は、タイプが違って。僕はもうミュージシャンじゃなくていい! もう芸人!」
――アハハハハ!(笑)
「総合的に自分の芸を売ってる=芸人ですよ。その一環として歌やギターがある。僕は年にお芝居も3本ぐらいやりますけど、お芝居も修行の1つやねぇ」
演劇的要素も読み聞かせも
ジャズもシャンソンもクラシックもフォークソングも
全て合わさったのが自分
――ROLLYさんはTwitterでも、“機会があれば恐れずに演劇などにチャレンジしてみるべきだ!”と言っていて。
「それを見てくださいましたか! それは嬉しいな。日常的なことを歌ってるシンガーソングライターとかだったらそこまでしなくてもいいかもしれないけど、特にグラムロックを演る人は、“月から落ちてきた男”とか“火星から落ちてきた男”のことを歌うときに…」
――みんな空から落ちてくるんや(笑)。
「じゃあ“地底から沸き上がってきた男”(笑)。そういう男を演じるためにも、グラムロックを演る上ではすごく大切やと思う。でもねぇ、なかなか分かってもらえないのが現状だね。例えばミュージシャンの場合は、本番でメンバーが誘い水を出したらこっちも受けて立って、アドリブ合戦で一層盛り上がるけど、舞台ではそれはご法度で。もう全部きっかけが決まってるから。そのストイックさを1回でも体験したことがあるかないかでは、全然違うと思いますよ。僕はもう、毎日毎日稽古をさせられて…」
――“して”じゃなくて“させられて”(笑)。
「稽古はイヤですよ(小声)」
――アハハハハ!(笑)
「稽古は大変。メイクもしないし、セットも照明もないところで役に入り切らなあかん。さすがにやる気が起こらんから、僕はちょっとメイクしますけどね。ただ、その稽古を耐えて耐えて耐えて耐え抜いたら、本番は極楽ですよ。もう最高の気分になれる。僕はデビュー当時からシアトリカル・ロックを目指してたから、アリス・クーパーとかが大好きで。その後、マリリン・マンソンやら普通にロックを演奏するだけじゃない人が出てきてね。だから僕は、ミュージシャンもぜひ演技をやるべきだと思いますね。ただ、そっちの世界に行き切ってしまったらダメなんですよ」
――そっちが本職になっちゃう人もいますもんね。
「常に両方やると。さらに僕は手を広げて、シャンソン、ジャズ、クラシック、そして子供への読み聞かせ…これが全部ね、総合的にタメになります。特に子供への読み聞かせは、子供との接し方が上手くなるね。だってステージに出て行ったら子供ばっかりやん」
――そらそうや(笑)。
「すかんちを解散した頃からすでに演劇とかもやってて、あるときレコード会社の偉い人に“ところで君は何をやりたいのかね?”って聞かれて。実を言うと、よう答えんかったんですよ。でも、今だったら的確に答えることができる。“全部やりたいんだよ!”って。僕はもう音楽家じゃなくてもいい。ROLLYというものを表現したい。演劇的要素も読み聞かせもジャズもシャンソンもクラシックもフォークソングも全て合わさったのが自分だと、今だったら言えるんだけどね。ただ音楽をやるだけでは満足いかん」
――それは音楽人生を歩んだ結果そうなったのか、幼少期からそういう感覚はあったんですか?
「割とね。子供の頃は、姉が宝塚の熱狂的な信者だったので、ベルばらごっこをやらされたり(笑)。すかんちがデビューしたときから、ディズニー風のオペラミュージカルロックって言うてましたから」
すっごいアホでマヌケで情けないんだけど
人間味が溢れて実はカッコいい方が好きになる
――さっきROLLYさんが色モノだと思われていたという話がありましたけど、むしろむちゃくちゃ音楽的というか、知識も技術もあるし、世間がそういう風に捉えてるイメージがあまりなかったんで意外ですね。
「例えば、世良公則さん、四人囃子の森園勝敏さん、PANTA(頭脳警察)さんとか、はっぴぃえんどの鈴木茂さんとも毎年演ってるし、外道はレコーディングにも参加してる。そういう人たちとかライターさんぐらい音楽をよく知ってる人は、僕がマジな音楽バカだってことを分かってかわいがってくれるんですけど。ただ、“すかんち”っていうバンド名を付けて、若干…そこで損はしたなとは思うんですが」
――損するんですね、やっぱり(笑)。
「関西人なら分かると思うんだけど、“お前ち●かすやなぁ~”っていうのは本気で言ってないし、関西人的感覚で“俺ち●かすやね~ん!”って言ったり」
――自分を卑下して場を盛り上げるというかね。
「そうなんですよ! そうなんですけど…意外と理解されへんね!(笑) “デッドリンガー”とか“ストームブリンガー”みたいな名前にしとけばよかったなぁ~」
――アハハハハ!(笑) めっちゃ鋼鉄のイメージ(笑)。
「でも、イヤなの。やっぱり関西人なんで。ただ、一般の人は“ROLLY=ギターを持った漫談タレント”という設定だったみたいで。もう長いこと…まだそう思われてる節があるけど、それで僕は毎晩悔し涙で枕を濡らしてますけど。いや、シーツを噛んでますけど(笑)。だけど、万人に理解されるようなことをやっていないという自負もある」
――ROLLYさんという存在は総合芸術を目指しているけど、その一方で理解されない葛藤みたいなのも抱えて歩んでるのはリアルですね。
「グラムロック感覚=“理由もなき劣等感と被害者意識”なんで。デヴィット・ボウイなんかも、自分で『地球に落ちて来た男』(‘77)とかを演っておきながら抑圧されては被害に遭って。その妙な自己愛こそがグラムロックの源流だと思うんですよね。逆に“この人はカッコいい”っていう設定になってしまってる人は、ちょっと身動きが取れなくてイヤですよね。あれになってる方が恥ずかしく感じる。関西人だからかな? 恥かいてナンボですわ! すっごいアホでマヌケで情けないんだけど、人間味が溢れて実はカッコいい方が好きになる」
――そんな人がギター持ったらバチッと変わる、それがやっぱりカッコいいですよね。
「それを定着させるために26年! 頑張ってきました」
――めっちゃ時間かけてきましたね(笑)。
(2016年10月13日更新)
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