当たり前を疑え、違和感を信じろ これぞSuck a Stew Dryな渾身の『N/A』! 中途半端であることに振り切った今を語れ―― 篠山コウセイ(vo&g)インタビュー&動画コメント
“自分という人間を、自分でもわからないものにしてしまう「音楽」というものが、ある時期からとにかく邪魔者に思えるようになっていたと今は思う。”/“なんか、ずっと臆病になっていたなぁと。そもそも臆病は臆病なんだけど、臆病であることを伝えることに臆病になっていたというかね。”/“僕はSuck a Stew Dryというバンドに何枚も何枚も、何十枚何百枚も、余計な服を着せてしまっていました。精一杯「嘘だけは歌わないように」って気をつけていたけど、それは気づけばもはや「嘘」と呼んでもいいくらいのものになっていて。もうそういうことはやめよう、って思いました。”etc…Suck a Stew Dryの篠山コウセイ(vo&g)がタイムラインに投下した数々の言葉が、前作『ジブンセンキ』(‘14)からの2年間の、このバンドの揺れ動く感情と関係の交錯を如実に物語っているよう。正体不明の違和感、自らの思考とスタンスと改めて向き合い彼らが作り上げた、起死回生の2ndフルアルバム『N/A』は、Suck a Stew Dryの新たなるスタンダードとなる1枚だ。意義あるリリースツアーとなったその大阪公演でも、彼はこう言っている。「サックがどういうバンドなのか、篠山がどういう人間なのか、改めて自己紹介するようなツアーにしたかった」。全ての価値観が表裏一体であるという感覚と、持ち前のポップセンスが結実した同作にたどり着くまでのストーリーを改めて回想する、篠山コウセイインタビュー。右でも左でも白でも黒でもない、中途半端な僕らの世代を照らす『N/A』を語る――。
「今までは、もう1枚目ぐらいから“あ、CDって本当に出るんだ”みたいな感覚だったんですけど(笑)、今回は“やっと出せる!”っていう気持ちになりましたね。“お店で展開されてるのって嬉しいよね”みたいな話もメンバーとしたりして…やっぱり自分がやってる実感がないと分からないというか、嬉しいんだけど何か現実味がなかったというか。今回は、“Suck a Stew Dryは自分がやってる”という自覚がかなりあったんで」
――逆に言うと、よくここまで他人事で来れたね(笑)。
「アハハハハ!(笑) そうですね、もう8枚目ですからね(笑)」
――で、5月にはめでたく初ライブから6周年という中途半端な(笑)記念ライブ『Ningen/Asobi to N/A ~Suck a Stew Dry 6th Anniversary~』も開催され。
「スケジュールに関してもそうなんですけど、何か知らない間に物事が進んでることが多くて。自分がやってる感じがしなかった原因が、多分それなんですよ。小さいことなんですけど、気付いたらすでに決まってることがいっぱいあった。僕に何も言わなくてもバンドが勝手に進んでいくなら、別に僕はもう関係ないなと思って。極端に言うと、Suck a Stew Dryは別に僕のバンドじゃないんだから、関係ないものとしてやろう、みたいな(笑)。僕はすぐにそうやって“諦め”で何でもやってしまうので。僕のバンドじゃないし、最悪イヤなったら辞めるしって」
――ややこしい(笑)。でも、突き詰めていくとそういう1つ1つの違和感を見過ごしてきたことが、積み重なっていったのかもしれないね。その中で何とかミニアルバム『Wake me up!』(‘15)を出して、ツアーも廻って、でも、その違和感はなくなるわけじゃない。このアルバムに関して、もう一度自分たちの価値観を擦り合わせたわけよね?
「何か1つきっかけがあったというよりは、単純に『Wake me up!』が思った通りに伝わらなかったり、さっき言ったみたいに“よく考えたらあのときこうしときゃよかったなぁ”って思えたり、あとは単純に制作担当が変わって客観的な意見がもらえたり…。そういうことからメンバーも各々自分で気付いたというか、本当に1つ1つの要素がどんどん向かっていった感じはしますね」
サック・ア・ステュー・ドライ…写真左より、イタバシヒロチカ(ds)、ハジオキクチ(g&key)、シノヤマコウセイ(vo&g)、フセタツアキ(g)、スダユウキ(b)。'10年、スダを除くメンバーが都内大学の軽音サークルで出会い結成。'11年、デビューミニアルバム『人間遊び』をリリース。‘12年には2ndミニアルバム『ラブレスレター』を、’13年には1st EP『世界に一人ぼっち』を発表。'14年、iTunesが選ぶ“New Artists2014”に選出され、多数の大型フェスやサーキットイベントに出演。同年7月には2nd EP『アイドントラブユー』、9月には1stフルアルバム『ジブンセンキ』をリリース。’15年3月には、3rd EP『モラトリアムスパイラル』と初のライブDVD『僕らのジブンセンキ ワンマンツアー 2014 Final』を同時発売。『モラトリアムスパイラル』はオリコンデイリーチャート初登場11位を獲得。『VIVA LA ROCK』『ROCK IN JAPAN FES.』『RUSH BALL』など数々のフェスに出演し、同年9月には3rdミニアルバム『Wake me up!』をリリース。ワンマンでは初となる札幌・新潟を含む7ヵ所でワンマンツアー『夢中でがんばれない君にエールを』を開催し、ツアーファイナルの恵比寿LIQUIDROOMは見事完売。’16年1月には約3年ぶりの自主企画イベント『Stew Party vol.1』を開催。そして、5月25日には2ndフルアルバム『N/A』をリリース。全8ヵ所でワンマンツアー『N/A ~Ninja Action Tour~』を開催。焦燥感、虚無感など若者が誰しも抱く感情をシニカルな視点で切り取った独特な歌詞世界が10~20代のリスナーをメインに強烈な支持を獲得、ライブ動員は急増中。WEBを中心に話題となっており、毎日SNS等で途切れることのない拡散が続けられている。
【茨城公演】 『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016』 Thank you, Sold Out!! ▼8月14日(日)10:30 国営ひたち海浜公園 8/14入場券13000円 [出演]ASIAN KUNG-FU GENERATION/androp/イトヲカシ/岩崎愛/打首獄門同好会/宇宙まお/岡崎体育/OKAMOTO'S/オワリカラ/CAPSULE/きゃりーぱみゅぱみゅ/℃-ute/GOOD ON THE REEL/グッドモーニングアメリカ/黒木渚/Silent Siren/Suck a Stew Dry/サンボマスター/Lyu:Lyu/湘南乃風/SUPER BEAVER/Superfly/Turntable Films/Dizzy Sunfist/東京カランコロン/TOTALFAT/中村一義/NICO Touches the Walls/ねごと/NOISEMAKER/パスピエ/パノラマパナマタウン/PUFFY/ヒトリエ/藤巻亮太/Brian the Sun/THE BAWDIES/POLYSICS/三戸なつめ/MONGOL800/ヤバイTシャツ屋さん/米津玄師/lovefilm/LAMP IN TERREN/LiSA/忘れらんねえよ/WANIMA/ONE OK ROCK [DJ]オカモトレイジ/kz/柴田隆浩/タナシンドローム/DJ和 ROCK IN JAPAN FESTIVAL事務局■0180(993)611 ※6歳未満は保護者同伴に限り無料。雨天決行、荒天中止。出演者は予定のため変更の可能性あり。出演者変更に伴う払戻し不可。
【栃木公演】 『RADIO BERRY ベリテンライブ 2016 ~HEAVEN’S ROCK Utsunomiya VJ-2~』 チケット発売中 Pコード301-364 ▼8月24日(水)18:00 HEAVEN’S ROCK Utsunomiya VJ-2 前売3000円 [出演]ircle/The Cheserasera/Suck a Stew Dry/LAMP IN TERREN フォールーラー■028(614)4044
「取材前には入念に下調べする僕ですが、音楽界きってのツイッター・アディクト、篠山コウセイのそれを追いかけるのはとても大変です(笑)。でも、ブログよりも他誌のインタビューよりも、大事なことを語っていたのはツイッターでしたから。様々な感情の機微を経て生まれた『N/A』は、これまでのバンドのイメージとはちょっと違うかもしれません。でも、これこそがこのバンドの本質に限りなく近付いた作品なんです。そのせいか、“男の喪失あるある”というかもはや“篠山あるある”である(笑)『冷たいリグレ』(M-7)でも、パーソナルな内容ほどアレンジは壮大という法則も健在。いつもは“はぐらかす”というかオブラートに包みまくる、篠山くんの素が垣間見られるような『空に星が降る夜は』もすごく素直でドラマチックと、今作はSNSが作らせた一面も大いにあると思いますが、自分との誤差を解消した篠山くんの内面もより感じられます。Suck a Stew Dryは、きっとあなたが思うより熱いし奔放だしかわいいとこあるし、並み居る同世代のロックバンドとは違うルートでシーンを登っていく可能性を存分に秘めてますよ。あー早くまた一緒に呑みたい、という大いなるラブコールをもって、コメントを締めさせていただきます(笑)」