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奇妙礼太郎トラベルスイング楽団が隔月で行う
定期公演のライブレポート連載第3弾!!
今回は1/15(金)に行われたSOIL&“PIMP”SESSIONS
とのライブの模様をお届け!!

 奇妙玲太郎トラベルスイング楽団 主催定期公演『ローリングサンダーレビュー~人類史上最高のロックショウ~』が1月15日(金)梅田Shangri-laで開催された。真冬の寒さをぶっ飛ばしたこの日の対決の対戦相手は、SOIL&“PIMP”SESSIONS! チケットはソールドアウト。ライブレポート連載第3回目にして、過去2回とは明らかに違った異様な盛り上がりを見せたこの日の模様をお届けします。

 ハードボイルドなSEに乗ってSOILの6人がステージに現れる。ピアノ、ベース、トランペット…とそれぞれが定位置に着くだけで絵になるのもさすがの貫禄だけれど、先に言ってしまうと、何が凄いって、彼らのステージは男前すぎた。さすが色男(=PIMP)集団。

soil1.jpg 「Are you ready?大阪!」と、フロアに向かって社長が一声投げかければ、“待ってました!”とほぼ同意の「Yeah~~!!」が大音量で投げ返される。SOILにとって、この日は今年最初の大阪公演。オープニングは4/6発売となるアルバム「BLACK TRACK」の中から一曲披露。単にシャレているだけじゃなく、縦にも横にも体が揺られ、その音の渦が各パートのソロの度に沸く歓声と混ざり、演奏の熱量が上がっていくにつれ、魔法にかかったように会場までが揺れているような巨大なグルーブに。その心地よい音の渦をガツンと突き破り、一気に沸点まで高めたのが、続く『閃く刃』。社長の激しいアジテーションがメガホンを通して火を噴く。これぞ、SOILならではの爆音JAZZ。モニターに脚をかけ、片手でトランペットを吹き、煽りまくるタブゾンビの異様なカッコよさ。その彼は、トランペットを放すとエアベースもしくはエアギターを弾き倒す。ステージの上もフロアも、誰一人じっとしていられない。その勢いのまま、『表nothin’ 裏girl』へ。すさまじいスピードで突き抜けていくような爽快感に、歓声が止まらない。これがSOIL流のおもてなしか。パンク?スカ?ハードコア?いやいや、これこそがSOIL&“PIMP”SESSIONSの鳴らす音楽=DEATH JAZZ。ジャンルの枠に収まりきらない自由さと、雑食で野性味あふれる演奏は、快楽に飢えたリスナーのツボを刺激するのが非常に巧い。一度聴いたら間違いなくヤラれる。スタートから約10分でこの絶頂感は、ちょっとした幸福な事件と言ったら大げさだろうか。曲が終わっても、拍手も歓声も一向に鳴りやまないのは、きっとみんなも同じように感じているからだと思う。

 『POP KORN』では、社長が「手拍子で参加してくれ!」と言えば、フロアはすかさず手を高々と掲げて叩き、その反応の速さに社長もご満悦。社長に言わせると「大阪のお客さんは、ひとつ投げたら300倍ぐらいにして返してくれる」。MCでは、今夜のホストである奇妙礼太郎を“天才”と讃え、その天才に捧げる『スパルタカス愛のテーマ』を。ついさっきまで爆音で暴れさせてくれた彼らが、今度はメロウなこの曲にゆったりと浸らせてくれる。サックスを置いてステップを踏む元晴のダンスは、ストリート感たっぷり。メロウでありながらも、爆音。爆音だけれど、ムーディー。スムースで心地よいけれど、それだけでは終わらない。R&Bっぽさと、ヒップホップ的なストリート感が融合したようなジャズる心もSOILならではか。

 続く『THEME FROM“FUTAGASHIRA”Dub Version』では、改めて彼らの音楽には言葉はいらないと思えた。ダブ、レゲエの心地よさを堪能しながら、その音とコミュニケーションできる楽しさを感じる。最初に社長がMCで話していた「ステージとフロアの境をなくして、空間全部で音を作っていきたい。今夜のセッションを楽しもう!」というのはこういうことなんだろうか?気持ちよければ手を叩き、声をあげ、歌い、揺れる。その全部がセッションになっているようだった。

soil2.jpg 曲と曲の合間を埋めるのは、盛大な拍手。『Fantastic Planet』では、スティックをこすりつけたかと思ったらヘッドを口で鳴らしたりと、尋常ではないみどりんのドラムソロに続いて鍵盤、トランペットと楽器が加わることで少しずつ曲が色づいていく。そこへ最後にはフロアの歌声が乗っかり、さらに色鮮やかになる。その“ラララ~”という歌声が響く中、近くで誰かの「SOILと一緒に歌うって、なんかめっちゃ贅沢!」とはしゃぐ声が聞こえた。「大阪のお客さんは、“歌って”って呼びかけなくても歌ってくれるね」と社長は笑っていたけれど、椎名林檎やマイア平沢など挙げればキリがないほど多彩なシンガーとセッションを残しているSOILの演奏で一緒に歌うって、確かになんて贅沢なんだろう。

soil3.jpg 「奇妙君にステージを明け渡す前にもう1曲」と言い放って『SUMMER GODDESS』。熱い。さっきまでも十分熱かったけれど、ここへきてさらに場内の温度がアガる。サックスの元晴は、腰の位置で体を前に90度倒しながら、白熱のプレイ。ベースの秋田ゴールドマンは、ドラムのスティックで弦を叩くようにして弾いている。もう何回目のクライマックスかという勢い、それがどんどん加速したまま最後は『殺戮のテーマ』。すべての楽器がうなりを上げる、まるで打ち上げ花火のような、ジャズ爆弾を落としたかのようなエンディングは最高に心が晴れた。「2016年もみんなを楽しませます!」との心強い一言を残し、色男集団のステージは幕を引いた。

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 サウンドチェックの音が聞こえる中、フロアでは人がひっきりなしに出たり入ったり。見渡す限り人のアタマばかりでギュウギュウ詰めなところへ、「レディース&ジェントルマン!」の掛け声も高らかに、いつものキンキーなミュージシャンたち、トラベルスイング楽団が登場。文字通りの幕開けにふさわしい、いつものオープニングが鳴り響く。定期公演3回目で、オープニングといえばおなじみのこの演奏。それなのに、いや、3回目でもやはり、この時点でこちらのテンションもグッと上がる。

kimyou1.jpg トランペット、サックス、鍵盤のソロ回しに沸く中、「オー!イェー!」と叫び、煽りながら御大・奇妙礼太郎が登場。“歌え”と言われなくても、誰もが歌う『どばどばどかん』を聴いていると、フロアを埋めた人たちがどれほどお待ちかねだったのかがよくわかる。続く『タンバリア』『機嫌なおしてくれよ』は、いったい何がどうなっているのかと思うぐらいのスピード感で飛ばしていく。まるで“ついてこれるかな?”と言われているような勢いとテンポだけれど、そこにがっちりついていくのがShangri-laのお客さん。

 喧噪がひとやみしたところへしっとりと『SWEET MEMORIES』のイントロが聞こえ、まさに歌が始まるかと思ったその瞬間、奇妙がメンバーを振り返り、「…一回休まない?」とまさかのブレイク。 “ゆっくりやろうぜ”とでも言うように、「今日は金曜日だよ?」と。これにはフロアからも笑いがこぼれ、さっきまでかっ飛ばしていた空気が一瞬、緩む。そう言いながらも「一人でやっていい?」とギターを手に最初のフレーズを歌い始めると、絶妙なタイミングでバンドの演奏が滑り込んでくる。その神がかり的なかみ合い方に、思わず拍手。とともに、さっきまでにぎやかだったフロアもグッと聴き入っている。体温と湿度が乗った奇妙礼太郎の独特の歌、ブルース。この声のキレと色気と湿度と温度は、ナマでこそ味わえるご褒美のようなものか。

 ギターを置いてハンドマイクで聴かせた『オンリーユー』。この曲のイントロが聞こえると、なぜかホッとするのは演奏によるものか、ソウルフルな奇妙の歌によるものなのか。ステージを照らす青い照明が妙に艶っぽい中、『愛の讃歌』に続くかと思われたが、ここでも大将が一度演奏を止める。するとまた、さっきまでの熱を持った空気が、いい感じに緩んでくる。MCの途中で、今作っている曲の断片なのか、ギターをつま弾きながらポロリと言葉をこぼすように、弱々しくつぶやくように歌いながら、いくつかのかけらを聴かせてくれる。…そうして静まりかけた空気を、ガッと切り裂くように力のこもったギター鳴らし、『男と女』へ一気になだれ込む。それはそれは鮮やかに。一瞬で空気を変える音楽とは、こういうことを言うんだろう。

kimyou2.jpg 『愛の讃歌』を歌いながら、フロアのバーカウンターを指さし「あそこに上ろうか」と奇妙が言い、そして本当にフロアに下り中央のバーカウンターまでやってくる。半年ぶりだという生ビールを一口呑み、アルコールが混ざった声で歌い始める。ここで一つとても貴重な体験をした。バーカウンターに上がった奇妙の背後、後方に陣取っていた自分は、この曲を奇妙の背中を眺めながら聴いた。いつもは、当たり前のようにステージに立つ彼を正面から見ながら聴いている。けれどこの時、歌っている顔はもちろん見えないのに、マイクを持つ手の動きや、腕を伸ばして何かをつかんだりするような仕草、それら全部が“歌っている”ように見えてしょうがなかった。『愛の讃歌』は、何気なく聴いているだけでも感極まる曲であるというのに、その後ろ姿に耳はもちろん全身が釘付けになった。曲の良さ、歌声からこぼれてくる情感。それらを、歌っている背中を眺めながら聴く。テシマコージはいつもこうやって彼の背中を眺めながら叩き、奇妙の後ろに立つメンバーはみんな、この背中を視界の中央とか端っこに据えながらプレイしているのか。その歌う背中を見ながら、SOILの社長がMCで言っていたことを思い出す。「奇妙君の歌の表現力は、天才だよね。フェスとかライブハウスとか、どんなステージの大きさでも彼の歌に引き込まれる」と。その天才はさっきのMCで「僕は音痴だから…」と即興で歌っていたけれど、つくづく歌うための声をもって生まれてきた妙なる歌い手。こんな人はそうそういない。

 「~when you wish~」と唐突に歌いだし、「ロマンチックな歌をみんなに届けたいと思うけど、準備はいいかい?」と始まった『星に願いを』は、一転して会場がひっくり返るほど大いに沸き、ミラーボールもガンガン回る。にぎやかに、歓喜のスイッチが入った時のカタルシスを感じる。続いて『東京ブギウギ』、2トーンでグッとテンポを上げる『カトリーヌ』のノリ、演奏のキレは痛快。まるで、溜まっていたものを吐き出すかのような奇妙の歌いっぷりも場内の温度を上げていく。「最後の曲はさっきやってしまったんで」と、苦笑いしながら『Oh!シャンゼリゼ』の一節を歌いだすと、すかさず演奏がついてくる。さらにお客さんも歌いだす。さっき、「もう1時間経っちゃったな」と時間配分を気にするそぶりを見せたものの、この『Oh!シャンゼリゼ』だけで10分を超える大セッション。メンバーのソロを盛り上げたり邪魔したり、イジり倒したかと思えば、ギターが鳴らしたフレーズから一気に即興のようにセッションが始まり、最後はまるで映画『ブルース・ブラザーズ』のライブシーンを観るような、手放しで騒ぎたくなる満足感だけが残った。


kimyou3.jpg アンコールは『ビールの歌』。いつもの曲だけれど、やっぱりいつも通りじゃなかった。奇妙が小芝居のようなセリフを交えて歌えば、サックスやトランペットは歌詞の“ぐでんぐでん”な状態をはるかに超えた、フリーキーな演奏をぶち鳴らす。アンコールでこのテンションか、と思うけれど、フロントマンを含めこれがトラベルスイング楽団。間違いなく過去2回をぶっ飛ばす勢いのステージだった。

 昨秋から始まった今回の「ローリングサンダーレビュー」シリーズでは、これまで3回とも基本的なセットリストの骨格はほぼ変わらず、そこに数曲が入れ替わるというスタイル。同じ曲でも、聴くたびに感じるもの得るものが違う、という当たり前の発見をこのライブで彼らは改めて味あわせてくれた。そういう、二度と再生できないところがライブの醍醐味で、だから毎回が一度きりのショウ。

 トラベルスイング楽団は卒業旅行ツアーも終え、主催定期公演も次回はついにファイナル。登場するゲストは、昨年デビュー20周年を迎えた小島麻由美。なんとも幕切れにふさわしい顔合わせを存分に楽しみましょう!
 

Text by 梶原有紀子
Photo by 河上良(bit Direction lab.)/清水雅也

 


 




(2016年3月17日更新)


Check

Set List

SOIL &“PIMP”SESSIONS

1.BLACK MILK
2.閃く刃
3.表 nothin’ 裏 girl
4.POP KORN
5.Spartacus Love Theme
6.THEME FROM“FUTAGASHIRA”
  Dub Version
7.Fantastic Planet
8.Summer Goddess
9.殺戮のテーマ

奇妙礼太郎トラベルスイング楽団

01.どばどばどかん
02.タンバリア
03.機嫌なおしておくれよ
04.わるいひと
05.SWEET MEMORIES
06.桜富士山
07.オンリーユー
08.男と女
09.愛の讃歌
10.星に願いを
11.東京ブギウギ
12.カトリーヌ
13.Oh!シャンゼリゼ
EN01.ビールの唄

Live

遂に定期公演もラスト
お相手は小島麻由美

奇妙礼太郎トラベルスイング楽団
主催定期公演
ローリングサンダーレビュー
~人類史上最高のロックショウ~

thank you sold out!
▼3月18日(金) 19:00
Shangri-La
自由4000円
[ゲスト]小島麻由美
Shangri-La■06-6343-8601

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NEWアルバムのリリースツアー
初日は大阪・梅田クラブクアトロ!

SOIL &“PIMP”SESSIONS
TOUR 2016 "BLACK TRACK"

チケット発売中 Pコード288-322
▼4月23日(土) 18:00
梅田クラブクアトロ
オールスタンディング4300円
夢番地■06(6341)3525

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奇妙礼太郎トラベルスイング楽団
オフィシャルHP
http://travelswing.jp/

SOIL &“PIMP”SESSIONS
オフィシャルHP
http://www.jvcmusic.co.jp/soilpimp/

梅田シャングリラ オフィシャルHP
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