インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 「情熱を燃やしてやり切った、その情熱を信じりゃいいじゃんって」 届かない、叶わない、報われないからの 忘れらんねえよの傷だらけの大逆襲『犬にしてくれ』 男たちの怒涛のライブデイズに捧ぐインタビュー


「情熱を燃やしてやり切った、その情熱を信じりゃいいじゃんって」
届かない、叶わない、報われないからの
忘れらんねえよの傷だらけの大逆襲『犬にしてくれ』
男たちの怒涛のライブデイズに捧ぐインタビュー

 GW真っ只中の静岡・浜松の廃校に8日間カンヅメになり、日本記録となる6万個のドミノ倒し『全力ドミノ』に成功…。一応、確認しておくが、これから始まるのは音楽のインタビューである(笑)。もがき続けるロックバンド忘れらんねえよが、3rdアルバム『犬にしてくれ』をリリースした。今作では、彼らの青春時代を彩ったニルヴァーナをはじめとする90年代の轟音グランジ・サウンド × BABYMETAL、ももいろクローバーZなどを手掛けるNARASAKIをサウンドプロデューサーに迎えた邦楽シーン最前線の空気 × デビュー時からの武器であるしょーもない歌詞(笑)=前代未聞のハイブリッドミュージックが誕生。だが、届かぬ恋心の先にあるまさかの景色を描いた『犬にしてくれ』が、突如としてどこにでも現れる“あの”毛にフォーカスした『風に吹かれて(毛が)』が、報われない想いと愛する孤独を歌ったアーバンな『愛の無能』が、バレンタインと誕生日と貯金にまつわる恐怖の数字『ZERO』が、友達のバンドに差を付けられ、後輩のバンドに追い抜かれ、絶体絶命の彼らの妬みやもがきを綴った『寝てらんねえよ』が…最初はくだらねぇと笑っていた歌詞が、楽曲が進むに連れ、なぜもこんなに胸を締め付けるのか? エロと厨二マインドと下ネタに潜む、揺れ動く感情と純情の人生劇場が、あなたに訴えかける。今あなたの人生に、全力の、情熱は、あるか――? 人は全力の行為にのみ問答無用で感動する。現在は各地で怒涛のライブデイズを送るバンドワゴンの、届かない、叶わない、報われない地点からの大逆襲、忘れらんねえよインタビュー。

 
 
俺がこのシーンの中でバンドをやるんだったら
“逆に行きてぇな”って思ったんですよ
 
 
――いつもリリース後に結果が少し見えたグロッキー状態で、大阪に話しに来てくれてますが(笑)。
 
(一同笑)
 
柴田(vo&g)「いやぁ~もうね、慣れました(笑)。マジメな話をすると、今回の『犬にしてくれ』は、やっぱ完璧だから。まぁ当然凹むこともあるけど、これが伝わらなかったらもうどうにもならんというか、何か“ま、いっか”っていう感じかなって」
 
――作品の充実度というか、そこに対する想いがしっかりあるから、マーケティングがどうの以上にミュージシャンとして満たされたというか。
 
柴田「それは本当にある!」
 
――1stアルバムから忘れらんねえよに惹かれたのは歌詞で、今回はその歌詞という身体に対して、しっかり似合う服=音を着てるというか。でも、流行バリバリの服だと、「ファッション誌見たままんじゃんお前」ってなっちゃう。自分に何が似合うかを何となく感じながら、ワンアイテム取り入れるお洒落な人じゃないけど(笑)。何かそういう歌詞とサウンドの両方の要素が、ようやくバチッと揃った感じがしましたね。
 
柴田「何かね、“完成した”っていう感じがあって。やっぱり“忘れらんねえよにしか出来ないこと”をやりたかったんですよ。もちろん前提は“好き”なんですけど、シーンを見渡すとやっぱり“似てんな”って思うことが増えて。俺がこのシーンの中でバンドをやるんだったら、それが売れるか売れないかはさておき…それ以前に“みんなとは逆に行きてぇな”って思ったんですよね。“ロックバンドってそういうことなんじゃねぇの?”って」
 
――柴田自身、過剰にシーンを意識する傾向が今まではあって。でも、“人と似てない/誰もやってない”ことに魅力を感じるのがロックバンドの単純な衝動というか。ヘンな話、今ようやくシンプルにそこに来たのかなと。
 
柴田「そうなんです! それって最初の動機じゃないですか。まぁ今までも、俺がやろうとすることの背中を押してくれるメンバー、みたいな感じでやってきて、上手くいったこともあれば…失敗の方が多いですよね。いっぱい失敗してきて、もう気付いたんですよ(苦笑)。あんまり考えてもどうせ当たりゃしねぇし、世の中のことなんて分かりゃしねぇんだから、もうちょっとシンプルな音楽的好奇心というか…何かね、もういちいち細かいことを考えるのに疲れ切った。何かもうイヤになっちゃった」
 
――それが何かね、嬉しい疲弊だなって思った(笑)。ある意味、クレバーだったかもしれない。でも、考えても分かりっこないことを、必死で分かろうとしてたのかもしれないね。
 
柴田「ね。結局、そこで何も得てないってことは=何も分かってなかった。分かりっこなかったんです。それで自分がバカだってことが分かって、だったらもう楽になった方がいいなって。今回はレコーディングも本当に楽しかったし。超おもろかったし! もう悩むのを辞めたんですよ。意味ねぇと思って」
 
梅津(b)「さっきの柴ちゃんの話にもありましたけど、“後ろから歌を支える”みたいなスタンスで今までやってたんですけど、俺ごときが、そんな音楽理論も知らないくせに」
 
柴田「アハハハハ!(笑)」
 
梅津「“支えよう”とか思って考えたフレーズなんて、どうせしょーもねぇフレーズだなって(笑)」
 
(一同笑)
 
梅津「だったらもういいやというか、今回はNARASAKIさんっていうプロデューサーもいるし、やった後に整理してもらおう、みたいな。だから俺もあんまり考え過ぎず、何か最初に曲を作り始めたときぐらいのイキイキした感じが、デモを聴き返す度に結構あって」
 
柴田「かもねぇ」
 
梅津「“何で音源になるとそれがなくなっちゃうのかなぁ?”っていっつも思ってたんですけど。いや、悪くはないですよ?(笑) 悪くはないんですけど、最初に曲が生まれたときの感じをどうやったら出せるのかなぁ?って考えたら、これ“普通に思いっ切り考えずにやればいいんじゃね?”みたいな感じは、すごくありましたね」
 
 
やっぱり書かせくれた、キュウソが
 
 
――とは言え、人間ってすぐには変われない生き物で、それは歌=『寝てらんねえよ』(M-5)にもなってる。でも、今作はその変化が明確にあって。よく変われたね。
 
柴田「まあ疲弊したのもあるし、歌詞の作り方、方法論も変えたんですよね。曲と歌詞を切り離して、ショートストーリーを作るみたいな感じでまず文章を書いてたんですよ。あとやっぱね、笑えないとダメというか。例えば、『ここじゃないけどいまなんだ』(M-8)はすげぇいい曲だと思ってるけど、この感じでアルバムを占めるのはやっぱイヤだなぁって。でね、歌詞サイトでグループ魂の歌詞をずーっと見てて、『君にジュースを買ってあげる』('05)とかね、超おもしれぇなって。そこと同じレベルのギャグに持っていけるようにしたいなと(笑)」
 
――忘れらんねえよの武器をしっかり認識して、研ぎ澄ませる。ガチの感動ストーリーだけより、そこにふと笑える瞬間があるだけで、全然伝わり方が変わるというかね。
 
柴田「抜けがいいっすよね? 確かにガチなことって説明すればするほどつまんなくなるんですよ。だから今は基本的に全部、“どうやってぶっ込もうかな?”っていうことしか考えてなくて。『犬にしてくれ』(M-1)のPVも、“どうやったらこの現場の監督が驚くかな?”だけでやってたから」
 
――このPVも、何か久々に真っ当な…でも、まあまあ尺が長くておかしいな?って思ってたら(笑)。
 



梅津「アハハ!(笑)」
 
柴田「何かね、そういうのが楽しいし、あるバンドがマーケティングを語るインタビューを見て、ちょっと前のダセェ自分を見てるような気がしたんですよ。語ってると気持ちいいんですよ。自分はいろいろ考えてるアピールだから。でも、大事なのは曲がグッとくるかこないかだけで。もちろん俺らなんかよりクソ売れてますけど(笑)」
 
――まぁ名前は絶対出せないけどね!(笑) でも、自分を省みたんやね。ただ、それって多分、柴田もずっと思われてたと思うよ。アイツ、いろいろシーンを語ってるけど…。
 
柴田「そう! そういうことなんだなぁって。梅津くんもちょくちょく言ってたんですよ。“ああいうことを喋り過ぎると、お客さんが見たらゲンナリするところもあると思うよ”みたいな。そこを俺は体感として分かってなくて。今では何かそこからちょっと抜けて、同じように語ってる人を見たら、うるせぇ!!って(笑)」
 
(一同笑)
 
柴田「とは言え、ぶっちゃけオリコンのランキング見て、えーっ!? 何で? マジか…って正直思ったんですけど。もちろん俺は堕ちてます(笑)。でも同時に、“まぁしょうがねぇ、時間経ちゃ分かるだろう”みたいなところもあるんです。レコーディングのときに俺らが懸けた情熱と、マスタリングで爆音で聴いたときに“うーわ! やっべこれ!” って思ったこと。『犬にしてくれ』のファーストミックスを梅津くんが聴いたときに、“これでしょ!”みたいに言ってたのを覚えてるし、あのキラキラしてた情熱と、曲が出来上がって、“じゃドミノやろうぜ! 思いっきりバカやろう!!”ぐらいのノリで、大の大人がめちゃくちゃ真剣に情熱を燃やしてやり切った、その情熱を信じりゃいいじゃんって。それは全く汚れてないし、美しいと思うし、おもしろいと思うから。ただ何か…俺もまだ揺れることもあるし」
 
――分かる。だって、リリースタイミングでやったNEXUSのUstreamでも、聞き手のライターの柴さんがあれだけいいことを言ってくれて、前半はめちゃくちゃ“そうか!”って頷いてたのに、最後に“でもなぁ…”に戻っていったところが、すげぇおもしろかった(笑)。
 
(一同爆笑)
 
柴田「そう、まだリハビリ期間中だから(笑)。まだ報われねぇのかぁ、とは思う。でも、KANA-BOONの飯田(祐馬・b)くんがTwitterで、“YouTube見ようと思って別の映像を押したのに広告の忘れらんねえよが勝手に上がってきて間違えて押して聴いたら良すぎてマクドナルドでポテトを握りしめてグッときてます。CD買いに行こー。”って言ってくれて。“でしょ!?”って」
 
――そのやりとりを見ていて、YouTubeの広告とかクソ邪魔だなぁとか思ってたけど、効果あるんだなって(笑)。
 
(一同笑)
 
――あの小ちゃい×を押せなくてね(笑)。
 
柴田「バナーを押しちゃうの。飯田くんもそれだったの(笑)。あー押しちゃった!みたいな。パンチラみたいなもんですよ(笑)。まぁ揺れるけど、あの情熱を信じれば、時間の問題じゃねぇかなって。どんだけ時間掛かるかは正直想像つかないし、堕ちるときもあるけど、“ま、いっか”っていうのはある。報われたいけど(笑)」
 
――そやね。報われることが目的じゃないんだけど、やっぱり報われる人生であって欲しいよね、やっぱり。自分もそうだし、人もそう。あと、このアルバムはある意味、キュウソ(ネコカミ)が作らせてくれた部分もあるでしょ?
 
柴田「そう! ぶっちゃけね、『寝てらんねえよ』も作った当初は単純に“寝たら俺は終わるんだ”みたいなところで終始して、妬ましさまで行ってない曲だったんだけど、クッソがぁ…!って、やっぱり書かせくれた、キュウソが」
 



――いやでもこの曲、すっげぇエネルギーあるもん。
 
柴田「いやもう、負のオーラがね(笑)」
 
――見えてるよ(笑)。でも、最初は辺り構わずわめき散らかしてるかと思ったら、結局は自分に対してもそれをちゃんと言ってて。でも、歌詞の“きゃりーぱみゅぱみゅ”もライブで噛みそうでスリリングね(笑)。
 
柴田「ね。CDでも軽く噛んでますからね(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) あと、『犬にしてくれ』もね、ワードとしては基本的にマイナスの響きなのに、最後にはなんで泣きそうになってるんだろう俺?っていう。
 
柴田&梅津「アハハハハ!(笑)」
 
――むちゃくちゃ切ない。切ないわ~これ。前半の“犬にしてくれ”と“君の涙舐めたいんだよ”ぐらいまでは、だいぶヤバいオーラが出てるけど(笑)、この逆転劇がすごいよね。
 
柴田「アハハ!(笑) ね。これ上手く書けてるでしょ~?」
 
――そういう意味では、『ZERO』(M-7)っていうちょっとカッコよさげなタイトルで、みんながライブで拳を突き上げそうなハードコアなサビの歌詞が、“バレンタインデーにチョコがもらえなかった”とか、“誕生日にメールがゼロだった”だなんて、普通は誰も思わない(笑)。
 
柴田「ね(笑)。何も言ってないですからね、この歌詞は(笑)。でも、おもしろくて新しい気がするんですよ。ここをまだ追究したいというか…道を見付けた感じがあるから、あとはもう迷わないでこれを磨き上げて。でもな~やっぱ売れた方がテンション上がるからなぁ~。神様はまだ俺を、このチームをしごくのかみたいな感じはある」
 
――でも、満たされたら書けなくなったりしない?
 
柴田「いや、満たされたら多分、もっとおもしろいこと書けるやつです。だから神様はバカですね。俺たちをしごき過ぎです! ヨットスクールみたいな感じ(笑)」
 
(一同爆笑)
 
――たまに蜜をあげないと(笑)。
 
柴田「そうそう(笑)。飯田くんのツイートのようなご褒美をもっといただきたい!」
 
 
そういう意味で言うと俺は今、モラトリアムだな(笑)
 
 
――あと、『愛の無能』(M-3)がむちゃくちゃいいです。
 
柴田「この曲はみんないいって言う。こっちがリード曲の方がよかったんですかね?(笑)」
 
――音的にもこんなことが出来るんだっていうところも含めてね。あと、“あ、この辺通ってんだな”みたいな。今作のサウンドメイクのキーワードでもある“グランジ”って、大学時代とかのモラトリアムに聴くと、最も中毒性を発する音楽というか。大人になってからだと、“まあそういう時期もあるよ”みたいにいなせるようにもなるし、若過ぎても、まだそこまでの苛立ちがない。大学生ぐらいで出会うと、今後の人生に影響を及ぼしてしまう音楽な気がして。
 
柴田「そういう意味で言うと俺は今、モラトリアムだな(笑)」
 
(一同爆笑)
 
柴田「それで言うと、『ばかもののすべて』(M-10)辺りで『この高鳴りをなんと呼ぶ』(‘13)方向で見付けたモヤモヤを全部出し切って、結構快便な感じがあったんだけど(笑)、何かやっぱり、迷ってたかもしんないな。バンドがモヤモヤしてて、何をどう言えばいいのか追い詰められてるし、正直契約もどうなるか分かんないしっていう状況で、ニルヴァーナの『You Know You're Right』(‘02)を聴いて、やっぱ刺さったんだろうな。他のインタビューでは “新鮮に感じた”とか言ってたけど、刺さったんですよ。『You Know You're Right』で、最後に“お前が正しかったよ” って10何回異常に繰り返すところがあって、ハウリングも恐ろしいことになって終わっていくんだけど、俺、やっぱりそれで涙が出るほど感動したんですよ。大学時代も刺さってたけど、今もやっぱ刺さってんだなぁ。あのカート・コバーンの、“助けてくれよ”みたいな声が」
 
――グランジ世代は、身体のどこかにそのDNAを埋め込んだまんま、大人になっていってるんだろうね。で、何かのタイミングでそれがまた発症する。
 
柴田「覚醒する、発症する、再発するんでしょうね。いや、“しちゃった…”っていう(笑)」
 
――『ここじゃないけどいまなんだ』とかはそれこそ、ほぼほぼ『You Know You're Right』じゃねぇかっていう。
 
柴田「うん。でも、やってみて思ったのが、これは“まんま”グランジなんですよね。やってて気持ちよかったけど、やっぱね、笑えた方がいい。俺らのグランジは“笑えるグランジ”じゃないと。そういうのをやりたいなと思ったな」
 
――あと、この一連の音楽的な引き出しはNARASAKIさんの手腕なのか、みんながそもそも持っていたものなのか。
 
柴田「振り返ってみると、サジェスションというか意見はいっぱいくださったけど、最終的なアレンジはほぼ俺らで決めたかな。俺、『寝てらんねえよ』の最初のリフが超気に入ってて。あれ、俺が考えたんですよ!」
 
――そりゃ当たり前だろ、オメェの曲だろっていう(笑)。
 
(一同笑)
 
――じゃあ『ありのままで受験したら落ちた』(M-9)の逆回転の部分とかは?
 
柴田「それはね、NARASAKIさんが(笑)」
 
――じゃあ『愛の無能』のアレンジは…。
 
柴田「あ、それもね、触れない方がいいかもしんない(笑)」
 
 
このアルバムは吉田山田で言う『日々』です(笑)
 
 
――『風に吹かれて(毛が)』(M-2)の話もやっぱりするべきだと思いますけど、本当にこの子はどこにでもいるね、っていうね。棚のすっげぇ上の方にある本に挟まってたりね(笑)。
 
(一同笑)
 
柴田「マジでどうやって? 未来からやってきたの?っていう(笑)。でも、この曲で言ってるのはそれぐらいのことで(笑)。だって、毛布とかにも刺さってるじゃないですか?(笑)」
 
――このパンクなサウンドだったら歌詞は政治的なメッセージとか、社会に対して噛みつきそうな内容かなと思ったら、聴こえてくる言葉が全然違う(笑)。
 
柴田「そうっすね(笑)。何かね、今までインタビューではマーケティングの話ばかりしてたせいなのかもしんないんですけど、今回は各所でインタビューしてもらってても、あんまり言うことがないアルバムだったりするんですよ。最初にこういうコンセプト決めましたって話以降は、ただフルスイングしました、としか話せないというか」
 
――フルスイングしてるヤツは、それがホームランならもちろん美しいけど、三振でもやっぱりカッコいいもんね。
 
柴田「そう! フルスイングだけでカッコいいし、三振してもキラいになんないもん。この人、当たれば飛ぶから!って。まあでも、限度はあると思いますよ?(笑) ちょっとは当てないとっていうのはあるので、そこが不安です」
 
――でもまぁ今回は、達成感じゃないけど充実感はあるよね。時間を掛けて売れるアルバムもありますよ。
 
柴田「うん。このアルバムはだからアレですね、吉田山田で言う『日々』(※)です(笑)」
※…吉田山田が’13年にリリースしたシングル。『NHKみんなのうた』に起用されロングヒットを果たした。
 
――アハハハハ!(笑)
 
柴田「やっぱりマスタリングのときの感動が今までで一番デカかったから、そこは信じていいよなって思ってて。本当にいいものはちゃーんと広まっていく気がする」
 
――本当にチ●毛のようにね、いつの間にかそこにある(笑)。
 
柴田「アハハハハ!(笑) 確かに。まあとりあえず一生懸命やるしかないんだと思う。あとは明るく元気に」
 
――結局このインタビューでも、“チャートが…”とかの話に(笑)。他のアーティストはインタビューしてても、そこまでシビアな数字の話にならないというか、もうちょっと制作的な部分で一喜一憂してる方が多い気がするけどね。
 
柴田「そうなれるのが羨ましいです(笑)。ちょっと話がズレるかもしれないけど、たまにお客さんにどこまで伝えるべきなんだろうなぁって考えるんですよね。例えば、俺が『おしゃれイズム』に出てセーターを脱ぎ捨てて、上半身裸になる。多分それぐらいがおもしろいだろうなって思ってやって、ワァーッて盛り上がってくれる。でも、“本当は考えてるんだよ、インタビューも事細かに読んでよ”って言った方がいいのかなとか。何も言わずに黙ってた方がいい気もするし、どうなんですかね?」
 
――楽観主義かもしれないけど、意図してどうこうしようというよりは、なるようになるし、やらなきゃいけないときはどうせやらなきゃいけない。“すべきこと”じゃなくて“したいこと”をやるべきじゃないかな、やっぱり。
 
柴田「そうっすよね!? そう言われると楽。ちょっとこれまでいろいろ考え過ぎて、本当にもう頭がSOSサインを出してるんで(笑)。まぁでも、このアルバムでみんなで爆発出来たから、チャートもまぁいっかと。元からメンバーはそんなに気にしてないけど」
 
――そやね。気にしてなさそうだもんね(笑)。
 
梅津「ある程度は(笑)。っていうかまぁ、こういうバンドだから、しょうがないと思う。気にしてないわけじゃないけど、そりゃそうだよって(笑)」
 
――アハハハハ!(笑)
 
柴田「そりゃそうだよ。そういうことだよね」
 
梅津「絶対そうだよ。こんなの売れるわけねぇじゃん」
 
(一同爆笑)
 
――今のすっげぇな。もう天の声だ(笑)。
 
梅津「アハハ!(笑) これで戦っていくには、もう本当に地道にやるしかない。こういう表現にこだわってるんだから、そりゃそうだよって。これを受け入れて、頑張るしかない」
 
柴田「もう後はね、なすがままですよ(笑)。でも今、奥さん(=筆者)に言われたの、よかったな。その場で思ったこと言えばいいし、すべきとかじゃなくて、思ったことをやりゃいいし、落ち込んだらそんときは落ち込めばいいような気がしてきた。うん、知らん! だってコントロール出来ねぇもん」
 
 
プロの中2(笑)
 
 
――あと、ちょっと思ってたのが、服装も明らかに変わったやん。それには何かあった?
 
柴田「これもズラしたかったんですよね。みんな一緒じゃんと思って。それがね、前はカッコいいと思ってたんですけど、すっごく嫌悪の対象になってきて」
 
――お洒落に敏感な人ほど、本当に雑誌に載ってるみたいな格好になって案外かぶったりするもんね。ただ、ダサいにも程がある服を敢えて選んでる感もあるけど(笑)。でも今までって、よく見たら“あれ? 何かいい時計つけてる?”とか、“革ジャンの質がちょっと良さそう”とか、そういう歪みがあったから(笑)。
 
柴田&梅津「アハハハハ!(笑)」
 
梅津「よく見てますねぇ」
 
柴田「そう、大掃除して全部整理した感じ。今はスカッとしてんな~。ズラしてるこの感じがすごい好きなんですよ。俺、このダサい服着て誇り高く歩けてるし(笑)」
 
(一同笑)
 
――今asicsのTシャツを着てPVに出るヤツいないだろうしね(笑)。
 
梅津「アハハ!(笑)」
 
柴田「いや、本当に心の底から、これがカッコいいなって思えてる」
 
――いや、でも確かにカッコよく見えてくるもん。
 
柴田「ダサいダサいってみんなが笑ってくれるから、俺も“ダサいでしょ?”って言うけど、実際は“いや、このダサいはめっちゃカッコいいんだけど。街によくいる雑誌から飛び出てきたような格好してるヤツら、本当の意味でそいつら方がクソダセェからな”って心の中で思ってる(笑)」
 
――そう考えたら、バンドマンとしては“大人モラトリアム”やけど、人としては“真の中2”っぽいな(笑)。
 
(一同爆笑)
 
柴田「プロの中2(笑)」
 
――まぁ一連の話を聞いていて、戻ってきたというか、忘れらんねえよは今が最高だと改めて思えましたよ。今後も『RUSH BALL 2015』、『MASTER COLISEUM ’15』、『MINAMI WHEEL 2015』etcと関西圏でイベントも続くので、それがどう響くかも楽しみ。本日はありがとうございました!
 
柴田&梅津「ありがとうございました!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史



(2015年8月27日更新)


Check

Release

くだらなさと感動を往復するグランジ
3rdアルバムにして最高傑作誕生!

Album
『犬にしてくれ』
【初回盤DVD付】
発売中 2800円(税別)
バップ
VPCC-80675
【スペシャルプライス盤】
発売中 2300円(税別)
VPCC-81845

<収録曲>
01. 犬にしてくれ
02. 風に吹かれて(毛が)
03. 愛の無能
04. 絶対ないとは言い切れない
05. 寝てらんねえよ
06. バンドやろうぜ
07. ZERO
08. ここじゃないけどいまなんだ
09. ありのままで受験したら落ちた
10. ばかもののすべて
11. 紙がない
・マイナビバイトの歌
(スペシャルプライス盤のみ収録)

<DVD収録内容>
・ツレ伝ツアーファイナル~そして伝説へ~ 赤坂BLITZ
・全力中年シリーズ
(『全力野球』『全力ドミノ』
『全力ワイン』)
・Music Video『寝てらんねえよ』

Profile

わすれらんねえよ…写真左より梅津拓也(b)、柴田隆浩(vo&g)、酒田耕慈(ds)。’08年、柴田と梅津を中心に結成され、後に酒田が加入。都内ライブハウスで活動を開始。’10年、音楽誌・ロッキンオンによる新人コンテスト『RO69JACK09/10』で入賞。同コンテストのコンピレーション盤に『ドストエフスキーを読んだと嘘をついた』が収録される。’11年4月、『Cから始まるABC』がアニメ『逆境無頼カイジ 破戒録篇』のエンディングテーマに抜擢され話題に。同年8月、同曲がシングル化されメジャーデビュー。10月には、JACCSカード『あなたの夢に応援歌』キャンペーンに『この街には君がいない』で参加。12月には2ndシングル『僕らチェンジザワールド』をリリース。PVには先述の『逆境無頼カイジ』で声優を務める萩原聖人が出演。’12年3月には待望の1stアルバム『忘れらんねえよ』を発表。リード曲『忘れらんねえよ』のPVには、映画『ヒミズ』でヴェネチア国際映画祭最優秀新人俳優賞を受賞した注目の若手女優・二階堂ふみが出演したことも話題に。’13年1月には、會田茂一をプロデュースに迎えた3rdシングル『この高鳴りをなんと呼ぶ』をリリース。大きな反響を巻き起こし、その追い風を受けて6月には4thシングル『僕らパンクロックで生きていくんだ』をリリース。各地のロックフェスやイベントで期待感が高まる中、10月に満を持して2ndアルバム『空を見上げても空しかねえよ』を発表。’14年6月には、1stミニアルバム『あの娘のメルアド予想する』をリリース。’15年2月に5thシングル『ばかもののすべて』を、そして6月24日には3rdアルバム『犬にしてくれ』をリリースした。

忘れらんねえよ オフィシャルサイト
http://www.office-augusta.com/wasureranneyo/
 

Live

ラッシュ、マスコロ、ミナホなどなど
関西でのライブに続々出演!

 
『RUSH BALL 2015
 feat.GREENS 25th Anniv.』

Thank you, Sold Out!!
▼8月30日(日)11:00
泉大津フェニックス
1DAY(大人)6500円 1DAY(小学生)3500円
[出演]ACIDMAN [Alexandros]/THE BAWDIES/go!go!vanillas/KANA-BOON/THE ORAL CIGARETTES/SHISHAMO/the telephones/WHITE ASH/ストレイテナー
[オープニングアクト]
ドラマチックアラスカ
[ATMC出演]Awesome City Club/The fin./LAMP IN TERREN/Mrs.GREEN APPLE/Suck a Stew Dry/銀杏BOYZ/ザ・チャレンジ/テスラは泣かない。/夜の本気ダンス/忘れらんねえよ
GREENS■06(6882)1224
※雨天決行。未就学児童は保護者同伴に限り無料。小学生以上は有料。小学生はチケットを購入の上、保護者同伴に限り入場可。出演者の変更・キャンセルに伴う払い戻しは行いません。【オフィシャルHP】http://www.rushball.com/


『MASTER COLISEUM '15』
チケット発売中 Pコード262-646
▼9月13日(日)13:00
大阪城音楽堂
自由999円
[出演]SABOTEN/PAN/アルカラ/SECRET 7 LINE/Northern19/HEY-SMITH/locofrank/忘れらんねえよ
HEADLINE■06(6886)1390/清水音泉■06(6357)3666
※4日通し券は取り扱いなし。雨天決行・荒天中止。小学生以上は有料、未就学児童は保護者同伴に限り入場可。出演者等の変更があった場合でもチケットの払い戻しは致しません。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら


『Wienners presents
 NEW COMING TOUR』

チケット発売中 Pコード257-454
▼9月29日(火)19:00
Shangri-La
オールスタンディング2500円
[共演]Wienners/never young beach
GREENS■06(6882)1224
※未就学児童は入場不可。小学生以上は有料。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら


『MINAMI WHEEL 2015』
一般発売9月5日(土)
Pコード269-763
▼10月11日(日)14:00
ミナミ・ライブハウス各所
日曜日券3500円
[出演]赤色のグリッター/1000say/asobius/アップル斎藤と愉快なヘラクレスたち/ARCHAIC RAG STORE /アンダーグラフ/UNCHAIN/the equal lights/磯貝サイモン/市川セカイ/井上苑子/井乃頭蓄音団 /vivid undress/WAR-ED/WOMCADOLE/ウソツキ/uchuu,/浦朋恵/ウルトラタワー/80KIDZ /Awesome City Club/大知正紘/おかもとえみ/沖ちづる/8otto/ONIGAWARA/溺れたエビの検死報告書 /蠣崎未来/楽団 象のダンス/カトキット/金木和也/カノエラナ/カルメラ/響心SoundsorChestrA /空中メトロ/GOODWARP/コアラモード./コンテンポラリーな生活/THE SKIPPERS/The Flickers /ザ・ラヂオカセッツ/最悪な少年/ザ・チャレンジ/the twenties/THE PINBALLS/さユり/THEラブ人間 /SUNDAYS/SHE'S/シシド・カフカ/しなまゆ/cinema staff/Shout it Out/ジラフポット/sympathy /SUPER BEAVER/杉恵 ゆりか/Special Favorite Music/SECONDWALL/SEKIRARA/セックスマシーン /SETUNACREWS/セプテンバーミー/そこに鳴る/Chima/DOACOCK/Draft King/ドラマチックアラスカ/a DROP OF JOKER/Drop's/NakamuraEmi/中村佳穂/2gMONKEYZ/NECOKICKS/NEKO PUNCH /Heartful★Funks/HIGH FLUX/ハウリングアンプリファー/HOWL BE QUIET/HaKU/BACK LIFT /浜田一平と彼の新しい友達/林青空/Halo at 四畳半/PAN/ヒトリバンケット と 宴ガールズ /ヒラオコジョー・ザ・グループサウンズ/ビレッジマンズストア/プププランド/プラグラムハッチ/BOMI/WHITE ASH /ぽわん/Marmalade butcher/my letter/MAGIC OF LiFE/魔法少女になり隊/Mississippi Duck Festival /密会と耳鳴り/ミナワ/モアドモア/MOP of HEAD/夜行性のドビュッシーズ/夜の本気ダンス/Radical Radio /LACCO TOWER/Lambda/lical/リツコ/ReVision of Sence/リリィ、さよなら。/Rei/忘れらんねえよ/1 FINGER/他
FM802 リスナーセンター info@funky802.com
※6歳以上は有料。出演者、会場、開演時間は変更となる場合があります。出演者はいずれかの日に出演。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

 

Column1

童貞偽装、丸刈り謝罪会見
迷走なのか、独走なのか
もがき続ける劇場型ロックバンド
忘れらんねえよの1stミニアルバム
『あの娘のメルアド予想する』
の顛末を問う前回インタビュー

Column2

人生を懸けたバンドワゴンは
挫折と葛藤を乗せて進む
忘れらんねえよの2ndアルバム
『空を見上げても空しかねえよ』
揺れ動く心情と揺るぎない音楽への
想いを語るインタビュー

Comment!!

ぴあ関西版WEB音楽担当
奥“ボウイ”昌史からのオススメ!

「インタビューでも触れてますが、毎回、柴田(vo&g)に取材してると絶対シーンのマーケティングの話になるんです。でも、そんな話、聞いてて楽しくないんですよ。売れるから取り上げるわけじゃない。売れないから載せないんじゃない。編集/ライターである自分が、自分で取材すると決めた時点で、一生付き合う気でいるんです。認めてるんです。1stアルバム『忘れらんねえよ』(‘12)で彼らに出会って3年、最新作『犬にしてくれ』は、新たに手に入れたサウンドとの親和性もバッチリで、彼らの持ち味であった(しょーもない)歌詞においても現時点でのK点に到達した、紛れもない最高傑作です。何かね、今回のアルバムって、聴いてて泣きそうになるんですよ。チ●毛とかウ●コの話なのに(笑)。すごいですよ。それはそういった表面的なコーティングの下にある純粋で不器用な気持ちを、身体が感じ取っているから。僕が以前とあるアーティストのマネージャーさんに言われて嬉しかったのは、“奥さんの取材には愛とユーモアがある”と。“愛とユーモア”、今回のアルバムもまさにそれで、そしてそれは、今の時代に一番必要なものかもなって思うんです。だからこのアルバムは、実は今の時代に必要な音楽なんです。どギツいコーティングに物怖じしないで、ぜひ聴いてみてください。きっと僕の言っていた意味が、分かってもらえるはず」