「俺らは粘るよ」
ルーツと経験と3ピースの真髄を詰め込んだ自主レーベル第2弾
アルバム『Love&Soul』引っ提げツアーもクライマックスの鶴が
バンドの第2章と消えない情熱を語るインタビュー&動画コメント
(2/2)
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
自分が曲を書くときに真ん中にあるのは、ソウル、ディスコなんですよ
――『公約数』(M-3)『U.F.O』(M-4)からはルーツとか奥行きが感じられるんですけど、そもそも鶴のルーツ的なところはどの辺なんですか?
秋野「バンドのルーツで言うと、学生時代から一緒にコピーバンドをやっていた時代があったので、そのときはTHE YELLOW MONKEYとかがほぼメインで。そこから僕はパンク、メロコア、ミクスチャーに行って、20歳くらいでソウルとかディスコ、ファンクにたどり着いて。結構いろいろな時代があるんですけど、自分が曲を書くときに真ん中にあるのは、ソウル、ディスコなんですよ。だから自分が書くとそういう匂いが」
――それが核となった魅力って何かあるんですか?
秋野「歌謡曲ですね。歌謡曲って大人になって改めて聴くと、当時の向こうのソウルミュージックへのオマージュだったり、バックバンドがカッコよかったりするじゃないですか。イエローモンキーも歌謡曲からの流れのロックバンドだと思うんですよね。大人になって見付けてビックリ、ここにあった!っていう瞬間はよくありますね。ディスコっぽいことをやってる黒いグルーヴ、あの匂いが好きですね」
――それこそ『足跡』(M-5)なんかも、このバンドが第2章にいると分かる歌詞ですよね。やっぱり人のやり方をなぞっても仕方ないというか、そのバンドに合った生き方がある。それこそ聴いてくれる人にも、自分たちにも言っているような感じがします。
秋野「これはアルバムの中でも一番言葉を選んだ曲なんですけど、苦労はせずに、単純に自分が思うことをズバズバ書いていったらこうなったっていう。ある意味こっちの意思表示でもあるし、同じような感覚でいる人には後押ししてあげられる曲でもあるのかなって。“飾らない事が何より強くて”というフレーズは、ちょうどアフロも卒業して2年くらい経って、自分の中ではそう感じるシーズンなんですよね」
――アフロ時代の写真を改めて見たら、やっぱりアフロをつけると人は問答無用にファンキーになるんだなと。髪型って大事だなって思いますね(笑)。
神田「人間の印象の7割くらいを占めるらしいですからね(笑)。あっきー(=秋野)にいたってはちょっとヘンな人だもんね。サングラスに赤シャツで」
秋野「ほぼほぼ顔出てなかったからね(笑)」
――前作『SOULMATE』の他誌のインタビューでは、“かっこいい要素、笑える要素、いろいろあるので、それが逆に今、どこにも振りきれない、難しい状態にあるのかなとも思いますね”って、本当のこと言ってましたけど(笑)、それは脱したんですか?
秋野「脱しましたね、その時期は。悩んでたんだな(笑)」
――すごく冷静に自分たちを分析してる。脱してどこに向かってるんですかね?
秋野「カッコいいとか面白いとかいうよりは、ステージ上で思うことをちゃんと言えるのかというか。“あれ、鶴ってこんなに暑苦しかったっけ?”みたいな部分が最近メキメキと育ってきているので。メッセージも昔より増えてきているので、それをちゃんと伝える作業をした方がナチュラルというか、鶴の楽曲を伝えるのに今一番いい方法じゃないかと思いますね。くだらない部分とか面白い部分もなくしてはいないんですけど、曲を一生懸命伝えようとすると真面目な方にいくし、その合間の休憩ゾーンはくだらなくてもいいと思っているし。昔はコミックバンドの匂いがあったんですけど、完全にネタを仕込んでやるっていう方向ではないですね(笑)」
応援してもらったり愛してもらうためには
こっちからちゃんと愛さなければダメだなって
――個人的には『アメリカン珈琲』(M-7)がめっちゃ好みでしたね。でも、この曲はそこまで深刻なメッセージとかではないですよね?(笑)
秋野「ダジャレみたいなものですから(笑)。僕は結構メロディの響きで言葉を選ぶんですよ。そこから、サビはア行で始めたいっていう簡単なところから、“アメリカンコーヒーみたいな”っていう歌詞がたまたま出てきたんですよね。それで“アメリカンコーヒーみたいな”ものって何だろう?っていう感じで物語を広げるので、深煎り=深入りしたいぜみたいな」
神田「あ、人間関係だって」
――ルーツだったり今まで培ってきた技術だったりを含めての引き出しが、ちゃんと出た曲ですよね。『アメリカン珈琲』とか『U.F.O』辺りの曲を聴くと、バンドの独自性と歴史みたいなものを感じるなって。そして、『背伸び』(M-8)は唯一の笠井さん作詞作曲です。
笠井「これはサビの部分だけ昔からあったんですけど、曲選びをしていく中で僕の曲も1曲入れてもらって。彼は人生とか大きいテーマを書く人なんですけど、俺は対照的にもっとピンポイントな、近い距離の曲を書くタイプなので、アクセント的に聴いてもらえればいいかなと」
神田「せっかく対照的な曲を書く2人がいるんだから、それを武器にしてしまえっていう」
――ギターソロ弾きまくりもいいですよね。
秋野「長い長い、これ(笑)」
――今作には楽器を弾くという喜びも随所に散りばめられている感じがしますね。
神田「この曲をコピーしたい! だから楽器を弾こう! みたいな音楽に出会って育ってきたんで。フレーズをコピーして合わせて弾いたときの、“何だこれ!”みたいな感覚。あのハマる感覚をこれから音楽を始める若い人たちに感じてもらいたいなっていう想いもあるんですよね」
――やっぱり自分たちのタブ譜が出たら嬉しいみたいな。
秋野「自分たちが欲しい(笑)」
――タイトル曲の『Love&Soul』(M-9)って、いわゆるベタなタイトルですけど、これをタイトルにしたのは?
秋野「最後にアルバムタイトルを決めようというときに、今はこれでしょ!って一発で決まりましたね。それこそこの1年間いろんな人に会って、直接やり取りして応援してもらったり愛してもらうためには、こっちからちゃんと愛さなければダメだなって感じた1年だったので、自然と曲にもなりましたし。今作を作って、目に見えないものだったり形のないものを、ずっと音楽にしてきたんじゃないかなと思いましたね。『Love&Soul』って古い言葉ですけど、ずっとすたれないですよね。それが人の根底にあるから。使い古された感じも自分たちっぽいし、ルーツっぽくていいかなって」
鶴はいそうでいないバンドだなと思ってずっとやってきた
――『VSGG』(M-10)はパイナップルフリーウェイのカバー曲です。
秋野「前作でも、当時自分たちが結成して間もない頃に刺激を受けたバンドの曲のカバーを入れたんです。あの頃は本当にカッコいい曲がライブハウスにはいっぱいあって、自主レーベルでインディーズに立ち返ったとき、自分がリスペクトしていた“ライブハウスの魂”みたいなものを、今一度引き継がせてもらいたい気持ちでカバーを始めたんです。今回はパイナップルフリーウェイに白羽の矢が立って、今では絶対に手に入らないようなインディーズの音源も結構僕の家にありますよ。今後ももしこれを続けていければ、まだまだ歌いたい曲はいっぱいあります」
――アルバムが出来上がったときはどう思いました?
神田「僕個人としては、絞って絞って、頑張って頑張って出来た!というよりは、“あ、もう産まれてる”みたいな。出来た!っていう喜びがあるパターンもすごく好きなんですけど、今回の感覚は結構初めてで、本当にスッと出てきた。今の俺たちがまんま出たんだなっていう風に理解したんですよね」
笠井「毎回リリースする頃には、ほんのちょっと成長なり変化があって、こうしたらよかったなとか、俺は今こういう気持ちなんだけどなって思うところがあるんですけど、今のところ1つもないんですよ。そういう意味では、今の自分の感覚とすごくマッチしているんだなと思いますね」
――タイムラグがないんですね。
笠井「それはインディーズで、自分たちでやれてるのがプラス要素になっていると思うんですけどね」
秋野「新しくはないけど、ありそうでないものが出来たなっていうのが最初の感覚というか。鶴はいそうでいないバンドだなと思ってずっとやってきたんですけど、昔はいろんな人が間に入ってきて、自分たちらしさみたいなのが薄れていたのかなって。それを完全にバンド側に振り切ったことによって、新しくはないけどいない、純度が濃いまま始まって、濃いまま終わった感じ。今後も3ピースの妙を出しつつも地味ではない、という感じでやりたいですね。音質的な自負もあるので」
――長いバンドって、4~5組とか出るライブを観ていても、同じ環境で同じPAさんでやってるのに、全然出音が違う。分かっちゃうもんだなって。
笠井「それはすごいありますね」
神田「ありますね~。どんな場所でも力を発揮するバンドになりたいなって、ずっと思ってやってますね。それをさらに越えると、音とか良いとか悪いとかどっちでもいいなっていうくらいのバンドもいますけどね」
秋野「そうなりたいよね、バンドとして。ステージに立ってたらOKみたいな」
最近、人間味がダダ漏れするようなライブにシフトしつつある
――リリースツアー『Love&Soul ~愛と魂、時々エロス~』もあって。“愛と魂”は分かるんですけど、何で“時々エロス”なんですか?
秋野「『Love&Soul』で“愛と魂”って、ちょっとそのままじゃないかと(笑)。エロス=いやらしい気持ちっていうのはただの下ネタじゃなくて、腹黒さ、下心も含めてのエロスで。いい大人の男になったので、内側からステージで漏れる何かを出したいっていうチャレンジですね。何したら出るか分からないですけどね(笑)」
神田「とりあえずキツめの香水を(笑)」
秋野「フェロモン系?(笑) ついついひねりたくなっちゃうんですよね、ツアータイトルは」
笠井「こじれた感じだね(笑)」
神田「こっちの決意表明みたいなもんだから」
――ライブに向けては何かありますか?
神田「鶴自体の状態は非常にいいので。個人的には12年目に入ったバンドの貫録とまでは言えないですけど、安定感とドキドキハラハラ感と、ある程度の威圧感と、サウンドの良さ。そっちの方向でも納得させたいなと思うので」
笠井「音源でもそうだったんですけど、今までの構えてこう見せたいんだっていうのがなくなったので、多分感じてもらえるまんまに伝わるライブにはなるんだろうなと。大阪は昔から来ていて、独特の空気感があるんですよね。それはすごくいいことだと思うんですけど、今回はいつもと違うぞっていう空気にしたいですね」
秋野「最近、人間味がダダ漏れするようなライブにシフトしつつあるというか、1枚壁を乗り越えたような感覚があるので、それを今回のツアーでもやり合いたいんですよね。大阪は昔から来てるんですけど、いろんなタイプのお客さんがいて、結構大変な土地柄だったりもするんで(笑)。ありがたいことにずっと昔から応援してくれているので、来てくれた人全員を納得させるようなライブにしたいなと思っています!」
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2014年11月22日更新)
Check
Movie Comment
新作とグランフロント大阪とツアー
を語る(笑)鶴からの動画コメント!
Release
3ピースバンドのオイシイところが満載
ソウル/ディスコな自主レーベル第2弾
Album
『Love&Soul』
発売中 2300円
Soul Mate Record
POCS-1182
<収録曲>
01. Intro ~FM Love&Soul~
02. Life is Party
03. 公約数
04. U.F.O
05. 足跡
06. LoveLoveLove
07. アメリカン珈琲
08. 背伸び
09. Love&Soul
10. VSGG
11. トリップメーター
Profile
つる…写真左より、秋野温(vo&g=うたギター)、神田雄一朗(b=ウキウキベース)、笠井快樹(ds=テンパリドラム)。埼玉県鶴ヶ島市の中学校の同級生3人組で、’03年に結成。バンド名の由来は、鶴ヶ島の頭文字から。アフロヘアーと70sファッションが話題となり、インディーズにて3枚のアルバムをリリースした後、’08年にシングル『恋のゴング』でメジャーデビュー。’12年に映画『アフロ田中』主題歌『夜を越えて』をリリースし、この作品を最後に8年間トレードマークだったアフロヘアーを卒業。’13年には、結成10周年記念ベストアルバム『グレイテスト鶴です~ベストじゃん!!~』をリリース。自主レーベルSoul Mate Recordを立ち上げ、第1弾アルバム『SOULMATE』を発表。今年9月10日に第2弾アルバム『Love&Soul』をリリースした。
鶴 オフィシャルサイト
http://afrock.jp/
Live
リリースツアーもクライマックスへ
残すは大阪と地元埼玉のみ!
Pick Up!!
【大阪公演】
『鶴TOUR 2014「Love & Soul
~愛と魂、時々エロス~」』
チケット発売中 Pコード238-586
▼11月24日(月・休)17:00
umeda AKASO
オールスタンディング3500円
清水音泉■06(6357)3666
※小学生以上は有料、未就学児童は入場不可。公演当日、大学生以下の方は学生証提示で500円返金。
チケットの購入はコチラ!
【埼玉公演】
チケット発売中 Pコード240-163
▼11月30日(日)17:00
HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
オールスタンディング3500円
ホットスタッフ・プロモーション■03(5720)9999
※大学生以下は当日会場にて500円返金。
要学生証。
チケットの購入はコチラ!
Column
脱アフロからの決意表明
棘のライブバンド道を走り始めた
鶴が梅田クラブクアトロ2DAYSを
前に語る'12年の前回インタビュー