ホーム > マンスリー・センチュリー 2016 > 第11回 3月〔March〕
指揮:飯森 範親
ヴァイオリン:漆原 朝子
ハイドン:交響曲 第16番 変ロ長調 Hob.I:16
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第4番 ニ長調 K.218
ハイドン:交響曲 第37番 ハ長調 Hob.I:37
ハイドン:交響曲 第100番 ト長調 Hob.I:100「軍隊」
「ハイドン交響曲集Vol.1」もリリースされ、着々と成果を収めつつある日本センチュリー交響楽団の「ハイドンマラソン」。3月3日(金)、いずみホールでは今年度最後のハイドンマラソンが開催される。今回は第16番、第37番、第100番「軍隊」、そしてモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第4番が演奏されるが、交響曲の番号とハイドンの作曲時期には若干の異同がある。すなわち第37番が一番若くモルツィン伯爵家時代(1759~60)、第16番がエステルハージ家時代(1761~90)、第100番が2回目のロンドン時代(第2期ザロモン交響曲/1794)である。
今回ちょっと注目してみたいのが、第37番と第100番に印象的に導入されるティンパニの響き。祝祭的な華やかさや力強さを表現するために、ハイドンは実にセンスよくこの打楽器を使用した。特に第100番ではトライアングルや大太鼓、シンバルとともに異国的な響きを聴かせるが、これはトルコの軍楽隊をイメージしたものであるという。18世紀、トルコは大国であり、ヨーロッパのエキゾチズムの対象であったのだ。「軍隊」という愛称はここから採られている。
モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第4番でソリストに迎えられるのは、漆原朝子。センチュリーとのシューマン・チクルスでの共演は今もなお、語り継がれている。高度な技巧の中に音楽の情景を深く汲み取った誠実な演奏は、今回もまた聴く者を深い余韻に誘ってくれることだろう。なお、この作品もまたしばしば「軍隊」の名で呼ばれることは、ファンならばご存知の通り。今回は「軍隊」つながりなのだ。どこがどう「軍隊」なのか?そんな興味も持ちながら楽しみたい演奏会だ。
指揮:小泉和裕
ピアノ:小山実稚恵
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23
ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 作品68
日本センチュリー交響楽団の新たなラインナップ、豊中名曲シリーズのVol.1が3月26日(日)に開催される。拠点のひとつとなった豊中市立文化芸術センターに、まず第1回目に彼らが迎えるのは、初代音楽監督であり、センチュリーとは深い信頼で結ばれたマエストロ小泉和裕。そしてアーティスト・イン・レジデンス、小山実稚恵である。新シリーズの幕開けにふさわしい、華やかなステージが期待できる。
小山のピアノを迎えて贈る前半はチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番。雄大なホルンの序奏から一気に音楽の世界に引き込まれるピアノ・コンチェルトの名品である。センチュリーとはこれまで、数々の名演を残してきた小山が、新しいホールにまたひとつ素晴らしい演奏の歴史を刻む。そんな貴重な瞬間に立ち会うことができるコンサートとなるだろう。後半は小泉和裕とセンチュリーによる熟練のブラームスの交響曲第1番を。その重厚な響きと強靭な推進力を、新しいホールの空間で存分に感じ取ってみたい。
豊中市立文化芸術センターは阪急宝塚線「曽根」駅より東へ約300m(徒歩約5分)。大阪の中心部梅田から30分程度の距離にある。1300席の大ホール、200席の小ホール、隣接するアクア文化ホール(490席)、豊中市内のローズ文化ホールとともに日本センチュリー交響楽団も指定管理事業に名を連ねている。この後、センチュリーは2017年度に大ホールで4回の豊中名曲シリーズを行うほか、小ホールでは楽団員によるリサイタルシリーズを開催するなど、豊中市と連携しつつ新たな演奏活動を展開してゆく。その第1歩となる今回の演奏会。ぜひ多くの人に注目して、聴いていただきたいコンサートだ。
|
|
クラシック音楽を肩肘張らず、くつろいだ雰囲気で楽しめる大阪・北新地のサロン・ドゥ・アヴェンヌ。昨年6月から10月にかけて、日本センチュリー交響楽団の楽団員も出演し、コンサートとは一味違った空気の中で印象的な音楽の数々を演奏した。そのサロン・ドゥ・アヴェンヌに、3月17日(金)、再びセンチュリーのメンバーが出演する。 今回行われるライブはミュンヘン在住のピアニスト、サヴァリッシュ朋子との共演を含むもの。名指揮者ヴォルフガング・サヴァリッシュを義叔父に持ち、現在ヨーロッパを中心に演奏活動を行なう彼女が立ち上げた「サヴァリッシュ・クラシックス」シリーズのオープニングとなる。当日は二部構成。サヴァリッシュ朋子がヴォルフガング・サヴァリッシュの思い出を語る前半では、名歌劇場指揮者として、また日本ではNHK交響楽団と一時代を築いた巨匠として知られるサヴァリッシュの知られざる横顔に触れることができるだろう。後半にはいよいよセンチュリーからコンサートマスターの松浦奈々、首席チェロ奏者の北口大輔、ヴィオラの永松佑子の3名が登場。サヴァリッシュ朋子とともにモーツァルトの『ピアノ四重奏曲変ホ長調K.493』より第3楽章、そして3人のアンサンブルによる『ディヴェルティメント 変ホ長調K.563』を披露する。いずれも宮廷風の舞曲の香りを伝える雅やかな傑作だ。 この日は予約制。限定30名様なのでお席の確保はお早めに。春も近い一夜、ワインと食事を楽しみながら、モーツァルトを聴く贅沢。演奏者の息遣いまで感じられそうなサロン・ド・アヴェンヌの親密な空間で、華やかな舞踏会の調べに耳を傾けてみてはいかが? |
|
(取材・文/逢坂聖也 ぴあ関西版Web)
(2017年2月23日更新)