ホーム > マンスリー・センチュリー > 第7回「10月 October」

リムスキー=コルサコフ:組曲「見えざる町キテージと聖女フェヴローニャの物語」より 第1曲・第2曲・第3曲
ロドリーゴ:アランフェス協奏曲
ショスタコーヴィチ:交響曲 第5番 ニ短調 作品47

アラン・ブリバエフ

アラン・ブリバエフ(指揮)

 今年6月、ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」で、絶妙な音色の魔術を聴かせた首席客演指揮者アラン・ブリバエフが、10月23日(金)・24日(土)、第204回定期演奏会に登場する。カザフスタン出身の36歳。今や国際的な注目を浴びる若きマエストロだ。

 「日本ではあまり知られていませんが、リムスキー=コルサコフはロシアではまず、オペラの作曲家なのです。組曲「見えざる町キテージと聖女フェヴローニャの物語」は、彼の最後から2番目のオペラを編曲したもの。ロシアの伝承を基にしたとても神秘的で美しい作品です。この曲の真価をお伝えできるような、ドラマティックな演奏をしてみたいと思っています。そして、ショスタコーヴィチの交響曲第5番は20世紀を代表する交響曲のひとつ。複雑な政治状況を背景に持ちながら、人間の本質的なエネルギーが爆発したような作品です。決して楽観的な作品ではありません。でも私自身のアプローチによって、そのパワフルな生命力をお伝えすることが出来ればうれしいと思います」。6月18日、「展覧会の絵」の練習の合間を縫って、ブリバエフはそのように語ってくれた。

 そしてもうひとつ、注目しておきたいのが、今年、初演から75年を迎えるロドリーゴの「アランフェス協奏曲」だ。多くの録音によって親しまれている曲だが、音量のバランスの難しさなどから、意外に実演の少ない作品でもある。ただし、実演に聴くギターとオーケストラの対比は圧倒的。有名な第2楽章のみならず、全曲からスペインの眩ゆい魅力が降り注ぐ。陰影に富んだギターの音色を楽しみたいところだ。

 アラン・ブリバエフは「私はこうしたプログラムの“変化”を常に楽しみます。シリアスなロシアの作品の合間に「アランフェス」を置くことで、それぞれの作品の個性がさらに際立つのです」と続ける。今回もまたその色彩のマジックに嵌る演奏会になりそうだ。

【ソリスト変更のお知らせ】10月23.24日/第204回定期演奏会
ソリストとして出演を予定していましたギタリストのミロシュ氏が日本ツアーを目前にして体調不良のため、来日が不可能となりました。ソリストとしては村治奏一氏が出演いたします。また曲目の変更はありません。詳しくは日本センチュリーHPまで。

斎藤高順:『東京物語』より
芥川也寸志:「八甲田山」より
早坂文雄(松木敏晃編曲):交響組曲『七人の侍』
池辺晋一郎:『春を背負って』より
伊福部昭:交響ファンタジー『ゴジラVSキングギドラ』


 今年5月、四季コンサートのオープニングを、ボブ佐久間指揮のポップスコンサートで飾るなど、様々な新機軸を打ち出しているセンチュリー。そのラインアップの中にあって、今回のプログラムは最も異彩を放つものかも知れない。題して「戦後のスクリーンを支えた日本の名作曲家たち」。小津安二郎の『東京物語』(1953)から木村大作の『春を背負って』(2012)まで、名匠たちが描く風景に寄り添った魅力的な音楽の数々を取り上げる。

 『東京物語』の音楽を手掛けた斎藤高順(1924-2004)はこの作品が機縁となって、多くの小津作品の音楽を担当した。その後は航空自衛隊航空中央音楽隊長などを務め、主に吹奏楽の分野に多くの業績を残している。また作家・芥川龍之介の三男としても知られる芥川也寸志(1925-1989)も数多くの映画音楽を手掛けた。『八甲田山』は森谷司郎監督による1977年作品。過酷な雪中行軍を描いた映像に添えられたのは、胸を打つ雄渾な名旋律である。映画史上屈指の完成度ともいえる黒澤明の名作『七人の侍』(1954)には早世の天才・早坂文雄(1914-1955)が畢生の名曲を与えた。陸上自衛隊中央音楽隊所属の作曲家・松木敏晃は、早坂の音楽から3楽章の編曲版を完成。今回演奏されるのはこの決定版ともいうべき交響組曲『七人の侍』である。名カメラマン、木村大作がその監督第2作として手掛けたのが『春を背負って』(2014)。立山連峰の四季を背景に、ここでは池辺晋一郎(1943-)が登場人物たちの哀歓に寄り添うような、瑞々しい音楽を聴かせている。そして今回、大いにホールを沸かせそうなのが巨星・伊福部昭(1914-2006)の交響ファンタジー『ゴジラVSキングギドラ』だ。伊福部にはこの作品に先立つものとして、SF交響ファンタジー三部作があるが、4作目となる本編において『ゴジラ』(1954)以来の東宝特撮映画のエッセンスをさらに魅力的に抽出。壮大に鳴り響く「自衛隊のマーチ」は怒涛の勢いでファンの熱狂を誘うに違いない。

 国際的にも高い水準を誇る日本の映画音楽だが、映像を離れて演奏される機会は多くはない。今回のコンサートは、日本の作曲家たちがクラシックの歴史と歩を並べるようにして歩んだもうひとつの音楽の歴史に光を当て、正しく次代へ繋げていく好企画だと言えるだろう。

【指揮者変更のお知らせ】10月3日 四季コンサート秋
当初出演を予定していました本名徹次氏が体調不良のため、現田茂夫氏が出演いたします。曲目の変更はありません。 詳しくは日本センチュリーHPまで。

 今年も11月1日(日)から豊中市では「豊中まちなかクラシック2015」を開催。12月2日(水)までの約1ヵ月間にわたって市内各所で様々な演奏会が展開されます。

2013年 センチュリー・オーケストラハウス

 日本センチュリー交響楽団が本拠を置く豊中市は、現在、人口約40万人を数える中核市。大阪府の北に位置し、隣接する池田・箕面・吹田市などとともに、大阪の衛星都市圏を形成しています。「豊中まちなかクラシック」はこの豊中市と日本センチュリー交響楽団の協定のもと、2012年から行われているもの。寺院や教会、センチュリー・オーケストラハウスや市内に残る歴史的建造物などを会場に“まちなか”で楽しむコンサートです。それぞれの会場には、日本センチュリー交響楽団が特別に編成する多彩なアンサンブルやオーケストラが登場し、今年は全9会場で13公演が開催されます。

 日本福音ルーテル豊中教会の礼拝堂で聴くモーツァルトの弦楽三重奏曲(第2公演:11月3日(火・祝)13:00-14:00)や、正岡子規も訪れたという、東光院 萩の寺で聴く木管楽器アンサンブルによるJ.S.バッハのカンタータ(第5公演:11月8日(日)12:00-13:00)、さらには江戸時代には庄屋屋敷であった桜の庄兵衛ギャラリー・土間でのJ.S.バッハ、コダーイの無伴奏チェロ(第7-1公演:11月21日(土)12:00-13:00・第7-2公演:11月21日(土)15:00-16:00)など、独特のロケーションで味わうクラシックの魅力は格別。そして最終日の12月2日(水)には阪急曽根駅前のアクア文化ホールに首席指揮者・飯森範親を迎え、日本センチュリー交響楽団がベートーヴェンの交響曲第5番「運命」ほかを演奏します。

2014年 日本福音ルーテル豊中協会

2014年 東光院 萩の寺

 ご鑑賞ご希望の方はパンフレット、豊中市のHP(豊中まちなかクラシック)をご覧の上、往復はがきでお申し込みください。締切は10月13日(火)必着。各会場とも定員があるため、応募者多数の場合は抽選となります。豊中市内にお住まいの方、そして市外にお住まいの方も振るってご応募ください。「音楽あふれるまち・豊中」の魅力がぎっしり詰まった音楽のページェントです。