ホーム > マンスリー・センチュリー > 第6回「9月 September」

グラズノフ:交響詩「ステンカ・ラージン」作品13
パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 ニ長調 作品6
ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 作品92

マルティン・ジークハルト

マルティン・ジークハルト(指揮)(c)Robert Maybach

神尾真由子

神尾真由子(ヴァイオリン) (c) Shion Isaka

 日本センチュリー交響楽団は、9月18日(金)、19日(土)、ザ・シンフォニーホールで行われる第203回定期演奏会に、オーストリアの指揮者マルティン・ジークハルトを迎える。マルティン・ジークハルトは1951年生まれ。ウィーン交響楽団でチェロ奏者から指揮者に転じ、その後シュトゥットガルト室内管弦楽団、リンツ・ブルックナー管弦楽団の首席指揮者、リンツ歌劇場の音楽監督などを歴任。国際的な成功を収めた。センチュリーとは2011年9月に続く2回目の共演となる。

 開幕を飾るのはグラズノフの交響詩「ステンカ・ラージン」。1885年、グラズノフが20歳で書き上げた作品で、17世紀、圧政下のロシアで反乱軍を率いたコサックの首領ステンカ・ラージンを描く。濃厚なロシア情緒とドラマティックな展開が印象的な作品だ。

 今回ソリストとして登場するのは、2007年、第13回チャイコフスキー国際コンクールの覇者、神尾真由子。曲はパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番(1819)だ。パガニーニの作品に要求される高い技巧と表現力は、当時、作曲者が悪魔に魂を売って手に入れた、と噂されたほど。ヴァイオリン奏法の革新者であった彼の影響は、リストをはじめとするロマン派の演奏家たち全般に及んでいる。もちろんこの1番でも聴かせどころが頻出。チャイコフスキーの協奏曲とは一味違ったスリリングな神尾のヴァイオリンに注目したい。

 そしてメインプログラムとなるのが、ベートーヴェンの交響曲第7番(1813)。ドラマやCMなどで使用されることも多く、演奏回数も高い人気曲だが、ベートーヴェンの独創性が随所に見られ、発表当時はさまざまな評価に見舞われた作品でもある。全楽章がすべて特徴的なリズムで構成され、後年ワーグナーが「舞踏の神化」と呼んだ熱狂的なクライマックスに向けて、鮮やかに盛り上がってゆく。ジークハルト、センチュリーの出会いが織り成すオーケストラの色彩感に、われを忘れて酔いたい1曲だ。

 2015-2016シーズン、充実した演奏を重ねているセンチュリー。今回の悪魔と神が顔を覗かせる絶妙のプログラムで、前半の山場を迎える。

ハイドン:交響曲 第77番 変ロ長調 Hob.I:77
ハイドン:トランペット協奏曲 変ホ長調 Hob.VIIe:1
ハイドン:交響曲 第14番 イ長調 Hob.I:14
ハイドン:交響曲 第101番 ニ長調 Hob.I:101

飯森範親

飯森範親 (指揮)(c)s.yamamoto

小曲俊之

小曲俊之 (トランペット)(c)s.yamamoto


 9月25日(金)、日本センチュリー交響楽団のいずみ定期演奏会はハイドンマラソンのVol.2。演奏される作品は、1762年(ハイドン30歳!)に作曲されたとされる「第14番」から、1794年(ハイドン64歳!)の第101番「時計」まで、ハイドンの幅広い創作の時代から選ばれている。

 今回特に注目したいのが、これら交響曲の間に置かれた「トランペット協奏曲」である。この作品はハイドンの友人でオーストリアの宮廷楽士であったアントン・ヴァイディンガーのために、1796年(ハイドン64歳!)に書かれている。ハイドンの時代、トランペットは現代のように音程を調節するバルブを持たず、ごく限られた音階しか出せなかった。ヴァイディンガーはこれを改良し、トランペットに穴を開け、調節用の鍵を取り付けることですべての音階を出せるようにしたのである。つまり、ここに聴かれるトランペットの音は、当時最先端、最新鋭の楽器の音だったのだ。今回、トランペット・ソロを披露するのは日本センチュリー交響楽団首席トランペット奏者、小曲俊之。ソロ冒頭から鳴り渡る軽快なドレミの音型は、およそ220年前に新しい可能性を拓いたこの楽器の喜びを伝えてくれる。

 「交響曲の父」または「パパ・ハイドン」とも呼ばれるハイドンは、その老成した印象によって、若々しさから遠ざけられ、地味なイメージの中に閉じ込められがちである。しかしこの「トランペット協奏曲」、そして3曲の交響曲にみられる通り、彼は進取の気象に富み、生涯にわたって瑞々しい音楽を作り続けた作曲家である。作品はウィットとユーモアに溢れ、時にハッとするような洞察に満ちている。このハイドンマラソンはそんな彼の魅力を明らかにし、その音楽に新たな生命を吹き込む冒険。いずみホールの8つのシャンデリアの下、華やかに繰り広げられるハイドンの夜会を、訪れてみてはいかが?


(C)s.yamamoto

 9月8日(火)、19:00より、大阪梅田島村楽器グランフロント大阪店、スタインウェイルームにおいて、第2回ハイドン大學が開講されます。ハイドン大學って何?と言う人のために、ここでちょっと前回を振り返ってみたいと思います。ハイドン大學とは日本センチュリー交響楽団の「ハイドン・マラソン」と連動した音楽講座。「大學」を聴き、「マラソン」を聴くことで、より深くハイドンの世界を知ることができるという立体的な企画なのです。第1回開催は5月19日。この日講師を務めたのは、元桐朋学園大学教授の大崎滋生先生。1978年から79年にかけてドイツ・ケルンのハイドン研究所で調査に当たった、ハイドン研究の第1人者です。会場は満席。第1回ハイドン・マラソン(いずみ定期演奏会No.27)の開催直前ということもあり、「ハイドン入門-全体像をわかりやすく」というテーマで講演が行われました。

 まず「シンフォニー」の起源とは?という前史から始まり、シンフォニーの歴史におけるハイドンの位置づけなど、ちょっと硬めな話に思われるかも知れませんが、ハイドンってどんな作曲家?ということを知るにはうってつけの講義。エステルハージ家での宮廷楽長としての生活、ロンドンでの成功、そして楽長への復帰と晩年など、彼の生涯がレジュメに沿ってわかりやすく述べられていきます。このレジュメは保存版。専用バインダーに入れてお持ち帰りいただけます。

 ハイドンの作品にニックネームが多いのはなぜか?など、興味深い内容も語られます。そう言えば、9月25日の第2回ハイドン・マラソン(いずみ定期No.28)でも交響曲第101番「時計」が演奏されるので、そのあたりも気になるところ。大崎先生はこれをハイドンが当時の大人気作曲家であったことの証だと捉えます。英語でつけられたニックネームが多いのも、その理由のひとつ。「時計」の由来についてはぜひコンサートで確かめてみてください。

 「ハイドン大學」の模様、おわかりいただけたでしょうか? さて、第2回のハイドン大學には講師として、大阪教育大学准教授でトランペット奏者の神代修氏を迎えます。テーマは「ハイドンとトランペット」。今回はいずみ定期演奏会No.28で演奏される「トランペット協奏曲」を題材に、ハイドンの時代からのトランペットの変遷を解説していきます。時代ごとの楽器の制約や、機能の拡大は、オーケストラを語る上で大切な条件のひとつ。参考となる古楽器も登場しますので、ぜひご期待ください。お申し込みは下記要領まで。

場所:島村楽器グランフロント大阪店 スタインウェイルーム
   (大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪北館5F)
時間:各日19:00開始(※18:30より受付開始)
定員:40名(※要申込)
受講料:一般 4,000円(税込)
   :演奏会チケットとセット価格 8,000円(税込)
   :日本センチュリー交響楽団各種会員 3,500円(税込)
お申込:センチュリー・チケットサービス■06-6868-0591(営業時間:平日10~18時)

【関連サイト】
ハイドン大学の詳細はこちら―日本センチュリー交響楽団

日本センチュリー交響楽団「ハイドン大学」グランフロント大阪店にて開講いたします!