ホーム > マンスリー・センチュリー > 第1回「4月 April」

和田 薫:祝饗 ~日本センチュリー交響楽団のためのファンファーレ~(委嘱作品、世界初演)
シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 作品54
マーラー:大地の歌

飯森範親(指揮)
(C)Ryo Kawasaki

小山実稚恵(ピアノ)
(C)ND CHOW

福井敬(テノール)

与那城敬(バリトン)
(C)Kei Uesugi

 2015年度を迎え「挑戦」をテーマに掲げる日本センチュリー交響楽団の新しいステージが始まる。センチュリーではこれを記念して、作曲家、和田薫に「祝響~日本センチュリー交響楽団のためのファンファーレ」を委嘱。第200回を迎える定期演奏会のオープニング作品として演奏する。東洋的な色彩感に溢れた作風で知られ、映画、アニメ、ゲームなどの分野でも幅広く活躍する和田薫の新作を得て、飯森範親とセンチュリーが切り開く新しい響きを感じ取りたい。

 そして今回、注目したいのが、今年センチュリーが「アーティスト・イン・レジデンス」として迎えるピアニスト、小山実稚恵の登場だ。「アーティスト・イン・レジデンス」とはもともと、美術の分野で用いられて来た言葉で、アーティストを招聘し、一定期間、滞在してもらいながら作品などの制作を行うこと。オーケストラの試みとしては全国に先駆けるものだが、小山は今後1年、定期への客演以外にも、さまざまな活動を通してセンチュリーと密接に関わっていくという。その第一歩となるシューマンの「ピアノ協奏曲」。人気・実力ともに日本を代表するピアニストである小山とセンチュリーの連携が、さらに実り豊かな成果を生むことを期待したい。

 メインプログラムは2014シーズンから集中して取り上げている作曲家マーラーの『大地の歌』。テノールに福井敬、バリトンに与那城敬を迎える男声歌唱版だ。中国、唐代の詩を編訳したとされるハンス・ベートゲの「中国の笛」に題材を得た全6楽章。歌詞は命の儚さを歌ったものと言われるが、終章で大地には再び春がめぐり来、永遠へと回帰する。飯森=センチュリーは、そのイメージに富んだ世界を最高の歌唱陣とともに、色鮮やかに表現してくれるに違いない。東洋的な色彩はコンサート冒頭のファンファーレに呼応する予感。200回記念にふさわしい豊饒なプログラムだ。

飯森範親さんからの動画コメントはこちら

「ユー・レイズ・ミー・アップ」
「タイム・トゥ・セイ・グッドバイ」
「タイタニック」
ガーシュウィン・メドレー
ロマンティック・シャンソン~「枯葉」、「サン・トワ・マミー」ほか
ロマンティック・スタンダード・バラード~「虹の彼方に」、「酒とバラの日々」ほか
グッド・オールド・スイング~「イン・ザ・ムード」、「A列車で行こう」ほか


ボブ佐久間(指揮/編曲)

 クラシックばかりがオーケストラの魅力じゃない! センチュリーのもうひとつの顔とも言える、楽しさ満載のポップスコンサートが、いずみホールの「四季コンサート」に登場する。指揮は、現在この分野の第一人者とも言えるボブ佐久間だ。東京交響楽団第1ヴァイオリニストを経て、作曲家、編曲家に転向、アニメやミュージカルなど数多くの作品を手がける彼は、今やポップスコンサートの指揮者としても屈指の存在。全国の主要オーケストラに招かれ、多くのリピーターを生み出すほどの人気を博している。オーケストラの魅力を存分に引き出すカラフルなサウンドは、観客だけでなく演奏者からも熱いラブコールが送られるほど。プログラムはアイリッシュの魅力に満ちた『ユー・レイズ・ミー・アップ』やサラ・ブライトマンなどの名唱で知られる『タイム・トゥ・セイ・グッドバイ』から、『枯葉』『サン・トワ・マミー』などのシャンソン、そして『イン・ザ・ムード』『A列車で行こう』などのスイングまで、まさに永遠の名曲のオン・パレード! クラシックを知り、ポップスを知り、そして音楽の楽しさを知るボブ佐久間が贈る、魅惑のセンチュリーサウンドを味わいたい。オーケストラは聴いたことがなくて…というかたも、まずはここから。

ボブ佐久間さんからの動画コメントはこちら

 

「哲学カフェオーケストラ庄内」しょうない音楽祭で演奏


哲学カフェオーケストラ庄内の演奏


プログラムディレクター 野村誠

 3月14日、豊中市庄内のサンパティオホールで行われたしょうない音楽祭。日本センチュリー交響楽団はここで「哲学カフェオーケストラ庄内」を開催しました。これはセンチュリーと豊中市、庄内図書館から始まった市民活動であるしょうないREK、大阪大学CSCD(コミュニケーション・デザインセンター)が共同で行ったもの。「哲学カフェ」とは、カフェなどの開かれた場所で、あるテーマについて身分や立場に関係なく自由に対話する、フランスで始まった試みです。昨年の12月からこれまで6回にわたって、一般の参加者やしょうないREKのメンバー、そしてセンチュリーの楽団員たちが、大阪大学CSCD特任教授の西川勝、楽団のコミュニティプログラムディレクターを務める作曲家の野村誠と一緒にワークショップを開き、知識や経験に関わりなく、自由な発想で音楽を創りあげて来ました。

 午後1:00から始まったしょうない音楽祭には前半に、市内の野田小学校ブラスバンドの演奏や庄内小学校の生徒によるエイサーほかが登場。入場は無料ですが、200人ほど収容のホールは、時間帯によっては立ち見がでるほどの盛況でした。そして後半、日本センチュリー交響楽団、しょうないREKのメンバー、そして一般の参加者から成る哲学カフェオーケストラ庄内が登場しました。

 西川勝先生の挨拶に続いて、哲学カフェオーケストラ庄内はまず「手拍子のロンド」を演奏。手拍子が鳴らされ、次第に音が重ねられ、講談が始まり、また手拍子に戻る。そのユニークな音楽に会場は拍手喝采。続いて演奏された「日本センチュリー交響楽団のテーマ」(庄内編)では「みんなよろしく」というご挨拶がグレゴリオ聖歌の「怒りの日」の旋律に歌い込まれるなど自由さが全開。「日本センチュリー交響楽団」「ビバ!庄内」などの言葉のリズムが音楽に活かされ、ステージと会場が一体となった演奏が繰り広げられました。

 哲学カフェオーケストラ庄内で作曲、演奏をリードした野村誠さんは「オーケストラを聴く、というだけの楽しみではなくて、そこに参加する。またはオーケストラも一般の人と一緒に何かをやってみる。そんな新しい楽しみ方を、これから僕はセンチュリーと一緒に創っていきたいんです」と話してくれました。センチュリーはこれまで「豊中まちなかクラシック」と題するコンサートを市内の寺院や教会ほかで開催し、音楽を身近に届ける活動を行って来ましたが、今回の「哲学カフェオーケストラ庄内」はその活動をさらに推し進め、一般の人たちと音楽家がより深く交流する試み。オーケストラがその拠点とする地域を魅力的なものにするために何ができるのか。そんな課題のもとセンチュリーが取り組む多彩なアウトリーチ活動のひとつとして、興味深い成果を残した演奏会でした。