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公演情報

MONO『悪いのは私じゃない』

1月16日(日) 一般発売 Pコード:506-572
●2月26日(土)・27日(日)
(土)18:30 (日)13:00/17:00
北九州芸術劇場 小劇場
全席指定 一般-3500円
全席指定学生(小~大学生)-3000円(当日、要学生証提示)
※未就学児童は入場不可。
※有料託児サービスあり、詳細は問合せ先まで(公演7日前までに要申込)。
※高校生[的]チケット(1,000円)は劇場窓口・前売のみ販売、詳細は問合せ先まで。
【問】北九州芸術劇場■093-562-2655

 

1月15日(土) 一般発売 Pコード:510-398
●3月11日(金)~20日(日)
(月)(水)(木)(金)19:00 (土)(日)14:00
※3/18(金)14:00、3/19(土)14:00/19:00。
※3/15(火)休演。
吉祥寺シアター
指定席 一般-4200円
指定席 25歳以下-2000円(当日要身分証)
ペアチケット-7600円(2名分/座席指定引換券)
※未就学児童は入場不可。
※ペアチケットは公演当日会場にて座席指定券と引換え。
【問】サンライズプロモーション東京
■0570-00-3337

 

1月15日(土) 一般発売 Pコード:510-155
●3月5日(土)・6日(日)14:00
岡山県天神山文化プラザ
整理番号付き自由席-3000円
※未就学児童は入場不可。
※チケットはインターネットでのみ販売。
【問】岡山芸術創造劇場■086-225-0154

 

1月15日(土)一般発売 Pコード:510-464
●3月23日(水)~27日(日)
(水)(木)19:00 (金)14:00/19:00 (土)(日)14:00
ABCホール
一般-4000円(指定)
U-25-2000円(指定、25歳以下、要身分証明書)
ペアチケット-7200円
【作・演出】土田英生
【出演】水沼健/奥村泰彦/尾方宣久/金替康博/土田英生/石丸奈菜美/高橋明日香/立川茜/渡辺啓太
※未就学児童は入場不可。
※ペアチケットは公演当日会場にて座席指定券と引き換え。
【問】キューカンバー■075-525-2195

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第33回『戯曲と小説』土田英生

MONOの30年の道のりをメンバーや関係者の話から紐解く連載の第33回。
今回は2016年、2017年の公演と小説『プログラム』について土田さんに語っていただきました。

 

――今回は2016年『裸に勾玉』からお願いします。弥生時代を舞台にした時代劇でしたね。卑弥呼が死亡する少し前、狗奴(くな)の国と邪馬台国が交戦状態になる時代に、ある集落の外れに住んでいる家族の三兄弟の物語を中心に、その周りに住む人たちが“ある選択”を迫られるという物語。本作はご自身でも「書けた」とおっしゃっていた作品でした。

「弥生時代の言葉で会話する」という試みが随分画期的だと思ったんです。フィクションではあるんですが、かなり文献や資料も調べましたし。その上でいつものように笑いもあって、物語としてもきれいに収斂して終わる。これは代表作として残してもいいなというぐらい、気に入っています。

2016年3月5日~13日 シアタートラム、3月19日・20日 愛知県芸術劇場小ホール、3月23日~27日 ABCホール

 

――ここまで「虚構」の世界を構築した作品はあまりないですね。

江戸時代を設定した「時代劇」はあると思うんですけど、弥生時代のしかも日常的な会話劇ってあんまり聞いたことないですよね。弥生時代の日常を描きながら、同調圧力を感じる息苦しい現代社会への反発も含めて書きました。

――ディケンズの『二都物語』を脚色したこともきっかけに?…。(「2013年に草彅剛さん・堀北真希さんらが出演していた『二都物語』の脚本を書いたのですが、チャールズ・ディケンズの原作では「フランス革命の頃のロンドンとパリ」という設定だったものを「邪馬台国と狗奴の国」に変更して脚色しました」-公演プレスリリースより)

それもあったのですが、どちらかと言えば、元々MONOで「時代劇をやろう」っていうのがあったんです。チャンバラじゃない時代劇。けれど映画で『武士の家計簿』(2010年公開)や『超高速!参勤交代』(2014年公開)など、日常を面白く描いた時代劇が話題になって次々公開されていった時期で、「目新しくはないな」と。それと同時にツアーで回る予定だったので、時代劇に必須な結髪さんや床山さんにも付いて回ってもらうことになると。金額的にキツイことになると分かって。それで時代を遡っていったんですけど、いつまでたってもカツラが必要なんですよ(笑)。平安時代とかも。結果、カツラが要らないのが弥生時代でした。それこそ『二都物語』を書く際に邪馬台国の資料をたくさん読んでましたし、下準備も随分楽だなと。

――翌年の公演は『ハテノウタ』でしたが、2月に小説『プログラム』を出版されました。小説を書かれるきっかけを教えていただけますでしょうか?

もともと関西にいらして、演劇にも関わっておられる栂井さんという方が、いわゆる出版エージェント的な仕事をされていらっしゃったんです。その方が「土田さん、小説書いたらどうですか?」と。その方との繋がりで河出書房新社から出版されることになりました。自分の中で「新しいことができる」という期待感がありましたし、いただいたチャンスなのでやってみようと。でもやってみて「小説」というジャンルは得意ではないなと感じました。

――そう思ったのはなぜですか?

やっぱり小説は、全部文字だけで示さないといけない。戯曲はト書きとセリフで書く。ト書きは外側からみた動きの指示。つまり行動をそのまま見せられるんですけど、小説だとそれを「地の文」で書かないといけないじゃない。その書きようがわからないんです。簡単な言葉だったらもちろん書けるんですけど、言葉だけで表現するとなると修辞の仕方もわからないんです。例えば青空を表現しようと思ったときに、「澄んだ空が広がっていた」と書くとこれはちょっとチープかな、かといって、「まっさらな紙の上に、水彩絵具をこぼしたような青空が広がっていた」みたいな表現は恥ずかしくて書けないし(笑)。戯曲だと「晴れた日」って書けば済みますからね。

――そうですね。演劇は戯曲があって、その上で役者、スタッフも含めてのいろいろな方と作り上げていくものですけど、小説は、全て自分の中で構築していくものですからね。

一緒に組んだ編集者の方が非常に好意的な人で、いろんな小説家と組んでやってらっしゃるのに、僕のことも素人扱いせず尊重して接していただきました。僕のやりたいことを相談すると、「土田さんのいいように書いてください」と。例えば簡単な文章でも「いいですね~」と褒めてくださったんで、その点では楽でしたけどね。

――『プログラム』は映画『それぞれ、たまゆら』の原案にもなっていますし、舞台、小説、映画とエンタテインメントのジャンルを横断した作品になっていますね。

そうですね。でも、もともと小説用には別の話を書いたんですよ。

――違う物語を?

自分の実年齢のこともあって「中年男性が若い女の子のサポートをするうちに入れあげてしまう。そうすると、『あの、いや、そんなんじゃないんです』って向こうから言われる」っていう物語です。アンドレ・ジイドが高校の時好きだったんです。ジイドの『田園交響楽』がまさにそういう作品なんですね。盲目の女性を牧師が世話しているうちに好意を持つ。そんな時、牧師の息子が帰ってくるんです。それで盲目の女性が目の手術をして、治ったら息子と恋に落ちちゃうんですよ。想像していたあなたの外見はまさに息子さんだったと……。そういう話を書こうと思ってたんですけど、恋愛の話を書くのが恥ずかしくて、恥ずかしくて(笑)。それで、途中でもう「無理です」って編集者の方に言ったら「土田さんらしく、お芝居を小説化したらどうですか」と。それで『プログラム』になりました。

――小説『プログラム』が発売された後、3月に行った公演が『ハテノウタ』でした。ある薬の普及で100歳間近になっても若いままの人々がいる世界が舞台。薬の服用の度合いによって老け方は違うが、共通しているのは、今年中に全員死ななければならないということ。そんな状況の中でみんなはカラオケボックスに集まり、懐かしいエピソードで盛り上がりながら唄う。……。という物語でした。

この公演は「画期的な設定を思いついた」と思ったのですが、はっきり言うと、ちょっと時間が足りなかったですね。せっかくの設定を生かしきらずに終わったと後悔しています。違う世代の役者が同じ年齢として出られる設定なんて、なかなかないじゃないですか。あの公演には高橋明日香さん、松永渚さん、松原由希子さんという当時は20代だった俳優と、MONOのメンバー、そして浦嶋りんこさんも出ていただいてましたから。もともとこの作品はミュージカルにしようと思っていたんですよ。僕たちは歌が下手なので、「下手でもできるミュージカル」って考えて、カラオケボックスで同窓会という設定も入れてみたんですけど、ちょっと欲張りすぎました(笑)。100歳で死ぬ話だけにするか、カラオケボックスだったらカラオケボックスだけでやるか。どちらかにすれば良かったかなと今は思っていますね。

2017年3月3日〜7日 ABCホール、3月11日・12日 北九州芸術劇場小劇場、3月18日・19日 四日市市文化会館第1ホール舞台上特設ステージ、3月24〜29日 東京芸術劇場シアターウエスト

 

取材・文/安藤善隆
構成/黒石悦子