ホーム > LOSTAGE 五味岳久の奈良からの手紙~LOVE LETTER form NARA~ > 第8回 オオルタイチさん×浅村朋伸さん



 

Profile

オオルタイチ(写真左)
1999年、多重録音されたカセットアルバム『?』リリースを機に音楽活動をスタート。その後、打ち込みのトラックに“歌”を乗せるスタイルへと変化。そして2007年には『Drifting My Folklore』で新たな一面を見せた。アメリカツアー、EUツアー(いずれも2009年)と活動の場は世界へと拡大。振付家・ダンサーの康本雅子との共演、舞台への楽曲提供、アニメ映画の音響・音楽監督なども手がけている。2015年1月に公開された、スターフライヤーと北九州芸術劇場による共同製作PV『そらダン』で音楽を担当。また、4月15日(水)にリリースされる水曜日のカンパネラの新作EP『トライアスロン』に楽曲を提供している。現在は活動停止中だがバンド、ウリチパン郡でもボーカルと作曲を担当。

『そらダン』PV

オオルタイチHP
http://www.okimirecords.com/

 

浅村朋伸(写真中)
1996年より滋賀県にて故・高橋俊夫氏に仏像彫刻、修復技法を学ぶ。3年間の基礎修行を終えた後、九州や大阪で彫刻の修行を経て2011年、奈良市にて独立。天台寺門宗 総本山三井寺 熊野社 本地仏(阿弥陀如来、薬師如来、千手観音菩薩)などを手がける。普段は仏像の製作、修理を行うが、Daedelus、Battlesら海外のミュージシャンからの依頼で作品を製作することも。仏師としての活動のほか、天台寺門宗 総本山三井寺が2012年より和歌山県、奈良県、大阪府に跨る日本最古の山岳修行ルートである「葛城二十八宿」の入峯修行を復興するにあたって、調査の依頼を受け、ルート設定と山伏の入峯修行の道案内を行っている。

浅村朋伸の世界一周自転車旅行記
http://www.shiga-miidera.or.jp/travel/index.html


五味岳久(写真右)
ロックバンドLOSTAGEのボーカル&ベース。地方発信/地域密着をモットーに、地元奈良を拠点に独自の活動を展開中。メジャー/インディーを問わず、様々なジャンルのアーティストとの親交も深い。2011年、結成10年目の節目に自主レーベルTHROAT RECORDSを設立、ミニアルバム『CONTEXT』をリリース。2012年7月にはフルアルバム『ECHOES』を発表し、『FUJI ROCK FESTIVAL'12』に初出演も果たした。2014年、ニューアルバム『GUITAR』をリリース。4月18日(日)のRECORD STORE DAYに合わせ、シンガーソングライター長谷川健一とのスプリット7inchをリリース。

LOSTAGE HP
http://www.lostage.co/

五味岳久オフィシャルサイト
http://takahisagomi.com/

THROAT RECORDS
http://throatrecords.tumblr.com/

Release

【オオルタイチ】

『Flower Of Life EP』
発売中

Flower Of Life EP

\1,800(税込)/OKIMI-015
<収録曲>
01.Flower Of Life
02.Flower Of Life? HAPPY JEEZUZ MIX
(Remixed by Dustin Wong)
03.Beauty Step / 5:09
04.Minor / 6:30

 

『Cosmic Coco, singing for a billion Imu's Hearty Pi』
発売中

Cosmic Coco, singing for a billion Imu's Hearty Pi

\2,571(税込)/KBS-DDCO-1012
<収録曲>
01.Tiger Melt
02.Futurelina (Album version)
03.Shiny Foot Square Dance
04.Coco (feat. OLAibi)
05.Vofaguela
06.Sononi
07.Merry Ether Party
08.Venus
09.Linking Pi
10.Permanent Candy
11.Futurelina (EYE remix)
12.Futurelina (Daedelus remix)

 

【LOSTAGE】

長谷川健一×LOSTAGE
スプリット7インチ
4月18日(日)発売

\0000(税込)/THR-009
長谷川健一「僕は今ここにいる」

 

LOSTAGE
『GUITAR』
発売中

GUITAR

¥2,300(税込)/DDCZ-1968

<収録曲>
01. コンクリート / 記憶
02. Nowhere / どこでもない
03. いいこと / 離別
04. Guitar / アンテナ
05. 深夜放送 / Unknown
06. Flowers / 路傍の花
07. Boy / 交差点
08. Good Luck / 美しき敗北者達

Live

【オオルタイチ】

『パラシュートセッション祭 2日目 昼
<オオルタイチ+ウタモ × 吉田ヨウヘイgroup>』
▼5月2日(土) 13:30

月見ル君想フ(東京)
前売-2800円 当日-3300円
(ドリンク代500円別途要)
[出演] オオルタイチ+ウタモ/吉田ヨウヘイgroup
[問] 月見ル君想フ

『オオルタイチ企画/
キセル ライヴ in なら/
~土からの音色 ぼくの合いの手~』
▼5月5日(火・祝)19:30

cafe polkadot(奈良)
[出演]キセル/五味岳久&五味拓人(from LOSTAGE)
[DJ]オオルタイチ
※SOLD OUT
[問] OKIMI RECORDS

Pコード:259-487
『キセル ライヴ in わかやま/~スパイラルスパイス お好みでご使用ください~』

▼5月6日(水・休) 19:30
バール・ヌメロ・オンセ(和歌山)
オールスタンディング-3000円(整理番号付)
[出演]キセル
[BGM]オオルタイチ
[問]バール・ヌメロ・オンセ
[TEL]073-425-1222
チケット情報はこちら

Pコード:781-398
『森、道、市場2015 ~モリハイヅコへ~』
▼5月8日(金)~10日(日)

ラグーナビーチ(大塚海浜緑地) (愛知)
8日前夜祭入場券-800円
9日入場券-1850円
10日入場券-1850円
9日・10日通し入場券-3500円
9日臨時駐車場券-1500円
10日臨時駐車場券-1500円
9日・10日通し臨時駐車場券-3000円
[出演]toe/JUN”JxJx”SAITO/
john*,Tim Scanlan,トシバウロン,野口明生+tricolor/スチャダラパー/ドレスコーズ/
□□□/tofubeats/青葉市子/奇妙礼太郎/
SIMI LAB/kz/オオルタイチ/Avec Avec/
tricolor/水中、それは苦しい/yojikとwanda/
SPECIAL OTHERS ACOUSTIC/cero/
サニーデイ・サービス/Polaris/砂原良徳/
ハンバートハンバート/KIMONOS/
ジム・オルーク/group_inou/やけのはら/
ALTZ/HARCO/ザッハトルテ/タテタカコ/
T.V.not january/てあしくちびる/他
※出演者は、5/8(金)、9(土)、10(日)のいずれかに出演。
※最新情報・注意事項等は公式HP・ブログにてご確認ください。チケットを購入した時点で、注意事項すべての記載内容に同意したものとみなします。チケットは当日限り有効。開催時間=10:00~20:00。但し、5/8(金)は17:00~22:00。駐車場利用時間=8:00~22:00(22:00までに出庫)。但し、5/10(日)は8:00~21:00(21:00までに出庫)。チケットは、当日会場にてリストバンドと引換え。小学生以下は保護者同伴に限り無料。
[問]森、道、市場実行委員会
[TEL]080-4309-1245
※オオルタイチ出演は5/9(土)。オオルタイチソロセットおよび、別ブースにてアコースティックライヴも予定。
チケット情報はこちら

『ジスイズパラダイス』
▼6月6日(土)11:00

一言カフェ(静岡)
[出演]sugar me/オオルタイチ+ウタモ/
惑星のかぞえかた/ペガサス/
6birds barked in the park/steteko
[チケット取扱・問] 『ジスイズパラダイス』

 

【LOSTAGE】

Pコード:258-844
『Rainbow’s End 2015』
▼5月24日(日) 12:00

京都市円山公園音楽堂(京都)
前売-3800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[出演]向井秀徳アコースティック&エレクトリック/YeYe/五味岳久/Homecomings/LOVE LOVE LOVE/他
※雨天決行・荒天中止。
[問] KYOTO MUSE
[TEL]075-223-0389
※五味岳久による弾き語りソロ出演。
チケット情報はこちら

Pコード:259-607
『長谷川健一/LOSTAGE
7inch Release Live』
▼5月26日(火) 18:30

磔磔(京都)
自由-3000円(ドリンク代別途要)
[出演]LOSTAGE/長谷川健一BANDSET
[問]磔磔
[TEL]075-351-1321
チケット情報はこちら

▼6月12日(金)19:30
月見ル君想フ(東京)
前売-3000円 当日-3500円(ドリンク代別途要)
[出演]LOSTAGE/長谷川健一BANDSET
[問]月見ル君想フ

▼6月25日(木)
cafe&bar Legato(大阪)
[出演]五味岳久
[共演]前田ヨウセイ(RED SNEAKERS)
[問]cafe & bar Legato
時間、料金等、詳細はお問い合わせ先サイトでご確認ください。

Event

TAKAHISA GOMI ILLUSTRATION ○●

『TAKAHISA GOMI ILLUSTRATION ○●』
▼5月1日(金)~17日(日) 12:00~24:00
digmeoutART&DINER
無料
[問]06-6213-1007

「地球って誰も彫刻の対象として考えたことないと思ったので
自転車で地球一周して、タイヤで地球を彫りました」(浅村)

 

五味

浅村さんは、活動スタンスってあるんですか?

浅村

僕は仏像の中でも山岳信仰に特化して考えているので、そういう意味でも奈良っていう場所が活動拠点としてすごくやっていきやすいですね。

五味

山に行きやすい?

浅村

そうですね。山岳信仰の修行の山――大峰山とか葛城山とか、そういうところに行きやすいので。東北とか九州からこっちへ来てとなると、泊り込みで調べたりしないとダメですけど、“今日はちょっと、あっちへ行って調べてこよう”とか、そういうことがすっとできるので。道の確認に行こうとか。

五味

拠点は完全にこの近辺にして。

浅村

そうですね。

五味

それをやり続ける。

浅村

はい。

五味

近い方がいいですもんね。

浅村

遠くからだと朝起きるのが遅くなったら今日は無理だなってなるんですけど。

五味

物理的にも奈良が都合いい。

浅村

そうですね。特に仏像って信仰の対象じゃないですか。じゃあ、日本人の信仰の源流はどこにあるんだろうと考える上でも、奈良には古墳もたくさんあるし、遺跡もたくさんあるので、そういった空気に触れていく上でもすごくいい環境というか。いたるところに人間は住んでたから他の土地でも可能だと思うんですけど、僕の中では奈良がそういうことに触れやすい場所です。

五味

何でそういうふうな考え方なんですか? きっかけあったんですか。

浅村

仏教が日本に来たのって、つい最近なんですよ。1500年くらい前なので。例えば、この辺で言ったら二上山とか、数万年前の石器を使っていた痕跡があって。仏教が入ってくるよりも、それ以前の方が長いわけです。その時代も当然、何らかの自然崇拝とか信仰があって。その後に仏教が入ってきているので、そっちの元々の部分を見ないと日本という場所での信仰の形態って捉えにくいと思うんです。日本でいうと、仏教というのはすごく最近のものなので。遺跡とかは日本のいろんなところにあるので、奈良じゃなくても可能なんですけど、奈良には大規模な遺跡が多いので、ちょうどいいという感じで。

五味

歴史の古さは大事ですか?

浅村

当然、タイムマシーンで行かないと分からないですけど、自分たちの源流をある程度、捉えたいという思いがすごくありますね。

五味

知りたいという欲求が?

浅村

はい。はっきり言って、お釈迦さんだったら偶像を信仰の対象にするのはノーだと思うんです。だから、この仕事をやっていて、“自分は、お釈迦さんの言っていることと違うことをやっているんじゃないか”というふうなことを考えたりしたことがあったんです。これは仏教的にどうなんだろうと。でも、今、自分が住んでいる日本、生まれた国で、自分たちの先祖がずっと暮らしてきた日本というところで、なぜそういうふうな信仰の形態が続いてきたんだろうと考えたときに、多分、仏教が入ってくるもっと前の時代も視野に入れないと掴みにくいというか…。

五味

掴めたんですか?

浅村

何となくです、何となく。奈良に来る前からある程度、そういうふうな感覚を辿っていっていたんですけど。例えば、お寺でも、神社でも、大きな石を信仰の対象にしてたり、ご神木があったり。日本人の信仰の対象って、元々はそういう自然のもの。そこに畏敬の念とかを感じてたと思うので。奈良でいろんな遺跡を見ていくと、ある程度、浮き彫りになります。もちろん、奈良以外の遺跡でもそうですけど。

五味

今、仏像を作る仕事をされているじゃないですか。それって今作っているもの。昔のものではないじゃないですか。リアルタイムっていうか、言うたら新しいもの。例えば、音楽とか作るときって、――音楽の歴史って浅いかもしれないですけど、いろんな音楽があって、その影響でまた新しいものが生まれてきたりっていう系譜があるじゃないですか。自分が作ろうっていうときに、何らかの影響はもちろん受けてるとは思うんですけど、その中で誰もやったことのない音楽とか、自分の個性とか、オリジナリティとかを作品に出そうっていう気持ちってあるでしょ? あるでしょって決め付けてもアレですけど、ない人もいるかもしれないけど、そういう気持ちにならないんですか? 誰も作ったことないような。

浅村

あります、あります。

五味

あるんですか。

浅村

僕もそういう気持ちはあります。ただそれは、僕個人の活動としてやるもので。

五味

自分の中から出てくるもので仏像を彫ることはあるんですか?

浅村

彫刻ということに関しては。これ、多分誰もやってないと思うんですけど…。

五味

あ、もうあるんや(笑)

浅村

地球って誰も彫刻の対象として考えたことないと思うんですけど、人類が触れることのできる最大の立体をマテリアルにしたら、これは面白いぞと思って。自転車で一周しました。当然、海は飛び越えますけど、他人がどう思うかは別として、誰もやったことがない彫刻をしようと、こんなんやったら面白いんじゃないかと思って、自転車のタイヤで地球を彫りました。

五味

それで世界一周したんですか!

タイチ

地球を彫刻してた…!

浅村

というのも、奈良の影響があって。東大寺って全国の国分寺に対して、総国分寺なんです。

五味

東大寺がですか。

浅村

はい。自分の作品にもそういう存在がほしかったのですが、やっぱり権力者が作るから、大きいものを作れるわけじゃないですか。僕は一人であんな大きいものは作れない。他の彫刻する人がどう感じるか分からないですけど、僕は大きいものを作りたいなとか、そういう気持ちがあったんです。でも山を削るわけにもいかないし、重機があるわけでもない。で、何かできないかなって思ったときに、あ、そうだ、これやったらできるなって。

五味

地球を彫る…(笑)。それは完成したんですか?

浅村

はい。無事に帰ってきました(笑)。概念上のものですけど、地球上にいる人間が一つの作品に同時に触れることは今までなかったということです。だから面白いだろうなと思って。自転車で世界一周をしている人はたくさんいます。でも、彫刻としてやった人は多分いないと思います。

五味

は~、そういうことやったんですね…。いや、いないですよね(笑)。行く前からそういう気持ちで。地球を彫っていると。

浅村

はい。だから何回か分けて行くっていうのは選択肢としてなかったです。一筆でぐるっと回らんと意味がないので。

五味

それは誰もやったことのない、新しい何かを生み出そうというベクトルで始まった?

浅村

そうですね。まあ、それぐらいのことをやっておこうという感じで。

五味

今もそういう気持ちはあるんですか?

浅村

具体的にあるわけじゃないですけど、そういう気持ちは常にありますね。ただそれを請けた仕事ではやらない。請けたものは打ち合わせをして、その通りに…。

五味

それは分かりますよ、仕事ですから(笑)。

浅村

僕もとんこつラーメン頼んで味噌ラーメン出てきたら、え!?ってなりますし。

タイチ

そういうレベルちゃう(笑)。

 

「完成に持っていく段階でいつも邪魔するものって自意識なんです。
それを取り除いたらすごくいい形になる」(タイチ)

 

五味

例えば、音楽の仕事を請けるときって、その人にしか作れへんものがあるから依頼が来ると思うんです。誰にでもできることじゃない。仏像も浅村さんしか彫れないものがあるから依頼が来るんですよね? そういうことじゃない?

浅村

どうなのか分からないですけど…。僕やからどうとか思ってくださる人もいるかもしれないですし、そうじゃない人もいると思いますし…。ただもう、縁だと思いますね。

五味

自分が彫ったものに対して“これは俺にしかできへん”とか思ったりしない? 俺っぽいな~とか。

浅村

技術がある人は、形の上ではコピーなり、何でもできますから、僕が彫ったものを他の人が早く上手に同じものを作るとか、そういうことができる人はたくさんいると思います。逆に、僕が他の人のものを彫ろうとしてもできないということも、ケースとしてたくさんあると思います。

五味

こないだ浅村さんが、“あそこの仏像とあそこの仏像は、資料は残ってないけど多分、同じ人が作った”って言ってたじゃないですか。そんな感じで、浅村さんが彫ったっていう形跡は残らないんですか?

浅村

それは残ると思います。うまいから同じように彫れないというのと逆に、技術がまずいから真似できないっていうのはあると思います。こんなおかしな癖は真似できないっていう、そういうことはすべてのことに対してあると思います。

五味

それがいいというのではないんですか?

浅村

それは人の感じ方次第だと思いますね。僕、焼き物が好きで、焼き物の破片とか、遺跡とかの土器の破片とか見るんですけど、作っていた人は意識してなかったかもしれないですけど、指の跡が無造作に残ってたりするんですよ。それがすごくいいなって思うんです。そういう個人の感じ方ですね。

五味

欲がないんですね。自分が作ったものを、自分が作ったという感じで残すっていうのが。

浅村

施主がいない作品の場合、なぜそれを作ったかは、多分、僕しか分からないと思うんです。“自分が作った”という証が残るのは、最初にやった人間だけじゃないですか。“こういうものを彫ったんだ”っていうのはオリジナルにしかないと思うので、思いだけですね。自分のものかどうかは。形はコピーできても、考え方はコピーできないです。

五味

ああ、作るに至った考え方とか、過程とかはコピーできないと。

浅村

そうです。形は同じものでも、そこに込めている考え方は移っていないですから。

五味

彫ってるときって、何考えてるんですか?

浅村

四六時中、そういうこと考えてるわけじゃないですよ(笑)。ぼけーっとしてるときのほうが多いです。

五味

無心でやってる?

浅村

あんまり集中してやってると、ぐっと入ってしまったりするので、なるべくニュートラルな状態の方がいいですね。音楽でもそういう感じってないですか?

タイチ

そうですね。自分のものを作ろうという感覚は僕もすごくあって。自分にしか作れへん音楽を作りたいっていう欲求が強い方やと思うんです。でも最近、それって知れてるなって思ってきて。

五味

変わってきたんですか?

タイチ

うん。単純に言っちゃうと気持ちいいか、気持ちよくないかって話になるんですけど、音楽を作っていて、こねくり回して作り上げたものと、過程として直感的にできたものの2パターンがあるんですけど、こねくり回して自分のものを作り上げる感じが違うように思えてきて。もちろん僕が作ってるんですけど、もっと自然な感じというか。

五味

雑念がない感じ? 雑念って言ったらアレか。自分がやりました!っていう。

タイチ

うん。結局、完成に持っていく段階でいつも邪魔するものって自意識なんですよ。それを取り除いたら、すごくいい形になるっていうか。自意識が邪魔してたんやっていっつも思うんです。そういうことに気づき始めて。

五味

タイチくんの音楽を全部、聴いたわけじゃないのでアレですけど、自分にしかできひんことをやろうっていうのが最初からあったような感じがするんです。他のインタビューとか読んだりして。……今、無理やり、仏像彫る人と音楽を作る人とのクロストークみたいにしてるんですけど(笑)、なんかこう、作るときの感覚として、音楽を作る人って自分をすごい出すというか。人間を反映させて形にして、聴いてもらう人に届けるってやろうとしてるんですけど…。

タイチ

そういうのってバランスやと思うんです。自分がやりたい、届けたいって欲求って、その人が持ってる徳の部分やと思うんですけど、でもそれが出過ぎてしまうとただのエゴになってしまう。その人が持っている徳の部分とは別のものになると思うんです。

五味

浅村さんは自分の作品を観た人にどういうふうに思ってほしいとか、あるんですか? 不特定多数の人が観ると思うんですけど。

浅村

なぜ僕が立体という手段で表現しているのかというと、影ができるとか、ボリュームで感じ方が違うとか、立体との距離で感じ方が変わるとか、実際に存在するものだからこそ感じることがあるからで、そういうことが刺激になるのが理想です。

五味

実際に、目の前で観た人に?

浅村

はい。

タイチ

五味さんは、自分の思いは熱いけど、相手を迎え入れてくれる広さがありますよね。押し付けがましくない。

五味

なんかね、コミュニケーション・ツールでもあるから、音楽って。こうやったら自分が作ったものを聴いた人が喜ぶんちゃうかなとか。ライブでも、こういうふうにやったらおもろいと思うんちゃうかなとか。人のことを気にしすぎてもよくないと思うんですけど、僕は結構、考えてしまいます。そういう感覚ってありますか?

浅村

僕も観た後に“よかったな”とか、そう思ってもらいたいです。何にも感じてもらえないより、そういうふうに思ってもらえたほうがいいですから。ただそれは、個人の作品として考えた場合で、仏像だと話がまた変わってくるというか。例えば、仏像を彫っても厨子が閉じてる状態では観てもらえないですし。そこはまた、仏像の場合と、個人で面白いものを作ってみようかなと思ったときとで切り替えて考えています。

五味

僕はそんな詳しくないですけど、仏像とかある寺に行って観るじゃないですか。そしたら、何がいいとかは分からないんですけど、わってなることもあるんです。それって、例えば昔、その仏像を作った人に、観に来た人を感動させたいという気持ちがあったからかなって思ったりするんです。

浅村

それはそうだと思います。適当なやっつけ仕事ではやってないと思います。やっぱり、美しいとか、生気を感じてもらおうとか、観に来た人とか、目の前にした人に息を呑んでもらうような表現とか、衣のしわ一つの入れ方にしても、前の時代だったらこういうふうな表現をしてなかったけど、自分たちはこういう表現を取り入れようとか、そういうことは全力で繰り返されてきたと思います。五味さんが見てハッとなった部分が作った人が意図したものなのか、意図していないものなのかは分からないですけど、そういう視覚的な効果とかは、今までもいろんな人が考えて作ってきたと思います。仏像の形も時代によって変わってきていますから、こういうふうにしたらいいんじゃないかという工夫は繰り返されてきたと思います。

五味

安心しました(笑)。大きい括りで見たら、……自分中心に考えてるからアレですけど、ものを作る人って、それが仏像でも音楽でも、自分の内側にあるものを外に出そうという気持ちは時代に関係なくあってほしいというか、ずっとあるものと思っていて。……そこに(この対談の)着地点を持っていきたいというところもあるんですけど(笑)、ものを作る人の考え方ってジャンルが違っても似てるようなところがあるのかなって思いながら臨んだんですけど、対談。まあ、難しいですよね…。そうであってほしいという僕の願望でもあります。

タイチ

僕もそう思います。

 

 

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