ホーム > LOSTAGE 五味岳久の奈良からの手紙~LOVE LETTER form NARA~ > 第14回 dessin the world主催 GINNさん



 

Profile

GINN(写真左)
dessin the world主催。日本ではIT会社に勤めつつ音楽活動をおこなう。2006年よりタイ移住。広告業、アウトソーシング業などを経て2017年より起業。仕事の一方でタイでもバンド活動を続け、レーベル「dessin the world」も立ち上げる。タイのフェスに日本のバンドを斡旋したり、タイのバンドを日本に紹介したり、日本とタイのインディーズ音楽の懸け橋となるべく、あれこれと画策する毎日。

dessin the world
https://www.facebook.com/dessin.the.
world/
https://dessintheworld.bandcamp.com/
https://note.mu/dessintheworld


五味岳久(写真右)
ロックバンドLOSTAGEのボーカル&ベース。地方発信/地域密着をモットーに、地元奈良を拠点に独自の活動を展開中。メジャー/インディーを問わず、様々なジャンルのアーティストとの親交も深い。地域密着/地元発信のレーベル兼レコードショップ「THROAT RECORDS」主宰。2017年1月4日にスロートレコードよりTheSpringSummerの2ndフルアルバム『Trash & My Young Hearts』をリリースした。

LOSTAGE HP
http://www.lostage.co/

THROAT RECORDS
http://throatrecords.tumblr.com/

Release

【LOSTAGE】

『In Dreams』(アルバム)
発売中

split7

THROAT RECORDS
2600円(税込)

<収録曲>
01. さよならおもいでよ
02. ガス
03. 窓
04. ポケットの中で
05. REM
06. 泡沫の
07. 戦争
08. I told.
09. 僕のものになれ
10. Shoeshine Man

LOSTAGEライブ会場、THROAT RECORDS店頭、THROAT RECORDSオンラインショップで発売中。


『ポケットの中で』(Unofficial Video)

Live

【LOSTAGE】

LOSTAGE In Dreams TOUR
▼7月9日(日)
山形酒田hope(山形)
▼7月10日(月)
仙台BIRDLAND(宮城)
LOSTAGE単独公演
▼7月12日(水)
静岡UMBER(静岡)
W / 突然少年
▼7月14日(金)
新代田FEVER(東京)
LOSTAGE単独公演
▼7月21日(金)
奈良NEVERLAND(奈良)
LOSTAGE単独公演
▼8月12日(土)
高松TOONICE(香川)
LOSTAGE単独公演
▼8月13日(日)
高知X-pt.(高知)
[ANDES IS BURNING!! Vol.5]
W / アルパカス
▼8月18日(金)
福岡UTERO(福岡)
LOSTAGE単独公演
▼8月19日(土)
広島4.14(広島)
LOSTAGE単独公演
▼9月2日(土)
名古屋HUCK FINN(愛知)
LOSTAGE単独公演
▼9月22日(金)
十三FANDANGO(大阪)
LOSTAGE単独公演
▼10月5日(木)
京都MUSE(京都)
W / KONCOS

▼11月2日(木)
KOBE KINGSX(兵庫)
Wbacho/mu-neujohn
▼11月10日(金)
吉祥寺WARP(東京)
LOSTAGE単独公演
▼11月23日(木)
横浜FAD(横浜)
W / AGE FACTORY
▼12月16日(土)
札幌KLUB COUNTER ACTION(北海道)
W / THE THANKS / the hatch

▼2018年1月27日(土)
沖縄OUTPUT(沖縄)
W / teora / aieum 他


THROAT RECORDS presents
「大忘年会2017」
▼2017年12月23日(土) 17:30

NARA NEVERLAND(奈良県)
前売り-2500円 当日-3000円(いずれも+1ドリンク)
[出演]KONCOS/bed/アルパカス/Age Factory/RED SNEAKERS/LOSTAGE
[問]THROAT RECORDS
[TEL]0742-23-4700

 

▼2018年1月12日(金) 19:30
下北沢SHELTER(東京都)
前売り-3000円 当日3500円(いずれも+1ドリンク)
[出演]LOSTAGE/DMBQ
[問]SHELTER


「teora & aieum presents
”ELMORE vol.3”」
▼2018年1月27日(土) 19:00

沖縄OUTPUT(沖縄県)
前売り-2500円 当日-3000円(いずれも+1ドリンク)
[出演]LOSTAGE/teora/aieum/他

 

「ASPARAGUS TOUR」
Pコード:597-427
▼2018年1月28日(日) 17:30

鹿児島SRホール(鹿児島)
オールスタンディング-3500円(要1ドリンクオーダー/整理番号付)
[出演]LOSTAGE/No edge
[問]SRファクトリー
[TEL]099-227-0337
チケット情報はこちら

 

「R食堂14th ANNIVERSARY MINDJIVE Vol.20」
▼2018年2月17日(土) 18:30

磐田FMSTAGE(静岡県)
前売り-3000円 当日-3500円 (いずれも別途1drink代必要)
[FOOD]R食堂
[出演]LOSTAGE/ember/qujaku
[予約・問]mindjive.event@gmail.com
メールは件名「2/17チケット予約◯名」本文「名前/人数/連絡先」明記

 

「SuiseiNoboAz “liquid rainbow"
release 1st ANNIVERSARY」
▼2018年3月22日(火) 19:00

高田馬場CLUB PHASE(東京都)
前売り-3000円 当日-3500円(いずれもドリンク代別途要)
[出演]LOSTAGE/SuiseiNoboAz

 

LOSTAGE In Dreams TOUR FINAL
「A BOY IN DREAMS」
2018年1月6日11:00~一般発売
Pコード:349-960
▼2018年5月20日(日) 18:30

SHIBUYA O-EAST(東京都)
スタンディング-3500円
スタンディング学割-1000円
※公演当日要学生証
(いずれも+1ドリンク)
[出演]LOSTAGE
[問]シブヤテレビジョン
[TEL]03-5428-8793

★12月31日(日)23:59までプレリザーブ受付中
チケット情報はこちら

 

Infomation

取材で訪れたのはSAWAGIのNICOさんが営む居酒屋まぼねん。リラックスした雰囲気でインタビューが行われました。

まぼねん
東京都世田谷区北沢2丁目9-3
電話: 03-6407-8232

LOSTAGE 五味岳久さんがインタビュアーとなり、“今、気になる人”と会い、それぞれの生活圏から見えている景色や、これから見たい光景を語り、考える、連載企画『奈良からの手紙』。第14回はタイ在住の日本人、dessin the world主催のGINNさんです。現在、タイで起業して、音楽関係の仕事や日本とタイを繋ぐ事業をされているGINNさん。出会いは、今年2月のLOSTAGEタイツアー、現地でコーディネートをしたのがGINNさんでした。『奈良からの手紙』初の海外版。音楽、街、気候など、タイという国を地元目線で語っていただきました。

 

タイって、デパートとかで超どメジャーなバンドが無料ライブやるんですよ。それも毎月、毎週というレベル。」(GINN)

 

五味岳久
(以下、五味)

この対談はテーマがあって、「ホーム」とか「帰る場所」とか、漠然とでいいのでそれにまつわる話ができたらなと思うんですけど、まずGINNさんとは何者なのか。

GINN

そうですね、僕はタイに10年ぐらい住んでいる日本人です。タイへは当初6ヶ月だけ留学で行って、タイ語学校で語学を勉強して、学校に行っている間も日本語教師のボランティアとか、いろんなことをやっていました。何となくタイ語がしゃべれるようになったのでタイで仕事を始めて。日本でもやっていた音楽活動もやりたいなと思ったんですど、当初はタイにインディーズシーンがあるかどうかも、そもそもスタジオがあるかも分からなかったんです。

五味

見かけなかったですね、そういえば。

GINN

そうなんですよ。その後、たまたま音楽やっている人と知り合うことがあって、二人で楽器屋とか探しに行って、「この辺でスタジオってありますか?」って聞いてみたりして。で、何とかスタジオを見つけて。タイで最初に組んだのはタイ在住の日本人だけのバンドでした。

五味

日本人だけだったんですか?

GINN

はい。でも、海外に出てまで日本人のコミュニティに所属するのが嫌で、ずっとタイ人のインディーズに混じってやっていたんです。つたない情報網でインディーズのイベントを探して、観に行って、とりあえずいろんな人に話しかけて、ほっそい糸みたいなチャンスを何とか少しずつ貰ってきて。それでちょっとずつ人脈ができて、ライブができるようになって。そのバンドがちょっとうまくいかなくなって解散となったときに、タイ人と日本人半々で「aire」というインストバンドを組むことになって、それで5年くらいやっていました(現在活動休止中)。

五味

仕事しながら?

GINN

仕事しながら。日本にいるときもそんな感じで、仕事をしながら音楽活動をやるというスタンスで。で、タイに行って3年目か4年目で「dessin the world」という名前のレーベルを始めました。

五味

GINNさんのレーベル?

GINN

はい。といってもバンドは所属していないんですよ。

五味

2010年ごろですよね? 2000年代からなかなか、CDも売れなくなってきましたが…。

GINN

それぐらいですよね。なので、自分がレーベルを立ち上げることの意義や役割を再定義してみようと思って。で、行きついたのが、日本とタイのいいバンドをお互いの国の人たちに広めていくことなんだろうなと。音楽を聴く人を増やすことで、日本とタイのインディーズ全体を広げていく役割を担った方がいいんじゃないかなと思って始めたのが、日本とタイのバンドを集めたコンピレーションの制作だったんです。今、第5弾までリリースしています。第1弾だけCDで、第2弾から第5弾はデジタルで無料で配信しています。最初はCDにこだわっていたんです。やっぱり形として作りたいなって。

五味

世代的に。CD世代。

GINN

はい。で、1回作ったんですけど、大赤字で(笑)。ジャンル関係なくカッコいい音楽はカッコいい、と思っているので、コンピに入ってもらうバンドのジャンルがバラバラなんです。メタルが入っていたり、フォークが入っていたりとか。なので、そもそも売れないと思ってましたし、実際にその通りになりました(笑)。ただ、目的は「日本とタイの音楽を広めていく」ということなので、第2弾からは、より広まりやすいであろうデジタルでの無料配信に切り替えました。コンピレーションに入ってくれるバンドには、「こういうコンセプトでやろうと思っているので、楽曲を提供してもらえないか」とお願いして、賛同してくれたバンドを1つに集めて配信するということにしたんです。

五味

利害関係もなしに。ただもう広めていくっていう。

GINN

はい。それで参加してもらって。

五味

音楽を聴くのもYouTubeとか、Soundcloudとか、そういうのがメインですか。

GINN

そうですね、YouTubeが多いです。あとApple Musicとかストリーミング系も結構入って来てる。ああいうので聴いている人は最近多いですね。

五味

CDを売ってるところも…。僕もせっかくだからレコード屋とか、町のチェーンとかでもいいから入ってみたくて、街をぶらぶらしてたんですけど、ほとんど見当たらなかった。

GINN

CD屋さんもほとんどなくて、CDを扱っている店がどんどんどんどんなくなっています。その中でも、インディーズのCDを扱っているお店はもう、タイで3店舗ぐらい。

五味

流通のシステム自体はあるんですか?

GINN

一応あるみたいなんですよ。以前調べたら、2社くらい流通を担当している会社があって。そのうちの1社は日本の流通システムとあんまり変わらない感じでした。ただ、タイのメジャーレーベルのなかにはCDを流通していなくて、デジタル配信だけになったところもある、と聞いたことがあります。

五味

メジャーのレコード会社で?

GINN

はい。

五味

へ~! フィジカルに思い入れがそんなにあるわけでもない?

GINN

メジャーだとどうしても商売になっちゃうので、そういう部分はあると思うんですけど。インディーズでもデジタル配信をするバンドが多いですが、まだCDも作りますね。インディーズではまだCDが売れているほうだと思います。

五味

売れてましたね。フェスの物販もめっちゃ行列できてましたもんね。

GINN

僕の知っている限りですが、あるバンドがフェスの日に合わせてアルバムをリリースして、一日で1500枚売ってました。

五味

1500枚、一日で売れたりするんですか…!

GINN

他のバンドでも一日1000枚売れましたとか。その日で全部在庫がなくなって再販するところもあったり。

五味

ライブ情報とかもやっぱFacebookとかで?

GINN

そうですね。僕も宣伝するときはFacebookです。バンドやレーベルのFacebookページ作って、そこで宣伝しています。

五味

日本はネットのない時代からライブハウス文化があって、地下活動というか、メジャーもインディーズも、CDが売れていた時代があって。そこからインターネットが普及して、今のやり方になって。今はインディーズ、メジャーの棲み分けが出来上がってきたと思うんですけど、タイではどっちかっていったら最近、いろいろ一気にバーって始まってきて、整えながら作っていっている…。街の感じとか、発展途上の感じがして…。

GINN

ずっとインディーズでやってきた人たちはそれなりにはいるんです。15年くらいやっている人もいて。ただ、ここ2、3年くらいでインディーズの人たちがメジャーに近づいてきたというか。考え方とか、プロモーションの仕方とか。インディーズでそんなに名前が知られていなくても、ライブの時はちゃんとお金の交渉をしたりとか。

五味

あ~、成熟してきた。

GINN

そういう感じは見受けられます。そういう意味では確かに変わってきたことは変わってきたと思います。

五味

僕らが今年2月にタイツアーに行かせてもらって、現地オーガナイザーがGINNさんで。タイってどういう国で、タイの音楽とか、タイの若者のカルチャーって言ったらアレですけど、インディーズでもメジャーでもいいですけど、どういう感じなのか、シーンがあるのかどうかも分からないんですけど、その辺の話を聞けたらいいなと思います。僕もタイは事前情報がほぼない状態で行って。ちっちゃいところとフェスとをやらせてもらって、どっちも共演のバンドのライブを見させてもらいました。意外と日本とそんなに変わらない、いろんなジャンルのバンドがいて。僕らが思っていたより成熟している、しっかりしたシーンがあるんじゃないかなって。そんなに日本と違う感じがしなくて。

GINN

ジャンルの幅はあんまり変わらないと思うんですよ、日本と。結構幅広く、いろんなことをやっていて。これもインターネットの普及に伴ってだと思うんですけど、「今、世界的にこれが流行ってます」みたいなジャンルをやっている子もすごくいっぱいいて。シティポップとか、シンセポップとか。タイでもそういうのに乗っかっている人が結構いて。ただ、ジャンルは幅広いけど、日本のインディーズほど深くないというか、バンド数はそんなにないんです。日本に比べると絶対数が断然に少ないです。その理由として、恐らくですけど、楽器の値段が高いんですよ。

五味

楽器自体が。

GINN

相対的になんですけど。例えば、日本で15万で売っている楽器が、タイでも15万なんですよ。日本は時給1000円でも、タイは時給100円ってなると、それだけで10倍、働かないと15万円の楽器が買えなくて。楽器を持っている人が少なくて、なので、バンド数も少なくて。あと、タイと日本の一番大きな違いは、ライブハウスの数だと思います。ライブハウスとして経営しているところがゼロと言っていいくらい。

五味

そうなんですね。ライブが軸になっている場所もない?

GINN

はい。日本でいうところの「ライブハウス」でなく、「ライブができる場所がある」、ぐらいで。

五味

前に行った時もいい感じのレストランで、店の奥にスペースがあって。

GINN

大体あんな感じのところ。インディーズはライブできるところも、ものすごく少なくて。バンド数も少ないので、ライブハウスとしての経営が成り立たない。イベントがあっても週末だけとかになっちゃうと、どうしてもうまくいかないと思うんですよね。

五味

ブッキングがまずできない。

GINN

できない。バンドがあっても表現する場がない。バンドとリスナーがフィジカルに出会う場所が少ない。そこらへんが今のタイインディーズシーンの課題ですね。

五味

チケットを買ってライブに行くっていう文化はあるんですか?

GINN

最近はだいぶん、増えてきました。これは僕の個人的な感覚なのですが、5年くらい前は、とにかくタダじゃないと行かないみたいな。

五味

そうなんや(笑)。ライブに?

GINN

タイって超ドメジャーレベルのバンドでも、デパートとかで無料ライブをやってるんです。客寄せパンダ的に。市民の皆さんもライブはタダで見れるものという認識で、ライブにお金を払って、しかもインディーズの知らないバンドの音楽を聴くことがなかったんですよ。それがこの5年ぐらいで変わってきて。ドラスティックに何かが変わったというよりも、じわじわですが。チケット代を取るバンドが増えてきて、日本とか、海外のバンドもだいぶんタイに来るようになって。インディーズで活躍しているバンドも増えてきて。そうすると、少しずつチケット代を300バーツ、500バーツ、700バーツ(※2017年12月のレートで1タイバーツ=3.46日本円)とか取るようなライブが増えていって。今はインディーズを聴きに来る方にも「ライブはお金を払って行くもの」という意識がだいぶん、定着してきました。

五味

音楽ってどれくらいの距離感であるものなんですか? ライブハウスもない、CDもそんなに売ってない、ネットで聴いたりするぐらい。娯楽というか、エンターテインメントとして音楽は優先順位が低いんじゃないか…。

GINN

それが、ちょっと奇妙な話ですが、ライブハウス自体は少ないですけど、音楽に触れる、生演奏に触れる機会って多分、日本よりも多い感じなんですよ。飲み屋とかバーに行ったりすると、そこらじゅうで演奏していて。ただそれがインディーズのオリジナルではなくて、海外とか、タイのドメジャーなバンドのコピーがほとんどで。

五味

ああ、僕らが行ったレストランでもやってましたね。

GINN

そこらじゅうで生演奏は聴けるんです。デパートでも結構な爆音でやるんですよ。それも毎月、毎週というレベルで。メジャーなバンドが演奏して。そういうことがあるので、生演奏との距離はすごく近いと思います。ただ、インディーズとなると、自分で探しに行かない限りは、情報にたどり着けない感じはあると思います。

五味

音楽は生活には組み込まれているけど、ほんまに好きでやる分には限られている。

GINN

はい。その幅もじわりじわりとは広がってきていると思うんですけど、それはさっきも言ったインディーズのバンドがメジャーチックなことをやり始めたということにもリンクしているんだろうなと思います。SAFEPLANETというバンドがいるのですが、彼らとかは、インディーズを聴かない子でも「知ってる、その名前」という感じになり始めていて。そういう、ちょっとアンダーグラウンドからアッパーなところに行き始めているバンドとかも出ていますね。

五味

僕らもフェスに出させてもらいましたが、フェスはタイでもいっぱいやっているんですか?

GINN

タイの場合、野外フェスをやれる期間が4ヶ月ぐらいしかなくて。それ以外は雨が降ってたり、すごい暑かったりするので。その4ヶ月はぎっしり詰まっている感じです。

五味

規模感でいうとどれくらいなんですかね?

GINN

出てもらった『CAT EXPO』は1日で1万5000人から20000人くらい。2日間で30000~40000人くらい。

五味

『RUSHBALL』ぐらいの規模感ですかね。

GINN

日本で一番有名なタイのフェスだと『Big Mountain Music Festival』なんですかね。それは日本からもバンドが来てます。OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDとか、salyu×salyuとか。あとは1年に2、3バンドくらいは日本から来てたりします。

五味

音楽じゃなくてもいいんですけど、日本のカルチャーにタイの人は興味あるんですか?

GINN

とてもありがたいことにタイは親日の人が多くて、日本の物、事、音楽についても興味を持ってくれる人は多いです。

五味

確かに…興味持たれている感じはしました。

GINN

タイ人たちってすごく素直なんですよ。自分が知らないバンドだったとしても、いいライブをやるとすごく反応してくれるし、たとえメジャーなバンドだったとしても、ライブがよくないとあんまり反応してくれない。こういう対談をしてるからじゃないですけど、LOSTAGEへの反応はすごくよかったですよ。

五味

あれ、平日の夜中だったじゃないですか。何時くらいでしたっけ?

GINN

23時くらいでしたね(笑)。300人くらいいて。

五味

しかも木曜日で。明日仕事ちゃうん?みたいな。ああいう状況って日本では考えにくいというか、それだけ人がいてもあんなに盛り上がらないですよ。

GINN

すごい熱気でしたよね。

五味

逆に飲まれかけたというか、びっくりしたんですけど、楽しかったです。あれは日常っていうわけではないんですか?

GINN

平日であんなに夜遅くまで残ってくれるライブはそんなにないと思います。

五味

すごいエネルギーもらいました。

 

「ジャパンフェスみたいな展示のほとんどが漫画とかアニメで。
そこに音楽を入れたいというのが、僕がこれからやろうと思ったこと」
(GINN)

 

五味

タイって物価はどのくらいなんですか?

GINN

コンビニで売っている缶ジュースとかで15バーツ、45円、50円なので、日本の3分の1くらいですかね。ただ、高級品がすごく高くて。貧富の差が激しい国なんですよ。

五味

それは街に行って感じました。ショッピングモールがあって、高級ブティックがある通りの路地裏に1歩入ったら、ボロボロの屋台が並んでて。そのせめぎ合っている感じを「貧富の差」と言っていいのか分からないですけど、混在していて。それが何かエネルギッシュに見えるっていうのもありましたね。

GINN

派手な感じのところとローカルな感じのところとがせめぎ合っている、カオティックなパワーというか。あれに当てられてタイって面白い国だなと思って移住しようと思ったところはあります。面白いんですよね。高級デパートが建っているすぐ隣にスラムが広がっていたりとか。

五味

あれ、結構びっくりしますよね。

GINN

許容性というか、それはそれで成り立つというか。人のことは人のこととして認める文化というか。例えば、今、「LGBT」というワードをよく見ますが、タイの人たちはそれを意識せずに、自然のものとして受け入れている感じはあります。ゲイもいっぱい、オカマもいっぱいいるし。ミスユニバースのおネエ版もタイの人が結構優勝したりして。

五味

みんな開かれている…。

GINN

そうなんです。「こいつ、こんなことやってるよ」みたいなことをあんまり思わないんですよね。皆、基本的にはとても優しいのですが、他人がしていることにいい意味で無関心というか、それをそのまま受け入れるというか。なので居心地がいい。

五味

お互い、そんなに干渉せず。今はそんなことないですけど、日本ではちゃんと働いてないと…。僕とかそういうふうによく思われるんですけど、そういう目もあんまりない?

GINN

あんまりないと思います。なので、そういう環境だからこそ、ちょっと独特な育ち方をした音楽文化というか。元々音楽ってタブーがないというか、何をやってもそれで成立するんだったらいいやっていうところがあると思うんですけど、その概念すら僕も打ち破られたくらい自由ですね。メロディに対してもそうですし、バンドの構成もそう。日本でもずっと音楽活動をやってきてたのですが、タイに行って概念を壊された感じはあります。

五味

タイのフェスに出させてもらって、インディーズのレーベルが何店舗か出ていて。GINNさんに案内してもらって、それぞれのレーベルを説明してもらって、気になったレーベルのコンピレーション買って。帰ってからよく聴いたんですよ。それがすごくよくて。どういうふうに音楽を聴いたり、やってきたらこうなるのかなって。ずごく雑多な感じやったんですけど、興味深かったですし、簡単に「自由」とか言うとアレなんですけど、日本のインディーズとかよりも全然、開かれた感じがあって…。正味、ダサいのも混ざってたりするんですけど(笑)、それも全部一緒にしている感じも含めて、よかったというか、新鮮な感じがしました。

GINN

多分、陸続きでいろんな国と接しているから、そもそもの感覚が僕らと違うんじゃないかな、と思うんです。大陸的な感じというか、ふわっとしてるんですけど、一応ちゃんとしてるみたいな。

五味

確かに独特なグルーヴというか…。

GINN

そういうものが何かあるんでしょうね。ただ最近は海外の音楽に影響されて、2、3回しか咀嚼せずに出してるようなバンドもいっぱい出てきて。どのバンドも演奏はすごく上手なんですけど。

五味

そうですよね、みんな演奏はうまいな。

GINN

かっちりしてるけど、聴いていてつまんない。「あ、このバンドのこういうところを取ってきたんだろうな」と思うものがだんだん増えてきて。ここ1、2年ぐらいで出てきたバンドはそんな感じです。

五味

やっぱりアレですか、みんな携帯めっちゃ見てるじゃないですか。スマホをすぐに見る。あれって何やってるんですか? ネットをやってるんですか?

GINN

タイはSNS大国なんですよ。

五味

やっぱりそうなんですか。

GINN

LINEとFacebookがめちゃめちゃ盛んです。ネットに繋がっている人はみんなそれやってるくらい。特にFacebookがものすごく強い。どこに行っても、みんなやってます。あとインスタグラム。

五味

店員も仕事中であろうが、みんなずっと携帯見てるから(笑)。日本も電車に乗ったときみんな見てるなって思うんですけど、さすがに仕事中はずっとやってないじゃないですか。でもタイは普通に、コンビニでも店員がしゃべりながら携帯見てて。タイのインターネット事情って、昔からみんながアクセスできるように整ってたんですか?

GINN

今は人口の半分くらい。人口が6900万人くらいで、約3000万人がインターネットに繋がっていると言われてます。そのほぼ100%がLINEとFacebookのアカウントを持ってるって感じです。

五味

へ~!

GINN

タイの人たちは会話が好きな人たちで、コミュニケーションをとるのが好きな人たちなんですよ。

五味

ずっとしゃべってた。

GINN

なので電話とかも大好きだったんですけど、今は会話のためのツールが電話からLINEに変わっただけなんじゃないかと思っていて。タイの人たちは誰かと繋がっていたい、誰かと話していたいっていう。

五味

そのほかで日本のものに興味を持っているのは?

GINN

日本食もそうですし、車とかバイクもほとんどがTOYOATA、HONDA、YAMAHAで。家電製品は中国、韓国勢に押されてはいるものの、信頼の品質みたいなところは感じてくれていて。化粧品もそうですね。他には漫画とかアニメとかコスプレとか。

五味

僕、泊まったところの近くを散歩してたら、雑居ビルの地下にそういうアニメ関連のグッズ売っている店がありました。

GINN

今、タイでジャパンフェスみたいなイベントちょいちょいあるんですね。なかには、コスプレーヤーがワーッと集まってきて、展示もほとんどが漫画とかアニメで、っていうイベントもあったりして。それはそれで立派な文化なのですが、そこに音楽を入れたいというのが、僕がこれからやろうと思ったことで。7、8年くらい前に日本と同じような感じで、タイにも韓流ブームが来て。それがまたすごい旋風だったんですよ。そこで一気に音楽、ドラマ、映画が韓国になって。それが10年弱くらい続いて、今、少しずつ日本の文化が見直され始めています。今年がちょうど日タイ修好130周年記念というのもあって、今年から10年くらいかけて少しずつ音楽を入れ込んでいってということができないかなと思っていて。

五味

10年続けてきた仕事を辞めて、そういうモードになって。

GINN

そうですね。文化的にタイと日本を繋げることで、お互いがよりハッピーな生活になれることを支援できる仕事をしようと思っています。一つは音楽とかエンターテインメント関係のコーディネーター。他には日本にあってタイにないサービスとか、タイにあって日本にないサービスの橋渡しのようなことをやったりとか。そういうことをぽろぽろとやっていこうかなって。

 

言葉の分からない国でどこまで勝負できるのかなっていう不安もあったけど、やったら届くんやなって」(五味)

 

五味

奈良を拠点にやってきた中で、海外に行こうと思ってもツテがないと行けない。そういう橋渡し的なことを担ってくれる人がいると心強いというか。僕、タイに行く前は正味、言葉もわかんないですし、どうしようって。FEVERの西村さんとGINNさんとバックアップがあったからできたんです。向こうに行ってやってみたいという気持ちはもちろんあるから。

GINN

実際にどうでしたか? 1本目はお客さんと近いところでライブをやってもらって。2本目が結構でかい会場でしたが。

五味

そうですね、すごいギャップというか(笑)。ピンキリでしたよね。

GINN

フェスの方が先に決まっていて、あのステージだろうなという想定があったので(『CAT EXPO』には5つのステージがあり、LOSTAGEは2番目に大きなステージにて出演)、前夜祭は逆にお客さんとものすごく近いところでやってもらいたかったんです。

五味

まず言葉ですよね。言葉が通じないので、MCも英語か、「こんにちは」とか簡単なタイ語しかしゃべれなくて。音楽だけで勝負というか、気持ちとか、演奏とか、そういうものだけでどこまで伝わるかっていう。日本でもそういう気持ちでやってますけど、日本だとちょっと甘えとか出てくるじゃないですか。言葉もわかるし。言葉のわからないところでどこまで勝負できるのかなという不安がめちゃくちゃあったんですけど、結局、いつもやっているような小さいところでも、フェスのステージにしても、やったら届くんやなっていう。それが一番、得た中で大きかったというか。僕、結局、タイ語の練習も弟に任せてたので。まあ、あのMCも通じてなかったんですけど(笑)、僕もMCはほとんど日本語で、聴いている人はわかんなかったと思うんですけど。多分、曲で伝わったなって、ライブの後に思いました。

GINN

僕も聴いていてめっちゃ気持ちよかったです。フェスのときの一発目の『My Favorite Blue』の“ジャーン”が流れたときに、本当に涙が流れてきて。すごかったですよ、音の波が。僕は、音響システムに何かあったらすぐサポートできるように、ライブ前半はステージから一番遠いPA卓がある場所にいたのに、直球でびしっと来て。もう曲が始まった瞬間からみんながわーって集まってきて、すぐに2、3000人になったじゃないですか。最後の『美しき敗北者たち』のときはステージ袖にいたのですが、もう1回泣きました(笑)。2回泣いた。1回のライブで2回泣いたのは初めてでした。

五味

僕らがタイに対して前情報なく来ているのと同じように、お客さんも僕らのこと全く知らないじゃないですか。YouTubeとかで調べてくれていたかもしれないけど、今、日本では音楽以外、何もない状態ってなかなか作れないので、そこに立ち返れたというか。音楽をやり始めたときの動機とか、感動とかも、すごくリアルに思い出せて。それが一番、よかったですね。タイじゃなくてもよかったかもしれないけど。でも、外国に行って表現するということの面白さをすごく感じられてよかったです。

GINN

フェスの会場で、翌日の写真攻撃すごかったですよね。「昨日観たよ」って。

五味

日本でもあんな写真撮らないですよ(笑)。あれ、すごい嬉しかったです。また行きたいですね。

GINN

こっちは受け入れ態勢、いつでも整えてます(笑)。

五味

僕も知らないことが多いまま行ってしまったので、もうちょっと知って次に繋げたいなって思いました。

GINN

あのライブを覚えているタイの人はいっぱいいると思います。

五味

また来てくれたらいいですけどね。タイの音楽もすごくよかったんですよ。僕らがタイに行ったように、タイのバンドが日本に来てくれて…。言葉が違うので内容はわからないかもしれないけど、いいなと思う音楽がいっぱいあったから、GINNさんが日本に紹介したいなと思うバンドとか手伝いたいなって思いました。

GINN

それはとても嬉しいです。タイのいい音楽を広めたいなっていうのがレーベルを作ったきっかけなので。

五味

放っておいたら聴く機会ないですよね。

GINN

そうですよね。その機会をいっぱい作っておけば、誰かがどこかで引っかかるかもしれない。

五味

日本に帰ってからブログとかにタイでこんなバンド見たって書いて、音源とか探して貼り付けたら、反応ありました。そうやっていろんなところで、いろんな人が、協力して、広げていく窓口になれば、日本でもタイのバンドに興味をもってもらえると思いました。

GINN

一緒にそういうことを楽しめる仲間を少しずつ増やしていって、最終的にすごく増えてたらといいなぁ。と、大きいこと言いながら、全然立ち行かなくなって日本に戻ってるかもしれないけど(笑)、なるべく最終目標を達成できるよう。タイの人が日本の文化を思い描いたときに、漫画、コスプレ、アニメだけじゃない、そこに「音楽」も入れ込めるような活動をしていきたいと思います。

五味

前回の対談に出てもらったFEVERの西村さんとも企画されたり。

GINN

そうですね。ここ3年くらいはFEVERの西村さんと、parabolica recordsというレーベルを運営しながら、deepsea drive machineというバンドのベースをやっている西さんと3人で色々と企てることが多いです。タイのバンドが日本でツアーやりたいとか、日本でCDデビューしたいってなったら、大体西さんに相談して。西さんと西村さんに日本ツアーを組んでもらったり、西さんのレーベルからタイのバンドの日本盤を出してもらったり。僕は、タイのフェスの日本バンド枠をもらってるから、西村さんに協力してもらって日本のカッコいいバンドを連れてきてもらって。そういうことをここ3年ぐらい、活発にやっています。今は日本のバンドからもタイのバンドからも、問い合わせとか相談が増えてきましたね。

 

ネットで情報とか何でも手に入るようになっても、
行かないと絶対にわからない。街の雰囲気も、空気も」(五味)

 

五味

GINNさんはタイで10年続けていた仕事を辞めて、これからは音楽を広めていく活動をされるじゃないですか。そこに仕事の部分って出てくると思ったんですけど、それってただ自分が貫いている信念だけではできない部分もあるじゃないですか。だから、できるのかな?ってちょっと思ったんですけど…。

GINN

今までとスタンスは変わらずなんですけど、仕事は仕事でちゃんとお金にしていこうと思っていて、その一方で音楽を広める活動はやろうと思っていて。

五味

僕もそうですけど、音楽で飯を食うとなったら、レコード屋でレコード売る、自分で曲を書いてバンドで演奏して、CD作って売る。そういう活動の中でも、自分が思っている音楽の部分と、そうじゃない、お金とか生活、仕事だという部分、その2つのバランスをとっているんですよね。GINNさんの言うように、どんな仕事だろうと、自分のしたいことをするなら、それでいいんじゃないかなって思いますね。そうじゃないと聴いてもらえない。

GINN

そうなんです。音楽を作る力と、作った音楽を広める力と、両輪でうまいこと進むと、いろんな人に聞いてもらえると思うんです。音楽を広める力ってレーベルがやることなんだろうなって思っていて。プロモーションやったり、ライブとかフェスとかの枠をもって来たりとか。僕はそういうことはバンドをやっているときはあんまりやりたくなかったんですけど、どこのレーベルにも所属していないと、こっちが動かないとどれだけいいもの作っても誰にも知られない。

五味

僕なんかまさにそれで大変なことになってます(笑)。それやらないと。

GINN

両輪を回していかないと、片方だけ車の車輪が回っていても前に進めないので。

五味

そうなんですよね。本当は音楽だけをやりたい。

GINN

僕も音楽を作るだけをやりたいんですけど、そうもいかない事情があって。

五味

これ、ただの愚痴ですけどね(笑)。

GINN

くだ巻いてるだけ(笑)。

五味

タイとか関係なくなってきた。音楽を広めることを今から仕事として、日本とタイでやるっていうことですよね。

GINN

事業の一つとして、そうですね。となると、また別の覚悟が必要かもしれないですね。お金にしたくないものをお金にしないといけなくなる場合もきっとあるので、自分がやりたくないなって思ったことも飲み込まなきゃいけないこともあるだろうなって。どうしても嫌になったら、また違う方法で0からやり直します。音楽を広めるっていうのは、僕は一生、やっていくと思うんです。広めることは続けて、仕事は変えればいいので。

五味

なるほど。それくらいの覚悟で。

GINN

はい。自分の中で割り切ることと、割り切れないことのバランスが取れなくなったら、仕事を変えたらいいかなって思います。どこかで生活費が稼げて、最終的に自分の好きなことが死ぬまでできたらいいかなって思ってます。

五味

GINNさん、むちゃくちゃ仕事できそうですよね。事前に資料とか送ってきてくれたんですけど、めっちゃきっちりしてました。何でそんな音楽が好きなんですか?

GINN

僕、なにやっても上達しないし、すぐつまらなくなっちゃって長続きしないんですよ。でも、ドラムだけはずっと続けてて、嫌だと思ったことも1回もないですし…。なので、辞めると考えたことがないというか、このまま死ぬまでやってるんだろうなっていう感覚なんですよね。もうそこにあるものというか、ずっと続けていくんだと思います。それがあることが当たり前の生活というか。

五味

タイはいいですか?

GINN

タイは楽です、とても。他人に不干渉のところがとてもいい方に作用していて。あと、ずっとあったかいとか。寒いのが苦手なので楽ですね。ものすごい暑いですけど。

五味

僕、暑いのが苦手なので、実は暑いの嫌やなって思ってたんですけど、意外とタイのあの感じは大丈夫でした。半袖、ハーフパンツで過ごせて。街自体もそういう感じじゃないですか。あのリラックスした感じ、暑いけど何とかなる感じは嫌じゃなかったです。

GINN

全体的に危機感があんまりないんですよね。いつも温かいし、自給率が確か100%以上とかなので、基本、死なない。

五味

基本、死なない。どうにかなるやろって感じですか?

GINN

はい。フェスの設営でも、何千人って集まる規模のフェスなのに、前日の夜まで何にもできてないんですよ。一応リハやるからステージと音響設備は置いてあるけど、それ以外はほぼできていない。

五味

絶対間に合わへんって感じなのに、みんなしゃべってたりとかして。明日、大丈夫なんかな?って思ってて。でも翌日に行ったらびしっと出来上がってましたね。いつもああいう感じなんですか?

GINN

そうですね。僕はあれをタイ人の「間に合わせ力」と言っているんですけど、以前仕事で関わったバンコクのモーターショーでも前日の夜0時まで何もできてなくて。次の日朝10時にオープンするのに。これ、できんのかなぁって思ってて、次の日に行ったら、すごいきれいにできてるんですよ(笑)。事前に決められているスケジュールは守られてない。でも帳尻はちゃんと合わせる。

五味

大らかさって言ったら言い過ぎかもしれないけど、そこもよかったです。

GINN

そういうところも楽です。ただ、今後、タイで行われる日本のイベントとかを手伝うことになった場合、そこをどうバランスをとるか。日本側のやり方をタイに合わせようとするとタイは動いてくれない。かといってタイはこうだと日本側に伝えても、わからないと不安じゃないですか。

五味

そうですよね、些細なことですけど、ちょっと感覚が違うだけで現場の行き違いが出てきますもんね。

GINN

リハと本番のPAさんが違うとか、ありえないですもんね。それを向こうは平気であったりとか、リハと本番の立ち位置がいきなり変わっていたりとか、勝手にやったりするので、そういうところは気をもみますね。

五味

そういう意味では必要な人材というか。

GINN

そうなればいいなと思ってますね。

五味

調整が一番難しいですよね。今、タイのオススメの音楽があったら。バンドとか。

GINN

解散しちゃったんですけど、「Degaruda」っていうバンドで、ジャンルでいうとポストハードコアみたいな感じ。とにかくかっこよかったです。タイ人4人でやっていたんですけど、ライブを見終わった後の疲労感が、海外のミュージシャンを見たような感じで。すごいかっこいいバンドなんですけど、曲を作っていたリーダーのギターボーカルがイギリスに移住するからって解散したんです。そのバンドが僕の中ではタイで一番かっこいいバンドでした。

五味

パンクとか、ハードコアのシーンもあると思うんですけど、そこにあんまりアクセスできなかったので。出演したのはどっちかっていうとオーバーグラウンドなフェスだったので、同じ感じでやれるバンドと一緒にやらせてもらったら。もうちょっと探りがいがあると思ったので、これからタイのアンダーグラウンドを攻めてみたいなと思ってます。日本から観に行くっていうのもいいと思うんですよね。

GINN

そういう企画が出てくるといいなと思います。旅行代理店が日本のフェスを見る参加者を募ってたりするので、その逆バージョン、タイのフェスを日本の人に見てもらう。

五味

タイのバンドに来てもらうのもいいと思うんですけど、興味を持ってタイに行くということまで発展したら、すごく面白いシーンが広がると思うんですよね。会いに行ってみる、聴きに行ってみる。そういう感覚が始まったらいいなって。僕もタイに行ってみてわかったことが多かったですし、また行きたいなって思いました。もっと知りたいですし、逆にタイからも来てほしいと思うようになったから。

GINN

足を運ばないとわからないことがいっぱいありますよね。

五味

そうなんですよ。いくらネットとかで情報とか何でも手に入るようになっても、行かないと絶対にわからないじゃないですか。グーグルマップで見てても、街の雰囲気も、空気も違います。あの感じ、僕もわかってなかったところがあったから、行くまで。別に海を越えてなくてもよくて、日本国内のツアーでもいいんですけど、その町の空気があるから、そういうところにフィードバックさせて、音楽活動につなげたいなって、海外ツアーに出て改めて思いました。

GINN

またあの空気を感じに来てもらえると、僕らもうれしいです。

五味

日本の人もタイに行ってみたらいいんじゃないかなって思いますね。お金はまあ、日本のバンドを観にいくよりかはかかりますけど、どんどん行って、興味持ってもらえたらなって思います。この連載をきっかけでもいいですし、これからGINNさんが日本のバンドをタイの人に紹介したり、タイのバンドを連れてきてくれると思うので、そういう活動も込みで、みんな興味をもってチェックしてもらえたらと思います。

GINN

何よりです!

 


取材:五味岳久(LOSTAGE)
撮影:名越啓介(Commune Ltd.,)
企画:高橋はじむ
企画・構成:岩本和子
取材協力:まぼねん
東京都世田谷区北沢2丁目9−3