ホーム > LOSTAGE 五味岳久の奈良からの手紙~LOVE LETTER form NARA~ > 第12回 KUDANZ ササキゲンさん



 

Profile

KUDANZ(写真左)
くだんず/ササキゲン(vocals/guitars)によるソロプロジェクト。フォークミュージックをベースに置き、エレキギター/ガットギターでの弾き語りや、バンド編成など、多様な形態で活動中。2014年5月はソロプロジェクトとなってから初の作品となるミニアルバム『何処か長閑な』をリリース。その後のライブ活動休止を経て2016年2月に活動再開。同年11月ソロプロジェクト初のフルアルバム『血の轍』をリリース。

KUDANZオフィシャルサイト
http://www.kudanz.com/


五味岳久(写真右)
ロックバンドLOSTAGEのボーカル&ベース。地方発信/地域密着をモットーに、地元奈良を拠点に独自の活動を展開中。メジャー/インディーを問わず、様々なジャンルのアーティストとの親交も深い。地域密着/地元発信のレーベル兼レコードショップ「THROAT RECORDS」主宰。2017年1月4日にスロートレコードよりTheSpringSummerの2ndフルアルバム『Trash & My Young Hearts』をリリースした。

LOSTAGE HP
http://www.lostage.co/

THROAT RECORDS
http://throatrecords.tumblr.com/

Release

【KUDANZ】

『血の轍』
発売中

血の轍

funny easel
\3,000(税込)/FUNN-0002

<収録曲>
01. 光の渦の中で
02. 世界中で
03. 苛々するわ
04. 触れたいよ
05. 釣行思考
06. お気に召すまま
07. 静かなオーシャン
08. 最後の江ノ島
09. 君は知らない
10. 死の塔の上で
11. ロングロングタイムアゴー

『最後の江ノ島』

 

【LOSTAGE】

GEZAN×LOSTAGE
『split7』(スプリット7インチ)
発売中

split7

THROAT RECORDS/十三月の甲虫
1404円(税込)/THR-013 / JSGM–016

<収録曲>
[SIDE GEZAN](33回転)
01. blue hour / GEZAN
[SIDE LOSTAGE](45回転)
01. My Favorite Blue / LOSTAGE


LOSTAGE
『GUITAR』
発売中

GUITAR

\2,300(税込)/DDCZ-1968

<収録曲>
01. コンクリート / 記憶
02. Nowhere / どこでもない
03. いいこと / 離別
04. Guitar / アンテナ
05. 深夜放送 / Unknown
06. Flowers / 路傍の花
07. Boy / 交差点
08. Good Luck / 美しき敗北者達

 

【THROAT RECORDS】

『Trash & My Young Hearts』
TheSpringSummer
発売中

Trash & My Young Hearts

\ 2,500(税込)/THC-010

<収録曲>
01. 枯れない花
02. 君の街
03. recycle
04. isolation
05. イノセンス
06. Memories
07. カーテン
08. メランコリックビーチ
09. 青いままで
10. 未来

『枯れない花』

Live

【KUDANZ】

「FLEAMARKET&LIVE!! MORIOKA CHARITY FES」
▼4月16日(日) 14:00(CLOSE19:00)
ぴょんぴょん舎稲荷町本店敷地内 森のマダン(青森)
入場無料 (可能な限りの募金活動へのご協力をお願いいたします)
[出演]佐々木龍大/KUDANZ/ALAIN/ダイナマイトキャッツ/玲
[イベント概要]「MORIOKA CHARITY FES」は災害により被災された方々や、それを支援する福祉団体へ義援金を送るため開催されるチャリティーイベントです。
[問]MORIOKA CHARITY FES

「NETSUBITO~月と太陽~」
4月23日(日) 15:30

HIGHBURY(宮城)
[出演]KUDANZ/竹森マサユキ(カラーボトル)
※予定枚数に達したため、現在はキャンセル待ち。
[問]HIGHBURY
[TEL]022-797-3360

「ARABAKI ROCK FEST.17」
Pコード:782-458
▼4月29日(土・祝)・30日(日)

みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく
2日通し券-14500円
2日通し4人券-49500円(4名同時入場)
4月29日券-8400円
4月30日券-8400円
※チケットは引換券。
※4/29(土)・30(日)の開場は10:00。
※雨天決行。
※小学生以下は保護者同伴に限り無料。
※出演者変更に伴う払戻し不可。
※花笠ミッドナイトショー(4/29(土)22:00~予定)は2日通し券とキャンプサイト券(Pコード:782-459)をお持ちの方のみ参加可。
※出演者等、公演内容に関する詳細は公式HPまで。
[問]G・I・P
[TEL]022-222-9999
[公式HP]https://arabaki.com/
チケット情報はこちら

「SOUND SHOOTER VOL.12 SAPPORO」
Pコード:324-964
▼5月6日(土) 15:00

Zepp Sapporo
1階スタンディング-3900円(ドリンク代別途必要)
[出演]androp/KUDANZ/SLANG/
HAWAIIAN6/ReN/LOW IQ 01&MAD BEAT MAKERS
※未就学児童は入場不可。
[問]WESS
[TEL]011-614-9999
チケット情報はこちら

「成山剛とKUDANZの弾き語りツアー2017 in 東北」
[出演]成山剛/KUDANZ
【弘前公演】
5月8日(月) 19:30

Robbin’s Nest(青森)
2500円(1ドリンク別)
[問]Robbin’s Nest
[TEL]090-6450-1730

【秋田公演】
5月9日(火) 20:30

Bar・DUKEROOM(秋田)
2500円(1ドリンク別)
[問]DUKEROOM
[TEL]018-865-1986

【山形公演】
▼5月10日(水) 19:00

蔵 オビハチ(山形)
2500円(1ドリンク別)
[問]蔵 オビハチ
[TEL]023-626-2737

【仙台公演】
「ファシュタ春の音楽祭2017」
▼5月11日(木) 19:30

Forsta(ファシュタ)(宮城)
3000円(ウェルカムおつまみ&ドリンク付き)
[問]Forsta
[TEL]022-346-8929

@なおポップ×KUDANZ 2マンライブ
「鳥と魚の遊泳会」
Pコード:329-100
▼6月17日(土) 18:00

Player’s Cafe(福島)
前売-2500円
当日-3000円
※1ドリンク(500円)別途要。
[出演]@なおポップ/KUDANZ
[O.A]Chano
[問]U-ONE MUSIC
[TEL]024-597-7202
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カフェまりちゃん家LIVE
「あなたの笑顔は私の元気 Vol.2」
▼6月18日(日) 18:00

カフェ まりちゃん家(宮城)
前売-2500円
当日-3000円
※1ドリンク(500円)別途要。
[出演]@なおポップ/KUDANZ/シークレットアクト(5月中旬発表予定)
[問]カフェまりちゃん家

 

【LOSTAGE】

「Umeda Club Quattro 5th Anniversary」
▼4月22日(土) 18:00

梅田クラブクアトロ(大阪)
[出演]ペトロールズ/LOSTAGE
[問]梅田クラブクアトロ
[TEL]06-6311-8111
※チケットぴあでの前売り券完売。

「Rainbow’s End 2017」
Pコード:325-143
▼5月14日(日) 11:00

京都市円山公園音楽堂(京都)
前売り-4000円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[出演]かりゆし58/五味岳久/Homecomings/
LOVE LOVE LOVE/TANAKA OF THE HAMADA/ウクレレジプシーキヨサク from MONGOL800/向井秀徳アコースティック&エレクトリック/ひとりTOMOVSKY
[司会]土龍
※雨天決行・荒天中止。
[問]KYOTO MUSE
[TEL]075-223-0389
チケット情報はこちら

「WALK INN FES! 2017」
Pコード:322-575
▼5月21日(日) 11:00

桜島多目的広場 野外ステージ(溶岩グラウンド横) (鹿児島)
一般-3500円 KIDSチケット(18歳未満)-1000円(当日、要身分証持参。)
[出演]BRAHMAN/MONOEYES/KONCOS/
SHIMA/優河/突然少年/BACKSKiD/下水丸/ZOKUDAMS/BLOODY/Tonto/The Acoustics/Crayons/雅友会/森田くみこ/The Honest/徒歩圏/-1-ONE/テスラは泣かない。/SIX LOUNGE/LOSTAGE/ぢゃん/THE南高スタイル/The Bogies/コジマサトコ/GLARE SOUNDS PROJECTION/他
※中学生以下は保護者同伴で無料。 公式HP上の注意をご確認の上、ご来場下さい。
※2日通し券をご希望の方は、5/20の画面よりお進み下さい。
※駐車券はPコード:322-576にて販売。
※飲食物持込禁止。
[問]WALK INN STUDIO
[TEL]099-296-9888
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cafe Room presents「SWIPE 0603」
▼6月3日(土) 18:30

CAFE ROOM(大阪)
前売り-3300円(ドリンク代別途要)
[出演]五味岳久(LOSTAGE)×木下理樹(ART-SCHOOL)
[問]caferoom

LOSTAGE presents「SHOWMEN」
▼6月9日(金) 19:30

NEVERLAND(奈良)
前売-2500円
当日-3000円
※いずれも要1ドリンク。
[出演]LOSTAGE/skillkills
[問]LOSTAGE

Comeback My Daughters Presents
「Come Home」
Pコード:328-442
▼6月10日(土) 18:00

LIVE HOUSE FEVER(東京)
前売-3000円
当日-3500円
※いずれも要1ドリンク。
[出演]Comeback My Daughters/Asparagus/LOSTAGE/Ohayo Mountain Road
[DJ]木暮栄一(the band apart)/Tommy(boy)
[問]LIVE HOUSE FEVER
[TEL]03-6304-7899
チケット情報はこちら

「ONE Music Camp 2017」
Pコード:322-179
▼8月26日(土) 11:30

兵庫県三田アスレチック野外ステージ(兵庫)
入場券-5500円
入場券+駐車券-8000円
[出演]U-zhaan×鎮座DOPENESS×環ROY/
LOSTAGE/GOING UNDER GROUND/
toconoma/宮本菜津子/Olde Worlde/ANYO/
Maika Loubte/BimBamBoom/The Wisely Brothers/台風クラブ/他
※キャンプサイトの利用無料
[問]ONE Music Camp運営事務局
[TEL]070-6928-1812
チケット情報はこちら

LOSTAGE 五味岳久さんがインタビュアーとなり、“今、気になる人”と会い、それぞれの生活圏から見えている景色や、これから見たい光景を語り、考える、連載企画『奈良からの手紙』。第12回は仙台を拠点に活動をされているミュージシャン、KUDANZ ササキゲンさんです。ササキさんとは初対面。そのご縁をつなげてくださったのは、カメラマンの橋本塁さんでした。当日は塁さんも同席されてのインタビュー。東京から仙台へと拠点を移したササキさん。様々なことを経験されてきた中で、今、音楽を通じて何を見つめているのでしょうか。五味さんが紐解いていきます。

 

東京で教えてもらったことを仙台に持って帰って
できることがあるんじゃないかなって」(ササキ)

 

五味岳久
(以下、五味)

僕は奈良出身で、今も奈良にいるんですけど、LOSTAGEは2001年に結成したバンドで、そこからずっと地元を拠点に活動しているんです。この連載では、地元とか、ホームとか、帰る場所とか、そういう場所に限らず、いろんな意味での自分の“拠点”“ホーム”をテーマに話を聞けたらいいなって思ってます。関係ない話をする時もあるんですけど、何となくそういうテーマがあります。今日は初対面なので、塁さんも出てきてもいいです…(笑)。今って塁さんを媒介にというか、塁さんに手伝ってもらっていろんなところに行っているんですか?

ササキゲン
(以下、ササキ)

東北の事務所に所属しているんですけど、今回(『血の轍』を)リリースするにあたって、東北プロモーションは事務所のプロモーターさんと一緒に回ってたんですけど、こっち側(関西方面)ってツテが何もなくて。塁さんがずっと「CD出たら一緒にキャンペーンに回るからね」って言ってくれてたんですよ。なので、塁さんが強い札幌とか、今回の大阪とか。

五味

そんなん全然、俺らの時やってくれへん。北海道とか。全然(ツテ)ないんですけど(笑)。

橋本塁

撮ってないやん(笑)。出会いが残響(レコード)にこれから所属しますっていうタイミングで。

ササキ

アー写はずっと撮ってもらっていて。

五味

そうなんですね。東京に出て、残響に所属してた時に知り合った。

ササキ

そうですね。ちょうど残響が周年か何かで、スペシャダイナーにそれこそ200人くらい集まって飲み会があって。その時は上京したばっかりで。(2011年の)震災があった後の、4月、5月とか。

五味

ライブとかじゃなくて?

ササキ

ライブとかじゃないです。ただの飲み会。で、ビンゴ大会があって、2人目にビンゴ引いたのが俺で、(景品が)塁さんのアー写無料撮影だったんです。それで撮影してもらって、そこから仲良くなって。デビューした時のアー写を撮ってもらって。

五味

なんか見たことある。これ何年前ですか?

ササキ

これが5年前ですね。

五味

全部撮ってもらってるんですか? 今。

ササキ

全部ではないですけど、要所要所で。前回のミニアルバム(『何処か長閑な』)の時もお願いして。

五味

震災の後に上京したんですよね。それは何で…? いろいろ聞かれました? インタビューとかで。

ササキ

そうですね。ちょうど、2011年の3月9日に残響の契約が決まったんです。

五味

たまたま?

ササキ

そうです。で、9日に東京でライブがあって。その時はエレキで弾き語りをして。何社か事務所の人も来てくださって、その中で残響が決まって。その日、地震があったんですよ。震度4か5くらいの、結構大きめの。地震が宮城であって。ライブの時もすごく心配していて。ライブが終わって漫画喫茶で1人で寝てて。そしたら地震の夢を見ちゃって。怖くなって帰っちゃったんですよ。

五味

寝て、それで起きて、そのまま仙台に帰った?

ササキ

そう。10日に残響レコードのスタジオ見学に行って、もう1泊するはずだったんですけど、地震の夢がこびりついて離れないから…。怖いから10日の夜行バスで仙台に帰ったんです。11日の朝6時について、家に帰って。仙台で寝てたら被災して。

五味

じゃあ、そのタイミングは向こうにいたんですか。

ササキ

そうです。ひどかったです。実家が岩手県の山田町っていう沿岸なんですけど、いとこが津波で亡くなったりとかして。メンバー全員、バイトも失って、どうしようと思って。僕らは内陸だからまだよかったんですけど、みんな大変な状態で。できることをやらないとなって思った時に、俺らは契約が決まってるんだし、もう音楽をやった方がいいんじゃないかってメンバーをめっちゃ説得して、メンバーの家族とか説得して、4月に僕が最初に行って。

五味

それまでは上京しようとか、そういうのはなかったんですか?

ササキ

なかったです。音楽ができる環境じゃなくなって、もう東京に行かしてくれないかって。で、何とかして東京に出て。

五味

東京で活動して。そこから2年ぐらい?

ササキ

2年ぐらいですかね、バンドはもういいやって思っちゃって…。

五味

東京にみんなで行って。2年活動して、そこで解散というか。KUDANZ自体は続けるけど…。

ササキ

もともとKUDANZって一人で始めたので。僕、いろんな曲を作りたいんですよ。だけどレーベルでは毛色の違うものを当時はあまり好まれなくて。意図していることと違ったし、メンバーもメンバーで僕がいろんなものを作るからアレンジとかもついてこれなくなっちゃって。それで限界がきちゃって一人になって。それからサポートメンバーとかを入れながら。それこそ、今、indigo(indigo la End)で叩いている(佐藤)栄太郎とか。

五味

なんで仙台に戻ってきたんですか?

ササキ

2013年くらいには“残響はもうきついな”と思って。仙台にGIP(イベント会社)ってあるんですけど、その頃、そこで僕の担当をしていた人が独立してイベントプロモーターの会社を作ったんです。その中にレーベルもマネージメントも作るから二人三脚でやっていこうよっていう話になって。2014年に完全に残響と契約が切れて、最初は東京にいながら仙台に通ってレコーディングとかしてて。そのうち、2015年に腰を悪くしてしまって、1年間活動停止したんです、リハビリで。手術した時にベッドの上で“もう東京いっか”って思って。“なんか居る必要ねえな”って。2014年に出したミニアルバム(『何処か長閑な』)も東北の四季をテーマにしたミニアルバムで。それを作ったので、より東北に対する意識が強くなって。釣りとか、山菜採りとか、きのこ採りとか大好きなんですけど、もう帰ってあっちでやった方がいいってなって。

五味

それは東京やったらできないですよね。

ササキ

そうなんです。それで、2015年の春に仙台に戻って。腰の手術が終わって東京から一人で仙台に。かみさんを東京に置いて(笑)。

五味

東京にいる間、地元に悔いがあったというか…出てきたことに対しては…。

ササキ

それはなかったですね。住む場所も違えば、レコーディング環境とかも全然、違うじゃないですか。戻ることの方が不安でした。ただ、残響とか、東京に居る中で教えてもらったことを仙台に持って帰って、できることがあるんじゃないかなって…。

五味

今は結構、地元でその時のフィードバックがありつつ…。

ササキ

ありますね。あと、環境のせいにしてたら、“じゃあ俺達が今まで聴いてきた海外のミュージシャンとかどうなるの?”っていうのがあるじゃないですか。劣悪な環境でRECしてるけど、何でこんなにビシビシ来るんだろうっていうのがいっぱいあるじゃないですか。……ただ、まあ、やっぱり地方のレコーディング事情は結構大変かなとは思いますけど(笑)。

五味

地元でやるのは。今はどうしてるんですか?

ササキ

今回(『血の轍』)のレコーディングは、前半は宮城の蔵王にあるペンションで。そこに小さい体育館みたいな建物があって、グランドピアノがポンって置いてあるんですよ。

五味

演奏用に?

ササキ

多分、合唱団の練習とか、合宿とかで使うのだと思うんです。小さい体育館くらいの大きさで結構いいんですけど、時期を間違えると虫の鳴き声とか入ってきたり、演奏中に雪がドサって落ちる音が入っちゃう。防音されてないんです。ジャストなタイミングで入らないといけないんですけど、そこにハセケン(長谷川健一)さんとかいろんなミュージシャンとエンジニアを呼んで。

五味

録音機材とか持ち込んで。

ササキ

持ち込んで。箱自体は一日8000円くらいで借りられて、宿泊もそんなに高くないので、機材も入れてレコーディングスタジオと同じくらいのバジェットで借りられるんです。今回はドラムを録らない曲が結構多かったので、だったら昔の人たちが録ってるようなやり方で録りたいなって。できる限り一発で。

五味

せーので。

ササキ

そう。レコーディングスタジオでオーバーダビングしていくのって確かにきれいに録れるし、上手に録れるんですけど、なんか違和感がずっとあって。それがよく分かんなかったんですけど、アルバムの最後に入れた『ロングロングタイムアゴー』をハセケンさんと一緒に、みんなで一発録りで録って。

五味

そうなんや。

ササキ

それで聴いた時に、何で違和感があったかすごく分かったんです。録音ってオーバーダブしていけばいくほど時間軸が増えていくじゃないですか。そこには絶対一緒にはあり得ない時間軸が重なっていくんですよ。それって五感では分からない部分で違和感があるのかなと。だから(一発録りは)同じ時間の流れの中で一番自然に自分の中に入ってきて、それが好きなんだって。もちろんオーバーダブするものはしますけど、曲によっては極力しない方が。耳とかじゃなくて、脳みそなのか何なのか分かんないですけど、重ねれば重ねるほどずれていっちゃうことを感じるなと思って。空気の振動の問題なんだと思うんですけど…。

五味

ライブ感と同じかな。それをやろうと思ったら、リアルタイムで一緒にやれる仲間というか、プレイヤーがいないとダメですよね。

ササキ

そうですね。

五味

そういう人も地元にはいるんですか?

ササキ

対バンしていたバンドのギタリストとか、年齢が近い人とか、年上の人もそうですけど、出会いがあって、ずっと繋がっていて、でも一緒に仕事したことがなくてっていう人たちと今、結構やっていて。

五味

今幾つなんですか?

ササキ

32歳です。五味さんは幾つですか?

五味

僕、37歳になりました。

ササキ

次松(大助)さんと同い年ですね。僕、今、THE MICETEETHの次松さんと一緒にやっていて…。

五味

そうですよね。あの人も仙台なんですか?

ササキ

そうです。次松さんがいたっていうのも仙台に帰った大きな理由の一つで。

五味

昔から知り合いなんですか?

ササキ

2013年に知り合って。THE MICETEETHの次松さんが仙台に住んでるって知って。え?何で?ってなって(笑)。

五味

あの人も才能ある人ですよね。

ササキ

すごいですね。僕の音楽的な要素の中にシャンソンとか、ジャズとかがどんどん増えた時に会ったので、すごくバチっとはまって。それがすごく面白いです。ロックのテイストだったりすると、次松さんは次松さんでそっちはあんまりやったことがないから面白いってなって。

 

音楽を長く磨いていくのは、周りの人たちにとってもいいんだなって」
(ササキ)

 

五味

来る途中、電車の中でゲンくんのブログを読んでたんですけど…。

ササキ

恥ずかしい(笑)。

五味

ちょっとずつ遡りながら。仙台に帰る前ぐらいのタイミングかな、その辺までしか読んでないんですけど、地元の音楽が好きな人とか先輩とかといい感じで、楽しそうにやってるなって。仙台に帰ってから。

ササキ

そうですね。めちゃくちゃ楽しい。今まで音楽をちゃんとしてなかったなっていうくらい、音楽のことをちゃんと考えられるようになりました。

五味

それって自覚的にやっているというか…。東京にも音楽が好きな人がいっぱいいるじゃないですか。だけどギュッとしたまとまり感みたいなのはちょっと薄い…?

ササキ

そうですね。

五味

地元に帰った時の方が自分と音楽の距離感とかが掴めたんかなって気がしたんです。

ササキ

ようやく自分が音楽とどう関わっていったらいいかとか、音楽とどういうふうに付き合っていたらいいかとか…。

五味

そういう意味では東京にいた時と全然違う?

ササキ

そうですね。僕はいろんなミュージシャンが好きなんですけど、どこかのタイミングで「このアルバムは何か違うな」って卒業するタイミングとかがあって。そこからまた耳が肥えてくるじゃないですか。僕もお客さんに対して僕のことをいつか卒業すると時が来るって思ってるんですけど、でも僕が変わればお客さんも聴き方が変わっていって、卒業とかじゃなくて、また惹き込まれたりするじゃないですか。同じことをずっとやっているのってお客さんも成長しないし、自分も成長しない。だからアルバムとかによって変わっていきたいと思うんですけど、東京にいると同じことずっとやって、お客さんも同じものを見てるっていう感じがして、それが怖いっていうか。見ていて恐怖感があるんですよ。年とってかないの?って。

五味

ああ、年とっていきますよね。

ササキ

ねえ。

五味

結構ストイックにやっていたんですか?

ササキ

いや、そこまでじゃないです。そんなにお客さんもいなかったので、バイトもしてました。けど、働くこともあんまり向いてなくて(笑)、とにかく曲ばっかり作ってました。東京って何でもお金がかかるじゃないですか。僕、物欲とかそんなにないんですけど、もうどんどんバランスが取れなくなっちゃって。一時期、うつ病みたいになって。そういう時期もあって。でも今は何でそうなったかが分かるんです。超頑張ってたんですよ。今は全然頑張ってないです(笑)。どこに力を注いだらいいか分かったというか、音楽をやる時って“ほかのことも出来るけど、ミスをする”くらいの気持ちでやらないと周りの人たちがそれに気づいてくれない。周りの人たちがそれに気づいてくれるとサポートしてくれたりして、うまく回り始めるんですよ。

五味

今、うまく回り始めてる?

ササキ

うまく回り始めてます。それをすごい感じます。すると周りの人に対する感謝も生まれてくるじゃないですか。僕がガッとやってるだけなのに、塁さんみたいにちゃんと気づいてくれて、利害関係なく動いてくれる人たちがたくさん出てきて、感謝が生まれて。俺もやりたくないなって思ったことでもやれるようになってきたりするし、すごくいい関係で回るようになって。だから、音楽を長く磨いていくっていうのは、周りの人たちにとってもいいんだなって。

 

「みんな出会いたがってる」(五味)
「出会いたがってると思うから、連絡くれ!」(ササキ)

 

五味

今の仕事場とか、よさそうですもんね。すごい幸せそうな(笑)。僕、行ったことないけですど(笑)。

ササキ

いや、すごいですよ(笑)。めっちゃ楽しいです。仙台にファシュタっていうお店があって。

五味

そこは何なんですか? レストラン?

ササキ

そこは半分バーで、半分アパレルなんです。

五味

服屋さん?

ササキ

そうです。元々アパレル会社にいたエツコさんっていう女性が始めたんです。10年くらい前に。そこでライブをしたのがきっかけで仲良くなって。僕、その時は東京にいたんですけど、友達のPVを手伝っていて、ちょうど頼もうと思っていた監督がスケジュールが空いてなくてどうしようって思ってたら、「うちの息子、東京でカメラマンやっててCMとかも撮ってんだよね」ってエツコさんが教えてくれて。聞いたらPVとかも撮ってて。(作品を)見たらいいなと思っていて。

五味

その人の息子さん?

ササキ

そうです。そしたらその子がちょうどエツコさんと話してるところに来たんですよ。初めましてって。で、仕事をお願いして、そこからまた会って。PVとかいろいろ作ったりするうちに仲良くなって、東京でずっとつるんでたんです。で、僕が東京から仙台に戻る時に彼も仙台で撮影があるからって僕を機材車に乗せて連れて行ってくれたんです。その時、その息子が完全に体を壊しちゃって。

五味

ああ、ブログに書いてた統合失調症?

ササキ

そうです、そうです。

五味

僕、ゲンくんのブログ読んでるから分かるけど、記事を読んでる人は分かんないですよね。

ササキ

そうですね(笑)。それからエツコさんと看病する生活が始まって。それを乗り越えて。……統合失調症ってそんなに簡単に治らないんですけど、今回、『血の轍』のアルバムのトレーラーを彼が撮るところまで元気になって。

五味

一緒に帰る時におかしくなったんですか?

ササキ

そうです。車が道路の横の壁にすっちゃうような…。

五味

ギリギリの時に一緒にいたんですね。

ササキ

彼は24歳ぐらいで結構大きい仕事をやっていて、もうパーン!となっちゃって。東京にいる頃、僕の家に週4くらいで来てたんですよ、忙しいのに。大丈夫かなって思ってたんですけど、その時にはちょっとおかしくなっちゃってて僕と遊ぶ時間がが心の拠り所になってたみたいで。それがいなくなるっていうので、多分パーンとなっちゃったんだと思うんです。

五味

今は何しているんですか?

ササキ

その子は元々料理ができるので、料理しながら撮影の仕事も。いつも一緒にいます(笑)。

五味

そういうことか。そこで働きながらライブの時は休んで。

ササキ

そうですね。ただ、僕は夏くらいからほとんど入ってないです。月に1回とか2回、たまに手伝ったりするくらい。でも今も大体、起きたら行きます(笑)。朝ごはん食べたりとか。

五味

結構前なんですけど、この連載でdownyの青木ロビンさんと対談して。あの人、downyを休止してから沖縄に帰っていて、僕がツアーで沖縄に行った時に共通の知り合いを通じて連絡が来て、それまで面識はなかったんですけど2、3日、一緒に遊んで。その時、音楽が好きな人がやっている地元のバーとか、ピザ屋の周年とか、そういう現場に連れていってもらったりして。なんか、街に音楽が根付いているんですよ。たまたま僕が行ったタイミングがそうだったのかもしれないですけど。そういう現場を見て、その人たちは普段働きながら音楽をやっていると思うんですけど、すごくいいなと思って。いろんなやり方があっていいなって。そういうことに影響を受けたって言ったらアレですけど、僕ずっと奈良にいるので、地元でやろうと思っているやり方とかを考えるきっかけになったんです。一方では売ることを考えてやらないといけない部分もあると思うんです。生活にがっつり食い込んでくるような活動じゃないかもしれないですけど、ああいう場所がちゃんと身近にあるのがいいなと思って。僕は仙台に行ってないので分からないですけど、あの感じって何なんやろうと思って。僕もいろんなところに行って、そこで鳴ってる音楽とか聴きたいっていうのがあるでんです。(ブログを)読んで、めっちゃ行きたいなと思って。働いてたり、飯食ったりしてるところで…。

ササキ

生活してる場所に普通に音楽があって。

五味

新譜からも何かそういう匂いを感じたんです、音楽的に。ライブハウスでがんがんツアーをやったりとかじゃなくて、みんなで飯食った後に歌うみたいな。多分、東京にいた時はそういう感じでやれてなかったと思うんです。そういう趣味とか嗜好は元々あったと思うんですけど。それが何かいいなと思って。今、僕の感想を言っているだけみたいやけど(笑)。

ササキ

いやいや(笑)。ライブハウスもシステム上の問題もあると思うんですけど、いまだにチケットノルマを一生懸命払っている子たちがいっぱいいるし。でも、どういう環境でやるか自分達で作ることもできるじゃないですか、ライブって。ここで何かしたいよねっていうお店とかって、いろんなところに行くと実はあったりするじゃないですか。そういうところは場所代が安かったりするんですよね。機材がないから。だったら知り合いの機材屋さんに頼んでやればいいよねとか、自分達で環境を作っていくというのがここ近年、すごく増えてきていると思うんです。

五味

そうですね。距離感もちょっとおかしいですよね。音楽をやってる人と、聴いてる人、それを必要としている人たちの距離がこう……。まあ、インターネットの弊害でもあると思うんですけど、いろんなものが“整ってきた”という言い方が正しいのか分からないけど、出来上がり過ぎていて、間合いとかが俺の思っている感じとはちょっと違うんですよね。

ササキ

何か分断して細密化されていると思うんです。僕の音楽は(ジャンルでいうと)フォークとか言われたりするんだなって思うんですけど、僕がやりたいことってそれこそハセケンさんとLOSTAGEのスプリットとか、そういうことだと思うんです。僕、Crypt Cityとか大好きで、僕はパンクをやるつもりでポップスやっている気持ちでいるから…。

五味

偏っている人もいますけど、本来偏りを乗り越えるためのツールであって、線を引くものじゃないですよね。それがおかしくなってる。言葉とか情報が溢れすぎて、入れ物がどんどんどんどん小さくなっていってるみたいな。そういうのって地方に行くともうちょっと大らかというか、そこまでジャンルに拘らずに集まってきたりとか、友達やったりするんですよね。

ササキ

盛岡ってHIPHOPがめちゃくちゃ強いんですよ。僕の同級生でバンドマンって一人もいないです。みんなラッパーかDJかで、今はバイヤーとか、レコードショップをやってるとか。DJだったのにいきなり“俺、バンドやりたい”って30過ぎてからバンド始めるヒップホップの人とかいて。やっぱり面白いものを聴いてるから、めちゃくちゃ面白いバンドになるんですよ。こう、自由な感じになり始めて。

五味

それが結構、地方の方が元々の繋がりとかでまた再燃していたりとか、面白い人が集まりだしている感じがここ何年か出てきた。まあ、自分も地方にいるからなんですけど。自分も地元にずっといて、4年前に店を始めて。そういうところから面白い人が集まってくるっていうのは沖縄に行った時にも思ったし、いろんな地方に行くほど見えるんですよね、SNSとかでは多分、見えないですよね。

ササキ

ツイッターとかって一瞬で消えるじゃないですか、情報とか。でも僕らがやらなきゃいけないことって10年先、20年先のことで。10年先、20年先にどういうふうになっているかっていう、ビジョンって言ったらおこがましいけど…。多分僕とか五味さんとか、ミュージシャンとして脂が乗ってきたなっていう時期ってもっともっと先になると思うんです。

五味

そう思いたいです(笑)。

ササキ

ねえ(笑)。僕は50歳くらいでめちゃくちゃいい感じになっているっていうイメージを持っていて。でも、そうなるために自分がどこに行くべきか、自分で選んだ方がいいなと思って。東京にいてそれができる人は東京でやったらいいし、その人たちにはその人たちの器があって。彼らと同じように音楽をやっていくためにどこいて、どういう形で、どういう人たちとやるか、それは自分で選んでいかなきゃいけなくて。仙台に戻るっていうのは昔だと出戻りみたいなイメージがあるかもしれない。

五味

はいはい。

ササキ

けど、僕にとっては挑戦っていう気持ちで。

五味

東京も仙台も盛岡も奈良も一緒で、1つの地方都市と考えたら、そういう面白いことはもちろんあると思うんですけど、なんか覆われてしまっている感じがする。東京を批判しているわけじゃなくて、余計な情報が多すぎて。田舎にも音楽好きな人がいっぱいいると思うんですけど、僕とかゲンくんとかの活動の仕方を見て、そういう人が“じゃあ俺も”って“生きてる場所で(音楽が)できるんじゃないか”って思ってもらえるきっかけになればいい。

ササキ

そうですね。あとは、ジャンルとかそういうものを分断しないで音楽を聴いているような人たちっていっぱいいると思うんです。

五味

いるいる。

ササキ

その人たちにすごく出会いたいです。

五味

そう! みんな出会いたがってる。

ササキ

出会いたがってると思うから、連絡くれ!とか思います(笑)。

五味

そこがやっぱり繋がっていかないと面白くない。

ササキ

そうですね。盛岡で一番の親友が服屋をやってて。

五味

LOHM(ローム)?

ササキ

そうです! 盛岡にさんさ踊りっていうお祭りがあるんですけど、10年間、さんさ踊りの4日間、ストリートライブをしてる人がいるんです。佐々木龍大っていうんですけど。10年やってくうちに、今はもう「裏さんさ」って呼ばれてて。みんなさんさの時期になるといろんなところから龍大さんのストリートライブを観に来るようになって。僕もオフで観に行くんです。で、こないだLOHMの地下で「今年のさんさの映像を見る会」っていうただの飲み会があって。服屋とか、ミュージシャンとか、みんな集まって。秋田の仲のいいミュージシャンも来て、みんな観に来て。ただ龍大さんのライブを観て「ここヤバイね」って言いながら飲むだけなんですけど(笑)。ジャンル関係なく、媒体の人とかも来てて、“次、どういうことやろうか”っていう話をみんなでしてるんです。地下会議みたいな。

五味

多分、その町の祭りとかがそういう機能を持ってたと思うんですよ、サロン的な。そういうことをやれる人、軸になる人が地方で増えて、もうちょっと盛り上がってきたら面白くなるなって、実は今日、会う前から思ってて。僕も(仙台に)行ったことないから、今度1回、行かしてもらって。もちろん奈良にも来てもらって。今日、初対面やったから、ちょっとお互いに様子を見ながらでしたけど、そんな感じで今後ともお付き合いいただければ  と思います。よろしくお願いします。

ササキ

よろしくお願いします。今日はありがとうございました。

五味

ありがとうございました。

 

 


取材:五味岳久(LOSTAGE)
撮影:河上良(bit Direction lab.)
企画:高橋はじむ
企画・構成:岩本和子
取材協力:橋本塁(サウシュー&STINGRAY)