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Profile

松岡充(写真右)
まつおかみつる●1971年8月12日生まれ、大阪府出身。1994年ロックバンドSOPHIAを結成し、1995年メジャーデビュー。約200曲にも及ぶ楽曲を作詞し、「街」をはじめ多くの代表曲を作曲。2013年8月、SOPHIA活動休止。俳優としても活躍し、その演技力を高く評価されている。代表作にはドラマ『人にやさしく』、音楽劇『リンダ リンダ』舞台『キサラギ』など。他にもアーティストへの楽曲提供や写真集出版・小説執筆・プロダクトデザイン・番組司会など多彩な分野で活動。現在は新バンドMICHAELを結成し、精力的にライブ活動を行うとともに、松岡充 新プロジェクト「DDB*」を立ち上げるなど、さまざまなジャンルで活躍する。12/16(土)・17(日)松下IMPホールにてMICHAELのクリスマス恒例ワンマンライブを開催。


石塚朱莉(写真左)
いしづかあかり●1997年7月11日生まれ、千葉県出身。ニックネームはあんちゅ。NMB48チームBII。趣味は映画鑑賞。2016年夏、悪い芝居の『メロメロたち』で初舞台、初主演を果たし、2017年4月、悪い芝居『罠々』に出演。9月、劇団アカズノマを旗揚げ。2018年4月、柿喰う客の七味まゆ味を演出に迎えて、同劇団の人気作『露出狂』をABCホールにて上演する。

公式サイト
http://www.nmb48.com/

Stage

OFFICE SHIKA PRODUCE VOL.M
『不届者』
Pコード:480-720
▼10月13日(金)19:00
▼10月14日(土) 13:00・18:00
▼10月15日(日)13:00
サンケイホールブリーゼ
S席(1F)-6800円
A席(バルコニー・2F)-5800円 
ヤング券-4500円(整理番号付/22歳以下/公演当日要年齢確認証)
[作][演出]丸尾丸一郎
[音楽]オレノグラフィティ
[出演]松岡充/荒木宏文/オレノグラフィティ/橘輝/鷺沼恵美子/峰ゆとり/近藤茶/椙山さと美/谷山知宏/小沢道成/池田純矢/丸尾丸一郎
※未就学児童は入場不可。ヤング券は公演当日劇場受付にて座席指定券と引換え。
※10/13(金)アフタートークイベントあり([出]松岡充/荒木宏文/池田純矢/オレノグラフィティ/丸尾丸一郎)。

チケット情報はこちら

2016年7月、京都の劇団・悪い芝居の『メロメロたち』に出演し、女優として初舞台を踏んだNMB48の石塚朱莉さん。役者としての第一歩を踏み出したばかりの彼女が、さらなる高みを目指すべく、脚本家や演出家など演劇界の諸先輩方に「演劇のいろは」をお聞きします!

今回ご登場いただいたのは、バンド活動を軸としながら俳優としても幅広く活動されている松岡充さん。2004年に鴻上尚史さんが作・演出を手がけた音楽劇『リンダ リンダ』で舞台デビューし、その後もミュージカル『タイタニック』、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』などで主演、持ち前の歌唱力を活かしつつ演技でも魅せてきました。10月13日(金)~15日(日)には、サンケイホールブリーゼにて、劇団鹿殺しの丸尾丸一郎さんと企画した舞台VOL.M『不届者』に出演。作・演出を手がける丸尾さんもコッソリと見守る中、役者業への思いを中心に話を聞きました!

 

“つながり”から始まった役者業

石塚

松岡さんはミュージシャンでありながら、役者としてもご活躍されているじゃないですか。最初にお芝居に興味を持たれたきっかけは何だったんですか?

松岡

はじめは、僕は絶対に役者のお仕事は自分にはできないって思っていたんです。だからお話をいただいても台本も読まずに何度かお断りすることもあって。でも、その当時の事務所の社長から「これだけは読んで欲しい。読むだけでいいから」と言われて読んだのが、『人にやさしく』というドラマの台本やったんです。

石塚

へ~!

松岡

読んだらめちゃくちゃ面白くて「プロデューサーに会ってみる?」って言われて、「会うだけです」と言って会いに行ったら、プロデューサーの隣に僕がたま~に行くバーでよく会う、顔見知りの男性が座ってて。それまでは全然素性を知らなかったんですけど、それが鈴木おさむさんだったんです。キャストを決めるときに鈴木さんが「松岡君がいい」と言ってくださったみたいで。そういうちょっとミラクルなきっかけで始まったんですよ、僕。

石塚

そのバーの一件がきっかけで。

松岡

そうじゃないと、多分やってなかった。アーティスト活動をやりながら俳優もなんて、そんな器用なことはできないし、それ以前に人生かけて役者をやってる人たちが日々切磋琢磨していて、ようやくオーディション受かって、脇役から上がっていって、次は主役かなっていうところに、何の経験もないバンドマンがポーンと入ってきたら、普通に腹立つじゃないですか。僕がその立場だったら腹立ちますもん。

石塚

それはすごく思いますね。

松岡

そういう横入りみたいなやり方は嫌やし、それで良い作品ができるわけがないと思ってたので、やりたくなかったんです。でも、個人的な人との付き合いみたいなものが、ぽんぽんとつながっていって。舞台の世界に足を踏み入れたのも、初出演は鴻上尚史さんの音楽劇『リンダリンダ』という作品で、鴻上さん自らがわざわざ僕に会いに来てくれたんです。そして、僕にとって思い入れの深い作品の再演で劇団鹿殺しの丸尾丸一郎君と共演したときに「次は僕のフィールドで松岡さんとやりたい」と言ってくれたんです。

石塚

そういうつながりなんですね! 今回の企画は構想5年なんですよね。

松岡

最初にその話があったのが5年ぐらい前。でも、そこから劇団鹿殺しはいろんな方を招きながら、演劇界で名を上げていくわけですよ。で、“次は俺のところに来るのかな?”ってずっと待ってるのに、全然来ない! 次の公演が発表されるたびに“また違う人とやってる…”ってちょっと寂しくなったりして…。5年越しでようやく声をかけていただきました(笑)。

 

劇団鹿殺しの魅力

石塚

そしてこのVOL.Mという企画が始まったわけですね。

松岡

そう。朱莉ちゃんは、初めて劇団鹿殺しを観たとき、どう思った?

石塚

初めて観た作品がこないだ上演された『電車は血で走る』の再演なんですけど、本当にカッコよかったです。いい意味で、最強に狂ってましたね。ダサカッコいい。

松岡

そうなんですよ。人間が一番カッコよく見える瞬間を描いてると思う。僕らって、人前に出る時、綺麗にしてもらえるじゃないですか。ヘアメイクしてもらって、オシャレな服を着させてもらえて、綺麗に写真も撮ってもらえて。このエンタテインメントの世界って、やっぱり光り輝く舞台の上にいることが美しい、カッコいいとされるけれど、劇団鹿殺しがやってるのは、そういうことじゃない。

石塚

人間臭さみたいなのが出てますよね。

松岡

必死になって汗かいて、その汗がキラーンと光った瞬間に、心がキュンとなる。そういうところを、丸尾丸一郎はよく分かっとるんですよ。ほんま、お客たらしですよ。

石塚

お客たらし(笑)。

松岡

でもそれが心の叫びじゃなくて嘘やったらバレるっていうことも分かってるから、毎公演毎公演、劇団員全員が死に物狂いでやってる。で、また死に物狂いになれるストーリーやし、役もそういう書き方をしてくれてるから、みんな遠慮せずに思う存分できるわけですよ。セーブする役の方が難しいですよね。思いっきりやれるほうがいいでしょ?

石塚

確かに! がむしゃらな役のほうがやりやすいですね。

松岡

『電車は血で走る』もそうですけど、劇団鹿殺しの舞台のオープニングって、なんかわちゃわちゃしてません?? セリフも多くて、何言ってるか聞こえないくらい。ホーンセクションの音もバーンとくる。ストーリーを伝えなあかんのに言葉が聴き取れないこともあって。でもきっとあれは計算で、お客さんは聴き取れないなら聴き逃さないように前のめりな感じで聴こうとする。それを狙ってると思うんですよ。

石塚

わちゃわちゃすることで、お客さんを引き寄せてるんですね。

松岡

そう。で、最終的には観客が自主的に、一言一言ニュアンスも含めて聴く体勢になっていってる。だから、オレノグラフィティはあんなしゃがれ声になるんですよ(笑)。

石塚

あはははは!(笑)

 

音楽活動と俳優活動

石塚

音楽活動とお芝居に対して、それぞれにかける思いは違うものですか?

松岡

それは同じですけど、ジャンルが違うから、時間が共有できないじゃないですか。だからどうしても活動って分かれてしまう。僕は今SOPHIAが活動休止なので、MICHAELという新バンドで活動してるんですね。MICHAEL主宰の音楽フェスを2回やっているんですけど、それは大きな会場でいろんなアーティストが一堂に会するようなフェスじゃなくて、例えば一週間、同じライブ会場で、毎日違うジャンルのアーティスト、違うジェネレーションの方々を招くっていうのをやっていて。そこに、鹿殺しがやってるエアバンドの鹿殺しRJPも出てもらったんですよ。他にも、演劇界からは荒木宏文君とか、お笑い界からはよゐこの濱口さん率いる禿夢(はげゆめ)さんとか。

石塚

あ~! エアバンドですね。知ってます。

松岡

そう。エアバンドの方々だったり、実際にミュージシャンとして活躍されている人だったり、大先輩の方々を呼んだり。それも演劇をやってなかったら、こういう異種格闘技戦みたいなことをやりたいとは思わなかった。結局、僕の中では音楽も演劇もドラマや映画も、全部一緒になればいいのにって思ってる。

石塚

あ~、なるほど。

松岡

舞台役者のことって、たぶん映像しか観ない方はあまり知らないと思うし、舞台好きの人からすると、テレビで誰が人気出てるか知らなかったりするし。バンドが大好きで追いかけてる人はお笑いのことを知らなかったり、アイドルが好きな人は舞台役者のことが分からなかったり。フィールドがそれぞれあると思うけど、全部一緒になったら面白いのになって思いますね。

石塚

私もそう思います。

松岡

ね、だからやりたいんですよね。

石塚

アイドル好きな人は、歌って踊ってるのを観るのが好きっていう人が多いけど、絶対演劇も面白いから、同じように素敵やから、本当に観に行ってほしいって思う。そういう意味でも私はすごく演劇をやりたいって思うんですよね。

 

丸尾丸一郎との舞台『不届者』

石塚

次の『不届者』ではどんな役を演じられるんですか?

松岡

徳川吉宗の役なんですけど、吉宗というと時代劇の『暴れん坊将軍』のイメージが強くて、正義の味方みたいな描かれ方をしているんですけど、僕が演じる吉宗は、まさに舞台のタイトル通り「不届者」なんです。吉宗は紀伊藩の徳川家で、本来なら天下を取るには届かないところにいる人なんです。江戸幕府の遠い親戚みたいな人が将軍まで上り詰めるって、何かあるんじゃないか? と。それで調べたら、将軍になる可能性のある人たちが、不慮の事故だったり、病だったりでことごとく死んでいってて。それはもしかすると、吉宗が将軍になるためにいろんな策略で殺していったんじゃないかという説もあったりして。そこに丸尾君が目をつけて、この根幹となるストーリーを作った。それに現代の保険金詐欺を絡めて、現代と過去を交錯させながら描いているんです。

石塚

悪い方にスポットライト当てて描くって、面白そうですね!

松岡

そうでしょ。僕、その発想が大好きで、正義の味方って誰が決めんねんって話で。例えば、ヒーローって地球を守ってくれるって言うけど、そんなヒーローの敵の怪獣にだって家族おるやんと。怪獣の息子からしたら、自分のお父さん殺そうとしてるから、ヒーローが悪じゃない? でも我々は決まって、ヒーローの目線から見てるから、怪獣が悪者やと思う。それって、一方からしか見てない価値観でしょ、って僕は子ども心にそう思ってたし、格闘シーンで街の中で巨大になったヒーローと怪獣が戦うじゃないですか。家の中の人、踏み潰されてるやん! ってずっと思ってた。

石塚

確かにそうですね(笑)。

松岡

そういうものがずっと僕の中にあり続けたので、この『不届者』で、悪とされる吉宗を演じる僕が、どう観客の目に映るのかというのは、来た人だけのお楽しみですね。完全懲悪なのかもしれないし。今はまだどうなるか分からないですけど、楽しみにしてほしいです。

石塚

めちゃくちゃ楽しみです!

松岡

この舞台への意気込み、「ちょっと温度感が違うぜ!」という自信があります。今まで観たことない、触れたことない、こんな温度感初めてやと思えるようなものにしたいと思っています。「これが僕の最新の代表作です!」と言えるものをお見せするつもりです。

 

対談を終えて

松岡

演劇の魅力をこの年齢で、ここまで語れる方ってなかなか珍しいと思うので、頑張ってほしいですね。何でそんなに好きなんやろう?って、逆にちょっと興味を持ちました(笑)。

石塚

あははは(笑)

松岡

だって若手の子たちは、みんな劇団に入るんですよ。映像出たい、テレビに出たい、そのために今頑張ってます、っていう人たちがごまんといてる中で、逆を行ってるわけでしょう。それはすごいですよね。

石塚

逆に私は演劇の方に強い魅力があると思ってるので。

松岡

そうやって言い続けてやっていたら、きっとフォロワーができていくと思うので。ぜひ頑張ってもらいたいなと思います。

石塚

頑張ります! ありがとうございます。私は松岡さんが出演されていた『私のホストちゃん』を観ていたこともあって、めちゃくちゃ緊張しました!(笑)。ちゃんと話せるかな~って、取材前からずっとドキドキしてたんです。クーラー効いてなかったんじゃないかっていうくらい、汗だくです(笑)。

松岡

そうなんや!(笑)。ホストちゃん観てくれてたのはうれしいなぁ。

石塚

『不届者』も楽しみにしています! ありがとうございました。

第9回は10月更新予定です。

 

取材:石塚朱莉(NMB48)
撮影:森好弘
構成・文:黒石悦子
企画:葛原孝幸


 

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