ホーム > 劇団 石塚朱莉 > 第24回 佐久間由衣さん 映画『君は永遠にそいつらより若い』

 

 

 

Profile

佐久間由衣(写真右)
さくまゆい●1995年3月10日生まれ、神奈川県出⾝。2014年⼥優デビュー、翌年『トランジットガールズ』でドラマ初出演にして初主演を務める。2017年のNHK連続テレビ小説『ひよっこ』ではヒロインの親友役を演じ⼀躍脚光を浴び、結婚情報誌「ゼクシィ」の10 代目CMガールに抜擢。同年『明⽇の約束』での演技で、10月期コンフィデンスアワード・ドラマ賞の新⼈賞を受賞する。初主演映画『"隠れビッチ"やってました。』(19/三木康⼀郎監督)では第32回東京国際映画祭で東京ジェムストーン賞を受賞。近作に映画『あの⽇のオルガン』(2019年)、『劇場版 殺意の道程』(2021年)、ドラマ『彼女はキレイだった』(2021年)など。2020年12月~2021年1月にかけて出演した舞台『てにあまる』(演出:柄本 明)では初の舞台ながら堂々たる熱演で話題を呼び、好評を博した。2021年10月スタートのドラマ『最愛』(TBS系金曜22:00~)に出演。

佐久間由⾐ 公式サイト
https://yuisakuma.com

 

石塚朱莉(写真左)
いしづかあかり●1997年7月11日生まれ、千葉県出身。ニックネームはあんちゅ。2012年、NMB48第3期生としてデビューし、2021年に卒業。2016年夏、悪い芝居の『メロメロたち』で初舞台、初主演を果たし、2017年4月、悪い芝居『罠々』に出演。9月、劇団アカズノマを旗揚げ。2018年4月、柿喰う客の七味まゆ味を演出に迎えて、同劇団の人気作『露出狂』をABCホールにて上演。2019年1月~2月には第2回公演『夜曲 nocturne』(作・横内謙介、演出・七味まゆ味)を大阪、東京で上演した。

出演作品

(C)「君は永遠にそいつらより若い」製作委員会

『君は永遠にそいつらより若い』

▼テアトル梅田ほか全国にて公開中
[出演] 佐久間由衣、奈緒、小日向星一、笠松 将、葵 揚、森田 想、宇野祥平、馬渕英里何、坂田 聡
[監督] 吉野竜平

【Story】
⼤学卒業を間近に控え、児童福祉職への就職も決まり、⼿持ちぶさたな⽇々を送るホリガイは、⾝⻑170cmを超える22歳、処⼥。変わり者とされているが、さほど⾃覚はない。
バイトと学校と下宿を⾏き来し、友⼈とぐだぐだした⽇常をすごしている。
同じ⼤学に通う⼀つ年下のイノギと知り合うが、過去に痛ましい経験を持つイノギとは、独特な関係を紡いでいく。
そんな中、友⼈、ホミネの死以降、ホリガイを取り巻く⽇常の裏に潜む「暴⼒」と「哀しみ」が顔を⾒せる...。

【公式サイト】
https://www.kimiwaka.com/

【ぴあ映画生活サイト】
https://cinema.pia.co.jp/title/184619/

Interview

映画『君は永遠にそいつらより若い』
佐久間由衣を主演に
20代の悩みと心の揺れを繊細に描く

http://kansai.pia.co.jp/news/cinema/2021-09/sakumayui.html

今回お話を伺ったのは、佐久間由衣さん。モデルとしての活動を経て2014年に女優デビュー、2017年にはNHK連続テレビ小説『ひよっこ』でヒロインの親友役を演じて注目を集めました。その後も映像を中心に活躍され、2020年には柄本明さん演出の舞台『てにあまる』で初舞台に挑戦するなど、着実に経験を積んでいます。近作ではドラマ『彼女はキレイだった』でヒロインの親友役を好演、現在、主演映画『君は永遠にそいつらより若い』が公開中。佐久間さんに、作品や役との向き合い方をお聞きしました。

 

新しい役に出会えることで、新しい価値観が生まれる

石塚朱莉
(以下、石塚)

佐久間さんは、モデルさんからスタートして女優さんになられましたよね。きっかけは何だったんですか?

佐久間由衣
(以下、佐久間)

元々、映画を観るのが好きだったんですね。で、モデルをやらせてもらうきっかけになった雑誌の専属モデルオーディションのときに、ひたすら好きな映画の話をしていて(笑)。だから絶対受からないだろうなと思っていたんですけど、モデルとして仲間に入れていただくことができたんです。モデルのお仕事をやっていきながらも、周りの人たちがお芝居の世界に入っていく姿を見ていて、自分もお芝居に興味があるのならやりたいって言った方が後悔ないなと思って、いろいろお話をしていたときにご縁があって。そこからどっぷりとお芝居の世界に入ることになりました。

石塚

最初から女優さんもやりたいと思われていたんですね。

佐久間

興味はあったんですけど、自分がお芝居をやりたいというのはおこがましいなと思っていて。あと、人前で何か表現したりするのが恥ずかしいっていう気持ちがすごく強かったんですね。だから映画とかドラマだったら、大勢の前じゃなくてもいいんじゃないかと思ったんですけど、実際はいっぱいいました(笑)。

石塚

そうですよね(笑)。結構いろんな役割の人がいますよね。そこから、どういうことが決め手となって、女優をやっていこうと思われたのですか?

佐久間

満足する瞬間がないというか。毎回、新しい役に出会うことで、今までになかった価値観が生まれたりとか、今まで理解できなかったことが理解できるようになったりするんです。そういうことがすごく楽しくて、続けていきたいなと。

石塚

いろんな役を演じていく中で、いろんな考えが生まれる。

佐久間

そうですね。

石塚

役をいただいたときに、役や物語の世界観にどういう切り口で入っていかれますか?

佐久間

作品によりますけど、私は役の気持ちを自分に置き換えることで想像がしやすくなります。このときの気持ちは、自分にとってこういうことかな?って、ひとつひとつ自分に置き換えて考えていかないと、言葉では分かってはいても感情までは深く理解できない状態になってしまうので、自分に置き換えることを意識するようにはしています。

石塚

まずは自分の経験や考えからどんどん役を理解していく感じですか。

佐久間

そうですね。私はそこがないと結構難しいなと思います。

石塚

自分とは考えとか行動がまったく違っている役の時もありますよね? 私、いつもどう理解したらいいのかなって悩むんです。

佐久間

難しいですよね…。私は自分の身長の高さだったり、モデルをやっていた経験があるからか、都会的なイメージの役柄をいただくことも多くて。でも自分自身は派手なタイプの人間ではないから、そういうキラキラした女の子ってどういう風に演じたらいいのかなって、いつもいただく役と自分の中身とのギャップに悩んだりします。それはいまだにどうしたらいいかって分からないんですけど、それを考えるのも楽しいなと思えるんです。

石塚

自分がイメージするキラキラした人たちを表現される感じですか?

佐久間

そういう役をいただいたときは、自分の場合どうやってギアを上げていくのかとか、どんな瞬間がこういう気持ちになるのかなって考えながら深めていきます。

石塚

じっくりじっくり、役に入っていかれるんですね。

佐久間

そうですね。時間がかかります。

 

作品との向き合い方

石塚

最初に台本をいただいたとき、どういうところに注目して読まれていますか?

佐久間

う~ん、どうだろう…。一番最初は、何の視点も入れずにフラットな状態で、お客さんの目線で読むようにしています。2回目は自分の景色、いただいた役からどう見えるかを意識しながら読んでいますね。

石塚

監督さんとか作家さんが伝えたいことを読み取って、自分の演技に落とし込まないといけないじゃないですか。私、それがよく分からなくて。どういうところから読み取っていけばいいのかなっていつも悩むんです。

佐久間

私も一緒です(笑)。きっと、分かろうとして分かるものじゃなくて、現場に入って感じる瞬間ってすごくある気がしていて。私の場合、答えとか正解みたいなものを探して台本を読むと楽しくなくなっちゃって、責任を感じてしまうなって最近気付いたんです。だから最近は、もちろん役として大切なものは持っておきつつ、現場で感じることを楽しむというか。ここって悲しいシーンじゃなかったはずなのに、どうして悲しいんだろうとか、そういうことが起きるのが楽しいなって思います。

石塚

ガチガチに考えるより現場で感じること、ですね。どうしても正解がほしくなっちゃうんですよね。お芝居をやることにおいて正解なんてないんだとは思うんですけど…。

佐久間

それも素敵なことだと思います。自分で一度考えて導き出したものを持って現場に行くのと、そうじゃないのだったら絶対違うと思うので。監督さんとかも、まずは考えてきたものを見たいと思うから。

石塚

いくらそれが違っていても…。

佐久間

考えたものをひとつ持っていって、結局捨てることになっても、そこまで辿り着いた考えって絶対無駄じゃないと思います。

石塚

監督さんのイメージと自分の考えていたイメージが違うときってありますか?

佐久間

ありますね…。でも、監督さんがおっしゃったことをまず一回、素直な状態で理解しようとします。一回全力でやってみて、それができなかったときに、監督さんもきっと考えるだろうし、それで“あ、こっちだ!”って方向性が分かれば、それはすごい素敵なことだと思うから。まずは一度、全力で受け止めることかなと思います。

 

初舞台での経験

石塚

私は舞台に出させていただくことの方が多くて、映像はほぼやったことがないんですね。佐久間さんは昨年、『てにあまる』という舞台に出演されて、映像と舞台でどんな違いを感じられましたか?

佐久間

何もかもが違いました。ネガティブな意味ではないですが、楽しさが最後まで分からなかったんです。

石塚

そうなんですね! どういったところが…?

佐久間

稽古中が一番楽しかったんですね。本番が続いていく中で、スイッチが外れる瞬間みたいなものが、本番中にあまり感じられなくて。稽古ではあったんですよね。でもどこか力が入ってしまうっていうのがすごくあって、舞台を楽しめるまではいけなかった。

石塚

お客さんから観られているのを意識しちゃうとか?

佐久間

怖かったです、お客さんがいらっしゃるのが。

石塚

失敗したらどうしようって?

佐久間

それもありますね。石塚さんはそういうことないですか?

石塚

私は稽古中よりも、本番の方が前向きになれるというか。“あとちょっと!頑張ろう!”っていう気持ちになれるんですよね。

佐久間

すごい!うらやましいです。

石塚

稽古中楽しかったですか?

佐久間

お稽古、楽しかったです。みんなで作り上げていく過程がすごく楽しくて。本番ってそれを発表する場所、みたいに思っちゃってたんです。でもそうじゃなくて、本番の最中も作り続けるじゃないですか。

石塚

そうですね。本番で変わることもありますし。

佐久間

変わりますよね。それにちょっと怖気づいてしまったというか。稽古はすごく伸び伸びと、受けた演出に対しても“こんなに変わるんだ!”って思ったんですけど、そこからそれを追いかけ始めてしまって、違うことをやったら“あれ? またなんか違う…”って。いまだに、どうしたらよかったのか出口が見えていないんです。

石塚

確かに、本番中にいろいろプランを変えていくのって結構怖いというか。大丈夫なのかなって思いますよね。あと、映画とドラマはどう違いますか?

佐久間

映画の場合は伝えたいことが決まっていて、そこに向かってどう伝えていくかをみんなで話しながら作り上げる。ゴールは決まっているけど、そこに向かってどういう風に伝えたら伝わるのか、プロセスを考えていくような感じだと思っています。ドラマは、ご一緒した大先輩の女優さんが仰っていてなるほど、と思ったのが、撮影しながら放送が始まる作品がほとんどの中で、実際に放送されたときに視聴者の意見を聞きながらそれを反映することができるから、そこがすごく楽しいと仰っていて。私はそれを楽しめるところにいくまですごく時間がかかったんですけど、今は楽しんでいます。私の場合は、特に監督さんとかマネージャーさんとか家族とか、自分に近い人がどう思っているかは大事にしますね。

 

相手の空気感を感じ取ること

石塚

なるほど。確かにドラマは周りの人の意見が聞けますね。話が変わるのですが、よくセリフを受けるときの芝居が一番重要だと言われるんですけど、受けるときって、どういう心構えでいますか? つい自分の次のセリフのことで頭がいっぱいになるんです。“こういうタイミングで言わなきゃいけない”とか“相手にとって大丈夫なタイミングかな、声色大丈夫かな”とか。セリフ待ちのときってどういう心の体制を整えていますか?

佐久間

う~ん…、難しいですよね。私も逆に聞きたいくらい(笑)。例えば映像のお仕事だったら、極限までセリフを忘れるようにはしています。セリフが飛ぶ一歩手前くらいの感じでその場にいて、相手からの言葉が返ってきて、その場で自分のセリフを思い出して言う。エネルギーをそこだけに集中すると、先に起こることをその瞬間忘れることができるので。理想はそういう感じかなと思います。

石塚

相手の言い方によっては、最初にイメージしていた返し方と違う風に返したくなるときもあって。そこでギャップが生じて、相手に対して申し訳ないって思っちゃう。受け方が難しいなと思うんです。

佐久間

以前、佐藤二朗さんと掛け合いのシーンがあったときに、“俺を見てたらいいから”って言っていただいたんですよ。セリフだけは頭に入ってる状態で、二朗さんの空気感だけ感じるようにして、とにかく二朗さんを見るっていうことだけに集中してやったときに、気付いたら終わっていて。一回も頭でセリフをなぞらなかったし、ひとつひとつがそのとき新鮮に飛び交った球だったんです。

石塚

きちんと相手に向き合って、そのときの空気感を感じ取ることが大事なんですね。どのシーンでもそういう風にやれたらいいですよね。公開中の映画『君は永遠にそいつらより若い』を拝見して、それこそこの映画では、相手から発する言葉とか、そのとき思っていることとかを感じ取っていかなきゃいけないお芝居だったのかなと思ったのですが、実際に演じられていていかがでした?

佐久間

この作品は特に、観ている人に私が演じるホリガイの気持ちを想像してもらいたかったので、自分から表現することはあまりしないようにしていました。ホリガイは、身体でやっていることと心で思っていることが違ったりする役で、笑っていても作り笑いを浮かべているだけだったりする。だから心の中では、友達と一緒にいても“早く帰りたいな~”って思ってるとか、そういう気持ちを常に持っておくようにしていました。表現することを意識しなかったというか、自分に内在するホリガイをそのまま表に出す感覚でいました。

石塚

表面上の仕草というか。

佐久間

“帰りたいな~”って思っているのに、新しい友達が来たら笑顔を見せて“早く、座って座って!”って言って、自分もそこに座っちゃうみたいな。やっていることと思っていることがいつも違って、そんな自分が嫌だなって思っていたので。“相手を見て受ける”というよりも、自分がどんな反応になるのかなというのはすごく意識していました。

石塚

その演技も難しそうですね…。いろんな役を経験されてきているので、お話を伺えてよかったです。ありがとうございました!

 

取材:石塚朱莉(NMB48)
撮影:福家信哉
企画:葛原孝幸
構成・文:黒石悦子

 


 

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