ホーム > 劇団 石塚朱莉 > 第19回 劇団コケコッコー 野村尚平さん

 

 

 

Profile

野村尚平(写真左)

のむらしょうへい●1988年4月14日生まれ、大阪市出身。NSC30期生。2008年に同期の河野良祐とコンビ、プリマ旦那を結成する。数々のコンテストの決勝に進出し、2013年には「第48回上方漫才大賞」新人賞を受賞した。現在はよしもと漫才劇場を中心に出演。2018年には自身の劇団「コケコッコー」を旗揚げしたほか、「よしもと×アカル 4月公演 はっぴーえんど」で脚本・演出を担った。落語にも取り組み、笑福亭笑利との落語会『オチケン』も随時開催している。バンド、空きっ腹に酒の元ベーシストでもあり、お笑いに音楽と多彩な顔を持つ。

 

石塚朱莉(写真右)
いしづかあかり●1997年7月11日生まれ、千葉県出身。ニックネームはあんちゅ。NMB48チームBII。趣味は映画鑑賞。2016年夏、悪い芝居の『メロメロたち』で初舞台、初主演を果たし、2017年4月、悪い芝居『罠々』に出演。9月、劇団アカズノマを旗揚げ。2018年4月、柿喰う客の七味まゆ味を演出に迎えて、同劇団の人気作『露出狂』をABCホールにて上演した。

NMB48公式サイト
http://www.nmb48.com/

Stage

劇団コケコッコー第二回公演「恋の文」
チケット発売中 Pコード:488-576
▼10月19日(金)19:00
▼10月20日(土)13:00/17:00
ABCホール
前売指定-2500円 
[出演]プリマ旦那・野村/吉岡友見/鮫島幸恵/キタノの大冒険/樋口碧子/伊丹祐貴/堀川絵美/マユリカ・中谷/ラニーノーズ・洲崎/辻凪子/佐々木ヤス子
※5歳以上は有料。4歳以下は保護者の膝上鑑賞1名のみ可。お席が必要な場合は有料。
※ビデオ・カメラ、または携帯電話等での録音・録画・撮影・配信禁止。
※出演者は変更になる場合がありますので予めご了承ください。変更・払戻不可。
※車椅子の方はチケット購入前に要問合せ。
[問] チケットよしもと予約問合せダイヤル■0570-550-100
チケット情報はこちら

2016年に京都の劇団・悪い芝居の『メロメロたち』で初舞台を踏み、2017年に上演された同劇団の『罠々』でも稀有な存在感で魅せたNMB48の石塚朱莉さん。演劇の魅力を広く伝えるべく、2018年4月、自らが劇団アカズノマを旗揚げ。柿喰う客の七味まゆ味さんを演出に迎えての第1回公演『露出狂』を上演し、大盛況のうちに終えました。そんな石塚さんが、舞台女優としてさらなる高みを目指すべく、脚本家、演出家、俳優として活躍している演劇界の諸先輩方に「演劇のいろは」をお聞きします!

今回は漫才師の野村尚平さんにご登場いただきました。2008年に河野良祐さんとコンビ、プリマ旦那を結成。王道のしゃべくり漫才でじっくり聞かせる実力派で、「第31回ABCお笑い新人グランプリ新人賞」や「第48回上方漫才大賞 新人賞」をはじめ、数々のコンテストで入賞しています。その傍ら、落語やお芝居など積極的に活動する野村さん。2018年1月には自身の団体「劇団コケコッコー」を旗揚げし、第1回公演『おかえり』を上演、野村さんは作・演出、出演を務め、オリジナルの人情喜劇を繰り広げました。石塚さんとは初対面ではありましたが、劇団コケコッコーの旗揚げエピソードから始まり、最終的には石塚さんが次回公演への猛烈プッシュと、ざっくばらんな演劇談義となりました。

 

劇団旗揚げのいきさつ

石塚朱莉
(以下、石塚)

私はNMB48というアイドル活動をしながら「劇団アカズノマ」を立ち上げて、今年の4月に旗揚げ公演を行うといった演劇活動をしているんですけど、野村さんはお笑い芸人さんで。なぜ劇団を立ち上げたんですか?

プリマ旦那・
野村尚平
(以下、野村)

元々は喜劇役者になりたかったというか、とにかく人前でコメディがしたくて。NSCに入って、「それからどうする?」っていう時期によしもとの大人にそそのかされて、気が付いたら漫才師になってました(笑)。でもやっていくうちに別に漫才師でもお芝居とか、落語とかしていいんじゃないのってだんだんと思うようになって。芸人さんの中にもお芝居をやりたい方がいらっしゃるのですが、脚本をどうしようとなったとき、書く人が限られていたので「それやったら1回、試しで僕に書かせてもらえませんか」という感じで、だんだん携わっていったという感じですね。

石塚

私は脚本を書こうってなかなか思えなくて。

野村

プレイヤー気質なんですかね。

石塚

そうですね、だから本を書く人はすごいなって思います。なぜ書きたいって思ったんですか?

野村

「実は劇団やっているから、よかったら観に来てやって」みたいな、そんな感じで誘われていくつか観に行っていた時があったんですけど、まあ、好みもあると思うのですが、どれもすごく退屈で…(笑)。「俺、もっとおもろいの書けるぞ」って思って。生意気にも「いっぺんやってみたれ」ってやり出したんですけど、まあ、今、えらい目に遭うてますわ。こんなに大変だと思わなかった(笑)。

石塚

そうなんですね…(笑)。お芝居のテーマとか、設定、キャラクターは、どうやって思いつくんですか?

野村

普段の漫才、コントも、お芝居も落語も、アプローチが違うだけで僕の中で一緒というか。お話を考えているうちに、「これは漫才に向いているな」とか、「これはこの時間では収まりきらないから落語にしよう」とか、「落語やとまだまだ笑いが足りないけど、もっと長尺のお芝居にしたら笑いもやれるな」とか…、そんな感じです。

石塚

ちなみに、プリマ旦那さんのネタは?

野村

僕が書いています。

石塚

ネタも落語もお芝居も…ってなると、混乱しないですか?

石塚

好きでやらせてもらっているので…。たまにごちゃごちゃになる時がありますけどね(笑)。

 

オーディションでの注目点

石塚

野村さんはオーディションをされたこともあるんですよね。その時はどういうことをされましたか? 私も自分の劇団を上演するにあたってオーディションをさせていただいたのですが、どういうところを見たらいいのか分からなくて…。

野村

真っ当な脚本家さんが考えるような脳みそが僕にはないので、まずは「飲めますか?」と。飲みの場では素の部分が見られるので。膝を突き合わせてしゃべれるかどうか。あとは、「好きなものあります?」とか聞いて、その人が熱を持って話せることを聞いて、「なるほど、この人はこういう顔をしはんねや、自分の好きなものを話すときは」とか、そういった会話から人となりを寄せ集めて見ています。で、そういうことをしていたら40人のオーディションが8時間くらいかかりましたね…。いちいち盛り上がってもうたんですよ。いろんな顔を見たいなと思って、こっちも乗せたりとかして(笑)。

石塚

オーディションを受ける側から出すものを評価するというより、こっちから引き出してあげて…。

野村

と言うたら偉そうですけど、どんな人も面白いと思うんですよ。もちろん、NMB48さんで勝ち上がっていって、研ぎ澄まされているアイドルの方はすごいです。でも、一方では夕方のミナミをうろついている前歯が一本もない酔っぱらいのおっちゃんにも何かがあるわけじゃないですか。生きていてそれなりの何かが。何で歯が抜けたんか聞きたなるじゃないですか。

石塚

そうですね(笑)、経緯が気になりますね。

野村

人が好きなので、気になるんですよ。「何でこの人はこんなことしはるんやろ」「何が好きなんやろ」「どういう歩みなんやろ」とか気になっちゃって、いろいろ質問し始めるという…。やっぱり、一途に何かに向き合える人は面白いと思いますね。普通の生活をされている人の一日にも何かしら、笑えたり、泣けたりという瞬間があって。お芝居って切り取りやと思うんです。普通に生きている人らの世界の1ページを1時間半から2時間、覗き見るみたいな。

 

俳優に求めるもの

石塚

第2回公演の『恋の文』ですが、出演者も豪華ですよね。『ギア-GEAR-』に出ていらっしゃる佐々木ヤス子さん、つぼみの樋口みどりこさん、吉本新喜劇の役者さんも出ていて、こんな熱いメンバーでやられるなんてすごい!って思ったんですけど、どういう流れでこのメンバーになったんですか?

野村

飲み仲間ですね。僕は基本、その人のキャラクターの延長線でお芝居をやってもらうことが多くて。本職で役者をされている方のパフォーマンスの高さは重々承知しているんですけど、芸人っていう一つ欠けているような、真っ当じゃない人たちが等身大で――と言うと聞こえがいいかもしれないですが、そういう人たちだったらお客さんの日常に寄り添えるお芝居ができるんじゃないかっていう感覚があって。「とびきり男前ととびきり美人にラブロマンスを繰り広げられてもな…」ってどうしても思ってしまうので。線ほっそい、顔ちっちゃい兄ちゃんやんっていうよりは、僕みたいなぼてっとしたヤツとか、滑舌がままならなくて、でもお客さんが一生懸命耳を傾けて「この人、こういうこと言うてんねんな」って思わせる役者がいたり。飲んでいる席でそういう人となりを感じながら、「この人のこういう素敵な部分をちょっと膨らませて、こんなことできるな~」とか考えながら書いています。

石塚

今回の作品も「この人はこんな役がいいな」とか思いながら脚本を書かれたんですか?

野村

そうですね。頭の中にある程度キャラクターがあって、シーンとか景色が浮かんで、そういうものを寄せ集めたりしながら書くんですけど、「こいつにはこういうことを言わせたら絶対ウケる」とか、「この子はこういう所作をするとぐっと身につまされる」とか、そういう感じです。

石塚

なるほど。あの…私も劇団コケコッコーさんに出たいです…!

野村

こんな小汚い劇団に出たらだめですよ。

石塚

あ~、小汚いのはNGかも(笑)

野村

言いやがったな…!(笑)

石塚

冗談です(笑)! 私がやれそうな役、作っていただけますかね…?

野村

ちゃんと名前が通っていて、身なりも清潔感のある脚本家さんとか、そういう方にお話をしに行ったら、話もスッと進むかも分からないですけど、僕がこの部屋に入ってからちょっとピリッとした感じもありましたし…。

石塚

あれ? そうですか!?

野村

やっぱり……やっぱり汚いですからね、僕は。だからアイドルの方とのお芝居って気が引けますよね…。

石塚

野村さん、だんだん身体が端っこの方に寄っていってますよ(笑)。

野村

(笑)。いや、でもほんまは興味あるんですよ。劇団コケコッコーは平均年齢が高い方で。僕は今年30歳で、劇団員も大体30前後。さっき言った40人のオーディションの時は、平均年齢17、8歳を切ったんですよね。その時に「こんなみずみずしい芝居になんねや」と思って。僕らが今後一生、できへんような青臭さがあって。20代に入るとちょっと大人に足が掛かってくるじゃないですか。なので、ほんまに機会があって、まず僕と飲める許可が下りたら…。もし、そういう席が設けられたら、うちの女性キャストで石塚さんの回りを囲んで、NMB48さんのマネージャーさんも必ず帯同してもらいます。それで、ほんまに差し向かいでお話するような時間を設けたいですね。もし本当に興味がおありなら…。

石塚

本当に興味があります! いつも難波をうろうろしているので、見かけたら声をかけさせていただきます!

 

石塚朱莉というキャラクター

野村

僕なんかが偉そうですけど、石塚さんはいいキャラクターをされてますよね。アイドルって偶像じゃないですか。近づけない存在というか、ファンの方がすっごくあがめるのがよく分かるんですけど、実際お話をすると、立ち飲み屋で働いていて、おっちゃんのスケベな洒落も軽く交わしている元気な娘さんみたいな、明るい感じ。いいお人柄なんやなっていうのがにじみ出てるなって思います。

石塚

いや…今、衣装を着ていてキラキラして見えるかもしれませんけど、普通の服に着替えたら普通の人です。陰キャ(陰気キャラ)でコミュ障、引きこもり…。ぜひそういうところを汲み取っていただいて…次の次ぐらいの公演で、主演させてください!

野村

主演!? 確約とってくるな~。仕事できるな~!

石塚

やっぱりこの対談は公開されるものなので、言っておいたら何とかなるかもしれなくて…。

野村

小劇団の方と飲んでる時も「出させてもらえたらそれでいいんで!」っていう方がほとんどですよ。一言目に「次は主役で!」って言える気持ちよさったらないですね(笑)。かっこいいです。分かりました、次は主演で。任せてください!

石塚

これ、掲載されますけどいいですか。

野村

いいですよ。

石塚

じゃあ、私もそれまでに力つけて…(ポキポキ)

野村

いい音で指を鳴らすアイドルもいないですよ。諸説ありますが、指が太なると思いますし(笑)。

石塚

…恥ずかしい(笑)。

野村

石塚さんはお芝居に本腰入れているって聞いていたので、実際、お話を聞きたかったんですよ。また近々、公演はあるんですか?

石塚

来年の1月、2月くらいに劇団アカズノマの本公演があります! 第2回公演で、横内謙介さんの『夜曲』をまた七味まゆ味さんに演出していただきます。

野村

第2回公演に行かせていただいていいですか。

石塚

ぜひお願いします!

 

第2回公演『恋の文』について

石塚

『恋の文』はほろりと泣けるお芝居で、「タオルケットを持ってきてください」と宣伝文句で読んだのですが…。

野村

僕、よく言うんですよ(笑)。「ハンカチ持ってきて」は「タオルケット持ってきて」、「野球チームが作れるぐらい子どもほしい」は「セ・パ作りたい」とか…。まあ、ことお笑い芸人が泣けるものをやったりすると「泣けるとか、感動するとか恥ずかしい」とか、「格好つけてるだけでしょ」とか言われるんです。でも、そのくせみんな評判がいい、感動作の映画を観に行くじゃないですか。だから、本当は何でもいいんですよ。ただ、劇団コケコッコーはお笑い芸人が集まっている劇団なので、コメディの要素は無視せず、真摯に向き合いながら、その先にある普段、口にできないような言葉や考えを芝居に落とし込んでいます。だからめちゃくちゃ普通の人しか出てこないです。人間くさい芝居です。出演者一人一人はそれぞれキャラクターが際立っていますが、「うちの近所にあんなおばぁおったな」とか、「やまかしいじいさんおったな」とか、そういうふうに思ってもらえるような作品です。

石塚

どんなお話なんですか?

野村

過疎化した町に郵便局員さんが都会から来て働いていたんですけど、環境が整っていなくて、人員が足らなくて逃げ出しちゃったと。半年後に手紙1通だけよこして「この業務体型が改善されないと僕は戻りません」と書いてあったから、町の人たちが一生懸命頑張って改善したんですけど、結局その人たちは帰ってこなかったっていう、すごく寂しい話があるんです。これは実際にあったニュースで。今回、手紙というモチーフを取り上げたのは、昭和初期ごろに出版された辞書で「恋」の定義を調べた時、「遠く離れて会えない人に文をしたためてまで伝えたい思い」みたいな一説が書いてあって、今とだいぶん感覚が違うなと思ったんです。そこに触発されて手紙をモチーフにと思った時、田舎町の話とかを調べるにあたって、そういう地域に住む人たちや新しく入ってくる人たちの思いを描きたいなって。バタバタのコメディもありつつ、本当に人間くさい人情噺です。

石塚

なるほど…。私は結構、お手紙が好きで、ファンの方からもいただきますし、自分も昔、お友達に書いていたので、懐かしい気持ちになるんじゃないかなと思います。舞台も楽しみです。ちなみに、最近、お手紙書きましたか?

野村

僕は、ちょこちょこ書いてます。それこそ大阪以外の、遠方のファンの方からお手紙をいただいた時には一筆、返しています。遠方の方が、僕が大阪で細々とやっていることを知ってくださっているだけでもうれしいので。ただ、最近はSNSの配信とかで知ってくださった若い子が人生相談とかしてきて。自分が一番迷っているのにな…って思いながら配信で返事とかしてます(笑)。

 

取材:石塚朱莉(NMB48)
撮影:福家信哉
企画:葛原孝幸
構成:黒石悦子
文:岩本和子

 


 

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