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Profile

大東駿介(写真左)
だいとうしゅんすけ●1986年3月31日生まれ、大阪府出身。モデル、俳優。2005年にテレビ『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ)でドラマデビュー、2009年にはNHK連続テレビ小説『ウェルかめ』に出演、ヒロインの相手役を務める。2010年、新体操をテーマにした青春物語『タンブリング』で初舞台。以降、映画、テレビ、舞台と多数出演、好青年からチンピラ役まで、どんな人物にもなり切る“カメレオン型”で魅せる。2018年はBunkamuraシアターコクーン『プルートゥ PLUTO』で始まり、東京、大阪のほか、ヨーロッパでも上演、好評を博した。TUBEの前田亘輝がパーソナリティを務めるFM NACK 5「前田亘輝YOU達HAPPY」から生まれた企画、FILM「YOU達HAPPY映画版ひまわり」にも出演、この夏に公開される。

 

石塚朱莉(写真右)
いしづかあかり●1997年7月11日生まれ、千葉県出身。ニックネームはあんちゅ。NMB48チームBII。趣味は映画鑑賞。2016年夏、悪い芝居の『メロメロたち』で初舞台、初主演を果たし、2017年4月、悪い芝居『罠々』に出演。9月、劇団アカズノマを旗揚げ。2018年4月、柿喰う客の七味まゆ味を演出に迎えて、同劇団の人気作『露出狂』をABCホールにて上演した。

NMB48公式サイト
http://www.nmb48.com/

Stage

『ハングマン -HANGMEN-』
チケット発売中 Pコード:485-510
▼6月15日(金) 19:00
▼6月16日(土) 13:00/18:00
▼6月17日(日) 13:00
ロームシアター京都 サウスホール
全席指定-7500円
[作]マーティン・マクドナー
[翻訳]小川絵梨子 [演出]長塚圭史
[出演]田中哲司/秋山菜津子/大東駿介/宮崎吐夢/大森博史/長塚圭史/市川しんぺー/谷川昭一朗/村上航/富田望生/三上市朗/羽場裕一
※未就学児童は入場不可。
[問]キョードーインフォメーション
■0570-200-888
チケット情報はこちら

2016年に京都の劇団・悪い芝居の『メロメロたち』で初舞台を踏み、2017年に上演された同劇団の『罠々』でも稀有な存在感で魅せたNMB48の石塚朱莉さん。演劇の魅力を広く伝えるべく、自ら劇団アカズノマを旗揚げし、柿喰う客の七味まゆ味を演出に迎えての旗揚げ公演『露出狂』もこの春、大盛況のうちに終えました。そんな石塚さんが、舞台女優としてさらなる高みを目指すべく、脚本家、演出家、俳優として活躍している演劇界の諸先輩方に「演劇のいろは」をお聞きします!

今回は、俳優の大東駿介さんです。2005年にオーディションに合格して以降、雑誌『FINEBOYS』の専属モデルとして活躍し、俳優としても同年に日本テレビの『野ブタ。をプロデュース』でデビューした大東さん。以降、数々の映像、舞台作品に出演しています。作品ごとに変幻自在に役になりきる大東さん。同一人物とは思えない変貌ぶりで観る者を楽しませてくれます。現在は5月12日に彩の国さいたま芸術劇場で幕を開けた舞台『ハングマン- HANGMEN -』に出演中。ブラックユーモアに満ちたスリリングな会話劇で、大東さんは物語のカギを握る謎の青年役で魅了します。役者として今や引く手あまたの大東さんに、普段から心掛けていることや作品との向き合い方についてお聞きしました。

 

好奇心が仕事の糧

石塚朱莉
(以下、石塚)

今日はよろしくお願いします。大東さんは元々どういう経緯で役者になられたのですか?

大東駿介
(以下、大東)

俳優をやりたかったんですけど、最初に受けたオーディションがモデルの賞も絡んでいて。グランプリを獲れば俳優で、雑誌『FINEBOYS』の賞を獲ればモデルにもなれるという感じで。僕はその両方の賞をもらったんです。だからどっちも一気にやることになって。でも元々、モデル志望ではなかったんですよ。学校行事以外で写真に撮られたこともないし。自分にコンプレックスが多すぎて、写真に残したくなくて。だから写真をたくさん撮られるようになったのはモデルになってからでしたね。

石塚

撮られるのは苦手でも、役者になればドラマや映画でも撮られてばっかりになるから…。

大東

ひどかったよ。初めて出演させてもらったドラマが『野ブタ。をプロデュース』という作品で、「本番用意!」って言われた瞬間、反射的に人の後ろに隠れてしまって、めちゃめちゃ怒られたもん(笑)。

石塚

それは怒られそうですね(笑)。

大東

ほんまにコンプレックスが強かった。自分に自信がなかったし、その時点で将来の夢に具体性もない。役者になりたいっていう大まかな枠組みはあったんやけど、中身が全然伴っていなくて。人間としても、夢の形としても。いざ役者になれましたってなったときに、何もない自分に気づいてしまって。……そこから抜けるのに結構時間がかかりましたね。

石塚

最初は映像だったんですか?

大東

ドラマと映画でしたね。

石塚

ずっとカメラに撮られていたと思うんですけど、どうやって自分のコンプレックスを克服されたんですか?

大東

徐々にかな。モデルの場合は、「写真は撮られるものじゃなくて、表現するものなんだ」って考えにたどり着いて。写真ってすごく面白いもので、二次元の、ただの1枚の写真やけど、カメラマンさんと自分の心情が重なったときって、その一枚の写真の表情で背景が見えてくる良さがあって。

石塚

ああ~、この人何考えてんねやろうっていうことが分かったりしますね。

大東

そうそうそう。胸がきゅっと苦しくなったりとか。そういう写真の面白さを知ったことが大きかった。モデルでも役者でも、目的地に向かう過程が自分にとって重要なんです。「写真って何が面白いんやろ、写真の魅力って何やろ」って、そういうことを考えていったら「モデルって面白いな」って思えるようになったり。役者って何が表現できるんやろうとか、みんなは何を見たいのか、普通に生きるってどういうことやろうとか。役者に関しては、「出会うものすべてが材料」と自分は思っていて。だから好奇心が仕事のためになると思ってる。街を歩いていても興味があったら話しかけるし…。知らないっていうことが一番罪だなと思って。

石塚

舞台の稽古終わりとか、地方公演に行った時なんかも、お酒飲みに行ったら…。

大東

入ったお店でめっちゃ常連の人とかに話しかけるし、店の人と仲良くなります(笑)。京都には仲良くなったお店の人がいるんやけど、その人のお店に行かずに、一緒に別のお店に飯食べにいったり(笑)。それくらい仲良くなりますね。

 

与えられた役との距離感

石塚

いろんな人と知り合っていくことで、知らないことを埋めていく感じですか?

大東

そうですね。アイドルも同じやと思うんですけど、僕は10年ぐらいこの仕事をやっていても違和感があって。たとえば、僕は普通に生活をしていて、普通に生きている人を演じるわけじゃないですか。会社員とか。そういう日常を演じるにも関わらず、生き方が日常を排除するというのかな。例えば電車に乗りづらいとか、役者同士で遊ぶとか、お店は個室を取ってくれたりとか(笑)。みんなと違う生き方をしているのに、それで“普通の人”を演じるって無理があるじゃないですか。一般的ではない生き方の中で、普通を演じるって、その時点でもうフィクションだと思っちゃうんですよ。

石塚

そうですね、普段から虫を食べさせられたりとか、普通に生きていたら、そういうことはなかなかないですよね…。

大東

ごめん、それはちょっと僕もない(笑)。でも、虫を食べる役は誰よりもできるわけでしょ。芋虫って、そういう食べ方せえへんなとか。まあ、僕も芋虫は食べたことあるから(笑)。先日は広島の因島という小さな島が舞台の作品をやったんですけど、台本で想像できること、台本で作れることって、そこに住んでいない人間のできる限界なんですよね。因島に住んでいる人間を演じるからには、実際に因島に住んでいる人と接するのが一番の材料やと思います。

石塚

実際に自分の身でもって確かめる。

大東

それはごくごく自然な行為だと思ってる。役作りっていう言葉はあんまり好きじゃないけど、自分は役とどういう距離感でいくかと考えた時、一番しっくりくる関係が親友なんです。役と僕とが親友。家族も知らない姿を親友は見てるから。いいところ、ダメなところ、もしかしたら本人以上に知っているかもしれない。親友が悩んでいて相談に乗れるのは、本人が分からへんことを分かっているから。「あなたはそういうところがあるから、こうした方がいいよ」とかアドバイスできる。

石塚

他人の方が自分のことを理解している。

大東

そう。だから、役のことをそこまで理解できたらいいのかなっていつも思う。親友に近いですね。

石塚

その考え方は初めて触れました。

 

悩みはポジティブ

石塚

映像と舞台って違うと思いませんか? 舞台ならではの面白さがあるというか…。

大東

どういうところが違うと思います?

石塚

1ヵ月間稽古して、濃密に、細かく組み立てていくのが舞台で、映像経験はないんですけど、映像は…。

大東

瞬発的ですよね。

石塚

そうですよね。どれだけ自分が家で練習してきても、現場で出せるかが勝負になりますよね。まあ、舞台もそうなんですけど…。

大東

僕は何もないので…。昔からダンスをやっていたとか、養成所で芝居を学んだりとか、そういう経歴もないから、逆に自分にルールがない。こうやって踊るべき、こうやってセリフをやるべきだとか。これは恵まれたことなんですけど、舞台でいろんな演出家の方とやらせてもらっているんです。それぞれやり方が違うし、それぞれが自分にとって先生のような人なんです。やり方、方法論はいっぱいあるんですよ。選択肢が多いということは自分の財産やと思っているから、映像と舞台も、やり方が違うといっても、自分はそれをどう解釈するかということをいつも考えます。たとえば、舞台も1ヵ月稽古したけど、1ヵ月間やってきたことと全く違うことを本番でやってもいいわけやんか。

石塚

そうですね。何公演もありますしね。

大東

もちろん周りの役者さんに迷惑かけへん範囲で。そうしたら新しい解釈が生まれてくるやろうし。型にとらわれないようにしようと。一番やってはならないのは、鮮度が低くて、自分が一番楽な方に動くことですね。

石塚

何公演も重ねると、何公演もやったからこそ分かったこともある一方で、分かったから鮮度が落ちたりするじゃないですか。そのバランスがすごく難しいなと思って。

大東

そこを悩むっていうことがとても重要やと思います。変わったことがいいことか悪いことかを悩む作業が鮮度やと思うんです。悩みってとてもネガティブに捉われがちやけど、めちゃくちゃポジティブなことやと僕は思うんです。悩むときって何かを変化させたり、自分に新しいものを取り入れようとしているタイミングやと思うから。悩みがない時が一番怖い。

石塚

確かにそうですね。向上心がない時っていうのがないかも…。

大東

アイドルでもみんなと同じことをやっていて、それでもいい。いいんやけど、こうやって演劇に興味があるから、演劇の連載を持って、劇団を旗揚げして、他の人にはできんことをやっているわけで。その瞬間が一番楽しくない?

石塚

確かに、悩みをいろんな人に共有したりする時間は面白く感じます。

大東

辞めるのが一番簡単やけど、僕らは辞めるという判断をせずに、悩んで、新しいことをして、どんなことができるんやろうって考える。でもそれが楽しいから、悩むときは大概、ちょっと笑ってる(笑)。何か面白いことないかなって。

石塚

舞台を楽しむにはどうしたらいいですかね?

大東

僕は楽しさしかないと思うけどなぁ。

石塚

前回、キャプテンの役をやったんですけど、キャプテンとしてどうチームをまとめるか、その時はつらかったですね。どうしたらまとまるんやろうってずっと考えて…。

大東

まとめるっていうことが結論やとしたら、まとめようってしなかったらいいのかも。何をしたいんやろうって具体的に考えていけば答えが出てくるんじゃないかな。「面白いことをしたいのはみんな共通なことやんな。でも面白いものを作るためにみんなの意見が必要やんな。みんなは何をしたいんだろう、どうしたいのだろうか、みんなの意見を聞こう。絶対夢中になった方が楽しいはずや」とか、その結果論じゃないかなと思う。結果だけを押し付けると難しいよね。でも、答えを出そうとすることが、今の年齢とかのリアリティかも分からへんから。答えを出すことがそんなに重要じゃないよなって思う時もある。

 

舞台『ハングマン- HANGMEN -』

石塚

今、ご出演されている舞台『ハングマン- HANGMEN -』では、大東さんは10ページもある長ゼリフがスッと入ってきたというお話を聞いたんですけど、私には信じられなくて!(笑)

大東

あの体験は僕も初めてでしたね。人よりセリフ覚えが悪い方やと思うし、覚えるのが嫌やから舞台やりたくなかったし(笑)。でも、言葉に役の気持ちが通っているんですよ。すごくリズムもある。

石塚

戯曲とか、台本とか、自分の思うリズムと合わない時ってないですか?

大東

俺は嫌いな人でも尊敬できるんですよ。仕事を軸に考えると。この人ほんま性格悪いなって思っても、人が評価するものを生み出していたらそれは尊敬に値する。だってものを生み出しているから。この人苦手やな~って思う人っていない?

石塚

(笑)。まあ、一応はいます…(笑)。

大東

おるけど、たとえばその人は歌がうまい。そこは評価できるっていう。嫌いやからその人の持っている才能を否定することは、自分を傷つけることやから。あいつ嫌いやからあいつの芝居も嫌い、あいつの歌も嫌いってなったら、それは本質じゃない。あいつ嫌いやけどあいつ歌うまいから、じゃあ私はあいつの歌を越えるように頑張ろう!ってなったら、嫌いな人も自分のプラスになるよ。

石塚

あ~、そうか。

大東

そういう考え方をしていったら、そうなっていくから。台本でも、理解できなくても考えてみる。何でこんな構造になんねん、何でこんな考え方になんねん、何でこんなに嫌な言い方すんねやろって。そこを想像していったら、「ああ、分かる、分かる」ってなるから。「こうやろ、こうやろ」って気持ちが分かったから、今回、台本もスッと覚えられたんです。「分かる分かる!分かる分かる!」の連続やったんです。

石塚

『ハングマン』では、どんな役柄なんですか?

大東

イギリスのパブを舞台にした話で、僕は元死刑執行人の主人公が経営するパブを訪れる謎の若者、ムーニー役を演じます。その若者が来たことによってパブの日常が一変していく、イギリスのブラックユーモアとかもたくさん出てくるお話です。

石塚

ムーニーはどんな人物なんですか?

大東

僕と似ていて良くしゃべる(笑)。あとは、彼はパブの人たちにとって脅威的な存在なんですけど、本当に怖いかどうかも分からないっていうことが一番怖い。そういう存在感がありますね。

石塚

そういう役を演じる上で気をつけていることは何ですか?

大東

ムーニーは常に内側に狂気をはらんでいるようにしています。見せない。あからさまにサイコパスに見えないようにしようと。

石塚

見せないというのも難しそうですが、演じがいもありそうですね!

大東

そうですね。元死刑執行人を演じる田中哲司さんを筆頭に、役者陣はこんなに面白い芝居に出合えたことを本当に喜んで、楽しんでものづくりをしています。ほとんど北イングランドのパブが舞台のお話なんですけど。イギリスって、演劇でもお客さんはみんな幕前にお酒を飲んでたりするんですよね。僕も普段から、演劇と身近な距離感で付き合えたら楽しいなって日々思っていて。お酒を飲みに行くような感覚で、気負わずに遊びに来てほしいなと思います。そういうきっかけになる作品になれればと思います。

 

取材:石塚朱莉(NMB48)
撮影:木村正史
企画:葛原孝幸
構成:黒石悦子
文:岩本和子


 

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