2016年に京都の劇団・悪い芝居の『メロメロたち』で初舞台を踏み、2017年に上演された同劇団の『罠々』でも稀有な存在感で魅せたNMB48の石塚朱莉さん。演劇の魅力を広く伝えるべく、自ら劇団アカズノマを旗揚げし、柿喰う客の七味まゆ味を演出に迎えての旗揚げ公演『露出狂』も大盛況に終えました。そんな石塚さんが、舞台女優としてさらなる高みを目指すべく、脚本家、演出家、俳優として活躍している演劇界の諸先輩方に「演劇のいろは」をお聞きします！

今回は、劇団子供鉅人を主宰する益山貴司さんとの対談をお届けします。2005年に益山貴司、寛司兄弟を中心に大阪で結成され、2014年より東京に拠点を移して活動。劇場での本公演の他、カフェ、ギャラリー、ライブハウスでの公演、さらには役者や観客が移動しながら物語をつむいでいく“ツアー型演劇”、芝居しながら実際の家を解体していく“文化住宅解体公演”など、さまざまなスタイルで演劇の可能性を追求されています。5月に東京、大阪で上演される本公演『ハミンンンンンング』は、大阪を舞台にした、やるせなくも明るい父娘の物語。関西弁による“少しばかりのミュージカル”として上演します。劇団主宰として個性溢れる劇団員をまとめる益山さんに、東京の自宅兼事務所にて、劇団や演劇への思いについて伺いました！

演劇×〇〇でアピール

益山貴司
（以下、益山）

実は『チョップ～』の本番2日目、うちの女優がじん帯を切ってもうて。

石塚朱莉
（以下、石塚）

えっ!?　プロレスシーンでですか？

益山

そうそう。だからカーテンコールは私がおんぶして出て行ったんやけど。

石塚

それ、私が観に行った回です！　でも私が観た時点ですでにひとり松葉杖の役者さんがいましたけど…。

益山

あれは稽古中、受け身とり損ねて骨折して。だからその後はふたりとも松葉杖(笑)。ただあの芝居はみんな何かしらやってたよ。肉離れとか。私は東京公演で弟のキックが鼻にガチヒットして、鼻血ぶわーっと出てもうたし。ただその日の芝居、めちゃくちゃよかったらしいけど(笑)。

石塚

やっぱりリアルが一番なんですかね？(笑)

益山

そうかも。だから私、口の中ずっと真っ赤でしゃべってたらしくて。この日、なぜか6回もカーテンコールがくるっていう(笑)。お客さんがみんな「お疲れー」「よく頑張ったー」みたいな感じで。いやぁ、あれはホンマに鼻折れたかと思ったわ。

石塚

本物のプロレスを観ている気分になりました。

益山

あなたもどう？　“プロレス芝居”とか(笑)。

石塚

でも演劇と何かを組み合わせるのって面白いですよね。どっちのファンにもアピールできるので。

益山

それはあるね。『チョップ～』の登場人物の“マンモス稲子”は、その後、後楽園ホールデビューまでしたわけだし。

石塚

プロレスファンの方が演劇を観に来てくださり、今度は演劇ファンの方が後楽園ホールへプロレスの試合を観に行く。そういう流れって素敵なことだと思います。

石塚

脚本を書く時、ネタ切れってないんですか？

益山

あるよ。その時つき合ってた彼女と別れたこともあるし。自分の環境を変えへんとどうしようもないからって。

石塚

劇団公演以外にも脚本提供されたりしていますけど、それぞれ書き方って違うものですか？

益山

私は基本、あて書き派やからね。せやから外部でやらせてもらう時も、一度ワークショップをさせてもらったり、人となりを見てからやないと書かれへんかな。だから逆に言うと、いかに自分の劇団に助けられてるかが分かるよね。普段、本当に面白い人たちに囲まれているんやなって。

石塚

子供鉅人さんは全員面白いですもんね。

益山

NMB48の場合はどうなん？　誰がセンターをやるとか…まぁそんなん取り合いやわな(笑)。

石塚

そうですね。みんな一番前で歌いたいですから必死です(笑)。

益山

うちにそれはないねんな。というのも、うちの劇団のええところは、主役をやる役者が固定されていないってこと。

石塚

それは面白いですよね。

益山

そう。だからそれによってお話も変わってくるし。そういうところも家族っぽいのかもしれへんね。ちなみにあなたはどんな劇団にしたいんですか？　子供鉅人は家族っぽいって言われるけど、実際うちは大家族やったんよ。6人兄弟で。だからこんなふうに自分の家に人がいっぱいいることとかも全然苦じゃないわけ。

石塚

あぁ、家族の延長線みたいな？

益山

そうやと思うわ。自分は？

石塚

私は劇団で“爆発”したいですね。

益山

それは一緒に火を消してくれる人と出会えたらええな。たぶん火をつけるのは簡単やから。チームをつくるってことは、そういうことかもしれん。

石塚

なるほど～。私、弟のことが大好きで、わりと弟に助けられることが多いんですけど…。

益山

なら弟入れたら？(笑)

石塚

それだ！　子供鉅人方式でいいかもしれませんね。

益山

ハハハ、弟とじっくり相談してみて。

石塚

次回公演は『ハミンンンンンング』ですね。

益山

今回は劇団員だけで、親子の話にしようと思っていて。現代と過去を交錯させながら描いて、生演奏でちょっとミュージカルっぽいことも入れようかなと。

石塚

今回は大阪公演(※北加賀屋 名村造船所跡地 クリエイティブセンター大阪)だけなんですか？

益山

いや、東京公演もあるよ。原宿にあるVACANTっていう、古着屋さんの2階にあるスペースなんやけど。

石塚

へぇ～。演劇ができるスペースがあるんですね。

益山

僕ら東京に来てからは劇場でやることも多いんやけど、もともとは築100年の長屋に住みつつ、お店もやっていて。公演はそこで打ったりもしてたからね。2年前には大阪の茨木市で一軒家潰しながら公演したこともあるし(笑)。

石塚

“解体公演”でしたっけ？

益山

そうそう、『文化住宅解体公演』(2016年)。お客さんと一緒に家を破壊しながら公演したんやけど。

石塚

えっ、お客さんと一緒に!?

益山

お客さんはげんのうとか持ってきて、土壁を壊したり。最終的にはユンボで外壁を破壊するっていう(笑)。まぁ今回そういうことはせえへんけど。

石塚

本当にいろんな試みをされているので、今回も楽しみです！

益山

ありがとう。

益山

やっぱり劇団っていうのは熱源を持ってる人が存在しないと進まないからね。あなたはとにかく爆発しまくればいいと思う(笑)。

石塚

はい！

益山

そんで爆発しまくったら、消してくれる人が絶対出てくると思うから。

石塚

分かりました。とりあえず爆発します！

益山

ハハハ、楽しみにしてますわ。

石塚

それまでしっかり火薬詰めときます！