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『エウリディケ』開幕、父娘役の水嶋凜・栗原英雄に白井晃「本物の親子みたい」

白井晃が演出を手がける『エウリディケ』が、2月4日に東京・世田谷パブリックシアターで開幕した。

アメリカの劇作家サラ・ルールがギリシャ神話を現代版として再構築した『エウリディケ』は、2007年に米オフ・ブロードウェイにて初演された。作中では婚約したエウリディケ(水嶋 凜)と音楽家オルフェ(和田雅成)によるラブストーリーが展開。結婚式当日、"危険でおもしろい男"(崎山つばさ)に見初められたエウリディケは、亡くなった父(栗原英雄)の手紙を渡すという言葉につられ男の部屋へ。誘惑から逃れるも階段から足を踏み外し、死後の世界で父と再会する。一方で、地獄の門にたどり着いたオルフェは自らの歌によってエウリディケを取り戻せる可能性をつかむ。

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ゲネプロは、同じく白井演出×ルール脚本による『オーランドー』(2017年)でも音楽を手がけた林正樹のピアノと、作曲家として活動しながら林とデュオを組んでいる藤本一馬のギター生演奏によって幕を開けた。ステージの下手(林)と上手(藤本)に分かれ、エウリディケの来し方行く末を見守る構造に、自ら信頼を置くアーティストとのタッグで劇効果を高める白井らしい演出がうかがえる。

タイトルロールを務めた水嶋は、夫となるオルフェへの愛をまっとうするエウリディケをみずみずしく造形。音楽に夢中なオルフェの気を引こうとすねてみせる姿、自分の結婚式を抜け出し井戸からガニ股で水を飲もうとするお転婆ぶり、死後の世界で大きい石(櫻井章喜)、小さい石(有川マコト)、うるさい石(斉藤悠)に翻弄される様子が、何ともかわいらしい。一方、冥界で再会した亡き父をいたわるラストの表情が胸に迫った。

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愛するエウリディケを失い悲しみに暮れるオルフェを、和田はひたむきに演じる。死後の世界へ旅立つ決意を語るシーンは、さながら心情を機関銃のように早口でまくし立てるつか(こうへい)芝居を連想させる真摯さだった。対して井戸で新婦のエウリディケを口説く"危険でおもしろい男"役の崎山は、一発で「ヤバい奴」とわかる妖しい言動で余裕しゃくしゃく。崎山は死後の世界で彼女を見初め、手に入れようと暗躍する"地下の国の王"役も兼ね、そのデフォルメされた姿には客席から大きな笑い声が上がっていた。

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不慮の事故で死後の世界に来た娘エウリディケを迎え入れる父には、栗原。彼女を慈しみ愛する父性を、大きな包容力で立ち上げる。失っていた娘の記憶を「忘却の川」で取り戻し、にぎやかに歌い踊るシーンでは朗らかな歌声も。その楽曲が「I Got Rhythm」なのは、劇団四季出身の栗原に向けた遊び心だろうか(栗原は在団中、本ナンバーが1幕ラストを華々しく飾る『クレイジー・フォー・ユー』に出演していた)。エウリディケとの楽しい時間が描かれるほど、娘を想う父のラストが泣かせる。

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ゲネプロ前に行われた会見で、水嶋は「このままエウリディケを演じ続けていたら、私までお転婆になりそう」「普段も思っていることを素直に話す、まっすぐな子になるのでは」とコメント。水嶋は稽古場で栗原を頼りにしていたようで「稽古中にどうしようか迷っていると、私のところへ来てみかんを差し出し、お父さんのようにアドバイスしてくださいました」と感謝を述べる。

これを受け、栗原も「私に子どもはいないのですが、自分の中に父性があることを確認できました」と水嶋に笑顔を向ける。加えて「余談ですが、お母さん(斉藤由貴:水嶋の実母)と夫婦役をやったことがあるので"実質親子"ですね」「だから(エウリディケの婚約者オルフェ役を演じる)和田くんに取られるのが悔しいです」と和田をけん制するジョークを繰り出し一同を笑わせた。

一連の流れを見守っていた白井は「水嶋さんと栗原さんのお顔が似てきて、本物の親子のようでした」と稽古場での様子を振り返る。まだ舞台経験の少ない水嶋に対して演劇の基礎レッスンを実施したらしく、水嶋が「発声や表現の幅を広げるようなことを、朝練のようにしてくださいました」と述べると、白井は「朝というか......昼ね」と照れくさそうに笑う。対して栗原には「稽古場の守護神のようにリードしてくださいました」と信頼を寄せていた。

上演時間は約90分(休憩なし)。東京公演は2月18日(日)まで。その後、2月24日(土)・25日(日)に大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティへ巡演する。チケット販売中。

取材・文/岡山朋代




(2024年2月14日更新)


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左より)白井晃、栗原英雄、水嶋凜、和田雅成、崎山つばさ

舞台『エウリディケ』

【東京公演】

▼2月18日(日)まで上演中
世田谷パブリックシアター

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:523-358
▼2月24日(土)13:30/18:00
▼2月25日(日)12:30
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
全席指定-12000円 U-25(当日引換券)-6000円
前方サイドシート-12000円(一部演出が見えづらい可能性があります。)
[作]サラ・ルール
[演出]白井晃
[翻訳]小宮山智津子
[音楽]林正樹
[出演]水嶋凜/和田雅成/櫻井章喜/有川マコト/斉藤悠/崎山つばさ/栗原英雄
※2/24(土)13:30公演は、初日SPカーテンコールあり。
※2/24(土)18:00公演は、アフタートークあり(登壇:水嶋凜、和田雅成、崎山つばさ、栗原英雄)。
※2/25(日)12:30公演は、楽日SPカーテンコールあり。
※未就学児童は入場不可。本公演チケットを「チケット不正転売禁止法」の対象となる「特定興行入場券」として販売致します。本公演のチケットは主催者の同意のない有償譲渡が禁止されております。U-25(当日引換券)はご観劇時に25歳以下のお客様を対象としたチケットです。公演当日、年齢が分かる身分証明書を必ずご持参ください。公演当日「当日引換券」窓口での年齢確認後にチケットをお渡しいたします。お席はお選びいただけません。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

公式サイト
https://eurydice-stage.com/

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