大竹しのぶ、
主演舞台は「パズルが解けるような喜びも」
舞台『ザ・ドクター』兵庫公演が12月2日(木)から開幕するのを前に、主演の大竹しのぶが初日前日の囲み取材に応じた。すでに埼玉、東京での公演を終え「終演後は誰かと2時間ぐらい話したくなる作品」と充実の仕上がりをアピールする。
本作は2020年に英国で最も権威あるローレンス・オリヴィエ賞の作品賞、女優賞のノミネートを始め、イギリス演劇賞各賞に輝いた注目作。ある少女の死をきっかけに宗教や階級格差など様々な社会問題が浮き彫りとなる。大竹は議論の渦中に放り込まれるエリート医師ルースを演じる。
稽古では、例えば台本にある「Father」がこの場合「神父」を意味するなど、翻訳劇ならではの文化の違いや困難さと向き合いつつ、演者、演出家が一丸となり、日本の観客に伝わる表現へと細かく劇を構築してきた。「作品をうまく届けられるのか不安もありました。でも初日からお客様が私たち以上にひとつの言葉からいろいろと想像してくれて。客席がすごい緊張感と喜びを持って観てくれているのが分かった」と熱く手応えを語る。
社会問題と共に浮かび上がるのは人間の多様性だ。「自分の思想、意見を物語っている作品でもあって。日本人にも馴染みのあるSNSの問題なども描かれます。どこに注目するかもまったく観る人によって異なるし、答えを出す戯曲ではなく、答えは皆さんの中にある」と語る。また、台本と“戦う役者”を自認する大竹は、ツアー中も解釈のブラッシュアップを欠かさない。
「この『ねえ』という台詞は何だろう、この言葉の前に『独断で』と入れた方が分かりやすくないですか、とか。皆にしつこいと言われても粘ってやっちゃう」。劇中で対立する橋本さとしは、これが本格的な初のストレートプレイ。栗山の演出を受けるのも初めてで「ダメ出しが書ききれなくてノートまで作って。今まで台本に書き込みなんかしたことなかったのに『こんなの役者人生で初めてやー』とか言って。そんな芝居の緊張感をみんなで毎日楽しんでいる」と笑う。白熱の対話劇とは裏腹に、共演者とは和気あいあいに互いを高め合っている。
「現代社会の縮図」とのキャッチコピーが付く本作。「難しい話かなと思いつつ、『何これ分かるかも』『あ、いまこの人裏切った』『え、この人はこうだったの!?』とかパズルが解けていくような仕組みの戯曲にもなっていて。『嘘でしょ。最後こうなっちゃうの』と、そこで何を感じるかは観た人次第。自由に感じて考える場所が劇場なので、3時間一緒に緊張してくれた喜びには、絶対浸れると思います」。
公演は12月2日(木)から5日(日)まで、兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて。チケット発売中。
取材・文:石橋法子
(2021年12月 2日更新)
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