野村萬斎、大阪で恒例の「新春狂言」は
親子三代が初お目見え!
野村万作・野村萬斎が大阪で定期公演を始めて30年となる2022年、恒例の「新春狂言」は1月19日(水)・20日(木)にサンケイホールブリーゼで開催する。謡初とレクチャートーク、そして狂言二題とおなじみの構成で、演目は来年の干支、寅年に合わせて京都・鞍馬山を舞台にした『成上り』と、和泉流占有の出家狂言『小傘(こがらがさ)』を上演する。
1992年に大阪での定期公演をスタートし、「新春狂言」としては1998年より近鉄劇場で、そして厚生年金会館芸術ホールでの上演を経て、2009年からサンケイホールブリーゼに登場。「30年も経つとずいぶん世の中が変わったなという思いもありますし、当時は父が60歳だったんだなと…」と感慨深い表情を浮かべる萬斎。
年が明けると万作は91歳になる。「息子が言うのも変ですが…」と前置きを入れつつ、「あの年になると解脱しているというか、狂言の概念から超越しているように見えます。多少はライバルになろうと思っていた時もありましたが、今は解脱をした人にいくら立ち向かってもだめだと感じます」とその圧倒的な存在感を語る。
そんな万作の至芸を堪能できるのが『成上り』だ。「私がすっぱ(詐欺師)で、息子の祐基が主人を、父が主人に仕える太郎冠者をさせていただきます。(劇中の)言葉遊びもお正月にいいのではないかと思い、選びました」と萬斎。見どころは万作が太郎冠者という狂言の象徴的な人物を演じるところだとも。「すっぱに縄をかけるのに父が転がる場面もあります。父は今でも片足跳びもしますし、そういう意味では恐ろしい(笑) 野村萬斎。世界観としては柔軟ですが、芸としては強固なものを持っている。狂言は単純だからこそ、全てを超越した人間がやるとこんなに豊かになるのだということが分かります」。
長男の祐基は「新春狂言」に初登場、念願の親子三代がお目見えする。父と息子、そして自身の現在を、世阿弥の『風姿花伝』を引用しながら次のように語る。「若い人というのはピチピチして、新芽が芽吹いているように見える。そういう花の咲きようというのは人にとっては珍しい『時分の花』。父の芸域はまさしく『老木に花』、苔むした古木に1輪2輪、ついている花がなんとなく情緒があると。そういう面では、私は体力的には若者より落ちるけど経験を積んでいる。そういう三代がいっぺんに観られるというのはとても貴重な時間。こういう形でお見せできるのは狂言の家にとっては幸せなことじゃないかなと噛み締めています」。
『小傘』も新春から陽気になることうけあいの楽しい演目。「人間のたくましさ、明日も生きていこうと鼓舞されるような芸能としての側面も強く感じます。笑いは免疫力の向上にもつながるとも聞きます。ぜひご覧ください」と萬斎、新春から屈託なく笑ってほしいと願う。
「万作萬斎新春狂言2022」は、1月19日(水)・20日(木)、大阪・サンケイホールブリーゼにて。チケット発売中。
取材・文:岩本
(2021年11月30日更新)
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