ロームシアター京都の「レパートリーの創造」で
松田正隆が10年ぶりに京都で新作を上演!
ロームシアター京都が、クリエイターとともに、時代を超えて末永く上演される劇場のレパートリー作品を製作するプロジェクト「レパートリーの創造」。2017年にスタートし、第4弾となる今回は、脚本・演出に松田正隆を迎えて、1月27日(水)より新作『シーサイドタウン』を発表する。京都で自身の演出作品を上演するのは10年ぶりとなる松田に、公演に向けての話を聞いた。
現在は東京を拠点に活動する松田。自身が主宰するマレビトの会では、“1回性”を重要視した実験的な試みで作品を生み出してきた。「マレビトの会では、例えば、ひとつの公演で6回のステージがあれば、全部違うものを上演してきました。そのように“1回性”をかなり重要視した作品をやってきたんですけれど、今回は、6回ステージがあって、毎回同じものをやる。それが普通なんですけど(笑)、普通のことをやって、今の演出スタイルを洗練させるというか、着実に行えるようなことをやろうと。俳優は6人のうち5人はオーディションで選んだ俳優で、そういう意味では新たな試みではありますが、演劇的な演出の手法としては、これまでの実験で培ってきた演出手法を洗練させることを目論んでいます」。
本作では、松田が自身の故郷・長崎をモチーフに、ある海辺の町に住まう人たちが描かれる。東京で職をなくし、故郷の海辺の町に帰ってきたシンジが、今は空き家となった実家に住み始める。荒廃していく地方の町では、凡庸なるファシズムが横行している。地縁・血縁のしがらみも絡みながら、日々の生活の中で「何かの兆し」は常に現れ、ある事件が報告される…。
「2019年にドイツにしばらく滞在していた時、僕の故郷の市長が、かなり右翼的なツイートをしているのを見たんです。反知性主義というか、彼なりに論理が通っているんですけど、隣国への態度も非常に排他的で。田舎の町だからこそ、もしかしたらこういう人たちがたくさんいるんじゃないかと感じたときに、少し怖いなと思ったんです」と、創作のきっかけを話す。また作品内では、長距離弾道ミサイルが飛んできたときのために、“Jアラート”で訓練をする人たちの様子が描かれている。「地方ではミサイルが飛んできたときに備えて、Jアラートが鳴ると、町の住人たちが実際にかがみこんだりする訓練が行われている。でも、ミサイルが落ちてきてもそんなことでは身を守れないわけで。戦後70年、防空頭巾を被るようなことをやらないために、私たちは生きてきたんじゃないのかと。凡庸な分かりやすいファシズムほど、人々に浸透しているという感じがしますね。そういうことを、ある海辺の町に住む人の、隣近所の距離で描けないかなと思いました」。
自身の作品は、KYOTO EXPERIMENT 2010での公演以来、約10年ぶりとなる京都での上演。「どこでやらせていただくのもありがたいのですが、京都はずっと拠点にしていた場所なので、特別な感じはしますね。なじみがあるので気が楽というか。今回、久しぶりにじっくりと時間をかけて戯曲を書く機会をいただけたのと、何よりも、上演する場所で稽古をさせていただいているというのはすごくありがたいですね。空間の配置とか移動する速度とかも綿密に作り込める。その場所で空間を作れるというのは、すごく有意義なことだなと思います」。
公演は、1月27日(水)から31日(日)まで、ロームシアター京都 ノースホールにて。チケット発売中。
(2021年1月22日更新)
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