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南座の顔見世に出演、松本幸四郎が意気込みを語る

京の師走の風物詩、南座の「當る丑歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」が12月5日(土)に開幕する。新型コロナウイルス感染症対策のため、今年は三部制で2演目ずつ上演。公演期間も例年の約半分、客席数も半分以下で設定しての開催となる。公演に向けて、第三部『廓文章 吉田屋』に出演する松本幸四郎に話を聞いた。
 
コロナ禍により、歌舞伎公演が軒並み中止となった2020年。幸四郎は「歌舞伎公演がすべて中止になったとき、“顔見世が途切れるわけにはいかないのでは”と、真っ先に思いました。それだけ伝統がある興行で、戦時中も上演していたということを聞いていたので、我々の時代で顔見世を途切れさせるわけにはいかないと、すごく強く思いました」と力を込める。また、本公演が関西での大劇場での歌舞伎公演の再開となるため「ここから続いていくという責任はとても感じています」とも語る。
 
幸四郎が出演する『吉田屋』は、大坂の傾城・夕霧と藤屋伊左衛門の恋物語を描いた上方歌舞伎の名作。放蕩の末に勘当された商家の若旦那・伊左衛門は、恋人の夕霧が病に伏せっていると聞き、落ちぶれた身も省みず大坂新町の揚屋・吉田屋へやってくる。主人・喜左衛門のはからいにより部屋へ通してもらえるが、夕霧は別の座敷で客の相手をしているとわかり、機嫌を損ねる伊左衛門。夕霧と再会するも嫉妬のあまりつらく当たり、痴話喧嘩を始める。ようやく仲直りをしたふたりにある知らせが届く…。華やかで、最後には幸福感に包まれる、公演の締め括りにぴったりの演目だ。

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今回、幸四郎は東京式の演出で『吉田屋』を披露するという。「伊左衛門と夕霧に特化した『吉田屋』という感じですね。時間的にも20分ほど短く、出演者も半分くらい。襲名披露のときに御園座でやらせていただきましたが、上方歌舞伎の『吉田屋』がございますので、名古屋より西ではやらないと思っていました。しかし、お稽古期間、出演者、道具など様々な条件を考えると、今だからこそできる演目ではないかと。上方歌舞伎に慣れ親しんだお客様の前で演じるのは大変勇気がいりますが、東京の役者だけど上方のお芝居が好きで、やりたいという思いがある中で、自分にしかできない上方歌舞伎というのはこういう方向なのかなと思います。新たな『吉田屋』のイメージが作られるといいなと思います」。
 
幸四郎が上方歌舞伎を好きになったのは、今年11月に亡くなった坂田藤十郎から受けた影響が大きい。「藤十郎のおじさまの『雁のたより』を観て、衝撃を受けました。歌舞伎にそういうお芝居が存在することすら知らなかったので。上方歌舞伎は、台本だけ読んでもどんなお芝居か想像できない。実際に出演していないと分からないですね。そういう意味では役者一代というか、その人によって花開いて、その人が亡くなるとともになくなってしまうものだとすごく感じます。だからこそ、おじさまはずっといなきゃいけないと思い続けていました。いただいたご恩をお返しする前に亡くなられたことも含めて残念な気持ちでいっぱいですが、教えていただいたことはたくさんありますので、それをしっかりと思い出し、表現できるようにしたい。そうすることで、おじさまが生き続けていられることになると思いますので」。
 
公演は、出演者、スタッフPCR検査を行い、楽屋での交流も避け、共演者とも舞台上でのみ接するなど、感染対策を徹底して行う。「ぜひ観ていただきたいという思いで幕を開けますが、この状況ですので、それ以上のことは申し上げられません。これからさらに歌舞伎の興行が増えていくために、(関西の歌舞伎公演は)ここから始まります。皆さまが来ようと思ったときに歌舞伎がやっているようにしたいと思いますので、今回来るのが難しい方も、行けるときが絶対来ると信じていただければと思います」。
 
「當る丑歳 吉例顔見世興行」は、12月5日(土)から19日(土)まで京都・南座にて上演。11日(金)は休演日。チケット発売中。



(2020年12月 7日更新)


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『當る丑歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎』

チケット発売中 Pコード:503-524
▼12月5日(土)~10日(木)・12日(土)~19日(土)
南座
1等席-16000円 2等席-8000円 3等席-4000円

10:30<第一部>
『操り三番叟』
【出演】中村鷹之資/澤村國矢

『傾城反魂香』
【出演】中村鴈治郎/中村虎之介/中村寿治郎/上村吉太朗/上村吉弥/中村扇雀

14:30<第二部>
『寿二人猩々』
【出演】中村隼人/片岡千之助/中村亀鶴

『熊谷陣屋』
【出演】片岡仁左衛門/中村歌六/片岡孝太郎/片岡松之助/坂東竹三郎/片岡進之介/中村錦之助/片岡秀太郎

18:40<第三部>
『末広がり』
【出演】尾上右近/中村米吉

『廓文章』
【出演】松本幸四郎/中村壱太郎

※特別席の取り扱いはございません。日時・席種により取り扱いのない場合あり。4歳以上はチケット必要。新型コロナウイルス感染拡大防止対策のため、客席は原則、前後左右を空けて販売いたします。バラ席となる可能性あり。
※販売期間中はコンビニエンスストア、インターネット販売および通常電話[TEL]0570(02)9999にて予約受付。チケットぴあ店頭での直接販売はなし。

[問]南座■075-561-1155

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