恒例の独演会を前に雀三郎
「年を取るほど落語は面白い」
高座に上がるとぱっと明るくなるような、陽気で楽しい落語を楽しませてくれる桂雀三郎。カントリーバンド「桂雀三郎withまんぷくブラザーズ」としても活動し、ヒット曲『ヨーデル食べ放題』はJR鶴橋駅の発車ソングとしても親しまれている。
昨年は古希を記念した落語界も開催、ますます落語に魅せられている。「いい年したおじいさんがアホなこと言うとか、おもしろいじゃないですか。年齢に収まらなければ、どんどん面白くなるのでは」。
今年で11回目を迎える秋恒例のサンケイホールブリーゼでの独演会。11月17日(日)に開催し、毛色の違うものを楽しんでほしいと、落語作家・小佐田貞雄作の新作落語『G&G』に、上方落語の大ネタ『立ち切れ』と『天神山』の三席を口演する。
「『G&G』は、小佐田氏の新作で僕が持ちネタにさせてもらっているなかでは比較的新しいものです。最後に“ファイヤー!!”と言って終わるのですが、かつて米朝師匠の前に出してもらう時は私だけ暗黙の了解でネタは『G&G』と決まっていて。米朝師匠が“ファイヤー!!”をマクラに使われていました。それがウケるので、よく出してもらってありがたかったですね。後半ではギターも出てきて、賑やかな噺です」(雀三郎)
上方落語の中では悲恋を描いた『立ち切れ』は、「若い時は無理だと思っていた」という雀三郎。約10年前から手掛けるようになった。「このネタは若旦那が主役と言えば主役ですが、番頭さんと小糸ちゃんのお母さんが一番重要で。そこを上手にやれるかどうかですね。結末が暗い印象があるので、それに負けないよう、前半は後のことを考えんと明るく陽気にやるのがポイントやと思います。その落差で後半も締まるんじゃないかと思っています」と雀三郎流の見せ方を明かす。
ネタおろし以降、力の入れ具合など試行錯誤を重ねてきた。「大体、固まったかなと思うので、今回初めてサンケイホールブリーゼで出させてもらいます」と満を持しての披露となる。
『天神山』は師匠の桂枝雀が小米時代から気に入っていたというネタで、雀三郎も若手の時分から手掛けるも、なかなか思うようにいかなかった。「師匠がやったらウケるのですが、自分がやったらウケない。師匠のとおりにやろうと思っても無理なので、ほとんど同じようにやりながらも細かいところをちょっとずつ変えていって。長いことをやっているうちにちょっとずつ、自分のものになってきたと思います」と何十年とかけて雀三郎流に磨き上げてきた自信作だ。
1971年3月に入門した雀三郎。米朝がサンケイホールで初の独演会を行ったのがその年の7月だった。「すごいところでやりはるなって思って見ていまして、ものすごく印象に残っています。だから、私が初めてサンケイホールさんでやらせてもらえるようになった時は本当にうれしかったです。それは今も変わらず、一年で一番、大きい独演会ですから、一番、頑張らないといかんなと思っています」。
『桂雀三郎独演会』は11月17日(日)にサンケイホールブリーゼで開催。チケット発売中。
取材・文:岩本
(2019年10月21日更新)
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