瀬奈じゅん、『ラ・マンチャ』で
体当たりのヒロイン役!
二代目松本白鸚が26歳の頃から主演を続けるミュージカル『ラ・マンチャの男』。今年は日本初演50周年記念公演が全国4都市で上演される。白鸚は日本初演の翌1970年に日本人として初めてブロードウェイから招待を受け、単身ニューヨークへ渡り、全編英語台詞で計60ステージを完走した。本作はトニー賞ミュージカル作品賞ほか計5部門を受賞。その中で脚本の故デール・ワッサーマンは生前、受賞トロフィーを「この作品にふさわしい人に渡してほしい」と言い遺しており、日本上演通算1200回記念公演の日にはワッサーマン夫人から白鸚にトロフィーが授与された。白鸚は今年77歳の喜寿を迎え、本ツアーで通算上演回数は1300回を更新する予定だ。そんな伝説的作品で、元宝塚歌劇団月組トップスターの瀬奈じゅんがヒロインに初挑戦する。
『ラ・マンチャの男』は、スペインの作家・セルバンテスの代表作『ドン・キホーテ』をもとにした舞台。小説とセルバンテスが投獄された史実を絡めて描かれた作品で、三重構造で展開する。舞台は16世紀末のスペイン。宗教裁判で有罪となり投獄された作家セルバンテスは、獄中で自らが書いた『ドン・キホーテ』を囚人らと劇として上演する。主人公の田舎の郷士キハーナは、自らを遍歴の騎士ドン・キホーテと思い込み、悪を成敗する旅に出る。白鸚は作者セルバンテス、キハーナ、そしてドン・キホーテの3役を演じ分け、瀬奈は囚人として、ドン・キホーテには憧れの姫ドルシネアに見える、あばずれ女アルドンザを演じる。
オーディションでヒロインの座を射止めた瀬奈。『ドン・キホーテ』はシンシア・ハーヴェイ出演のアメリカン・バレエ・シアターの作品で慣れ親しみ、幼少期は祖父の家に飾られたピカソが描いたドン・キホーテの抽象画が大好きだったと振り返る。「陽気だけど影もあり滑稽さも感じられる絵の世界観が大好きでした」。そして初めてミュージカル版を観た際には、出演者らの気迫に圧倒されたという。「ギターの音色に合わせて踊る、そのシルエットから始まり、冒頭から早くも鳥肌が立ちました。ドン・キホーテの台詞ひとつひとつが深くて、観る度に捉え方が変わる。それは演じる白鸚さんご自身が積み重ねてこられた人生そのものに起因することなんだろうなと。歴史ある作品を前に今必死にお稽古をしています」。
稽古では「相当な気力と体力が必要な役だと実感した」という瀬奈。「短い間に様々なことが凝縮された劇中劇なので、瞬発力が必要ですし、アクロバティックな演出もあり、家に帰ると何でこんな所にアザが?という感じ。白熱のソロナンバーでは、稽古で初めて歌い終わった後に目の前がチカチカしました。喉のケアを大切に、お客様には新しい気持ちで楽しんでいただけるように頑張ります」。
公演は9月7日(土)から12日(木)まで大阪・フェスティバルホール、10月4日(金)から27日(日)まで東京・帝国劇場にて上演。他、地方公演あり。チケット発売中。
文:石橋法子
(2019年9月 6日更新)
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