落語をモチーフに描くあの世珍道中
宝塚星組公演が開幕!
トップスター・紅ゆずる率いる宝塚歌劇団星組のRAKUGO MUSICAL『ANOTHER WORLD』、タカラヅカ・ワンダーステージ『Killer Rouge(キラー ルージュ)』が、4月27日、兵庫・宝塚大劇場で開幕した。本公演は第104期初舞台生40名のお披露目公演でもあり、幕開きには初舞台生が口上を行い、ショーではフレッシュなラインダンスを披露している。

第一幕の『ANOTHER WORLD』は、“あの世”を舞台に展開する笑いたっぷりの落語ミュージカル。上方落語の大作『地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)』をはじめ、『朝友(あさとも)』『死ぬなら今』など、死後の世界を舞台にした東西の落語噺が散りばめられている。大坂の両替商「誉田屋」の若旦那・康次郎が目覚めると、そこは“この世”と“あの世”の境。康次郎は、高津神社の境内で出会った菓子屋の嬢(いと)さん・お澄に一目ぼれし、恋わずらいであの世に来てしまったのだ…。そこで出会った人たちとの愉快な冥土旅と、康次郎とお澄の恋模様。赤鬼、青鬼、閻魔大王、貧乏神ほか、さまざまなキャラクターがふたりの協力や邪魔をしながら、小気味よく物語が展開していく。

暗転の中、拍子木の音でパッと照明が明るくなる“チョンパ”で幕開き。色とりどりの美しい衣装をまとい、紅を中心とした総踊りの華やかな和物ショーで魅せ、物語へと続いていく。康次郎は恋わずらいであの世に行ってしまうほど、一途で真面目。何でも素直に受け止めて、人情深くもあり、憎めないキャラクターを紅が好演している。その真っ直ぐな姿が面白く、大坂商人の味のある“船場言葉”も親しみやすい。あの世で出会う江戸の若主人・徳三郎、「誉田屋」の手伝(てったい)・喜六らとの軽妙な掛け合いも心地いい。トップ娘役・綺咲愛里(きさき・あいり)が演じるお澄も康次郎同様に一途な女性。一見可愛らしいけれど、そのイメージを覆す一面も。ほか、礼真琴(れい・まこと)扮する徳三郎はいなせな姿で魅せ、七海ひろきはちょっぴりヌケた、愛すべき3枚目キャラ喜六を好演するなど、それぞれの個性がぴたりとハマっている。
第二幕の『Killer Rouge(キラー ルージュ)』は、“Rougge(紅色)”をテーマカラーに、トップスター・紅ゆずるの多彩な魅力に迫るゴージャスで華やかなショー。エネルギッシュなプロローグから始まり、童話をモチーフにしたコミカルな場面や、大階段でのロックな男役群舞もあり、全編通してスピーディーに、パワー全開で展開していく。
両作ともに華やかで、展開にワクワクする『ANOTHER WORLD』『Killer Rouge(キラー ルージュ)』は、6月4日(月)まで、兵庫・宝塚大劇場にて。東京公演は6月22日(金)から7月22日(日)まで東京宝塚劇場にて開催。東京公演のチケットは5月20日(日)発売開始。
取材・文:黒石悦子
撮影:三上富之
(2018年5月16日更新)
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