新春恒例の狂言は
戌年にちなんだ演目を並べて笑福開運!
狂言師野村萬斎が1998年から毎年1月に開催してきた「万作萬斎新春狂言会」が20回を超え、来年でサンケイホールブリーゼでの公演も10年目。常連客と共に、初めて狂言を観るという人も多い。この公演は、新春を寿ぐ華やかさや明るさに満ちて心地よく、狂言デビューにオススメだ。
舞台にはお正月飾りのしめ縄。プログラムは毎年、野村家の元旦の行事である謡初(うたいぞめ)の披露から始まる。今年は『雪山』。会場の空気が引き締まり、新年の幕開きにふさわしい。次に人気の萬斎トーク。くわしくわかりやすく、とても楽しい演目解説だ。そして大名狂言『二人大名』、休憩を挟んで大変珍しい鬼狂言『政頼(せいらい)』。毎年、演目はその年の干支にちなんだものを選び、上演する。2018年は戌年。「関西の能楽界に呼ばれ、週に1度は京阪神に来ています」という超多忙な萬斎が、演目の見どころや想いを語った。
『二人大名』は、野遊びに出たふたりの大名がお供がいなくて体裁が悪いと、出合った男に無理やり太刀を持たせるが、逆にその太刀で脅されて…という演目。「狂言では刃傷沙汰にはならないんですよ(笑)。鶏や犬のマネをさせるという、大名のもて遊び方がおもしろい。今年は酉年で来年は戌年だからね、干支を意識してます(笑)。最後には起上がり小法師のマネをするんですが、子供番組(NHK「にほんごであそぼ」)でもやっている内容なので、お子様同伴で来られるのもおすすめです」。
『政頼』は、仏教が栄えて不景気になった地獄が舞台。鬼たちを引き連れた閻魔大王が、極楽と地獄に分かれる六道の辻まで亡者を迎えに出る。やってきた鷹匠・政頼を地獄に落とそうとするが…。萬斎が約10年前に復活させた演目で、大人数での上演となる。「和泉流として関西でやるのは初めてです。正月早々、地獄の話で申し訳ないですが、鷹狩は帝王の遊びだと鷹匠の誉れを語るところはお正月らしいですね。そして、地獄にも犬がいたので鷹狩をしてみせる…はい、こちらも犬が出ます(笑)。閻魔大王と鷹匠が友情を築くという、めずらしい展開でほのぼの感もある話ですが、これは鷹狩のシーンをどう見せるかがキモ。その生命線である鷹を手間暇かけて新たに作り、飛んでいるように見える工夫をしていますので、是非お楽しみに。鷹匠の狂言を観て、“一富士、二鷹、三なすび”と、縁起のいい夢を見ていただければ(笑)」。
公演は1月25日(木)・26日(金)大阪・サンケイホールブリーゼにて。チケットは発売中。
取材・文:高橋晴代
(2017年12月27日更新)
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