NEWS

ホーム > NEWS > 第23回「OMS戯曲賞」発表! 大賞には『悪い癖』の福谷圭祐、 佳作に『また夜が来る』の橋本健司が選出

第23回「OMS戯曲賞」発表!
大賞には『悪い癖』の福谷圭祐、
佳作に『また夜が来る』の橋本健司が選出

次代を担う新たな劇作家の発掘と、すでに評価のある中堅劇作家への刺激を目的とした関西発信の「OMS戯曲賞」。その第23回となる今年の授賞式と公開選評会が12月6日、大阪・吹田市文化会館メイシアターにて開催された。

今年は48作品の応募があり、最終選考にノミネートされたのは9作品。審査員による激論が交わされた結果、大賞には『悪い癖』の福谷圭祐、佳作に『また夜が来る』の橋本健司が選出された。

過去の佳作受賞者など最終選考常連の実力者がそろう中、福谷、橋本共に今回が2度目の応募で初めて最終選考にノミネートされた。大賞を受賞した福谷は「憧れていた賞をいただくことができてとてもうれしく思っています。初めてのノミネートで、厳しい意見をいただいてまた次に挑むのかなと思っていました。この結果に慢心せず作劇に取り組んでいきたいと思います。これまでは自分がどう考えているとか、どう感じているという自己言及的なことから書いていましたが、これからは意識的にもっと外に目を向けて書いていきたい」と、意欲を見せた。

佳作の橋本は「亡くなった祖母に向けて、行きたいところに行けなくなった祖母をどこかに連れていきたいという思いと、悩む母に向けて書きました。書く機会を与えてくださったKOINUの速水佳苗さんと演じてくださった皆さん、そして、長年お世話になっている桃園会のみんなに感謝しております」と、笑顔を見せた。

最終選考は生田萬、佐藤信、鈴江俊郎、鈴木裕美、渡辺えりの5名が審査。現実、妄想、虚構の世界が3重構造でリンクする物語を描いた福谷の『悪い癖』については鈴木が「キラキラしていると思った瞬間がたくさんありました。今の日本の若者はこういう焦燥感や諦めを持っているのかもしれないと、違う世界に連れていってもらえる気がして面白かった」とコメントし、鈴江も「3重構造の切替えのテンポ感がすごくよくて、書き手として達者だなと思いました。僕らの世代には理解できない若者の生態が、この戯曲を読むと理解できるというくらい引きつけられました」と賛辞を贈った。

また、死を前にしたおばあさんの少女時代と現在がシンクロする物語を描いた橋本の『また夜が来る』に対しては、佐藤が「過去と現在を行き来するシンプルな形ですが、一番評価したのは人間に対する視線。そしてテンポ良く的確に場面が進むことと、なぜ今そのことを喋っているのかが明確でした。動けなくなったおばあさんにも過去の時代があって、自分たちと同じような肉体を持って、同じような感性で生きていた時代がある。動けないおばあさんを見たときに、動けたならどうだろうという想像力の飛躍のさせ方に共感しました」と評した。

桃園会に所属する橋本は2017年2月11日(土)、12日(日)、伊丹AI・HALLにて『ふっと溶暗~「断象・ふかつしげふみ」より~』を上演する。「深津の言葉をもとに書きます。自分に近いところからしか書けませんが、挑戦していきたいと思います」と橋本。また、匿名劇壇の作・演出を手掛ける福谷は2017年5月、「應典院舞台芸術祭space×drama○(わ)」に参加予定。受賞を経た二人のこれからに注目したい。

 

取材・文/黒石悦子




(2016年12月 8日更新)


Check
写真左から、福谷圭祐、橋本健司。

第49回公演『ふっと溶暗~「断象・ふかつしげふみ」より~』

▼2月11日(土)19:00
▼2月12日(日)12:00/16:00
アイホール
前売-2500円 当日-2800円
20歳以下-500円(要証明証)
※1月11日(水)から予約・発売開始。
[作・演出]橋本健司
[出演]はたもとようこ/森川万里/橋本健司
[問・予約]072-782-2000(アイホール
※原則的に未就学児童の入場不可。

桃園会
http://www.toenkai.com/