ホーム > NEWS > 『痴人の愛』や『細雪』で知られる 文豪・谷崎潤一郎が暮らした“岡本の家”を 舞台に谷崎の私生活と仕事の謎に迫る!
今年は、文豪・谷崎潤一郎の没後50年であり、2016年は生誕130年。そして、彼が美意識を注ぎ込んで建設し、3人の妻が出入りした“岡本の家”が全壊した、阪神淡路大震災から20年。この重なる記念の年を機に、ピッコロ劇団が「天空の恋~谷崎と猫と三人の女~」を上演する。11月17日、今作の記者会見が行われた。
谷崎は、1923年の関東大震災をきっかけに関西へ移住し、阪神間に21年在住。その間に13回転居を繰り返し、3回結婚しながら『痴人の愛』や『細雪』など代表的名作を生んだ。谷崎潤一郎研究家であり、芦屋市谷崎潤一郎記念館副館長・たつみ都志の応援を得て、「三重県生まれの関西育ち」のG2がピッコロ劇団に書き下ろし、演出する。
物語は、谷崎が昭和初期から約10年間暮らした“岡本の家”が舞台。かつて、そこで谷崎の秘書を務めた高木治江が、当時の谷崎家の暮らしを思い起こす。繰り返される結婚・離婚騒動、そして谷崎と理想の女性・松子との真実の関係が明かされる…。「大阪弁で台本を書いてみたかった。谷崎は関西弁を話せなかったという驚きが、書くエネルギーになった」と語るG2が、3人の妻を巡る谷崎の私生活と仕事の謎に迫る。
『細雪』のモデルとなった3人目の妻・松子を演じるのは、島田歌穂。「実在の人物を演じる責任と覚悟で臨みます。松子が話すのは船場言葉なので、ものすごく大きな挑戦。ガッツリ女優修行させていただけるチャンスをいただき、感謝しています」と意気込みを語る。そして、谷崎役には落語家・桂春蝶。「すごい役をいただきまして…。人の話を聞くという演技がないのが落語で。なんで僕が選ばれたんですかね(苦笑)」と困惑の表情を見せるが、周囲から「谷崎の若い頃に顔が似ている」との声が。
ピッコロ劇団からは、高木治江役に平井久美子、最初の妻・千代役に森万紀、「痴人の愛」のきっかけとなった千代の妹・せい子に吉江麻樹ら。また、オーディションで選ばれた8名の中から、山口喜子が2人目の妻・古川丁未子を演じる。「丁未子とは結婚期間が2年と短く、後年の谷崎の記録の中で消されてしまう謎がおもしろい」とG2。猫好きだった谷崎の『猫と庄造と二人のをんな』が大好きで、「物語の後半は猫がキーポイントです」と話す。
元気で美しかった阪神間黄金時代を生きた谷崎と女たちの物語が、総勢25人のエネルギーの中で、鮮やかに立ち上がる。まさにピッコロ劇団にふさわしい作品を、地元の劇場、西宮の兵庫県立芸術文化センターで。谷崎ファン、そして阪神間在住の人は必見の舞台だ。
取材・文:高橋晴代
(2015年12月 7日更新)