天児牛大率いる舞踏カンパニー「山海塾」
2年ぶり、待望のびわ湖ホール公演
「歴史いぜんの記憶-うむすな」
日本が生んだ独自のダンス・パフォーマンスの系譜「舞踏」を発展、進化させた「山海塾」。1980年代から主にフランスを中心に活動し、2年に1回のペースで新作を発表。2014年には主宰、天児牛大(あまがつ・うしお)がフランス政府より芸術文化勲章コマンドールを受賞するなど、国際的に高い評価を集める彼らが、6月7日(日)、びわ湖ホールで「歴史いぜんの記憶-うむすな」の公演を行う。
「『うむすな』は日本の古語の産土(うぶすな)と同じです。人間が生まれた場所という意味。人が生きているということは、人の数だけ生まれた場所があるわけで、それを舞踏によって普遍化して考えてみたいという試みです」。公演に先駆けて、びわ湖ホールを訪れた天児牛大はそのように語る。
ステージには砂が敷かれている。その中央奥には、空間を左右に分かつように上方から砂がさらさらと流れ続けている。上手下手にも秤(はかり)のようなものが置かれ、そこにも砂は流れ続けている。砂のこぼれる舞台の上を踊り手たちがゆっくりと動き続ける。「歴史いぜんの記憶-うむすな」はそのような作品であるという。投げかけられるのは「生命」や「時間」といった人の根源に迫るかのようなイメージだ。だが天児牛大は次のようにも語る。
「ものの見方にはふた通りあると思うんですよ。「理解」しようとする見方と「感ずる」という見方と。僕は後者が好きなんです」。山海塾の舞台を体験することは、言葉のないダイアローグ(対話)に耳を傾けるようなもの。そこに向き合い、個々の人々が自分の中から何かを発見してほしいと天児は続ける。言葉に置き換えることのできない肉体のポエジー。彼は自らの舞踏を「重力との対話」と呼ぶ。
「歴史いぜんの記憶-うむすな」は2012年9月、リヨン・ダンス・ビエンナーレで初演された作品。今年秋から行われる全米ツアーでも取り上げられる、現在の「山海塾」の中核となる演目である。びわ湖ホールにおいては2013年の「から・み」以来、2年ぶりの「山海塾」公演。上演後には早稲田大学教授、小沼純一をまじえた天児牛大自身によるポストパフォーマンス・トークが予定されている。
(2015年5月 1日更新)
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