ヨーロッパ企画『ビルのゲーツ』
大阪千秋楽公演レポート
東京・大阪公演が終了し、広島・福岡・名古屋・横浜公演を控える、京都出身の人気劇団「ヨーロッパ企画」の最新作『ビルのゲーツ』。「ぴあ関西版WEB」にて
落語連載を執筆中のさとうしんいち氏から、大阪公演のレポートが到着!
これは、スパイラルアップコメディーだ!
群像劇、とか、会話劇、とか呼ばれている今回のヨーロッパ企画のお芝居、
『ビルのゲーツ』ですが、「増幅劇」というのはいかがでしょうか?
ま、いきなり、いかがでしょうか?と言われても困るかとは思いますが、
確かに「増幅」するのだから、これはもう、仕方ないのです。
ワタクシ、9月16日の大阪公演千秋楽を観て、これまで観てきた演劇舞台の
どれとも似ていない独自の面白さに居ても立ってもいられず、これから公演が行われる
広島・九州・名古屋・横浜の演劇ファンの皆さんにヨーロッパ企画を宣伝したく、
勝手に筆を執りました。
さて、『ビルのゲーツ』。何が、増幅するのか。
まずは、キャラクターが増幅します。
登場人物は、驚くほど普通の人たちです。
もう、その辺にゴロゴロ、わんさか、たんまりと暮らしている、
当たり前すぎるほど当たり前な人たちです。
そんな人たちのやりとりが、爆発的に面白くなっていく。
それは、個々のキャラクター性が巧妙に増幅しつつ、
物理的にキャラクターの数も増幅することによる、
笑いのツボ押しの手数が増幅しているからに他ならないでしょう。
「あ、この人は、ここで、こういうことを言う人なんだろうな。」と、
思うか思わないかのタイミングで、
案の定、それを言われた時の反射的な笑い。
そんな笑いが波状攻撃でやって来ます。
でも、終わってみれば、やっぱり全ての登場人物が普通の人たち。
なんだか、キツネにつままれたような読後感です。
もうひとつの増幅は、悪ふざけの増幅。
登場人物の普通さに反して、設定のキテレツさと、これでもかの悪ふざけ。
飛び道具、の、さらにそこからのジャンピング飛び道具の連続発射。
普通の人である観客は、
普通の人である登場人物と同期して、
あたかも、自分も、そのキテレツのラビリンスに舞い込んだような錯覚に陥ります。
そして、フィナーレ。
メビウスの輪が非常にシンプルな構造であるように、
増幅×増幅はロマンチックに収束します。
名付けて、スパイラルアップコメディー!
目まぐるしいまでの展開の先にある、突き抜けた爽快感!
名作!と言い切って、観た人は誰も反論しないでしょう。
お芝居を観て、その時間を過ごしたことに「感謝」の気持ちまでに至ったのは、
久々のことでした。
間に合うなら、是非、生で。
間に合わなかったら、DVDで。
どれも無理なら、わたしが浜村淳さんばりに語ってしんぜましょうか?
そこまで言いたくなる、
ヨーロッパ企画『ビルのゲーツ』なのでした。
取材・文:さとうしんいち
公演は、9月25日(木)広島・アステールプラザ 中ホール、9月27日(土)・28日(日)福岡・西鉄ホール、10月1日(水)愛知・名古屋市芸術創造センター、10月3日(金)から5日(日)まで神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオにて。チケット発売中。
(2014年9月22日更新)
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