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門をくぐっても門。ヨーロッパ企画の最新作が開幕

京都出身の人気劇団「ヨーロッパ企画」の最新作『ビルのゲーツ』東京公演が、8月29日、下北沢・本多劇場で開幕した。 
 
ヨーロッパ企画ほど、「ネタバレ」を避けてレポートを書くことが難しい劇団はないように思う。タイムトラベルや超能力など、物語の世界でよく見かけるファクターを題材に掲げて、その中に放り込まれた普通人たちの試行錯誤をコミカルに描く。今回は何と呼ぶべきか、作・演出の上田誠が得意とする路線のひとつ、「空間の仕組みもの」である。 

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舞台上には堂々たる、SFチックな巨大扉がそびえている。右横のカードリーダーにカードをかざすと、それが開く仕組みになっている。登場した5人の男たちは、ビルの上で待っている(であろう)「CEO」と商談をするために、颯爽とカードをかざす。ピ、という作動音と共に扉が開き、その向こうに階段が現れる。男たちはそれを登ってゆく。少しの暗転。明かりがつくと、舞台装置はそのままで、階数を示す札だけが「2」に変わっており、下手袖から男たちがぞろぞろと出てくる。そう、このビルは、ゲートを通るたびにまた次なるゲートが立ちふさがる、ブルース・リーの『死亡遊戯』型建造物なのだ。 

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「またかよ!」「まじかよ!」と言い合っていたのが、だんだん慣れてくるのが5階あたり。約束の時間を思い出して足を速めるのが6階で、メタボ男が足を引っぱり始めるのが7~8階あたりだ。でもどうだろう、この仕組みで一旦笑わせたものの、果たしてドラマはこれ以上、どこへどう転じるのか。観客の頭上に浮かぶ疑問符。しかし、実はそこからが、上田の真骨頂である。 

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道中で、人と出会う。開門の難易度が増す。やがて男たちは、奇跡のチームプレーを見せ始める。何だかんだとふてくされながら、それでも結構、楽しそうである。ヨーロッパ企画作品の持ち味はそれだ。奇天烈な状況に放り込まれて、事態を素直に受け入れる者があり、そうはできずにツッコむ者もあるけれど、いずれにせよ、皆、楽しそう。気づけば観客も、登場人物たちと喜怒哀楽を同じくしている。彼らが失敗すればため息が漏れ、門が開けば、わあっと拍手が湧きあがったりする。 
 
わいわいと階を重ねるうちに、やがて、決して容易くはない風景が訪れる。その、ちょいニガ感もまた、彼らの愛すべき持ち味のひとつだ。9月7日(日)まで本多劇場、9月10日(水)から16日(火)まで大阪・ABCホール。他に広島・福岡・名古屋・横浜公演を予定。 
 
 
取材・文:小川志津子
撮影:清水俊洋



(2014年9月 1日更新)


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ヨーロッパ企画「ビルのゲーツ」

【東京公演】8月29日(金)~9月7日(日)本多劇場
【大阪公演】9月10日(水)~16日(火)ABCホール
【広島公演】9月25日(木)アステールプラザ 中ホール
【福岡公演】9月27日(土)・28日(日)西鉄ホール
【名古屋公演】10月1日(水) 名古屋市芸術創造センター
【横浜公演】10月3日(金)~5日(日)KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ

PICK UP!!

【大阪公演】

発売中 Pコード:438-075

▼9月10日(水)19:00
▼9月11日(木)14:00★/19:00
▼9月12日(金)19:00
▼9月13日(土)13:00/18:00★
▼9月14日(日)13:00
▼9月15日(月・祝)13:00/18:00★
▼9月16日(火)19:00

★…出演者による「おまけトークショー」あり。

ABCホール

前売-4500円(指定)

[作][演出]上田誠

[出演]石田剛太/酒井善史/角田貴志/諏訪雅/土佐和成/中川晴樹/
永野宗典/西村直子/本多力/岡嶋秀昭/加藤啓/金丸慎太郎/吉川莉早

※学生シートは取り扱いなし。未就学児童は入場不可。
※9/15(月)はビデオ撮影のため、客席にカメラが入ります。

[問]サウンドクリエーター■06-6357-4400

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ヨーロッパ企画 オフィシャルサイト