ホーム > NEWS > 山下洋輔率いるビッグバンドがびわ湖ホールに登場。 オリジナルナンバーから『展覧会の絵』まで、凄腕の ミュージシャンが披露する縦横無尽のアンサンブル!
「前回『ラプソディ・イン・ブルー』の時、後味があまりにもいいもんだから、居酒屋で打ち上げで、団員がよし、来年はストラヴィンスキーの『春の祭典』やるぞ、いや『展覧会の絵』だって言い出しましてね。ところがこれだけのメンバーで演るっていうのは実はたいへんなんです。みんなそれぞれ、ひとりでもステージが務まるプレイヤーですから。そこで2年。スケジュールも調整して、たっぷりアイデアも練って、ほぼ同じメンバーで『展覧会の絵』をやろうってことになりました。いいサイクルだと思いますね」
6月23日、びわ湖ホールで行われる『山下洋輔 スペシャル・ビッグバンド・コンサート2012』に先立つ記者会見の冒頭、山下洋輔(写真左)はそのように語った。
ジャズピアニスト、山下洋輔。その指は鍵盤上を縦横に駆け巡り、時に強烈な肘打ちでピアノからまったく新しい響きを創造する。クラシック、ロック、民族音楽などの垣根を自在に横断し、天才、鬼才、異才の名を欲しいままに、実に40年の長きにわたって日本のジャズを牽引し続ける稀有の存在である。また、音楽家としてのみならずエッセイストとしても一家を成し、作家の筒井康隆らとの交友はそれぞれの表現活動に過激に結実している。「全日本冷し中華愛好会」初代会長としてその名を記憶する人も多い(?)に違いない。
今回の公演では、山下率いる15名のビッグバンドが、『ファースト・ブリッジ』や『グルーヴィン・パレード』といった山下のオリジナルナンバーに加え、デューク・エリントンの『スイングしなけりゃ意味がない』、ラヴェルの『ボレロ』、そして、前回の『ラプソディ・イン・ブルー』に続く新たな大作として、ムソルグスキーの組曲『展覧会の絵』ほかを演奏する。
「ジャズっていうのは音楽を破壊する音楽なんですよ。音楽を壊しては作り、また壊しては作り。そこへ即興を乗せていって、音楽をどんどん変えていく。これは昔はクラシックでもやっていたことですね。バッハやモーツァルトはみんな即興の名人だったんですが、今はこういう音楽はジャズだけになってしまいました。ところがね、『ボレロ』は、われわれの演奏を聴いた筒井康隆さんが“脱臼したボレロ”だって言ってくださって。ダッダダダダッていうあの硬いリズムが、壊れてもう最後にはグッチャグチャになっちゃう。これはものすごいホメ言葉ですよ、“脱臼したボレロ”(笑)」
今回の公演にはもうひとり、強力な助っ人が参加する。NHK交響楽団首席オーボエ奏者、茂木大輔(写真右)だ。『のだめカンタービレ』の音楽監修をはじめとする近年の活躍は周知の通り。自ら「筒井・山下文化圏の申し子」を名乗り、かつてミュンヘン留学中に公演先の山下を「冷し中華を食わせると言って自宅に拉致。見返りとして無伴奏オーボエ曲の作曲を要請」(本人自筆のプロフィールによる)したことから交友がスタートしたという。以来、山下のクラシックフィールドでの活動を手堅くサポートする存在でもある。共演の詳細は不明だが、予定曲目の中には、若き茂木を山下の追っかけへと変貌させた必殺のナンバー『Clay』も含まれている。
「『展覧会の絵』は現在(5月17日)時点でまだ楽譜ができていません。アレンジャーの松本治さん(トロンボーン)と話していて、“抜粋でやるんだよね?”って聞いたら“いや、全曲書いてます”って。まあどんな楽譜ができるものか、楽しみではありますが(笑)」
今年70歳を迎えた山下洋輔。メガネの奥の目は不敵に笑っている。
(2012年6月12日更新)
■6月23日(土)18:00
【演奏】
【演奏予定曲】