ホーム > NEWS > 関西最大のライブサーキット 『MINAMI WHEEL 2011』の出演者の中から 独断と偏見と愛をもってススめる ラインナップ“推しメン”企画・第3弾!
大阪ミナミ一帯のライブハウス20ヵ所以上を舞台に繰り広げられる、関西音楽シーンの秋の名物イベント『MINAMI WHEEL』。パス1枚で1日ライブ見放題のスタイルで、これからの音楽シーンを担う注目新人を中心に、今年もジャンルレスに300 組以上が出演する同イベント。ぴあ関西版WEBでは、その開催カウントダウン企画として、関係各者が選んだオススメアーティストをピックアップする『MINAMI WHEEL 2011 “俺の推しメン”』を始動。第3回目は、音楽からお笑いまで、時にはイベントも開催と幅広く活躍する、ライター・鈴木淳史さんがレコメンド!
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関西音楽界の『なるほど!ザ・秋の祭典スペシャル』と言えば『MINAMI WHEEL』なわけだが、思い返せば僕が大学生の頃、つまり90年代後半に産声をあげたこのイベント。今や新人発掘青田買い的な意味合いもあるイベントになっているが、産声をあげた当時からトップを走り続けていた、この方から紹介したい。その名も、ジョン・B & ザ・ドーナッツ!。“!”までがバンド名であり、現在活動休止中のウルフルズのベーシストであるジョン・Bさんのバンド。まずはジョン・Bさんが歌い始めるなんてことに最初は驚いたのだが、これが聴いてみると本当に染みる。40歳を過ぎてバンドを立ち上げ、しかもボーカルをするなんて相当勇気のいること。さらりとこなしているように見せる雰囲気もあるが、実際はもやもやとした不安があり、そんな気持ちが『所在ない』『まだ始まっても 終わってもない』なんて曲のタイトルからも伝わってくる。若手に交じって、この場で歌おうとするジョン・Bさんに拍手であり、当日も飄々としてはるんやろなって思ったりもするのだ。
そして一気にヤングなThe SALOVERS。この秋から、古舘佑太郎(vo&g)がFM802で番組DJを担当するなんていうトピックスも。若干20歳の彼が歌い出した瞬間のとてつもないスピード感溢れるエネルギー…それは90年代に僕らが感じたカッコいいロックンロールバンドたちを思い出させてくれる。敢えて、ここで、そのバンド名はあげない。だって、別にフォロワーでもなんでもないんだから。要はどういうことかと言うと、今、音楽業界やロックンロールバンドは元気がないなんて言われているんだけど、そんな今にもちゃんと元気だった90年代の遺伝子を持っているバンドがいるってこと。つんざくような古館の声、空気を斬り裂くようなひりひりした演奏…。『サリンジャー』『フランシスコサンセット』など文学的な雰囲気を漂わす言葉のチョイス…。とにかく、ドキドキさせてくれるバンドなのだ。
そんなドキドキ繋がりで紹介するのは忘れらんねえよ。多分さぁ、百万回言われていることだと思うけど、お約束だから言っちゃいましょう。そのバンド名が…「忘れらんねえよ!」。もう、どうしようもない日常で、どうしようもなく退屈でつまらなくて、カッコつけることさえも出来なくて、思っていることをすべてぶちまけちゃうような彼ら。今時の言葉で言ったらモテキ的な世界なのかも知れない。歌詞にもまんま出てきちゃうんだけど、90年代はブランキー・ジェット・シティー、00年代はチャットモンチーなんていうカッコいい憧れのバンドたちを夢見ても、そんなことは出来ないわけで。でも音楽を…ロックンロールを鳴らすんだよっていう衝動がすべて詰まっている。ガガガSPやサンボマスター、銀杏BOYZなんていうバンドももちろん思い出してしまうんだが、ちゃんと彼らは彼らで、リアルで日々冴えない生活をしているってことが音楽から伝わってくるから…たまらねえんだよ。
ほんでラストは、KETTLES。ギターボーカルの男子とドラムの女子、ホワイトストライプス的な編成なんだけど、とにかくPOLYSICSのハヤシ君がプロデュースした『夢の中まで』という曲の、PVがぶっ飛んで素晴らしい。何気ないふたりの演奏シーンかと思えば、突如45秒~くらいからアパートの階段が映り、歌は鳴ったまま、ボーカル男子の家が映り、彼が喋っていくという生々しいドキュメンタリーになっていく。安っぽい蛍光灯、ビールと煙草が散乱した机、垣間見られる機材、レコード屋の袋、洗面台で髪を洗う、電気ストーブで髪を乾かす…そんな汚い部屋、スーパーでカップ麺を買い物、地下鉄で移動、レコード屋でただレコードを掘る、2人でのスタジオ、コインランドリーに寄る2人…。何でもない生活の中で、ぽつりぽつりとロックンロールやパンクや音楽を“宇宙の謎”なんて語る。真面目や適当について語る、語る、語る、語る…何でもない生活の中で。理想だったことや、そこへの焦りとかが、そのまんまの男子の屈託ない葛藤が笑顔で語られる。仕事で得られる悲しすぎる給料を語り、ぼやく。「レコードとかは…………買えないから……」。CD棚の前に座りながら寂しそうに、彼がそう呟いたとき、ただただ涙が出た。ドキュメンタリーシーンが流れているときも、『夢の中まで』の音楽は一切途切れない。5分半のプロモーションビデオ、5分半のパーソナルビデオ。自分の生活のBGMが、自分の音楽だなんて、素敵だなって思う。そのPVが生で観られるのが、ある意味ライブなわけで…是非とも観て頂きたい。
あ~あ、結局、物凄い文量になっちゃった。でも、当たり前だけど一切嘘は書いてません。熱情溢れるバンドしか書いてません、こんな文章が参考になるかどうかは分からないけど、とにかく素晴らしいバンドってことなんですよ。以上、おあとがよろしいようで。
ライター 鈴木淳史
Twitter: @suzudama11
『OTODAMA~音泉魂~』の勝手に後夜祭『SUZUDAMA~鈴木魂~』というイベントを3年もやらしてもらってる僕ですが、ライターのイメージが薄いらしく、たまに文章を読んだ知り合いから驚かれる始末。そして何気にイベントに出した実の母親である鈴木オカン玲子(64)が、ちょっとしたライブハウスでの有名人になってしまうオチも。3周年記念興行は『10.10(ジュッ テン イチゼロ)京都決戦』と銘打ち、10月10日(月・祝)KYOTO MUSEにて、KING BROTHERS vs GOING UNDER GROUNDの異種格闘技真剣一騎打ちもやっちゃうぞえ。
(2011年10月 7日更新)
チケット発売中
Pコード142-571(1日券)/780-027(3日通し券)
▼10月14日(金)18:30/15日(土)・16日(日)14:00
ミナミ・ライブハウス各所
金曜日券2500円 土曜日券3500円
日曜日券3500円 3日通し券6500円
FM802リスナーセンター■06(6354)8020
※出演者、会場、開演時間は変更となる場合があります。