NEWS

ホーム > NEWS > 関西にロッシーニ・ルネッサンスの香りを運ぶ オペラ『泥棒かささぎ』。初演から200年余りを経て フェスティバルホールで全曲上演!


関西にロッシーニ・ルネッサンスの香りを運ぶ
オペラ『泥棒かささぎ』。初演から200年余りを経て
フェスティバルホールで全曲上演! (2/2)

園田隆一郎480.jpg

                ▲園田隆一郎

ロッシーニの魅力はオーダーメイドの面白さ。
素材の良さを活かしながら手間ひまかけて創り上げた
美味しい料理みたいな味わいがあります
- 園田隆一郎インタビュー

■今、実演で聴けるロッシーニというのは『セビリアの理髪師』くらいのもので『ランスへの旅』と『チェネレントラ』がやっと上演されたばかりです。喜劇(ブッファ)である『セビリア』のイメージが強すぎて、歴史的な巨匠ながらまだまだ全貌が知られていない作曲家のように思います。


園田:ロッシーニは世界的にみても喜劇の人気が高いですね。それはもう素晴らしい作品だからというのが理由だと思うんですが、実はロッシーニ全体の作品の中で喜劇的なものはそれほど多くないんです。ほとんどがオペラセリア、シリアスなものなのに、ブッファで人気があるというのは、それはそれで当然かなという気がします。世界的に見れば『アルジェのイタリア女』なんかはけっこう上演されたりもしているんですが、シリアスな作品はその後の時代のヴェルディとか、プッチーニの作品の方がスピード感もあるし、物語の展開が早くて、現代のわれわれからしてみたらとっつき易いのはそちらなんですよね。そうした流れの中でロッシーニのようなオペラの伝統が、失われていた時期があったということだと思います。

 
■ではヴェルディやプッチーニ以後の作品とは違うロッシーニの魅力はどういうところでしょう。

園田:この時代のオペラは怒っているとか喜んでいるとかいう感情をとにかく時間をかけて表現するので、何か重要な事態が起こりましたとか、何かの謎が解けましたとか言った場合に「なにー!」っ言ってすぐ次に行くのがプッチーニだとしたら、「解けたのか?」「解けたぞー!」みたいなのを7分ぐらい歌ったりするのが、ロッシーニのオペラなんです。その感情が爆発した7分間の音楽を、ホール全体で共有すると言うのが醍醐味でもあるわけですね。そうした表現にロッシーニは非常に長けていた人で、そのノリの良さみたいなものは今回の『泥棒かささぎ』で、理屈抜きにわかっていただけると思います。
 
■歌手の方たちは繰り返しを装飾的に歌うなど、技巧的な部分が求められると聞いています。

園田:これもこの時代の特徴で、悪役であっても低音のコロラトゥーラを駆使して華やかな動きを歌ったりすることが様式として必要なんです。例えばヒロインのニネッタに横恋慕して、彼女を追い詰める悪代官のゴッタルドのパートではバスにそれが出てきます。技術的にもすごく難しいですし、さらに譜面上では喜びを表現する速いパッセージも、怒りや欲望をむき出しにした速いパッセージもまったく同じですから、その早い動きをどういう風に聴かせるかっていうのは歌手の表現と技術にかかってくるわけです。オーケストラもヴェルディやプッチーニと比べるとシンプルなだけにそれを楽しそうにやるのか、怖そうにやるのかというのは、すごく大きな違いで、そこがロッシーニの肝になるところです。楽譜通りに再現しただけはロッシーニにはならないので、そこにイタリア語のテキストの正しい表現を含んだ発音や歌の表情、声の色、もしくはオーケストラの色といったものでドラマを創って行くことが大事になってくるんです。
 
■シンプルだからこそ味付けが大事、といった感じでしょうか。

園田:すごく極端に言えば、ヴェルディやプッチーニの作品は、その通りに再現できたら形にはなるという感じで(笑)。複雑な調味料とか凝った調味料がすでに使われているから、その通りに仕上げたら料理にはなるんですが、ロッシーニはトマトとニンニクのスパゲッティみたいな感じでトマトの鮮度は大丈夫かとか、スパゲッティの茹で時間は正しいかとか、もうそれが命という感じです。ただ作っただけでは美味しくはならないので手間も時間もたっぷりかけて創り上げるということが、シンプルであるがゆえに大事になってくるんですね。だから出来上がったものにはプッチーニのオーケストラのような派手さはないですけど、それに負けないような感動があると思います。
 
■マエストロが考える今回の『泥棒かささぎ』の聴きどころは?
 
園田:たくさんあるんですが、まず小堀勇介さんや『ランスへの旅』以来の老田裕子さん、『ランス』『チェネレントラ』両方に出演した伊藤貴之さんのようにロッシーニのオペラに欠かせない歌手が揃ったということ。そこが聴きどころだと思います。だけど、ひとつの舞台として見た場合、そういう方ばっかりを集めたら面白いオペラになるかと言ったらそれはまた別だという風にも私は思っていて、そこに福原寿美枝さんや晴雅彦さんといったキャリアのある方をちょっと意外な形で入れることによって、舞台全体に深みが出るんだというように考えています。だからこれはもう全体を観て、聴いて、楽しんでいただきたいところですね。さっき料理に例えましたが、ロッシーニの面白さというのはオーダーメイドの良さなんです。いろんな個性を持った歌手の方に合わせて、私のほうからもここはこうしたら面白いんじゃないですか、みたいなことをディスカッションしながら創り上げていく楽しみ。 今、練習が始まっていて、そういった部分でもとても手応えを感じているので、ぜひ仕上がりにご期待いただきたいと思います。〔取材・構成:逢坂聖也/音楽ライター〕



(2022年6月14日更新)


Check
大阪交響楽団(C)飯島隆

第60回大阪国際フェスティバル2022
オペラ『泥棒かささぎ』

ニネッタ/老田裕子(S)        ジャンネット/小堀勇介(T)


ゴッタルド/伊藤貴之(Bs)      フェルナンド/青山貴(Br)


ピッポ/森季子(Ms)         イザッコ、アントーニオ/清原邦仁(T)


ジョルジョ/西尾岳史(Br)       裁判官/片桐直樹(Bs)


ファブリツィオ/晴雅彦(Br)      ルチーア/福原寿美枝(Ms)

合唱:ソプラノ1 太田尚見 岡本真季
         三村浩美 岩本実奈子
   ソプラノ2 名島嘉津栄 味岡真紀子
         堀口莉絵 安本佳苗
   テノール  諏訪部匡司 しまふく羊太
         岡成秀樹 近藤勇斗
   バス    谷本尚隆、神田行雄
         伊藤友祐、大西凌

●8月9日(火)14:00開演(13:00開場)
フェスティバルホール
S席-8,500円 A席-7,500円 B席-6,500円 
BOX席-12,500円
チケット発売中 Pコード 211-415

【問い合わせ】
フェスティバルホール チケットセンター
06-6231-2221(10:00~18:00)

チケット情報はこちら