関西弦楽四重奏団がピアニスト、岸本雅美を
迎えて贈るシューマンとブラームス
「~ピアノ・クインテット傑作選~」
関西が生んだ弦楽四重奏団として着実な活動を続ける関西弦楽四重奏団。近年はメンバー以外のヴィオラやチェロをまじえた編成にも取組み、成果を挙げつつある。その関西弦楽四重奏団が12月17日(金)、ザ・フェニックスホールでピアニストの岸本雅美を迎え、シューマンとブラームスのピアノ五重奏に挑む。冒頭にラフマニノフの美しい四重奏曲『ロマンス』を置いたプログラムだ。
多くのピアノ五重奏曲の中にあって、まず屈指の名作とされるのがシューマンの変ホ長調作品44である。シューマン以前にも作品はあるとは言え、この分野において最初の金字塔となったのがシューマンの作品であることは多くの評価の一致するところである(シューベルトのピアノ五重奏曲『鱒』はコントラバスを加えている)。1842年、いわゆる「室内楽の年」の夏から秋にかけて作曲され、翌43年初頭にライプツィヒ、ゲヴァントハウスで、クララ・シューマンのピアノによって初演された。時に不安定な暗さを湛え、それゆえに魅力を放つシューマンの作品だが、このピアノ五重奏においては楽想と構成が見事に結びつき、力強い魅力に溢れた全4楽章となっている。特に最終楽章に現れる二重フーガの疾走感は、聴く者を心地よい高揚に誘うことだろう。
そのシューマンと対を成すように置かれたのがブラームスのヘ短調作品34である。シューマンの作品が(3か月ほどを要したとは言え)ほぼ集中的な勢いで書かれたのに対し、ブラームスのそれは2年以上の紆余曲折を経て成立している。当初の版はチェロを2台とする弦楽五重奏であったものを破棄し、1864年に2台のピアノのためのソナタとして初演。さらにそれをクララ・シューマンら周囲の意見を容れるようにして書き直し、ピアノ五重奏として完成させたのである(1865年出版)。この分野の最高傑作として語られることも多い作品だが、全4楽章にわたって持続する緊張感と重厚さは、師であるシューマンが提示して見せたこの形式の限界に迫るようなスケールの大きさに溢れている。聴き終えたあとは、多くの人が格別の充実感に満たされるに違いない。
ピアノの岸本雅美(写真左)は1998年、新日本フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会にソリストとしてデビュー。ドイツ出身で日本のクラシック音楽界に大きな功績のあった指揮者、故ゲルハルト・ボッセの信頼を得てモーツァルトの協奏曲を半数以上共演するなどの実績を重ねている。関西弦楽四重奏団が結成されて10年となる2022年を前に、岸本雅美との「~ピアノ・クインテット傑作選~」は、彼らがまた1つ可能性の扉を開ける聴き逃せない演奏会となりそうだ。
(2021年11月17日更新)
Check