オルガンの多彩な音色が織りなす心温まるひととき
山口綾規(Org)、コロンえりか(S)を迎える
クリスマス・オルガンコンサート2020
年の瀬を迎え、各地でクリスマスコンサートが行われる時期となった。そんな中、紹介したいのが、12月19日(土)に行われるクリスマス・オルガンコンサート2020。住友生命いずみホールを舞台に30年続いて来た伝統のコンサートだ。毎回優れたオルガニストを招き、荘厳な中にも心温まるひとときを届けて来た。
「オルガンの音色というのは、この何千本もあるパイプの中を通って来るものですから、そのパイプの数だけ音色があると考えていただければ良いと思うんです。いずみホールのオルガンは3623本のパイプがあって、このオーケストラにも匹敵するような響きをお客さまに楽しんでいただけるということ。それから、われわれ弾く側にとってみれば、それだけの音色をひとりで操ることができるということ。そうした点が、オルガンという楽器の大きな魅力と言えるのではないでしょうか」
そう語るのは今回のオルガニスト、山口綾規(りょうき)。国内外での演奏活動の傍ら後進の育成にも力を注ぐスペシャリストだ。今年放映され、好評だったNHKの連続ドラマ『エール』ではオルガン指導も務めた。
「古関裕而さんの時代にはピアノは現在みたいに普及していませんでしたから、番組にはまず歌の伴奏として足踏み式のリードオルガンが出てくるんですね。それから電気式のハモンドオルガンの時代になる。パイプオルガンこそ出てきませんがドラマの中でこれだけオルガンが映ったり、セリフの中に登場したりという作品はこれまでなかったので、われわれオルガニストにとってはすごくうれしい企画でしたね」
柔和な語り口に、熱い“オルガン愛”が溢れる。
コンサートではソプラノのコロンえりかとともに、クリスマスにちなんだ名曲の数々を贈る。彼女の透明な歌声は、聴く者の心に静かに染み渡ることだろう。そしてパイプオルガンと言えば、これ!というJ.S.バッハの作品ほかでは山口のソロによるオルガンの響きがたっぷりと味わえる。『エール』にちなんで古関裕而の『六甲おろし』が採り上げられているのも楽しい。そして同じく『エール』では薬師丸ひろ子の歌唱が感動を呼んだ『讃美歌第496番 うるわしの白百合』を、コロンえりかとともに演奏。今年コロナに打ちひしがれた私たちの中に、復活と再生への希望を灯すに違いない。
「パイプオルガンというのは持ち運べる楽器ではありませんから、まずホールへ足を運んでいただいて、あの空間を揺るがす生の響きに触れてもらうのが一番だと思います。そこでクリスマスの雰囲気を味わったり、オルガンの響きに耳を傾けたりする中で、きっと新しい何かを感じていただけるのではないでしょうか。このコンサートを機会にオルガンの魅力を知ってもらって、また聴いてみたいなと思っていただければ、こんなうれしいことはありません」
(2020年12月 1日更新)
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