6月「新しい生活様式」の中で演奏活動を再開する
2つのオーケストラ、日本センチュリー交響楽団と
関西フィルハーモニー管弦楽団
新型コロナウィルスの感染拡大による自粛要請、および緊急事態宣言を受け、長らく演奏活動の休止が続いているクラシック音楽界。その中にあって大阪の2つのオーケストラが今月下旬から主催演奏会を再開する。6月20日（土）に行われる日本センチュリー交響楽団の「ハイドンマラソン HM.19」〔6月12日（金）公演を振替え〕と6月27日（土）に行われる関西フィルハーモニー管弦楽団の第311回定期演奏会だ。両楽団ともシーズン当初の予定を変更し、感染防止策を徹底した上で「新しい生活様式」に則った形での演奏会を開催する。
ザ・シンフォニーホールでは初めての開催となる「ハイドンマラソン」は首席指揮者飯森範親とセンチュリーがハイドンの残した104曲の交響曲を、8年かけてすべて演奏・ライブ収録しようというコンサートシリーズ（今回は収録なし）。2015年から始まり、すでに折り返しを迎えている。プログラムにはハイドンに因んだ他の作曲家の作品も取り上げてきたが、今回はハイドン後期の3作品に絞り込んでの演奏。古典派ハイドンの粋ともいえる小編成のアンサンブルによって、限られた舞台上に演奏者間のソーシャルディスタンスを確保し「密」を回避する狙いだ。また、これまで好評を博してきた関連企画『ハイドン大學』は講師に作曲家・野村誠を迎え、6月7日、YouTubeでのライブ配信を行った。その模様はアーカイブされているのでぜひ以下からご覧のほどを。https://www.youtube.com/watch?v=2vCz1mwRVqg
また関西フィルも、ブラームスをモーツァルト、シューベルトの作品に変更して臨む。小編成（6型）の狙いはセンチュリーと同様だが、シューベルトの第5番という、古典派へのオマージュ的な作品がモーツァルトと並べられたことで、意外な新鮮さも生まれている。指揮に迎えるのはバッハ・コレギウム・ジャパン首席指揮者の鈴木優人。バロックから古典派作品を得意とする、この人ならではのアプローチが光るステージとなるだろう。関西フィルでは5月29日にソーシャルディスタンスを確保した状態で実験演奏を行い、本番への手応えをつかんだという。すでに販売済みのチケットで大阪府が指定するホール収容ラインを満たしたため、以後の前売・当日券販売は行わない、としている。
▲5月29日に関西フィルが行った実験演奏。楽団員間の距離を保ちつつ充分な響きが得られたという。当日もこの距離を守りながら、可能な限りマスクを着用して演奏する。
感染防止策は、私たち観客にも求められる。マスクの着用や入場時の体温チェック、休憩時間にはなるべく会話を避けるなどその項目についてはホール、および各楽団のHPやブログに近日中に詳細が掲示されるので、充分に目を通して会場を訪れたい。コロナ禍の中での公演自粛は、音楽についてさまざまな考察を生んだ。それは一方で、演奏家やオーケストラ自身による積極的な発信につながり、インターネットでの配信は新しい視聴の在り方として可能性を示している。しかし、どれほどの制約があるとしても、やはり音楽の感動の原点はホールでその実演に触れることだ。私たちに課せられた多くの制約は、未来へ向けてこの感動を守り育てることについての義務と言えるかも知れない。いまだ先行きの見えない状況の中で、動き始めたオーケストラの動向に注目したい。
（2020年6月 9日更新）
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飯森範親〔首席指揮者〕 日本センチュリー交響楽団
（C）s.yamamoto
指揮に鈴木優人を迎える関西フィルハーモニー管弦楽団。写真は2019年の演奏会から。
日本センチュリー交響楽団
「ハイドンマラソン HM.19」
6月20日（土）14:00開演
ザ・シンフォニーホール
A席-5,000円 B席-4,000円 ※残席わずか。
【プログラム】
ハイドン：交響曲第95番 ハ短調 Hob.I:95
ハイドン：交響曲第93番 ニ長調 Hob.I:93
ハイドン：交響曲第97番 ハ長調 Hob.I:97
【指揮】飯森範親
【問い合わせ】
センチュリー・チケットサービス
06（6848）3311
平日10:00～18:00※土・日・祝は休業
関西フィルハーモニー管弦楽団
第311回定期演奏会
6月27日（土）14:00開演
ザ・シンフォニーホール ※全席完売
モーツァルト：歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲 K.527
モーツァルト：交響曲第29番 イ長調 K.201
シューベルト：交響曲第5番 変ロ長調 D485
【指揮】鈴木優人
【問い合わせ】
関西フィルハーモニー管弦楽団
■06（6577）1381
月曜～金曜10:00～17:00
土曜10:00～16:00 ※日・祝は休業
