1挺のチェロに宿る、限りなく豊かな響き
バッハ、ブリテンらの作品を集め
宮田大が2年ぶりに取り組む無伴奏チェロ・リサイタル
チェリスト、宮田大が10月11日(木)、いずみホールで無伴奏作品を集めたチェロ・リサイタルを行う。2009年、ロストロポ-ヴィッチ国際コンクールで日本人として初優勝。以来、豊かな音量と表現力を持ち味に、世代を代表するチェリストとして着実に成長を遂げている宮田。無伴奏作品だけのプログラムに取り組むのは、2016年以来となる。
「尾高惇忠さんの『瞑想』という作品を弾いた時、曲が静かに終わって10秒くらい音が止まっても、お客さまがじっと動かずに聴き入ってくださったんです。客席の方から僕以上の緊張感が伝わって来るのを感じました」
前回のリサイタルを宮田大はそのように振り返る。ステージには自分ひとり。緊張感もありながら、弾き手にとっては自分の意思で音楽を創造できる自由さがあるのも無伴奏作品の魅力だと言う。「無伴奏の場合、休符の意味がとても大切になると思います。最弱音や、音が無い時間を音楽としてどう創り上げるか。今回はそうした部分もしっかりと聴いていただけるように演奏したい」と続ける。
プログラムは無伴奏チェロのバイブルと言われるバッハの作品に始まり、それに対置するようにリゲティ、ブリテンといった20世紀の作品が集められた。現代音楽特有の難しさはなく、いずれもチェロの魅力をふんだんに聴かせる作品だ。その中にあって異彩を放つのが黛敏郎の『BUNRAKU(文楽)-チェロ独奏のための』。日本の伝統芸能、文楽における人形浄瑠璃の語り、三味線、そして人形遣いの動きまでをチェロ1挺の響きで表現した作品である。宮田自身が現代最高の人形遣い、三世桐竹勘十郎との共演やさまざまな試みを通してより鮮明なイメージを追求したと語る作品でもあり、今回の大きな聴きどころとなりそうだ。
「どんな演奏家を目指していますか、と訊かれることがあるんですが、なかなか将来のことは考えられなくて(笑)。それよりも僕は現在の僕にしかできない演奏をお届けしたいと思うんです。その都度、気持ちをこめた1回切りの演奏を」
演奏は一期一会のもの、という思いを常に宮田は語る。初めて無伴奏リサイタルに取り組んだ前回から2年、その思いは孤高の響きの中に、限りなく豊かな像を結ぶに違いない。
▲宮田大の近況を伝える2枚のCD、3rd「木洩れ日」(左・NF-25503)と2nd「一會集」(右・NF25502)。ともにピアノはジュリアン・ジュルネ。現在32歳の宮田の等身大の愛奏曲集といった趣の「木洩れ日」、フランクのヴァイオリン・ソナタ(チェロ編)や日本の作曲家の作品にも挑んだ「一會集」といずれも聴き応え十分な内容だ。黛敏郎の『BUNRAKU』(文楽)は「一會集」に収められている。
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(2018年8月24日更新)
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