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ホーム > NEWS > いずみシンフォニエッタ大阪 第36回定期演奏会 西村朗新作・世界初演 室内交響曲第5番〈リンカネイション(転生)〉


いずみシンフォニエッタ大阪
第36回定期演奏会 西村朗新作・世界初演
室内交響曲第5番〈リンカネイション(転生)〉

 現・近代音楽の演奏を中心とするいずみホールのレジデント・オーケストラ、いずみシンフォニエッタ大阪が、2月6日(土)に行われる第36回定期演奏会で作曲家・音楽監督である西村朗の室内交響曲第5番〈リンカネイション(転生)〉を世界初演する。人間の究極の問いである「転生」に触れた新作だ。西村朗は次のように語る。
 

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 「50歳を過ぎた頃からの僕のテーマは、死に行く人間がどこへ行くのかという問いかけなんですね。そこでいろんな宗教が示す死の光景というものに興味を持ちまして、自分なりに納得できると思えるような死の形を、あたかも自らが疑似体験するように、作曲・音響というプロセスで自分に返していったわけです。ところが若い頃のようにロマンティックに考える生と死ではなくて、確実に自分のところに来る現実的な問題として考えるようになってくると、それが必ずしも恐ろしい苦痛ばかりというわけでもなくて、その先に来るかも知れない転生というものに対して、憧れや夢ということを自然に感じられるようになって来たんですね」。

 
 前作である室内交響曲第4番は「沈黙の声」という標題を持つ。そこで西村は答えの返らない「死」の彼方への呼びかけを描いた。虚無へと呑み込まれる存在のはかなさ。だが今回の〈リンカネイション(転生)〉にはそれを超えて、永遠に流れ行くものへの穏やかな希望が見出されているようだ。この作品は西村の室内交響曲としては初のソプラノ歌唱付きとなる。テキストは西村が「感性の瑞々しさと生と死を見つめるまなざしの深さにおいて日本が誇るべき撰集」と語る「新古今和歌集」から採られるという。独唱は西村の希望により、これまでもいずみシンフォニエッタ大阪で個性的な声の表現を聴かせて来た太田真紀が務める。


DSC_2895_240C.jpg 「全体は2楽章で構成されます。まず生の最後の光景としての秋、そして眠りの期間としての冬で1楽章。第2楽章が目覚めの季節としての春です。僕が一番書きたいのがその目覚めのところ。この作品は2月に初演される予定ですから、春を迎える前に、春において転生するものを夢見ながら書いてみたいと思っています」。


 当日は気鋭の指揮者三ツ橋敬子を迎え、三ツ橋が拠点を置くイタリアの作品をまじえたプログラム構成。太田真紀はベリオの『フォークソングス』(抜粋)でも独特の歌唱を聴かせる。彼女の「声」の存在感を前半と後半に通低させつつ、南欧の明媚な風景から、転生の薄明の地平へと巡るプログラムの妙は、いずみシンフォニエッタ大阪ならでは。こんな内容の詰まった演奏会は、ほかではちょっと味わえないのだ。



(2015年12月25日更新)


Check
【指揮】三ツ橋敬子(c)Walter Garosi     【ソプラノ】太田真紀(c)slot photographic

いずみシンフォニエッタ大阪〈第36回定期演奏会〉

魅惑のイタリアン&誕生《第5》!

●2016年2月6日(土)16:00(15:15開場)
いずみホール
◆15:30~ロビーコンサート
◆15:45~プレトーク

一般-5000円(指定)
チケット発売中 Pコード 273-699

【指揮】三ツ橋敬子
【ソプラノ】太田真紀

【プログラム】
レスピーギ:組曲「鳥」
ベリオ:フォークソングスより
シャリーノ:電話の考古学
西村朗:室内交響曲第5番〈リンカネイション(転生)〉委嘱新作

【問い合わせ】
いずみホールチケットセンター■06-6944-1188

■いずみシンフォニエッタ大阪・アーカイブプロジェクト

いずみホールが現在、最も力を入れているのが、いずみシンフォニエッタ大阪のアーカイブ・プロジェクト。演奏会を楽曲ごとに収録した録音・映像を、Youtubeを通じて配信する試みだ。配信中の3曲はいずれも第35回定期演奏会からの作品。収録には大阪芸術大学の学生によるクルーが当たり、いずみシンフォニエッタ大阪の演奏を瑞々しい感性で捉えている。10月1日の配信開始以来、すでにアメリカ、ヨーロッパ、アジアの各国で視聴されており現・近代音楽に対する新たな取り組みとして各方面から注目を集めている。

【曲 目】
ヴィラ=ロボス:ブラジル風バッハ第9番
西村朗:ギター協奏曲〈天女散花〉
坂東祐大:めまい(2015)
~関西出身若手作曲家 委嘱プロジェクト~

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