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激情の女か、それとも悪女か!?
佐藤しのぶがカルメンを演じる
クリスマス・コンサート「The Gift! vol.14」

 2014年1月には、市川右近演出によるオペラ『夕鶴』の全国公演がスタートする佐藤しのぶ。彼女が手がけるクリスマス・コンサート「The Gift! Vol.14」が12月11日(水)、サンケイホールブリーゼで開催される。おととしは全編日本語による『フィガロの結婚』ダイジェスト。昨年は“民話劇として演じるのはこれが最後”と佐藤自身が語る演出での『夕鶴』など、毎回魅力溢れるステージを届けてくれるこのコンサートだが、今年彼女が選んだのはビゼーの『カルメン』。竜騎兵伍長ドン・ホセとジプシー女カルメンの灼熱の恋物語だ。多彩な人物が織り成すこのオペラを、主人公ふたりのドラマに絞り込み、出会いから幕切れまでを描き切るという。さて、今年の見どころは?
 
■毎回、工夫が凝らされていますね。単なるダイジェストではなくてオペラのエッセンスが詰まっていて。
 
佐藤:はい、原作をぎゅっと凝縮して、今回私たちはフランス語で歌います。でも筋がちゃんと追えるように日本語で字幕を入れて、ナレーションも入れます。実は5年前にも、これに近い形で上演したことがあるんですが、幸いたいへん好評をいただくことができました。その時は私がミカエラと二役を演じたのですが、今回はもっと、ふたりの愛に焦点を絞っていますから、さらに熱いドラマを感じていただけるのではないかと思いますね。
 
■「カルメン」にはドン・ホセを裏切る悪女、と言ったイメージもあるのですが?
 
佐藤:そう思いますか?ふたりは愛し合っているんですよ。お互いにこれ以上はないっていうくらいのふたりなんです。でもカルメンはジプシーの女性。ドン・ホセは軍人ですけど貴族の出身です。当時のジプシーというのは完全に社会の枠の外に置かれていた人たちで、だからこその自由も持っている。ドン・ホセのすむ世界はヨーロッパのキリスト教の世界です。それはホセを守ることもあるけれど、彼の方にも守るべき義務や規律がある。このふたりのポジションの差が決定的ですね。普通なら絶対に出会わない彼らがタバコ工場で出会ってしまう。価値観も背負っている背景も違うのに、互いの中にそれぞれが持っていないものを見出して恋に落ちてゆく…その素晴らしさ、残酷さを描くのがこのオペラなんですね。
 
■その運命を描くために素晴らしい音楽が付けられている…。単純な善悪ではないということですね。
 
佐藤:カルメンが女性として素晴らしいな、と思うのは彼女が絶対に逃げないことです。彼女はドン・ホセのことも信じているけど、運命というものも信じているから、自分が最後にどうなるかってことが分かっているんですね。仲間が「ホセが来るから逃げろ」って忠告しても、彼女は逃げずに、彼に殺されることを選ぶんです。だから、私はカルメンを悪女だとは思わないんですね。カルメンにとっていちばん大事なのは愛。現代の私たちの尺度から見るとどうしようもない悪い女にも見えるし、ドン・ホセは転落していくだけにも見えるけど、そうじゃないんですね。ヨーロッパの社会というのは、ジプシーたちを蔑みながらも、自由の象徴として見ていた部分があるんです。モーツァルトの『ドン・ジョバンニ』などがそれを描いていますよね。ですから、私は今回、情熱的で、本当に自分に正直な、自由の象徴としてのカルメンを観ていただきたい、と思ってこの作品を選びました。
 
■ドン・ホセを演じるのがテノールの西村悟さん。今回の共演はいかがでしたか?
 
佐藤:西村さんは日本を代表するテノールに育ってゆく方だと思います。演技もとても上手だし、何よりも天然の美声。体も大きくて、ドン・ホセにはぴったりですね。西村さんの歌う「花の歌」、ぜひ聴いていただきたいです。それからドン・ホセが帰ってくる場面では、カルメンが踊るんですが、そこでは私がフラメンコを披露します。ご期待ください(笑)。
 
■1月には新演出の『夕鶴』がスタートします。さらに母の日とクリスマスのリサイタル、と休む暇もないほどだと思われるのですが、まだまだ新しい動きがありそうですね。
 
佐藤:そうですね、まずは元気で…出来る限り歌うことに集中して。1回1回を最高の舞台を見て、聴いていただくところから始めたいですね。それはお客さまに対してもそうだし、私を今まで育ててくれた方にも、最高のものをお届けすることが、私の感謝を伝えるひとつだけの方法だと思っていますから。来年は、デビュー30周年になります。この年をまったく新しい『夕鶴』で始められる、というのはとても素晴らしいことだと思います。また、9月には東京オペラシティで日本を代表するテノールの市原多朗さんをお迎えして、30周年のコンサートを行います。市原さんは私が尊敬する素晴らしい方で、20周年の時にも歌っていただいたんですけど、今回も身の引き締まる思いですね。あと、これは始めた時には考えていなかったんですが、ちょうど「母の日」が20回目で、「クリスマス」が15回目になるんです。だからこちらも何か節目の年に出来れば、と思っていて…。
 
■ということは来年のクリスマスの企画も進行中ですね。
 
佐藤:もちろん、考えていますよ。でもまだ話しません(笑)。これは私の「The Gift!」(贈り物)ですから。
 



(2013年11月26日更新)


Check
【ソプラノ】佐藤しのぶ
【テノール】西村悟             【ピアノ】森島英子

佐藤しのぶ クリスマス・コンサート       The Gift! vol.14

●12月11日(水)15:30
サンケイホールブリーゼ

チケット発売中 Pコード 200-666
S席-8000円 
A席-6000円(売切)

【出演】
【ソプラノ】佐藤しのぶ
【テノール】西村悟
【ピアノ】森島英子

【プログラム】
オペラ『カルメン』より
きよしこの夜
アヴェ・マリア ほか

【問い合わせ】
ブリーゼチケットセンター■06-6341-8888

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